不動産投資をするうえで、避けて通れない固定資産税の支払い。詳しくは理解していなくても、納税通知書をみれば税額は誰でもわかります。
しかし、不動産投資を成功させるためには、できるだけ綿密な資金計画を立てることが重要です。
少しでも精度の高い計画を立てられるよう、固定資産税についてしっかりと理解しておきましょう。
今回は固定資産税について、税制の基本的な部分から算出方法、軽減措置まで詳しく解説します。
不動産投資を始める前に、正しい知識をぜひ身につけてくださいね。
1.不動産投資の固定資産税っていったい何?
不動産投資にかかる税金はいくつかあります。なかでも固定資産税は、不動産投資での収益にかかわらず課税される必要不可欠な税金です。
固定資産税の内容と支払い対象者、支払い方法といった基本知識を詳しく解説します。
固定資産税の基本
固定資産税とは、建物や土地などの固定資産に対して課税される税金のことです。
また、建物や土地だけではなく、「流通しない資産」が固定資産として定義付けられています。たとえば、機械や設備・工場・航空機・山林・牧場・畑なども固定資産税の課税対象です。
固定資産税を支払うべき人
固定資産税を支払うのは、1月1日時点で対象の固定資産の所有者として登記されている人です。年度途中で固定資産を手放しても、1月1日時点で所有していれば固定資産税の納税義務があります。
たとえば、5月に不動産を購入した場合、その年には対象の固定資産税を支払う必要はありません。5月に不動産を売却した前所有者が納税義務者となります。ただし、不動産売買においては、物件の引き渡し以降の固定資産税を日割り計算して、買主に負担してもらうことが一般的です。
なお、建物や土地などの不動産を所有している限り、毎年固定資産税を支払う義務が発生します。
固定資産税の支払い方法
各自治体から納税義務者に対して、毎年4〜6月に固定資産税の納税通知書が送付されます。支払いは一括払いと分割払いから選択可能です。どちらを選択しても納税金額は変わりません。納税期限までに固定資産税を支払わないと延滞金が発生してしまうため、納税忘れには十分注意しましょう。
支払い方法は、銀行からの振り込みや口座振替が一般的です。また、クレジットカード払いやペイジー、バーコード決済といったさまざまな支払い方法に対応している自治体も増えています。自治体によって利用できる支払い方法が異なるため、事前に確認しておきましょう。
2.不動産投資の固定資産税を計算する方法
固定資産税は、納税通知書をみれば明確に金額がわかります。
しかし、不動産投資をする際には事前に納税額を確認して、資金計画に盛り込んでおくことが重要です。固定資産税を算出する基本的な方法について詳しくご紹介します。
固定資産税を決める評価額
固定資産税を算出する基準となるのは「固定資産税評価額」です。固定資産税評価額は、建物や土地を総務省の定める固定資産評価基準に基づいて、管轄の自治体が査定したうえで決定されます。
なお、固定資産税評価額の見直しは3年ごとにおこなわれます。つまり、評価額が算定されると、原則3年間は固定資産税の税額が変わりません。
固定資産税の税率の決まり方
実際の固定資産税額は、固定資産税評価額に決められた税率をかけて算出されます。固定資産税の標準税率は「1.4%」ですが、自治体によっては1.5%や1.6%など異なる税率を適用しているケースもあるので注意が必要です。
また、固定資産税に加えて、「都市計画税」が課せられる場合もあります。都市計画税の税率は0.3%が上限です。固定資産税と同様に、固定資産税評価額に税率をかけて算出されます。
不動産投資をする際は、購入する物件を管轄している自治体の固定資産税率や、都市計画税の要否を事前に確認しておきましょう。
固定資産税の計算方法
不動産投資で物件所有している場合の固定資産税は、土地と建物の税額の総額となります。固定資産税評価額は、土地と建物それぞれで決定されるので計算の際には注意しましょう。
計算式は、
土地(「固定資産税評価額」x1.4%(標準税率))+建物(「固定資産税評価額」x1.4%(標準税率))
となります。
3.固定資産税の軽減制度をしっかりと利用する
固定資産税にはいくつか特例措置が設けられており、条件を満たせば軽減される可能性があります。不動産投資の収益性をあげるためには、支出を抑えることも重要なポイントです。単純な支出である固定資産税を軽減できれば、そのまま収益を増やせます。
不動産物件を取得する際は、固定資産税の軽減制度についてしっかりと理解しておきましょう。現在利用できる固定資産税の減免制度を3つ紹介します。
課税されない免税点
課税対象となる不動産の固定資産税評価額が低い場合は、固定資産税の納税が免除されることもあります。所有する固定資産の評価額が、自治体の定める「免税点」を下回ると適用される制度です。
固定資産税が課税されない免税点は次のとおりです。
- 建物 固定資産税評価額20万円未満
- 土地 固定資産税評価額30万円未満
- 償却資産 固定資産税評価額150万円未満
固定資産税評価額が免税点を下回る不動産であれば、固定資産税が課税されません。ただし、同一の市町村内で複数の不動産を所有している場合、固定資産税評価額の合計で判断されます。
小規模住宅用地は特例措置によって軽減される
住居が建っている土地に関しては、固定資産税の算出基準である固定資産税評価額が減額されます。小規模住宅用地の特例措置が適用されるためです。
小規模住宅用地の特例措置は、住宅確保の観点から固定資産税の負担が大きくなりすぎないように設けられています。特例措置によって軽減される固定資産税評価額の割合と条件は以下のとおりです。
- 小規模住宅用地(200平方メートル以下の土地) 6分の1
- 一般住宅用地(200平方メートルを超える部分) 3分の1
小規模住宅用地の要件を満たす200平方メートル以下の土地は大きく優遇されるほか、200平方メートルを超える部分についても軽減されます。
不動産投資をするにあたって、小規模住宅用地の特例措置の重要なポイントは、基準となる200平方メートルは住戸1戸あたりの面積という点です。マンションやアパートといった集合住宅の場合は、200平方メートル×戸数の広さまでの土地が「小規模住宅用地」扱いになります。
新築住宅の場合は評価額が大きく減免される
新築住宅の場合には、固定資産税が大幅に減免される制度もあります。2024年3月31日までに新築された住宅の固定資産税を、2分の1に軽減する特例措置です。
耐火性能や住宅構造に応じて、新築住宅の特例が適用される期間が違います。新築住宅の特例が適用される期間は次のとおりです。
- 一般的な新築住宅 築3年間
- 認定長期優良住宅 築5年間
- 耐火・準耐火構造の3階建て以上の物件 築5年間
- 認定長期優良住宅であり耐火・準耐火構造の3階建て以上の物件 築7年間
ただし、軽減を受けられる範囲と条件はやや複雑なため、事前にしっかりと確認しておきましょう。床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下の物件の、固定資産税が2分の1に軽減される範囲は、居住面積120平方メートルまでです。また、賃貸物件の場合は、40平方メートル以上280平方メートル以下の物件が対象になります。
4.【まとめ】固定資産税を正しく把握して正確な収益計算
不動産投資において、各種税金の支払いは収益を圧迫します。とくに固定資産税は、赤字でも必ず支払い義務が発生する税金です。固定資産税の算出方法や税額をきちんと把握して、必ず資金計画に盛り込んでおきましょう。
また、投資先の物件を検討する際は、特例措置などの軽減制度を利用できる物件を選ぶことも収益性をあげるポイントです。固定資産税の算出は、基本的な仕組みさえ理解できればそれほど難しくありません。納税通知書が届いてから慌てることがないよう、事前に準備しておきましょう。