売買契約時に特定の保険へ加入する不動産投資では、「物件を生命保険として活用できる」ともいわれています。将来の安心感へつなげるには魅力的な要素ですが、詳しい仕組みやメリットを理解できていない方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、不動産投資における保険制度について詳しく解説します。保障額のシミュレーションもピックアップしているため、実際の運用もイメージしやすくなるでしょう。生命保険以外に押さえておきたい保険もあわせてご紹介します。
もくじ
不動産投資が生命保険代わりになる理由は?
不動産投資を行う際には、「団体信用生命保険」に加入するケースがほとんどです。ローン契約と紐付けされる仕組みともいえます。返済の負担が軽減できるだけでなく、売却によって収入を得ることも可能です。まずは保険制度の特徴を理解しておきましょう。生命保険に代用可能な理由を、2つの観点から解説します。
ローンに団体信用生命保険が付いているため
不動産投資には多額の資金が必要となるため、金融機関とのローン契約を検討する方もいるでしょう。ローンを組んだとき、団体信用生命保険(団信)が自動的に付帯します。契約者ではなく、融資を行う金融機関が保険料を支払う制度です。
ローンの契約者が死亡などで返済困難な状況に陥った場合、家族の経済的負担を増幅させるかもしれません。残債が多く支払えなくなると、金融機関も損失を生むことになります。このようなリスクを避けるため、あらかじめ加入する保険が団体信用生命保険です。
保険が適用されると、保険会社から金融機関に保険金が支払われます。契約者や家族に支払いを求める必要性がなくなるため、残債が0円になる仕組みです。この特性から、生命保険のひとつとして扱われています。
運用や売却で収入が入るため
団体信用生命保険によってローン返済は免除されますが、その後の生活に経済的負担を及ぼすかもしれません。このような場合でも、不動産を保険として活用できます。土地と建物を売却することで、まとまったお金が手に入るためです。
長期的な運用によって有益な効果も期待できるでしょう。ローンの借入額を返済するまでは、家賃収入で月々の負担を軽減します。費用回収を終えると、家賃収入を不労所得として得ることも可能です。
計画的な運用が重要な要素ではあるものの、長い目で見ると金銭的なメリットも多く期待できます。給与所得以外の収入を得ることで、万が一の事態に備える緊急資金としても役立つでしょう。保険制度だけでなく、不動産そのものが持つメリットです。
不動産投資と生命保険の保障額の違いをシミュレーション
団体信用生命保険の有益性を確かめたい方は、月々の家賃収入とローン返済額を明確にした上で計算してみましょう。実際の差額は各プランの内容によって異なりますが、不動産を運用する際のシミュレーションにも活用が可能です。以下の不動産を想定し、3パターンの運用期間における保障額をご紹介します。
・購入金額:2,000万円
・ローン返済期間:30年
・金利:2%
・月々のローン返済額10万円
・月々の家賃収入:8万円
10年運用した場合
具体的なシミュレーションを行う際には、生命保険の掛け金や保障額といった情報も必要です。月々の掛け金をローンの返済額に近づけると、結果の差が分かりやすくなるでしょう。以下は10年間運用を続けたときに予測される保障額です。
不動産投資 | 生命保険 | |
月々の支払い(掛け金) | 2万円 | 2万円 |
10年後の合計金額 | 240万円 | 240万円 |
10年後の保障額(想定) | 2,500万円 | 1,000万円 |
生命保険の保障額はプランによって確定できますが、不動産は大まかな予測を立てる必要があります。ローン返済を終えないまま売却すると、残債分が差し引かれる点も理解しておきましょう。
15年運用した場合
投資の開始から15年が経過すると、10年の運用に比べて不動産の価値が下降しやすくなります。生命保険との比較表は以下のとおりです。
不動産投資 | 生命保険 | |
月々の支払い(掛け金) | 2万円 | 2万円 |
15年後の合計金額 | 360万円 | 360万円 |
15年後の保障額(想定) | 2,000万円 | 1,000万円 |
ローン返済が15年分残っているため、この時点での利回りで考えると生命保険の方が有益といえるかもしれません。さらに長期の運用を続けたときの保障額を見てみましょう。
30年運用した場合
30年間不動産投資を続けると、設備修理やリフォームといった費用を要する可能性もあります。しかし、ローンの支払いを終えるとこれまでの負担も大幅に軽減できるでしょう。特別な支出がなければ、家賃収入の8万円をそのまま受け取ることができます。
不動産投資 | 生命保険 | |
月々の支払い(掛け金) | 2万円 | 2万円 |
30年後の合計金額 | 720万円 | 720万円 |
30年後の保障額(想定) | 1,500万円 | 1,000万円 |
不動産投資を生命保険代わりに利用するメリット
生命保険にはさまざまな種類がありますが、保障額が高いほど掛け金の負担も増幅するといえるでしょう。団体信用生命保険では、不動産のローン返済額を掛け金に置き換えできるメリットがあります。返済額は徐々に少なくなるため、運用期間が長いほど有益です。
メリットを最大限に活かしたい方は、数十年単位の長期運用を前提に実践しましょう。万が一の事態には団体信用生命保険も活用できますが、費用回収の後に利益を得るゴール設定も重要です。
一般的な生命保険は、月々の支払いを続けることでまとまったお金を獲得できます。一方不動産投資は、現物資産からも利益を得られる仕組みです。月々の支払いを抑えながら、将来に役立つ資産形成を目指しましょう。
不動産投資を生命保険代わりにする際の注意点
魅力的な要素が多い不動産投資ですが、リスクがある特性への理解も必要です。メリットのみに注目すると後悔するかもしれません。リスクヘッジを行うためにも、不動産投資の仕組みや複数のリスクを把握しておきましょう。収益化に関する注意点と、不動産投資ならではの危険性について詳しく解説します。
収入は必ず得られるとは限らない
不動産投資を検討している方が陥りやすいのが、「家賃収入が安定的な収入になる」という考え方です。長期運用の結果を想定すると家賃収入も期待できますが、投資のスタート直後から実現できるものではありません。
家賃収入から得るメリットは、ローン返済の負担軽減です。通常であれば負担に感じやすい月々の返済額を、家賃収入で賄うことによって実質的な支払いをなくすことができます。
また、開始当初想定していた金額で売却できない可能性にも理解が必要です。周辺の環境や建物の劣化具合によって、売却額が下がるケースもあります。想像通りの結果へ導くためには、定期的なシミュレーションとプランニングが重要といえるでしょう。価値の変動を把握できると、売却に適切なタイミングも見極めやすくなります。
不動産投資ならではのリスクがある
投資の開始前に押さえておきたいのは、運用中に発生する可能性がある損失リスクです。以下のような要因を考慮しましょう。
- 長期間空室が続く(家賃収入が減る)
- 入居者の家賃滞納
- 火災や地震による損壊
物件の安さや立地条件など、限定的なメリットにこだわるとリスクが高まる傾向にあります。「駅から近いから」「新築だから」といった理由だけでなく、物件の需要や流動性にも注目する意識が大切です。
リスクを理解し、入念な対策を練ると魅力的な結果も期待できます。入居者を獲得するためには、不動産投資会社との連携も重要といえるでしょう。複数の観点からリスクヘッジを行い、着実に進める作業も結果に影響します。
不動産投資家がリスクに備えて加入すべき保険
団体信用生命保険だけでなく、任意保険の加入も検討するのがおすすめです。建物が崩壊したり賠償責任が発生したり、トラブルが発生したときに投資家の負担を軽減する役割を担います。全ての投資家が加入するものではありませんが、団体信用生命保険と同様に重要な制度である点は理解しておきましょう。3種類の保険について解説します。
火災保険
投資用の不動産や住居用物件を購入した際、加入するケースの多い保険が「火災保険」です。名前に含まれる火災だけでなく、風災・水災・盗難といった損害も補償が適用されます。台風や落雷が多い日本において、必要性の高い保険といえるでしょう。
空調設備やガレージの物置など、補償対象の障害はプランによって異なります。対象が変わると保険料も変動するため、物件の状態や周辺環境を考慮した上で選定するのがおすすめです。補償適用外の内容も把握しておきましょう。
地震保険
地震が原因で発生した火災や水災に対応するのが「地震保険」です。原則的に、火災保険と併用するかたちで加入します。火災保険の補償対象に含まれる損害のうち、地震による損壊を補償する制度となっているためです。
火災保険のみ加入するケースも見られますが、安心して運用を続けるためには地震保険も活用した方が良いでしょう。補償の限度額も確認し、万が一の事態でも負担を軽減できるよう選定できると安心です。
施設賠償責任保険
戸建て住宅や一棟に投資する場合は、「施設賠償責任保険」の加入も視野に入れましょう。入居者や近隣住民とのトラブルを解決する糸口にもなります。以下のようなケースにおいて、補償が適用される保険です。
- 設備不良が原因で、入居者がけがを負った
- 外壁が倒壊し、周辺の建物に損害を与えた
- 入居者の所有物を誤って破損した
保険会社が介入することにより、適切なかたちで対応できるメリットがあります。法律の知識を要する場合もあるため、中立的な意見を求める目的でも有益な方法といえるでしょう。
不動産投資家が入居者に加入してもらうべき保険
投資家が費用を負担する保険だけでなく、入居者に加入を求められるプランもあります。入居者の生活を守る目的も持っているため、必要性の高い保険について理解を深めておきましょう。複数の入居者に対し、快適な時間を提供するために重要な要素です。ここからは、入居者自身の加入で安心感が高まる保険を4種類ご紹介します。
火災保険・家財保険
投資家が加入する火災保険の補償対象は、あくまでも建物に関わる設備です。入居者が個人で利用している家具や美術品などは、入居者が加入する保険で補償を受ける必要があります。家財が壊れると生活が困難になるリスクもあるため、可能な限り加入してもらった方が良いでしょう。
保険料の支払いや、損害を受ける可能性の低さを理由に断られるかもしれません。ただし、理解しておきたいのは「他の入居者が原因で損害につながるリスクがある」という点です。トラブルに発展する結果を避けるためにも、説明を行って加入を促しましょう。
修理費用保険
入居者が自費で修理を実行した際、出費を賄うために適用されるのが「修理費用保険」です。例えば、以下のようなケースが対象となります。
- ドアの鍵が故障したため修理を依頼した
- 外部からの刺激で窓が破損し、修理を行った
- 破裂した水道管を修理した
緊急性が高い修理や、比較的安価で済む場合は入居者の独断で完了させることもあるでしょう。保険が適用されると、すでに支払った費用が返金されます。ただし、入居者自身の不注意で発生した費用は対象外です。
借家人賠償責任保険
長期間生活を続けると、不本意に設備を壊したり傷つけたりする可能性もあります。通常であれば入居者本人に原状回復費用を請求しますが、「借家人賠償責任保険」に加入している場合は補償の適用が可能です。以下のようなケースに該当します。
- 火の不始末で壁面の一部が焦げ付いた
- 不注意による水漏れでフローリングを張り替える必要がある
- 家具を移動する際に壁を傷つけた
原状回復費用には高額を要することも多いため、入居者にとってメリットが大きい保険ともいえるでしょう。
個人賠償責任保険
入居者に対して賠償責任が問われたとき、保険の適用によって補償されるのが「個人賠償責任保険」です。賃貸物件での生活に限ったものではなく、クレジットカードの契約時に付帯される場合もあります。
入居を開始した時点で利用していないようであれば、他の保険と同時に加入をすすめたほうが良いでしょう。高額な賠償請求が発生するだけでなく、入居者同士のトラブルを招くリスクもあるためです。生活全般の安心感を高めるためにも有益といえます。
不動産投資や保険でわからないことは相談してみよう!
リスクを明確にした上で実践に移るため、精神的な負担を軽減しながら投資を始められるでしょう。初心者が挑戦しやすい物件価格・運用コストも強みのひとつです。魅力的な物件を見つけ、リスクを回避しながら充実した将来を実現しましょう。
まとめ
不動産投資が「生命保険に代用できる」といわれるのは、ローン契約時に団体信用生命保険へ加入するためです。運用期間が長期にわたるほどメリットを実感しやすいため、数十年後の未来を見据えながらシミュレーションしてみましょう。
より魅力的な結果へ導くためには、リスクへの理解も大切です。専門家のアドバイスを受け、リスクヘッジで損失を防ぎましょう。