不動産の契約には通常の賃貸契約のほかに、転貸借契約があります。いわゆる「また貸し」である転貸借には、メリットだけではなくリスクもあるため注意が必要です。
本記事では、転貸借契約の仕組みや方式、リスク、サブリースとの違いを解説します。転勤などで転貸借の利用を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
もくじ
登場人物の整理が重要な転貸借
転貸借とは、借りたものを他者に貸す行為で「また貸し」とも呼ばれます。転貸借では登場人物が3人いるため、誰がどの立場なのかを整理して理解することが重要です。
ここでは、転貸借の登場人物やサブリースとの違いについて詳しく解説します。
転貸借契約を結ぶ際の当事者は3者
転貸借の契約を結ぶ当事者は「貸主」「借主」「転借人」の3者です。貸主は不動産の所有者、借主は不動産を借りた人、転借人は借主から不動産を借りた人です。
貸主と借主は賃貸借契約を結び、借主と転借人が転貸借契約を結びます。貸主と転借人の間に、直接の契約関係はありません。転貸借契約は、貸主と借主、転借人の3者間において2つの契約で成り立っています。
転貸借とサブリースの違い
賃貸借とサブリースの違いは、サービスの有無です。
サブリースも転貸借と同じように、貸主から借りた不動産を他者に貸すことです。しかし、サブリースは、一般的に空室時の賃料保証を含むサービスを指します。
サブリースであれば、空室が埋まらない場合でも家賃が保証されますが、転貸借には賃料保証のサービスはありません。転貸借は、また貸しの仕組みのみを指します。
転貸借は貸主の許可がなくても可能
転貸借をするには、基本的には貸主の許可が必要です。しかし、住宅建物の場合は、特例として貸主の許可がなくても転貸借が可能なケースがあります。
転貸借に関する特例は以下のとおりです。
- 許可がなくても当事者間の信頼関係が壊されない限り、貸主の契約解除を許さない(判例による)
- 裁判所が借主に代わって転貸借の許可を与えられる
- 貸主が許可しない場合は、借主に建物買取請求権、造作買取請求権を与える
リロケーションのための転貸借
リロケーションとは、転勤などの理由で不動産を一定期間のみ賃貸に出すことです。リロケーションをする場合には、転貸借の仕組みを利用するケースが多く見られます。
リロケーションで転貸借を利用するメリットは、借主であるリロケーション会社が転借人との契約や対応にあたるため、貸主の負担が軽減される点です。クレーム対応や賃料の支払い催促、訴訟などもリロケーション会社に任せられます。
転貸借には2つの契約方法がある
転貸借には、転貸借と代理委託の2つの契約方式があります。両者の大きな違いは、契約の当事者が誰になるのかという点です。
各方式の特徴について、詳しく解説します。
転貸借方式
転貸借方式とは、借主が転借人に不動産を貸し出す契約方式です。借主が貸主から不動産を借り、他者にまた貸しします。
転貸借方式は、借主が貸し出す不動産の賃料を設定し、契約条件を決められる点が特徴です。ただし、貸主の許可をとる必要があります。無断での転貸が発覚した場合、契約解除につながるだけではなく、損害賠償を請求されるおそれもあるため注意しましょう。
代理委託方式
代理委託方式とは、貸主が不動産会社に物件管理や運営を委託する契約方式です。委託を受けた不動産会社が転貸しますが、契約は貸主と転借人が直接結びます。
代理委託方式の場合、不動産会社が物件の管理や運営、転貸を行うため、トラブル発生時にも状況を把握しやすい点がメリットです。しかし、トラブル対応は貸主がしなければいけません。
転貸借のリスクと注意点
転貸借には、一般的な賃貸契約にはない、建物や物品破損時の責任所在、無断転貸に関するリスクがあります。転貸借開始後にトラブルが起こらないよう、リスクや注意点を事前に把握しておきましょう。
建物や物品を破損した場合の責任所在
転貸借の大きなリスクは、建物や物品が汚れたり破損したりした際に、責任の所在がはっきりしない点です。貸主と借主、転借人の3者間で2つの契約を結ぶため、誰が責任を追うのかがあいまいとなるおそれがあります。
壁や床の汚れ、設備の故障などに対して、基本的には貸主が修繕費用を負担しなければなりません。余計なトラブルを防ぐためには、建物や物品の破損時の対応を事前に決めておくことが大切です。
貸主の了承を得ていなかった場合のトラブル
転貸借は、原則として事前に貸主の了承を得ていなければ、契約違反となります。無断での転貸が発覚した場合、契約解除や損害賠償請求といったトラブルに発展しかねません。
無断転貸によるトラブルを防ぐためには、賃貸借契約書に転貸のルールを明記することが大切です。また、借主は貸主との信頼関係を築き、トラブルを未然に防げるよう心がけましょう。
【まとめ】転貸借をする際は十分に注意することが大切
転貸借とは、借りたものを他者に貸す行為です。不動産の転貸借では「貸主」「借主」「転借人」の3者が2つの契約を結びます。貸主は不動産の所有者、借主は不動産を借りた人、転借人は借主から不動産を借りた人です。
貸主と借主が賃貸借契約、借主と転借人が転貸借契約を結び、貸主と転借人の間に直接の契約関係はありません。そのため、不動産の賃借権を譲渡しない点が特徴です。
転貸借にはさまざまなメリットがある一方で、破損時の責任所在があいまいとなる点や、無断転貸によるトラブルが起こりやすい点などに注意しなければなりません。転貸借をする際は、リスクをしっかりと把握し、適切な対策を講じてトラブルを未然に防ぎましょう。
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