不動産取引をする際に耳にする「抵当権」。大まかに理解していても、具体的な内容や細かい手続きまで知らない方は少なくありません。抵当権は不動産登記簿のなかでも、物件を所有する権利にかかわる重要な項目の1つです。意味と必要な手続きをきちんと理解しておきましょう。
そこで今回は、抵当権の基礎知識から、相続や抹消といった手続きまで詳しく解説していきます。
もくじ
不動産投資で重要な抵当権の基礎知識
不動産投資において、抵当権はきわめて重要なものです。なぜ設定されるかも含めて、抵当権の基本を詳しく説明します。
そもそも抵当権とは
抵当権とは、物件取得のためにローンを利用する際、購入する不動産物件に対して金融機関が担保として設定する権利です。
万が一ローンを返済できなかった場合に、金融機関は抵当権を設定した物件によって融資金額の補てんをおこないます。抵当権が設定された物件が競売などで売却された場合、抵当権の権利者への弁済がほかの債務者より優先される仕組みです。
なお、抵当権の設定が貸付条件に含まれるローンは有担保ローンとなります。無担保ローンよりも大きな金額を借りやすく、利率が優遇されていることもあります。
抵当権が設定される場面と流れ
抵当権が設定されるのは、貸付条件に抵当権が含まれているローンを利用して物件を取得した場合です。抵当権の登記自体は、債務者自身でおこなう必要があります。
抵当権の登記は誰でもできますが、記載内容や必要書類の精査など専門的な知識が必要なため、司法書士に依頼するのが一般的です。なお、司法書士は金融機関や不動産業者が指定している場合がほとんどで、自分で探す必要はありません。また、抵当権の設定に必要な書類は、基本的に金融機関側から指示があります。
抵当権を登記すると、「登録免許税」という税金が必要です。税額は借入金額の0.04%と定められています。そのほか司法書士への手数料もかかってくるので、抵当権を設定する際は諸費用を事前に見積もって用意しておきましょう。
抵当権は必要に応じて抹消手続きが必要
抵当権を設定する理由がなくなった場合は、抹消するための手続きが必要です。抵当権を抹消せずにいると、デメリットが生じることもあるので注意しましょう。
抵当権抹消の手続き方法や、忘れていた際のリスクについて解説します。
抹消手続きとは
借入金を完済して金融機関側に抵当権を設定する理由がなくなった場合は、抵当権の抹消手続きをおこないましょう。登記簿を管理する法務局は、債務状況を確認してくれるわけではないので、自動的に抵当権が消えることはありません。抵当権を設定する際と同様に、登記内容の変更は自身でおこなう必要があります。
また、抵当権抹消が必要なケースは、ローン完済時だけではありません。ローンの借り換えや不動産売却時などにも抵当権の抹消手続きが必要です。
抹消手続きを忘れていた際のリスク
抵当権の抹消手続きをおこなわないリスクは、不動産の担保価値が下がることです。所有する物件を担保に新たな融資を受ける際、抵当権が設定されているままだと融資額が下がるばかりか、最悪の場合は融資を受けられません。
また、購入者が新たな融資を受けられないなど、物件の売却時にも抵当権が設定された物件は不利になります。
さらに、抵当権抹消のために必要となる、ローン完済時などに金融機関から受け取る書類のなかには、有効期限が設定されているものもあるので注意してください。有効期限内に手続きをおこなわないと、書類再発行の手間がかかるほか、手数料が発生することもあります。
抵当権の抹消を忘れたまま、抵当権を設定していた金融機関の統廃合がおこなわれたり、所有者が死亡したりすれば、手続きはより複雑化するでしょう。場合によっては、裁判が必要になることもあるので、抵当権の設定理由がなくなったタイミングで適切に抹消手続きをとることが重要です。
抵当権抹消の手続き方法
抵当権の抹消手続きは、法務省でおこないます。抵当権の設定と同様に自分でも手続きはできますが、司法書士に依頼するのが一般的です。抵当権の抹消手続きには、住宅ローンを完済した際に金融機関から送られてくる書類を使用します。
登記事項証明書を法務局で取得して、情報を確認しながら必要書類に記入して法務局に提出します。なお、抵当権を抹消する際にも、不動産1件につき1,000円の登録免許税が必要です。
相続した不動産物件に抵当権が設定されていた場合
抵当権が影響してくるのは、所有者本人による売買時だけではありません。不動産物件を相続する際にも、抵当権の確認は重要です。
抵当権のついた不動産物件を相続する際に、確認すべきポイントを紹介します。
相続時の抵当権の扱い
抵当権は不動産物件そのものに設定されるので、相続によって所有者が変わっても消滅しません。抵当権の理由となる債務が返済されない場合、競売などによって抵当権を行使されるおそれもあるので注意しましょう。
ただし、借入金が完済されており、すでに抵当権の理由がなくなっている場合は、抵当権の抹消手続きが可能です。弁護士や司法書士に相談して、できるだけ早く抵当権を抹消しましょう。また、借入時に団体信用生命保険などに加入している場合は、本人の死亡によって支払われる保険金でローンが完済されることもあります。この場合も、抵当権の抹消手続きが必要です。
相続人が知るべき抵当権の情報
抵当権の付いている物件を相続する際は、まず抵当権の内容を調べましょう。抵当権が設定されていれば、借金があるということなので、内容によっては相続放棄の検討も必要です。
抵当権は不動産登記簿の、不動産登記簿の権利部(乙区)に記載されています。ただし、記載されている債権額は、抵当権を設定した際の借入金額であり、現在の借入残高とは異なる点に注意してください。
ただし、抵当権が設定されていても、単に抹消手続きを忘れている可能性があります。抵当権を設定している金融機関に、債務の状況を確認しましょう。
【まとめ】不動産投資をするなら抵当権について理解しておく
不動産物件の売買をおこなう際に、必ず確認しておきたい抵当権。所有者本人の借入に対する抵当権だけではなく、中古物件の購入や相続をする場合も重要です。
また、抵当権が設定されている理由が消滅した場合は、できるだけ速やかに抹消手続きをおこないましょう。抵当権の抹消手続きがされていないと、新たな借入時や売却時に所有者が困るほか、家族などの相続人に迷惑がかかることもあります。
不動産取引で重要な抵当権を正しく理解して、スムーズな投資をしてくださいね。