ヤドカリ投資とは不動産投資の一つで、自分が住む家を次々と住み替えながら、前に住んでいた家を売却したり貸し出したりする投資方法です。一般的な不動産投資と比べてさまざまなメリットがある反面、失敗するリスクがまったくないわけではありません。
そこで、本記事ではヤドカリ投資の基本的な仕組みからメリット・デメリット、失敗しないために気をつけたいポイントまで徹底的にご紹介します。
もくじ
リスクの少ないヤドカリ投資
投資用物件を別途購入する一般的な不動産投資と異なり、ヤドカリ投資は自宅を購入するところから始まります。費用を支払って取得するのはあくまでも「自宅」のため、物件の購入費用が無駄になるリスクがほとんどありません。
ヤドカリ投資の基本的な仕組みと、いかにリスクが少ないかという点を詳しく解説します。
ヤドカリ投資とは?
ヤドカリ投資とは、自分が住むために購入した物件を、賃貸物件に転用したり売却したりすることで収益を得る不動産投資方法です。ヤドカリが自分の成長に合わせて、住まいにしている貝殻を次々と移していく様子から名付けられました。
結婚や子どもの誕生などで、私たちの生活の規模は常に変化します。住居を住み替えていくヤドカリ投資は、ライフスタイルの変化に対応できるという意味でも合理的な投資方法です。
不動産投資で気になる空室リスクがない
ヤドカリ投資で購入した物件には、まず自分が居住します。住み続けながら借り手や売却先を探せるため、空室になるリスクがほとんどありません。
不動産投資における最大のリスクは、収益を得られなくなる空室です。ヤドカリ投資であれば、借り手が決まらない場合は自宅として利用できるため、空室期間が事実上発生しなくなります。
もちろん、ヤドカリ投資でも空室リスクがまったくないわけではありません。現在の入居者が退去したあと、次の入居者がすぐに見つからないケースです。しかし、ヤドカリ投資であれば、住み替えた現在の住居を賃貸に出して、空室になった物件を再度自宅にする方法も取れます。
ヤドカリ投資のメリット
ヤドカリ投資には、ほかの不動産投資にはないメリットが多くあります。住宅ローンの利用やそれに伴う減税、安定した収支などです。
ヤドカリ投資のメリットを一挙にご紹介します。
住宅ローンが使えて減税も見込める
ヤドカリ投資では自分が住む物件を購入するため、通常の住宅ローンを利用できます。住宅ローンは、不動産投資ローンに比べて審査が緩やかで金利も低い点が特徴です。また、返済期間を比較的長く設定できるため、月々の返済額を抑えられます。
さらに、税額控除が受けられる点も、住宅ローンのメリットです。住宅ローン減税と呼ばれる制度で、一定の条件や上限額はありますが年末時点の借入残高の0.7%が所得税から控除されます。
収支がマイナスになりにくい
ヤドカリ投資は、収支がマイナスになるリスクが低い点も大きなメリットです。金利の高い不動産投資ローンを利用しないため、多少利回りが悪化しても収益を確保できます。また、入居者を確保してから新たな物件を探せば良いため、空室リスクもほとんどありません。
さらに、売却時には最大3,000万円の譲渡所得控除を受けられることも、ヤドカリ投資がマイナスになりにくい理由の一つです。売却益が3,000万円以下であれば譲渡所得税がかからないため、通常の不動産投資よりも有利な条件で売却できます。
自宅として物件を使える
物件を自宅として使える点が、ヤドカリ投資の特徴でありメリットです。自宅として使っている間は収益があがりませんが、逆に考えると空室期間の損失がまったくないともいえます。
また、ライフスタイルの変化に合わせて住み替えることで、より快適に生活できるようになる点も魅力です。例えば、仕事や家族の都合で引っ越す必要がある場合や家族の増減、子どもの成長に合わせて住居を自由に選べます。
ヤドカリ投資のデメリット
ヤドカリ投資は不動産投資の一種である以上、残念ながらデメリットもあります。一般的な不動産投資にはない注意点もあるため、ヤドカリ投資に踏み切る前にマイナス面も十分検討しておきましょう。
ヤドカリ投資のデメリットについて、詳しく解説します。
高額物件への投資は難しい
ヤドカリ投資は、ほかの不動産投資と比べて高額物件への投資が難しい点がデメリットです。基本的には、取得した自宅住居を住み替えながら運用していくため、取得ハードルの高い高額物件はヤドカリ投資に向いていません。
また、利用する住宅ローンの借入限度額は、現在の収入や保有資産に対しての評価によって決まります。限られた資金のなかで物件を取得することになるため、高額物件には手を出しにくいのが現実です。一方、物件そのもので収益を上げる事業性の高い不動産投資で利用するローンの場合、収益性や事業計画によっては高額物件を取得できるケースもあります。
収益性があまり高くない
ヤドカリ投資では居住していた自宅を運用して収益を上げることから、新築物件のように高い収益性は確保できません。また、通常の不動産投資のように複数戸数を同時運用するわけではないため、家賃収入の上限がどうしても低くなってしまいます。
自宅の住宅ローンを家賃収入でまかなえる点ではリスクが低い一方、短期的な収益はあまり望めないことには注意して長期計画を立てましょう。
一般的な不動産投資のような節税は期待できない
ヤドカリ投資では一般的な不動産投資のように、かかった費用を経費計上できません。一般的な不動産投資では、経費を計上して本業の給与収入と通算することで節税が可能です。一方、ヤドカリ投資で取得した物件は、あくまでも自宅という位置づけのため、費用は全額自己負担となります。売却するためにリフォームした場合も、売却益から差し引くことはできません。
事業性がないことで多くのメリットを得られる反面、経費を加味しない収益にそのまま課税されてしまう点に注意しましょう。
ヤドカリ投資で失敗しないためのポイント
ヤドカリ投資はリスクの少ない投資方法ですが、投資の一種である以上、失敗するリスクはゼロではありません。物件選びからしっかりと計画を立てておくことが、投資を成功させるためのカギです。
ヤドカリ投資で失敗しないためのポイントを、物件の選び方を中心に3つご紹介します。
立地が魅力的な物件を探す
ヤドカリ投資で失敗しないために重要なことは、魅力的な立地の物件を選ぶことです。単に自宅を購入するのであれば、自分の通勤や生活に便利な場所であればどこでも問題ありません。しかし、住み替え時に貸出や売却をするヤドカリ投資では、多くの人が魅力的に感じる立地の物件を選ぶ必要があります。
例えば、駅やバス停に近い物件や、病院、商業施設、公共施設にアクセスしやすい物件などは魅力的です。また、現在の状況だけではなく、都市計画などを参考に将来性も考慮して物件を選びましょう。
ローン返済期間を考えた価格と築年数の物件を選ぶ
ヤドカリ投資で特に中古物件を購入する際は、ローン完済後の価値を考えた物件選びが大切です。一般的に、一戸建ては築20年、マンションでも築30年で建物の価値はほぼゼロになるといわれています。例えば、築10年の戸建住宅を10年ローンで購入すると、ローン完済時には建物の価値はほぼありません。
立地や間取りなど、さまざまな条件で物件価値は変わってきますが、ヤドカリ投資を考える際は築年数とローン期間も事前にしっかり検討しておきましょう。
想定家賃から利回りを算出する
不動産投資目的で物件を選ぶ際は、利回りを算出することも重要です。利回りとは物件の収益性を表す指標で、年間の家賃収入を物件価格で割って算出します。自宅を購入する際にはあまり利回りを検討しませんが、ヤドカリ投資を考えているのであれば、賃貸物件にした際の利回りも事前に計算しておきましょう。
利回りを正しく計算できていれば、現在の住居をいつ賃貸物件にすべきか、次の物件にいくらくらい支出できるかを的確に判断できます。
【まとめ】ヤドカリ投資はリスクが低い不動産投資
現在の自宅を賃貸や売却しながら、住居を移していくヤドカリ投資。資金を自宅の取得に使うため、不動産投資のリスクを低減することが可能です。また、ヤドカリ投資であれば、家族の人数やライフスタイルの変化に合わせて自由に転居できます。
収益性があまり高くないというデメリットもありますが、住宅ローンが使えることや収支がマイナスになりにくいなどメリットも大きいため、不動産投資の手段として検討する価値は十分にあります。いまは不動産投資にあまり興味のない方でも、自宅を購入する際には将来ヤドカリ投資をすることも視野にいれてみてはいかがでしょうか。