不動産投資をする際は、物件の取得費用以外に諸費用も必要となります。諸費用は物件価格と比較すると少額ですが、トータルではそれなりの金額になるので注意が必要です。また、諸費用は税金から保険まで多岐にわたります。事前に内訳を把握しておかないと、思わぬ支出に困ってしまうかもしれません。
そこで、不動産投資をする際に必要な諸費用を詳しく解説します。物件価格に諸費用も含めて、投資にかかる初期費用をできるだけ正確に把握しておきましょう。
もくじ
不動産投資の諸費用は大きく2種類
不動産投資で発生する諸費用は、発生タイミングによって2種類に分けられます。諸費用が発生するのは、物件購入時と物件運用時です。
まずは、それぞれどのような費用が必要になるのかを確認していきましょう。
不動産購入時のみ必要な初期費用
不動産購入時のみに必要な初期費用のなかで金額が大きいのは、売買手続きを依頼した不動産会社に支払う「仲介手数料」です。また、ローンを組んで購入した場合は、金融機関に支払う「ローン事務手数料」および保証会社に支払う「住宅ローン保証料」もかかってきます。火災保険については、物件購入時の支払いとともに、運用時にも継続した支払いが必要です。
さらに、税金についても確認しておきましょう。不動産登記時に必要な「登録免許税」、物件所在地の都道府県が課税する「不動産取得税」、さらに売買契約書に貼付する「印紙代」も税金です。
物件の運用に欠かせない費用
不動産購入時だけではなく、不動産運用中にも諸費用は発生します。まず税金面では「固定資産税」と「都市計画税」です。
「固定資産税」は、その年の1月1日時点で不動産を所有している人に課せられる税金です。その不動産が所在する市町村が課税します。「都市計画税」は、市街化区域に不動産を所有している人に課せられる税金です。
ほかにも、状況に応じて入居者募集の広告費や退去後の修繕費用、管理会社への委託費用などがかかってきます。
不動産投資を始める際に必要な諸費用
不動産投資の初期費用は正確に見積もっておかないと、資金不足で物件を取得できない事態にもなりかねません。そこで、不動産投資を始める際に必要な諸費用を、項目別に詳しくご紹介します。
費用の大まかな目安や計算方法も記載するので、投資を検討している物件の初期費用を計算してみてください。
不動産取得税
不動産取得税とは、名前のとおり、不動産を取得した際に納める税金です。取得した不動産の固定資産税評価額の4%標準税率が課税されます。ただし、令和6年3月31日までに取得した住宅や土地は、軽減税率3%が適用されます。
登録免許税
登録免許税とは、法務局での登記手続きの際に納める税金です。土地と建物、取得方法によって税率が異なり、固定資産評価額に税率をかけて税額を算出します。
たとえば、固定資産評価額が土地4,000万円、中古建物1,000万円の物件を売買で取得した場合で計算してみましょう。土地の税額は80万円(4,000万円×2%)、建物20万円(1,000万円×2%)の合計100万円が登録免許税として必要です。
なお、軽減措置が適用される場合もあるので、詳しい税率も含めて国税庁のWebサイトなどで確認してください。
また、登録免許税の支払いは、ローンを組んで不動産を購入した場合の、抵当権の設定登記にも必要です。抵当権の設定登記時の税率は0.4%なので、ローン借入額が3,500万円の場合、14万円(3,500万円×0.4%)の登録免許税がかかります。
印紙税
印紙税とは、課税文書に対してかかる国税です。契約書を作成した者に課税されます。不動産の売買契約書も課税文書に含まれるため、売買契約書には収入印紙が必要です。
印紙税は、契約書の記載金額によって異なります。また、不動産売買契約書については、令和6年3月31日まで軽減税率が適用されるので、詳しくは国税庁のWebサイトを確認してください。軽減税率が適用された印紙税額は、3,000万円の場合は2万円のところ1万円、1億5,000万円の場合は10万円のところ6万円です。
仲介手数料
仲介手数料とは、物件を仲介した不動産業者に支払う手数料です。契約条件の交渉、契約書類の準備、物件引き渡しなどの事務作業に対する手数料も仲介手数料に含まれています。
仲介手数料の上限額は宅地建物取引法により定められており、不動産業者が自由に決められるわけではありません。上限額は、売買代金が200万円以下の場合は5%以内、200万円から400万円以下の場合は4%+2万円以内、400万円を超える場合は3%+6万円以内です。
たとえば、売買代金が450万円の場合、仲介手数料の上限額は450万円×3%+6万円=19.5万円(税抜)です。
保険料
不動産取得時に必要な保険料は、物件そのものにかける火災保険と、ローンを組んだ場合に発生する団体信用生命保険です。火災保険は取得時だけではなく、物件運用中も万が一に備えて必ずかけておきましょう。
団体信用生命保険は、不動産投資ローンを利用する際の借り入れ条件に含まれることもあります。団体信用生命保険は、ローンの名義人が死亡した場合に借入残高を保険金で支払うための仕組みです。また、団体信用生命保険料とは別に、ローンを利用する際は保証料と事務手数料もかかります。
その他
不動産登記手続きに司法書士を利用した場合は、司法書士報酬も発生します。登記は自分でもできますが、専門的で細かな書類の作成は、司法書士に任せたほうが安心です。
そのほか、物件の内覧や不動産業者に出向くための交通費、郵送でやり取りする場合の郵送費など細かい費用も必要となります。
諸費用に必要な資金の準備と経費処理
不動産取得時の諸費用は、物件価格によっては高額になることもあります。そのため、計画的に資金を準備しておきましょう。手元資金が十分になければ、諸費用をローンに組み込める場合もあるので、事前に資金計画を立てておくことが大切です。
また、取得時にかかった費用の一部は、経費として損金計上できます。正しく計上して節税につなげましょう。諸費用のローンと経費計上について解説します。
諸費用をローンに含めることもできる
物件だけではなく、諸費用もローンに含めることが可能です。物件価格と諸費用の融資を受ける借入をオーバーローンと呼びます。オーバーローンを組めば、諸費用分の自己資金が準備できない場合でも投資物件を購入できます。
なお、物件価格と同額の融資を受ける借入をフルローンと呼びます。ローンを組むと当然金利がかかってくるので、用意できる自己資金と最終的な支払額のバランスを踏まえて検討しましょう。
諸費用のすべてを経費計上はできない
諸費用を経費として計上すれば、収益から差し引いて課税所得額を減らせます。しかし、不動産収入を得るために直接必要な費用でない場合、経費には計上できません。
経費に計上できる費用は、登録免許税、印紙税、不動産取得税、ローン保証料、ローン事務手数料です。物件を購入した年の確定申告で、正しく申告しましょう。
一方、経費計上できない費用は、不動産仲介手数料や団体信用生命保険特約料です。不動産を購入した際の仲介手数料は、不動産の取得原価に含まれます。また、団体信用生命保険特約料への加入はあくまでも任意なので、不動産収入を得るために直接必要な費用とはみなされません。
不動産物件の運用時にも細かな費用がかかる
不動産物件の運用時にかかる費用についても簡単にご紹介します。運用時にかかる費用は、利回りに直結する重要な項目です。
資金計画を立てる際は、初期費用だけではなく、運用時の費用もできるだけ正確に見積もっておきましょう。
収入がなくても税金は発生
不動産物件を保有している限り、家賃収入がなくても固定資産税と都市計画税が発生します。新築物件や空室のある物件の場合、取得初年度は想定収入を下回ることもあるので注意しましょう。
また、不動産経営で家賃収入を得ると、所得税と住民税を支払う義務が生じます。確定申告が不要な会社員でも、給与以外の合計所得が20万円以上あれば確定申告が必要です。
管理費などの固定費に加えて備えも必要
自分で物件を管理しない場合、固定費としてかかる大きな費用が「管理費」です。日常的な清掃や軽微な修繕、入居者募集といった細かな運営を自分だけでおこなうことは現実的ではありません。
さらに、災害時の「修繕費」など、想定外の出費も考慮して資金を準備しておきましょう。物件の運用時に必要となるおもな費用は以下のとおりです。
固定費
- 修繕積立費
- メンテナンス費用
- ローン返済費
- 損害保険費
- 管理委託費
変動費
- 修繕費
- 原状回復費(物件オーナー負担分)
- 広告費
【まとめ】不動産投資計画を立てる際は諸費用まで含めて計算
不動産投資を成功させるためには、物件自体の価格以外に必要な諸費用を、資金計画に盛り込んでおくことが大切です。とくに、初期費用も含めてローンを組む場合は、事前に費用を見積もっておきましょう。
一方、不動産取得にかかる諸費用は多岐にわたるため、初めて投資する場合、すべてを把握することは容易ではありません。信用のできる不動産業者をみつけて、アドバイスをもらいながら進めるとスムーズに投資計画を立てられます。
物件費用が高額なので諸費用の影響は軽視しがちですが、すべてを合計すると大きな金額になるので細かく確認してくださいね。