2025年4月13日から10月13日までの184日間、大阪の夢洲(ゆめしま)で大阪・関西万国博覧会が開催される予定です。また、万博後の跡地はIR施設に利用する可能性が高いことから、大阪周辺地域の地価の上昇に期待を寄せる人も少なくありません。
そこで、大阪万博の開催で地価があがりそうな注目地域をピックアップしてご紹介します。不動産投資に絶対はありませんが、ぜひ投資の判断材料の一つとして参考にしてください。
もくじ
大阪万博がもたらす地域全体の経済効果
大阪万博の開催目的の一つとして掲げられているのは「地域経済の活性化や中小企業の活性化」です。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は、万博の開催で約2兆円の経済波及効果を見込んでいます。
まずは、来場者や会場建設による直接的な経済効果をみていきましょう。
会場建設による関連企業の活況
大阪万博に限らず、大規模イベントが開催・開催予定されると会場設備や関連設備などの建設需要が生まれます。建設需要による経済効果は、直接請け負う企業だけではありません。重機や資材、輸送など幅広い分野で需要の拡大が見込まれます。また、地下鉄の延伸計画などもあり、建設需要は会場内にとどまりません。
さらに経済効果として見逃せないのが、雇用の発生です。労働者が増えれば、宿泊や居住施設、周辺の商店なども活性化します。
来場者による直接的な経済効果
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が、2023年5月に発表した「来場者の輸送具体方針(アクションプラン)第2版」によると、大阪万博への来場者数見込みは期間合計で約2,820万人です。現在販売されている一日入場券(6,000円 超早期割引)で換算すると、入場券収入だけで1,700億円あまりにのぼります。また、万博会場への主なアクセス方法である鉄道やバス、新設される海上交通といった公共交通機関の利用料も、来場者による直接的な経済効果の一つといえるでしょう。
さらに、多くの来場者が通る、想定ルート上の宿泊施設や飲食店などの需要も高まります。関西圏の周遊といった間接的な効果を除いても、万博開催によってこれだけの経済効果を見込めるのです。
大阪万博によって地域の地価は上昇する
大阪万博の開催によって、周辺地域の地価の上昇が期待されています。都市開発やインフラ整備が進むと、一般的に地価が上昇するためです。
跡地利用による後押しも見込まれる、大阪万博がもたらす地価の上昇について詳しくみていきましょう。
跡地利用も視野に入れた需要増
万博の跡地利用計画まで見込んで、周辺地域の土地需要が高まっています。万博の跡地利用は、開催決定前の2017年の時点で「夢洲まちづくり構想」として計画が立てられていました。カジノやホテルを含む、日本初の統合型リゾート施設(IR)が建設される予定となっています。計画では、IR事業の開業は万博の閉幕から4年後の2029年です。
跡地利用計画がすでにあるため、一層の都市開発やインフラ整備が進むことが期待されています。また、雇用による人口の増加も、IR施設建設によって得られる効果の一つです。交通インフラや住居、商業施設などの建設が続くと、土地需要の増加から地価の上昇につながります。
宿泊施設の増加
万博や跡地利用で多くの旅行者が訪れることが見込まれており、宿泊施設の増加も地価の上昇要因となっています。インバウンドや遠方からの来場者が増えるので、十分な宿泊施設の供給が欠かせません。大阪万博会場へのアクセスも容易な梅田エリアや難波エリアを中心に、すでに高級ホテルの進出が相次いでいます。
また、土地需要の増加は、宿泊施設の用地確保だけではありません。旅行者を見込んだ飲食店などの出店も進むため、周辺地域の地価が上昇します。
地価の上昇が見込める注目地域
大阪万博を機に、地価の上昇が見込まれる地域をみていきましょう。特に注目されている4地域の地価の変動率とともに、それぞれの特徴をご紹介します。
地価の上昇が見込める注目地域の年別地価変動率(単位:%)
2017 |
2018 |
2019 |
2020 |
2021 |
2022 |
2023 |
||
西区 |
住宅地 |
‐ |
10.5 |
9.5 |
20.3 |
0.0 |
6.0 |
5.5 |
商業地 |
11.4 |
11.3 |
10.6 |
20.3 |
-4.5 |
-1.0 |
4.7 |
|
浪速区 |
住宅地 |
7.5 |
7.6 |
8.2 |
8.4 |
-0.8 |
2.0 |
3.2 |
商業地 |
12.4 |
12.5 |
16.7 |
17.7 |
-6.8 |
-1.4 |
3.4 |
|
中央区 |
住宅地 |
3.1 |
3.6 |
5.8 |
6.4 |
0.9 |
3.5 |
4.0 |
商業地 |
14.4 |
13.0 |
15.1 |
18.2 |
-8.1 |
-3.2 |
3.0 |
|
此花区 |
住宅地 |
-0.1 |
-0.1 |
0.1 |
1.8 |
-0.8 |
0.2 |
1.0 |
商業地 |
0.5 |
0.3 |
0.9 |
4.8 |
-1.2 |
0.7 |
3.2 |
(注1)大阪万博決定は2018年11月
(注2)2021年は新型コロナウイルスの影響により全国的に地価が下落
おしゃれなエリアが台頭してきた西区
西区は、南北には四つ橋筋・なにわ筋・新なにわ筋が通り、東西には中央大通や長堀通などの東西南北に通ずる幹線道路網があります。地下鉄の四つ橋線・千日前線・中央線・長堀鶴見緑地線が、区内を縦横に通じており、大阪の中心地であるキタ(梅田エリア)やミナミ(なんばエリア)へのアクセスが抜群です。プロ野球球団オリックス・バファローズの本拠地である、京セラドーム大阪も西区内にあります。
タワーマンションや戸建て住宅も建ち並び、生活に不便を感じさせません。また、新町や堀江にはおしゃれな衣料品店や飲食店などが相次いで新規出店しています。住宅地も商業地も地価変動率は上昇傾向にあり、今後も堅調な上昇が見込まれるエリアです。
訪日外国人にも人気の浪速区中央区
浪速区と中央区は「ミナミ」と呼ばれ、訪日外国人に人気のエリアです。浪速区には繁華街「新世界」のシンボルとして有名な通天閣があり、中央区にはグリコの看板で有名な道頓堀や日々若者であふれかえるアメリカ村などがあります。そして、ミナミからキタ(梅田)を結ぶ御堂筋の周辺には、区民や観光客のニーズに対応すべく商業施設や宿泊施設などが建ち並びます。
商業地の地価変動率は、万博開催決定前から新型コロナウイルスが流行する直前まで、毎年堅調な増加を続けていました。商業地のイメージが強い両区ですが、住宅地としても整備がされており、特に中央区は新型コロナウイルスの影響を受けず毎年地価変動率が上昇しています。
大阪万博を契機に人気の高まるベイエリア此花区
此花区は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で有名なベイエリアです。2001年のグランドオープンの前後には、周辺に大規模な宿泊施設や商業施設が整備されました。今回、大阪万博が開催される舞洲も此花区内に位置します。
大阪市の中部西端に位置していますが、大阪市と神戸市を結ぶ国道43号線や阪神高速道路が通っており、電車はもちろん車両でのアクセスも便利な好立地です。
地価上昇率は、住宅地も商業地も大きなマイナス変動がなく、安定した水準で推移しています。万博の開催に合わせて交通網が改めて整備される予定となっており、今後の利便性を考慮すると商業地における地価の上昇が見込まれるエリアです。
地価の上昇を見極めるポイント
地価の上昇にはさまざまな要因が絡み合うため、予測をするのは容易ではありません。人の流れや周辺の建設予定などを念入りに調査し、事実に基づいて結論づけることが大切です。
そこで、地価の上昇を見極めるポイントをいくつかご紹介します。
人の流れを予測する
地価に大きな影響を与えるのは、周辺地域の人の流れです。人がどこから流入して、どこに向かうのかを予測して需要の高まる地域を見極めましょう。
人の流れを予測するには、人口統計データや都市計画などが参考となります。また、マンションや宅地といった住居の開発予定の把握も、人流の予測には不可欠です。
周辺施設の建設予定を確認する
大型商業施設やホテルといった広い土地を必要とする建設予定は、地価の上昇要因の一つです。また、大型施設による集客を狙って、飲食店や商店などの出店も見込まれるので、さらに地価が上昇する可能性があります。
周辺施設の建設予定を調べるのに有用なツールは、自治体の公式情報や都市計画マップです。市区町村の自治体は、建設予定地や開発計画に関する情報をインターネット上で提供していることもあります。また、地元の新聞などのメディアも建設予定を調査する際に役立つツールです。
希望的観測ではなく事実に基づいて判断する
地価の上昇を予測する際は、希望的観測ではなく、具体的な数字や公的機関の計画など事実に基づいて判断することが大切です。「人口が増えそう」と感覚で捉えることは避け、自治体発表の数字を根拠に予測しましょう。例えば、本記事で紹介した大阪府中央区は、2017年に9万8千人ほどだった人口が、2022年には11万3千人あまりに増加しています。
地価の変動を正確に予測するためには、客観的な事実に基づいた分析が必要です。ただし、あくまでも未来の予測なので、絶対に当たるとは限りません。どれだけ緻密に評価しても、予測とは違う方向に変動する可能性も常に考えておきましょう。
【まとめ】大阪万博で地価があがりそうな地域はすでに動き始めている
大阪万博は、低迷する関西経済を活性化させる起爆剤として、大阪府と大阪市が日本政府に協力を求めて誘致活動を始めました。2018年に開催が決定してからは、新型コロナウイルスの世界的な流行による影響があったものの、地価の上昇が予測される地域は安定した変動率で動き始めています。
また、IR施設の建設という跡地利用がすでに計画されている点も、大阪万博周辺地域の地価が上昇している一因です。上昇トレンドが絶対に継続するとは限りませんが、今後の動向にぜひ注目してみてくださいね。