定期借地権のあるマンションは、購入すると後悔するという声も少なくありません。しかし、定期借地権があっても、場合によってはメリットを得られるようです。
そこで、定期借地権付きマンションの基本的な仕組みと、購入をやめたほうがいい理由、さらにメリットについて詳しく解説します。不利な点の多い定期借地権付きのマンション購入を検討する際は、内容をしっかりと理解して判断してください。
もくじ
一定期間後に返還が必要な定期借地権マンション
定期借地権のあるマンションとは、期間を定めて地主から借りた土地に建てられたマンションです。実は、マンションを建てられる借地には定期借地と普通借地があります。
定期借地権付きマンションの基本を、普通借地権との違いも含めて詳しく解説します。
マンションを購入すると土地を利用する権利も手に入る
マンションを購入すると、部屋の床だけではなく専有面積に応じた土地の権利も手に入ります。定期借地権のあるマンションでも、土地を割り当てる仕組みは同様です。ただし、土地は借地のため、手に入るのは土地の権利ではなく、土地を「利用する」権利となります。
借地期間中は利用する権利が発生しますが、土地を返還する際には専有している部屋も含めて放棄しなければならない点が、一般的な分譲マンションとは大きく異なります。一方で、定期借地権の期間は法律で50年以上と決められており、実はそれほど短くありません。マンションの法定耐用年数が47年であることを考えると、建物の寿命はほぼ全うできるといえます。
借地権には2種類ある
地主から土地を借りる借地権には、大きく分けて普通借地権と定期借地権の2種類があります。定期借地権の場合は、最初に取り決めた期間を延長できません。一方、普通借地権の場合は、土地を借りる期間を更新できます。
普通借地権の最低期間は、定期借地権の最低期間よりも20年短い30年以上です。しかし、1度目の更新タイミングで20年、以降10年単位で延長できます。
普通借地権なら半永久的に借りられる
普通借地権の最大の特徴は、正当な理由がない限り地主は更新を拒絶できない点です。借地期間は定められているものの、実質的には半永久的に土地を借りられます。
ただし、マンションの場合、借地期間の延長は住民1人の一存では決められません。期間を更新するには、管理組合での議決が必要です。また、借地の契約書に明記されている場合は、更新費用の支払いも発生します。
定期借地権マンションをやめたほうがいい理由
定期借地権付きのマンションを購入すると後悔するといわれる理由は、資産価値の面や住宅ローン、維持費の問題などいくつかのデメリットがあるためです。
定期借地権のあるマンションの購入をやめるべき理由を4つ、詳しくみていきましょう。
資産価値が低く売却しにくい
定期借地権のあるマンションは保有できる期間が決まっているため、一般的なマンションに比べて資産価値の低い点が大きなデメリットです。新築からの経過年数が増えるほど残りの期間が短くなるため、売却しにくくなります。
借地権の残存期間が少なくなると、中古マンションとしての資産価値が大きく下落するおそれもあります。次に購入する人が居住後の売却を考えた場合、さらに残りの期間が短くなるためです。
住宅ローンが組みにくい
定期借地権のあるマンションは、住宅ローンを組みにくいデメリットがあります。住宅ローンを組む際は購入物件を担保にしますが、定期借地権のあるマンションでは購入後の価格下落を加味した担保価値が設定されてしまうためです。
また、中古で購入する際は、残存期間によっては返済期間が短くなるなど、ローンの貸付条件がさらに厳しくなるおそれもあります。ローンを利用して定期借地権のあるマンションを購入する際は、事前に金融機関と相談しましょう。
購入年齢によっては老後に住み続けられない
30歳で50年の定期借地権のあるマンションを購入した場合、土地の返還期限が訪れるのは80歳です。老後になってから、新たな住宅を手配することになりかねません。また、万が一70歳で亡くなった場合、遺族はわずか10年しか残存期間のない物件を相続することになってしまいます。
定期借地権のあるマンションを購入する際は、残存期間の確認だけではなく、自身の年齢やライフプランと照らし合わせて検討することが大切です。期間満了後の生活や相続まで踏まえて、しっかりとシミュレーションをしておきましょう。
維持費が高くなる
定期借地権付きマンションは、一般的なマンションにはない維持費が発生します。借地期間満了時の、建物の解体費用です。一般的に、地権者に土地を返還する際は更地にすることが条件に含まれており、高額な解体費用がかかります。
解体費用を一括で払うのは住民の負担が大きいため、通常は「解体積立金」として毎月徴収されます。さらに、定期借地権の有無に関わらず、マンションを購入すると管理費や大規模修繕費も必要です。
定期借地権マンションのメリット
定期借地権のあるマンションには、実はメリットも存在します。購入目的によっては、普通のマンションよりも有利となる可能性があるため、状況にあわせて検討してみてください。
相場より安価に販売されていることもある定期借地権付きマンションのメリットを3点ご紹介します。
相場より割安に購入できる
定期借地権のあるマンションは土地の購入費用がかからないため、一般的なマンションよりも安く購入できます。また、資産価値が上がりにくいデメリットがあることから、販売価格が割安に設定されているケースもあるようです。さらに、マンションにかかる固定資産税のうち、借地である土地部分には課税されません。限られた予算のなかで、できるだけ希望にあった物件を購入したい場合は、定期借地権付きのマンションも検討してみましょう。
定期借地権付きのマンションは、賃貸物件として貸し出して賃料収入を得る、投資物件としてもおすすめです。定期借地権は、賃貸の入居にはほとんど影響しません。同様の物件よりも安く購入できるため、高い利回りも期待できます。ただし、売却時のキャピタルゲインはほとんど見込めないため、出口戦略をしっかりと立てて購入するようにしましょう。
立地条件の良い物件が多い
立地に恵まれている物件が多い点も定期借地権付きマンションのメリットです。駅や商業施設などに近ければ、利便性の高い生活が望めます。
立地が良く価値の高い土地ほど、地主は簡単に手放しません。定期借地権のあるマンションは、地主が価値を感じて売却に応じない土地に建てられている物件が数多くあります。利便性や居住性の良さを優先する場合は、定期借地権付きのマンションのほうが適した物件にめぐりあえるかもしれません。
間取りの広い物件が多い
定期借地権付きマンションは、人気のある広い間取りやオシャレな外観の物件が多く存在します。資産価値があがりにくく、物件そのものの間取りで価値を高めて入居者を確保する必要があるためです。
また、間取りが広いだけではなく、設備が充実している物件も数多くあり、より良い生活環境が実現する可能性があるでしょう。
【まとめ】定期借地権マンションはデメリットをよく考えて購入する
定期借地権のあるマンションは、居住できる期間が決まっている点が大きな特徴です。借地の使用期限があることで、資産価値が低く売却が難しい、住宅ローンを組みにくい、老後の住まいに不安を感じやすいといったデメリットが生じます。
一方で、割安な物件価格や立地条件の良さなど、さまざまなメリットがあることも事実です。定期借地権のあるマンションを購入する際は、メリットとデメリットを慎重に検討して判断しましょう。