住宅ローンを利用してマイホームの購入を検討している方やすでに購入した方の多くは、金利の動向が気になるのではないでしょうか。しかし、住宅ローン金利がどうやって決定されているのか、基本的な仕組みがわからないと予測することは困難です。
そこで今回は、住宅ローン金利と密接に関わる長期金利について詳しく解説します。また、長期金利の今後の見通しから住宅ローン金利の動向を予測する要素も紹介するので、住宅ローン金利の今後の動向が気になる方はぜひ参考にしてください。
もくじ
長期金利と住宅ローンの関係性
長期金利が直接的に影響を与える住宅ローンは固定金利のみですが、変動金利の場合も金利の動向は重要です。一方で、金利全体の動向は中央銀行である日銀(日本銀行)の政策や経済情勢によっても変わってくるので、長期金利のみから単純に予測はできません。
そこで、長期金利の足元の状況と、住宅ローンとの関連性を詳しく解説します。
変動幅が拡大された長期金利
長期金利とは取引の期間が1年以上の資金を貸し出す際の金利で、代表的なのは10年物の国債利回り(国債金利)です。日銀は2023年7月の金融政策決定会合で、長期金利の変動幅の上限を0.5%から1%に引き上げました。さらに、7月以降の長期金利が1%に近づいている市場動向から、10月には上限を「1%をめど」に変更して1%を超えることを容認する決定にまで至っています。
直接的に影響を受ける住宅ローンは固定金利
固定金利の住宅ローンの金利は、長期金利をもとに決定されます。つまり、長期金利が上昇すれば、そのまま固定金利型の住宅ローンの金利が高くなるということです。長期金利が上昇傾向のため、固定金利の住宅ローンを検討している方は今後の動向に注意しましょう。
ただし、長期金利が上昇しても、すでに借り入れしている人には直接的には関係ありません。固定金利はその名のとおり、返済開始当初から完済まで金利が一定になっているためです。
変動金利の場合は短期金利の動向を注視
変動金利の住宅ローンは、長期金利ではなく「短期プライムレート」と呼ばれる短期金利を参照して金利が変動します。短期プライムレートのよりどころは、日銀の政策金利です。現在の政策金利はマイナス金利になっているため、変動金利の住宅ローンの利率はかなり低く設定されています。
ただし、短期金利だからといって、長期金利の影響をまったく受けないわけではありません。長期金利が上昇を続けた場合、インフレの抑制目的で日銀は政策金利を見直す可能性もあります。長期金利が上昇してもすぐに政策変更がおこなわれる可能性は低いですが、変動金利の住宅ローンを利用している方も長期金利の動向には注目しておきましょう。
長期金利の今後の見通し
日本の金融市場は、国内外の経済状況や政策の影響を受けて常に変化しているので最新の情報を把握しておくことが大切です。
長期金利の今後の見通しについて、日銀の政策や世界の経済情勢からみていきましょう。
日銀は金融緩和の継続を表明
日銀は2023年10月に開かれた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を維持しつつ金融政策運用を柔軟化させるために長期金利の上限を「1%をめど」として見直しました。金融緩和策とは、市場に出回るお金の供給量を増やし経済を活発にさせて景気回復を図る政策です。現在は政策金利をマイナスにして、少しでも市場のお金が増えるようにしています。
一方で、長らく低金利が続いている市場機能の改善を目的に、長期金利については1%を超える水準まで容認することを決定しました。金利が上昇すると市場に出回るお金は減るので金融緩和政策と一見矛盾しますが、市場経済は複雑な要素が絡み合って形成されるため、さまざまな思惑があっての決定だったようです。
世界的なインフレと円安による利上げ圧力
長期金利の今後の見通しを考えるうえで、インフレと円安は注目しておかなければなりません。現在、世界的なインフレが進行しており、日本でも食品や日用品などを中心に物価の上昇が続いている状況です。欧米の中央銀行は利上げを通じてインフレの抑制に努めていますが、日本ではマイナス金利を継続しているため諸外国との金利差が広がり円安傾向が続いています。
今後、金利差が一層広がれば、さらに円安が進行する可能性も否定できません。インフレや諸外国との金利差による円安などは、利上げ圧力となり住宅ローン金利にも影響してきます。まずは長期金利の上昇だけが容認された形ですが、世界の経済情勢によって変動金利の住宅ローンにも影響を与えるので今後の動向に注意が必要です。
住宅ローン金利の動向を予測する要素
住宅ローンは返済期間が長いので、金利の動向を予測することは重要です。一方で、固定金利と変動金利は動きが異なり、一概にどちらが良いとはいえません。
そこで、住宅ローンの金利を左右する要素を、2つの観点で詳しくご紹介します。確実に予想をすることは困難ですが、判断材料の一つとして活用してください。
住宅ローン金利は固定と変動の動きが異なる
住宅ローン金利が固定と変動で異なる動きになる理由は、それぞれの金利が異なる指標にもとづいて決定されるためです。固定金利は長期国債の利回りに連動する一方、変動金利は日銀の政策金利に連動する短期プライムレートに応じて変動します。
特に、長期金利の動向は、将来の金利予測が反映されるため重要です。直接的には固定金利にしか影響しませんが、長期金利の上昇が政策金利にも影響を与え始めると変動金利の住宅ローンの利率も変わってきます。
銀行間の住宅ローン獲得競争の激化
銀行間の顧客獲得競争も、住宅ローン金利に影響を与える要素です。銀行は、顧客から預かったお金を運用することで利益を得ます。運用方法の一つである貸出のうち、特に住宅ローンは金額が大きく取引も長期間にわたる重要な収益源です。
固定金利、変動金利ともにそれぞれの指標が金利決定の目安になるものの、最終的な貸出金利は銀行が決定します。給与振込や定期預金などを条件に他行よりも低い金利を提示するのも、銀行の顧客獲得戦略の一つです。
住宅ローンを契約する際は、市場の金利動向だけではなく金融機関ごとの特徴もよく確認しましょう。
住宅ローン金利の上昇に備える
住宅ローンの金利は、経済の動向はもちろんですが、日銀の政策金利や銀行間の競争によっても上下します。特に変動金利を選択している方は、金利の上昇に備えておくことが大切です。
万が一金利が上昇した際に、考えられる対応方法を2つご紹介します。
借り換えを検討する
金利が上昇した際は、他行での借り換えを検討してみましょう。また、短期金利の継続的な上昇が見込まれる場合、長期的には固定金利のほうが有利になることもあります。経済情勢も常に注視して、的確な判断をすることが重要です。
ただし、借り換えをする際には、手数料や抵当権の手続きなど関連する諸経費がかかります。手数料で損をしないように、諸経費も含めた合計金額で比較してください。
繰り上げ返済を積極的におこなう
積極的な繰り上げ返済をしてローン残高を減らしておけば、将来金利が上昇しても影響を最小限に抑えられます。将来の金利変動を、正確に予測することは困難です。繰り上げ返済で元金が減ると返済期間自体も短くなるので、金利変動が起こるリスクを減らせます。
ただし、繰り上げ返済をおこなう際には、金融機関によって手数料や最低限の繰り上げ返済額などのさまざまな条件が設けられているケースがあるため注意が必要です。また、繰り上げ返済をすると手元資金は少なくなるので、無理のない範囲にとどめておきましょう。
【まとめ】長期金利と住宅ローンは密接な関係にある
固定金利の住宅ローン金利は、長期金利を基準にして決められています。また、長期金利が動くと将来的に短期金利に影響が出る可能性もあるので、変動金利の住宅ローンを利用している人にとっても長期金利の動向は重要です。
住宅ローンの借り入れ額は数千万単位になることもあり、わずか数パーセントの金利差でも最終的な支払金額に大きな影響を与えます。将来の金利を正確に予測することは簡単ではありませんが、経済情勢などを注視して、場合によっては借り換えなどの対策も検討しましょう。