土地を売却する際は、土地の面積や境界を明確にする測量が必要なケースもあります。測量に必要な費用は、売主と買主のどちらが支払うべきなのでしょうか。実は、測量費用をどちらが負担すべきかについては、法律で明確に定められていません。しかも、契約内容や地域の慣習によっても異なるため、慣れていないと判断に迷ってしまうかもしれません。
そこで本記事では、土地売却時に測量費用をどちらが支払うべきかを、費用の相場と注意点も含めて詳しく解説します。
もくじ
測量費用は基本的に売主負担
測量の費用は、双方の合意さえあれば売主と買主のどちらが負担しても問題ありません。しかし、慣例として、売主が負担することが一般的です。
まずは、測量についての法的観点と必要性について詳しく解説します。
測量の実施は法律で定められているわけではない
実は、不動産取引時の測量は法律で義務付けられていません。測量をしなくても、土地を売却することは可能です。しかし、測量を実施していたほうが、購入者は安心して取引できます。測量費用を売主が負担するケースが多い理由は、売主にとって売却しやすくなるためです。
また、土地の境界や面積があいまいな場合、取引時にトラブルとなるおそれもあります。スムーズに取引するためにも、正確なデータのない土地を売却する際は改めて測量を実施しておきましょう。
一般的には売主が負担する測量費用ですが、買主に負担してもらうことも可能です。売却時に測量を実施する際は、誰が費用を負担するのかも契約書に明記しておくことをおすすめします。
売却時に測量が不要なケースもある
売却時の価格決定方法によっては、測量が不要なケースもあります。新しく分譲した土地や、広大な土地で測量の実施が現実的ではない土地の場合です。また、不動産登記簿に登録されている情報に基づいて価格を決定する、公簿売買で取引する場合にも測量は実施しません。
一方、測量を実施して価格を決定する取引が、実測売買です。実際に土地を測量した結果に基づいて、最終価格が決定されます。
測量が必要なケース
土地の売買をする際の測量は義務付けられていませんが、測量しなければ取引が成立しないケースもあります。円滑な取引と希望価格での売却を実現するためにも、測量は必要に応じて実施しましょう。
売却時に測量が必要となる主なケースを3つご紹介します。
境界がわからない場合
古い土地や、何度も分割して売買されている土地など、境界が正確にわからない場合は測量が必要です。売買の対象となる土地が明確でなければ、売買契約の締結がスムーズに進みません。
また、境界が不明瞭だと隣接する所有者との間でトラブルに発展するおそれがあり、そもそも買い手が見つからなくなるかもしれません。登記簿や測量図などで正確な境界がわからない場合は、測量を実施したうえで土地の売却手続きを進めましょう。
高額な土地の場合
高額な土地を売却する際も測量が必要です。地価の高い地域などでは、わずかな面積の差でも価格が大幅に変わってきます。公正な取引をするためには、測量によって土地の正確な面積を把握しておくことが大切です。
土地の面積を過小に見積もると売主が損をしてしまうほか、正確な測量結果があったほうが買主も安心して取引できます。双方が納得のいく取引をするためにも、高額な土地の場合には測量を実施しましょう。
実際の面積が登記簿と異なる場合
土地を含めた不動産の情報は登記簿に記載されていますが、記載されている土地の面積が実際と異なっていることがあります。測量の実施から年月が経過している場合や、測量をしないまま土地が細かく売買された場合などです。
また、測量技術は進歩しているため、昔の測量では誤差が多く、不正確だったというケースも珍しくありません。登記簿に記載されている土地の面積の正確性に疑問がある場合は、売却前に正確な測量を実施してください。
測量費用の相場
慣例的に売主負担となるケースが多い測量費用ですが、土地の売却益に影響するため実際にどれくらいの費用がかかるのかは気になるところです。
そこで、測量費用の相場や細かい内訳について、詳しくご紹介します。
隣接地によって相場が異なる
測量にかかる費用は、実際に測量を実施する土地だけではなく、隣接地によって金額が異なります。隣接地の状況によって、測量にかかる手間が変わってくるためです。一般的に、民有地よりも道路などの官有地が隣接している場合のほうが測量費用は高くなります。また、民有地であっても、地権者が多い場合には費用が高くなるため注意が必要です。
測量費用の目安は、民有地に隣接する100平方メートルの土地で30万〜60万円程度です。公道や官有地に隣接する場合は、50万〜80万円程度とやや高額になります。また、広大な土地や隣接地が多い場合には、100万円を超えるケースもあるため事前に確認しておきましょう。
測量費用の内訳
測量の作業は現地調査だけではなく、事前の準備から事後の作業までいくつかの工程を経て完了します。具体的な測量費用の内訳は以下のとおりです。
事前調査費用
測量を実施する前に、土地の現状を調査するための費用が事前調査費用です。土地の形状や権利関係を、現地や法務局で詳しく調査します。
測量業務費用
測量業務費用は、実際の測量にかかる費用です。測量業者が提供するさまざまなサービスや作業にかかる費用が含まれます。主な作業内容は、現地測量・境界点検証・境界標設置です。
書類作成費用
書類作成費用は、測量作業に関連する書類や報告書の作成にかかる費用です。主な作業内容は、申請書添付書類作成・不動産調査報告書作成・測量図作成などです。
官民有地境界確定費用
測量する土地が官有地と接している場合は、管轄の官公庁で境界線を確定する手続きが別途必要となります。具体的な作業内容は、官民有地境界協議と確定の申請・官民有地境界の立ち会い・官民有地境界確認書の発行などです。
民有地境界確定費用
測量する土地が民有地と隣接している場合は、隣地の所有者立ち会いのもとで境界を確定します。作業内容は、立ち会いの手配や民有地境界確認書の取り交わしなどです。隣地が複数の場合は、それぞれと手続きが必要なため、費用負担が大きくなります。
測量をする際の注意点
測量にかかる費用は、業者や内容によって大きく変わります。測量費用は得られる売却益にも影響するため、慎重に判断したいところです。
測量をする際の注意点をみていきましょう。
複数の業者を比較して決定する
測量を依頼する際は、複数の業者を比較して判断しましょう。測量業者によって、金額や技術力、対応範囲などが変わってくるためです。また、複数の業者を比較することで、慣れない測量の相場も把握できます。
不動産業者を通して土地を売却する予定であれば、測量業者を紹介してもらうのも1つの方法です。基準となる業者を見つけることで、他業者の見積内容をより正しく比較できます。
可能なら過去に同じ土地を測量した業者に依頼する
対象の土地を過去に測量した業者がわかる場合は、同じ業者に依頼することも効率の良い方法です。過去に測量を実施した業者であれば、土地の特性や周囲の状況をある程度把握しています。過去のデータを参照しつつ測量を進められるため、効率的な作業が可能です。
また、事前の調査費用や測量にかかる工数を削減でき、費用を抑えられる可能性もあります。測量を実施する際は、過去に担当した業者にまずは打診してみましょう。
測量の要否を一度買主と交渉する
登記簿に記載されている情報の信頼性が高い場合などは、そもそも測量が必要かどうかを買主と交渉してみましょう。測量は法律で義務付けられているわけではないため、売主と買主双方が合意すれば実施する必要はありません。
測量費用は決して安い出費ではないため、気になる場合は必要性や負担について買主と相談することで余計な費用を抑えられます。
測量費用は経費に計上する
売主負担で測量を実施した際は、必ず経費として計上しましょう。土地の売却益から経費として控除することで、節税につながるためです。土地を売却して得られる譲渡所得には、所得税がかかります。
契約書の作成費用や仲介料などとともに、測量も売却に必要な経費の1つです。正しく計上して無駄な納税をなくし、売却益を正しく確保しましょう。
【まとめ】測量費用は売主負担だが不要なケースもある
測量費用を売主と買主のどちらが払うべきかを定めている法律はありません。しかし、不動産取引の現場では、基本的に売主が負担することが慣例となっています。測量によって土地の情報を正しく提供できることで買主の安心につながり、売却しやすくなるためです。
ただし、登記簿の情報が信頼できる場合など、測量が不要なケースもあります。測量には一定の費用がかかるため、実施前に不動産業者などの専門家に相談しましょう。