不動産投資は資産運用として代表的な手段の1つです。しかし、不動産投資について正しい基礎知識を身につけている方はあまり多くありません。
今回は、なんとなくイメージだけでとらえている不動産投資について、初心者にもわかりやすく基礎から詳しく解説します。不動産投資のリスクや、はじめる際のロードマップについても触れているため、実際に投資を考えている方にも役立つはずです。
不動産投資で収入を得る仕組み
不動産投資で得られる収益の仕組みを理解することで、適切な投資判断と目的に応じた投資先を選べるようになります。
不動産投資で得られる収入は「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類です。それぞれのメリットとデメリットをしっかりと比較して、どちらを重視するのかを検討しましょう。
物件を貸すことで得られるインカムゲイン
インカムゲインとは、資産を保有したままで得られる収益のことです。不動産投資においては、おもに物件を第三者に貸し出すことで得られる家賃収入を指します。
また、家賃の5〜10%ほどの共益費や、家賃の1〜2ヶ月分程度の礼金、賃貸契約の更新料も不動産投資で得られるインカムゲインです。
不動産投資のインカムゲインは、景気に左右されにくい家賃収入のため安定した収益が見込めます。一方、短期間で大きな収益は見込めない点がデメリットです。
物件の売買で得られるキャピタルゲイン
キャピタルゲインとは、保有している資産を売却することで得られる収益です。不動産投資では、物件を購入価格よりも高く売却できた場合にキャピタルゲインを得られます。
キャピタルゲインのメリットは、一度に大きな収益を見込める点です。たとえば、3,000万円で購入した物件を4,000万円で売却した際には、1,000万円のキャピタルゲインを得られます。
一方で、経年劣化や需要の減少などによって物件の価値が下がれば、売却価格も下がるおそれもあります。3,000万円で購入した物件を2,500万円で売却した場合は、500万円のキャピタルロスが発生し、損失となってしまうため注意が必要です。
不動産投資の種類は豊富
不動産投資にはさまざまな方法があります。投資方法によって初期投資額や利回りなどが異なるため、自分に合う投資方法を選べるのも不動産投資の魅力です。
ここでは、代表的な不動産投資の方法を5つ紹介します。これから不動産投資をはじめる方は、投資方法選びの参考にしてくださいね。
ワンルームのみから手堅くはじめる
不動産投資は、建物を1棟丸ごと購入するのではなく、1室のみに投資することも可能です。初期費用をおさえられるほか、建物自体の維持管理費用は賃貸入居者が負担するのでかかりません。手堅く不動産投資をはじめたい初心者の方におすすめの方法です。
ただし、家賃収入は1室分のみとなるため、収益性はあまり高くありません。さらに、万が一空室になってしまうと、家賃収入がゼロになってしまう点にも注意が必要です。複数所有するなど、空室リスクを分散する工夫も考えておきましょう。また、長期保有やキャピタルゲインも念頭に、投資計画を立てる必要があります。
アパートやマンションを1棟丸ごと買い上げる
不動産投資のなかでも、安定した収益を見込めるのがアパートやマンションを1棟丸ごと買い上げる方法です。家賃収入を複数の部屋から得られるため、収益額自体も大きくなります。
ただし初期投資が大きくなってしまうのがデメリットで、建物の維持管理費用や、災害などによる損壊時の修繕費用も発生します。
戸建住宅を購入する
購入した戸建住宅を貸し出して家賃収入を得る方法もあります。アパートやマンションと比較して、入居期間が長い傾向にある点が戸建住宅のメリットです。頻繁に入居者を募集する手間がかかりません。
一方で、1戸につき1世帯しか入居できないため空室リスクには注意が必要です。また、建物や設備の定期的なメンテナンスや修繕費用が別途必要となります。
土地購入をする場合は注意が必要
不動産投資のなかでも古くから利用されている投資方法が、土地購入です。立地がよければ地価の上昇によるキャピタルゲインも見込めます。
しかし、安定しているのは取得した土地を貸し出してインカムゲインを得る底地投資です。底地投資は、住宅と違って空室になるリスクが低いというメリットがあります。一方で、貸し出した事業者が倒産した場合は、建物の処分費用などが発生するおそれもあるため注意が必要です。
また、借地はさまざまな法律で借り主が守られており、扱いにくいという側面もあります。インカムゲインとしてはあまり収益性も高くないため、手間ばかりかかって非効率な投資とならないように注意しましょう。
手軽にはじめられるクラウドファンディング
近年では、クラウドファンディング型の不動産投資も注目を集めています。不動産投資クラウドファンディングは、インターネットを通じて投資家から募った資金で、事業者が不動産運用をおこなう投資方法です。運用期間中の賃料収入や売却益を分配金として受け取れます。
物件の取得費用を複数の投資家から集めるため、少額からはじめられるのが大きなメリットです。
また、不動産投資クラウドファンディングでは物件所在地が公開されているため、築年数や管理状態など投資先に関する情報を事前にしっかりと調べられます。また、個人ではなかなか購入できない高額物件に投資できることも魅力の1つです。
リスクを知ってかしこく投資する
不動産投資に限らず、資産運用をする際はリスクを考慮する必要があります。メリットばかりに注目して投資先を選ぶと、思わぬリスクが潜んでいるかもしれません。
事前にデメリットを把握して対応策を考えておくことで、リスクを軽減できます。不動産投資で検討すべき代表的なリスクについて詳しく解説します。
空室や滞納は収入減に直結する
不動産投資において、大きく収入に影響するリスクが空室です。空室が発生すると、単純に空室分の家賃収入を得ることができません。
そのため、物件の魅力を維持する管理と細やかな入居者フォローをおこない、空室リスクを軽減することが重要です。入居者と良好な関係をつくっておけば、退去の情報を事前に把握できる可能性があり、早期に入居募集をかけることができるでしょう。
また、空室リスクのほかに、家賃の滞納も不動産投資の代表的なリスクです。滞納が発生した場合は、家賃収入が得られないばかりか、督促や強制退去などの手続きをする手間がかかってしまいます。
滞納リスクを軽減するためには、滞納が発生した際に速やかに対応することが重要です。また、別途費用はかかりますが、不動産管理会社に管理業務を委託する方法もあります。
定期メンテナンスや修繕など購入費用以外も必要
不動産物件を所有すると、定期的なメンテナンスや予期せぬ災害時の修繕費用などが発生します。また、居室のリフォームは敷金である程度まかなえますが、エアコンや洗浄機能付き便座などの設備が故障した際には修理や交換費用も必要です。
建物の維持管理を適切におこなわないと、退去や入居希望者の減少にもつながります。空室リスクや資産価値の減少をおさえるためにも、定期的なメンテナンス費用を確保しておきましょう。
家賃や不動産価格がさがってしまう可能性もある
所有している不動産物件の価値や家賃相場がさがってしまうことも考慮しておく必要があります。とくに、立地条件の悪い場所や周辺環境に変化があった場合は、注意が必要です。
交通の利便性や公共施設の有無、日当たりのよさといった立地条件や周辺環境を十分に調査して投資先物件を選ぶことで、物件価値や家賃の下落リスクを軽減できます。
また、空室が多くなると家賃の下落にもつながるため、建物の維持管理や入居者募集など、徹底した空室対策も重要です。
ローン返済のリスクは十分に検討する
手元資金だけではなくローンを組んで不動産投資をおこなう場合は、返済リスクについて検討しておきましょう。物件を保有していると、想定外の修繕が発生したり、空室や滞納により収入が減ったりするリスクもあります。
ローンを組む際は、資金に余裕をもって無理なく返済できる計画を立てましょう。また、返済中に金利が上昇し、返済額が増えるおそれもあるため注意が必要です。
はじめての不動産投資
不動産投資の基礎知識が身に付いたら、いよいよ計画を立ててみましょう。実際に計画を練ることで、不動産投資に対してより具体的なイメージがもてますし、新たな知識も習得できます。
はじめて投資をする方にもわかりやすく、不動産投資の手順をご紹介します。初心者の方はもちろん、ある程度知識をつけている方も改めてご覧ください。
無理のない資金計画を立てる
不動産投資をする際は、無理のない資金計画を立てることが重要です。手元資金とローンのバランス、毎月の家賃収入、空室や滞納による収入の減少、想定外の修繕費用など、全体の収支を可能な限り細かく分析しましょう。
また、事前に不動産投資の目的や目標を明確にしておくと、資金計画を立てやすくなります。老後の資産形成や、より大きな投資のための資金作りなどビジョンがしっかりしていれば、投資先の選定もスムーズにできるはずです。
不動産業者選びは重要なポイント
不動産投資をする際には、物件探しの前にまずは信頼できる不動産業者選びから始めましょう。投資先として良い物件なのかどうかの判断は、一般の人には難しいのでプロの助言が必要不可欠です。
また、優良な物件はネット上に公開されていないこともあるので、個人で物件探しをしてもなかなか見つかりません。さらに、もし自分で良い物件を見つけても、取り扱いをしている不動産業者の信用度が低い場合もあります。
物件探し以上に重要なポイントは、自分の知識や経験にあわせて的確なアドバイスをしてくれる不動産事業者を見つけることです。
信頼してもよい不動産業者かどうかを見極めるポイントは、開示されている情報です。資本金額や従業員数といった規模感と、事業年数や実績などから、ある程度は判断できます。また、口コミや評判についても可能であればチェックをしておきましょう。
まずは物件探しからはじめる
無理のない資金計画を立てたら、投資先の物件を選定します。物件を選ぶ際は、きれいな物件や利回りのよさそうな物件に目がいきがちですが、事前に立てた資金計画にそって選定することが重要です。
投資先を探している過程で、計画よりもさらに条件のよさそうな物件をみつけた場合は、念のため再度資金計画を立て直しましょう。たとえば、購入金額が予定より安い物件をみつけても、修繕費用がかさんで結果的に当初の資金計画よりも出費が増えてしまうこともあるため注意が必要です。
物件購入は慎重かつ大胆に決断する
不動産投資にはリスクがともないます。物件を購入する際は、事前に十分な検討が必要です。しかし、優良物件は多くの投資家が狙っているため、あまり長い時間迷っていると購入の機会を逃してしまいます。
物件を探しはじめる前に資金計画をじっくりと練っておけば、素早く判断ができ、タイミングを逃しません。条件にあう物件がみつかった際は、慎重に検討しつつもポイントをおさえて迅速に決断できるバランス感覚が重要です。
【まとめ】基礎知識を身につけて失敗しない不動産投資をする
不動産投資で効率よく資産形成をするためには、基礎知識や情報にもとづく計画性が重要です。さらに、正しい知識を身に付けていればリスク判断も正確にでき、対応策を事前に検討できます。
そして、不動産投資をおこなう際にもっとも重要なのが目的と目標の設定です。なんのために、どれくらいのリターンを目指して投資するのかを明確にしておくことで、失敗のリスクを減らし、不動産投資を成功へとつなげられます。
計画を立てること自体は、まったくリスクをともないません。ぜひ今日から不動産投資の計画を立てはじめてみてくださいね。