2025年問題とは、いわゆる団塊の世代(1947〜1949年生まれ)が75歳を迎えることで起こるさまざまな問題です。退職による労働人口の減少、医療や介護などの社会保障費用の上昇が予測されています。実は、不動産市場においても、2025年問題の影響があるといわれているのをご存じでしょうか。
そこで本記事では、大暴落が起こるともいわれる不動産への2025年問題の影響を、さまざまな角度から徹底分析して紹介します。
もくじ
不動産以外の社会構造に変化をもたらす2025年問題
社会保障費の増加と労働人口の減少は、高齢化が進む日本の深刻な問題です。とくに、団塊の世代が75歳にさしかかる2025年には、社会構造を変えるともいわれています。
まずは、2025年問題が騒がれている理由と、問題の内容を詳しくみていきましょう。
2025年問題とは団塊の世代が後期高齢者に突入すること
2025年問題とは、団塊世代と呼ばれる1947〜1949年生まれの人たちが一斉に後期高齢者となることで発生する問題です。75歳以上の総人口に占める割合は、推計では17.5%にのぼるといわれています。5人に1人とする推計もあり、日本の社会構造を変える深刻な問題です。
後期高齢者が増加することで起こる問題は、実に多岐にわたります。まず、定年延長などで対応してきた労働人口が、著しく低下するでしょう。一方で、社会保障費は増加するため、社会全体にかかる負担が大きくなります。
社会保障費の増大
2025年問題で懸念される問題の一つが、社会保障費の増加です。社会保障費は、国民の福祉を保障するために支出する費用で、医療・介護・年金など多岐にわたる項目が含まれます。2025年度予算案では、社会保障費が過去最大の38兆円に達しました。厚生労働省は、高齢者のピークは2040年ごろまで続くと予測しており、計画ベースで社会保障費の増加を見通しています。
さらに2025年は、15〜64歳までの現役世代の人口が減少に転じる年であることも大きな問題です。支出が増える一方で収入の減少が見込まれるため、根本的な社会構造の再構築が求められます。
大量退職による人手不足
2025年問題では、労働力の供給に大きな変化が起こることも懸念されています。少子化が進んでおり、団塊の世代が抜けた穴を埋める労働力の確保にめどが立っていないためです。
団塊の世代は長年にわたり、日本経済の中核を担ってきました。しかし、定年後の嘱託雇用や再雇用期間も終了し、2025年を境に多くの人が完全に労働市場から引退すると見込まれています。とくに中小企業や地方の事業所において、2025年問題の影響はより顕著にあらわれるといわれています。人材の不足は生産性やサービスの低下につながり、地域経済にも深刻な影響を及ぼしかねません。
2025年問題が不動産市場に与える影響
2025年問題は、不動産市場にもさまざまな影響を与えると予測されています。とくに問題視されているのが、空き家の増加や相続物件売却による不動産価格への影響です。
2025年問題が不動産市場に与える影響について、3つの観点でみていきましょう。
空き家が増加する
後期高齢者の増加とともに、地方や郊外地域を中心に空き家が増えると予測されています。総務省統計局が発表した報道資料「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年の空き家数はこれまでで最高の900万2千戸を記録しました。
所有者の高齢化が進むことで、福祉施設への転居や死亡が増加して空き家が生まれます。地域によっては思うように売却もできず、空き家のまま放置されるのも大きな懸念事項です。
相続物件の売却が増加する
相続後の物件売却が加速することも、不動産における2025年問題の一つです。不動産物件を相続すると、相続税や固定資産税といった負担が生じます。不動産投資物件として運用するか自身で居住しない限り無駄なコストになってしまうため、相続時には売却をせざるを得ません。
とくに、地方を中心とした需要の少ない地域だと、不動産投資物件としての運用は困難です。また、管理にかかる手間からも、相続をしても手放す人は増えると予想されています。
需要が減少する
後期高齢者になって引退をすると、転勤や住み替えといった需要はあまり発生しません。また、新たな資産形成も検討しなくなるため、投資先という意味での積極的な物件購入も減少します。
需要の減少は、不動産市場全体に影響を与えます。最初は地方など人口減少地域だけの問題かもしれませんが、都市部に影響が広がっていくことにも注意が必要です。
急激な大暴落の可能性は低い
2025年問題の不動産市場への影響として、価格の急激な下落が懸念されています。不動産の売却の進行や、需要が減少すると予測されているためです。しかし、不動産価格の下落は、限定的ともいわれています。
2025年問題による、不動産価格への影響についてみていきましょう。
2025年に突然不動産価格が下落するとは考えにくい
2025年問題は少なからず不動産市場に影響を与えますが、いきなり価格が下落する可能性は低いと考えられています。まず、後期高齢者になったからといって、全員がすぐに不動産を売却するわけではありません。当面は現在の住宅に居住する人も多いため、市場に対して極端な供給過多にはならない見込みです。
また、インフレに強い投資先の一つとして、現在も根強い不動産ニーズがあります。ただし、需給バランスの変化により長い年月をかけて下落する可能性は否定できないため、出口戦略を定めて投資先を選定することが重要です。
物件や地域によって価格格差が広がる可能性はある
相続物件の売却や空き家が増え続けると、不動産価格の格差が広がるおそれがあります。需要の高い都市部では適正な市場が形成されますが、人口が少ない地方や郊外などでは、わずかな供給過剰でも需給バランスが大きく崩れかねません。
現在でも都市圏と地方では価格に格差があり、2025年問題によってさらに顕著となる可能性が高い点に注意が必要です。不動産市場全体の価格動向だけでなく、投資先エリアの状況も常に把握しておきましょう。
2025年以降に注意すべきポイント
2025年問題と直接の関係はありませんが、金利の動向と税制面の改正に関して注意しておくことも重要です。現在の経済状況を考えると、2025年以降に大きく変化する可能性があります。
金利と税制面での注意点を詳しくみていきましょう。
金利の上昇に備える
2024年3月の日銀政策決定会合で、長い年月にわたって続いてきたマイナス金利政策が解除されました。景気の動向次第ですが、2025年以降も金利が上昇する可能性は決して低くありません。不動産投資において、金利の上昇は2つの側面で影響を与えます。
1つは、直接的に借入コストの上昇によって利回りが悪化することです。金利が上昇すると、ローン返済の負担も増加します。もう1つは、不動産需要そのものの減少です。資金調達が難しくなることで市場が冷え込む可能性も否定できません。
ただし、不動産はインフレに強い資産といわれています。過度に警戒するのではなく、適切な物件を見極めることが大切です。
控除特例の適用期限を確認しておく
不動産に関する税制の控除特例には適用期限が設定されているものが多く、2025年以降に期限が到来するものには注意が必要です。たとえば、売却時の特別控除や取得時の不動産取得税の軽減措置などは、税制の見直しや改正によって控除内容や適用条件が変更される場合もあります。
控除や特例の適用期限後に新たな期限が設定される場合もありますが、内容が同じとは限りません。税制の見直しや改正の情報をできるだけ早くつかんで、有利な条件で投資物件を購入しましょう。
【まとめ】2025年に慌てて売却せず慎重に判断する
2025年問題の影響により、不動産市場にも大きな変化が起こるのではないかと予測されています。しかし、価格が急激に大暴落する可能性は低いと考えられているため、過度に心配する必要はありません。
不動産の売却を検討する際には、慌てずにタイミングを慎重に判断することが重要です。経済と不動産市場の動向を注視し、出口戦略をしっかりと立てておきましょう。
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