投資と投機は似た言葉ですが、実際の意味はまったく異なります。しかし、両者の正しい意味を理解しないまま、資産形成に取り組んでいる方も少なくありません。目標通りの資産形成を成功させるには、投資と投機の違いを理解することが大切です。
そこで今回は、投資と投機の意味の違いやメリット・デメリットを詳しく解説します。
もくじ
投資と投機の違いはズバリ利益を得るまでの期間
少し乱暴な分類方法ですが、投資と投機の違いをひとことで表すと「利益を狙う期間」です。間違った認識で資金を投入してしまうと、値動きに対するリスク判断を誤りかねません。
まずは、投資と投機の基本的な違いをみていきましょう。
中長期的な視点で資金投入する投資
投資では、将来的な市場価値の向上を目指して資金を投入します。投資先の特性にもよりますが、投資ではあまり短期間の利益は狙いません。最終的に期待通りの成長を遂げるとしても、市場価値は上下動を繰り返すものです。中長期的視点での成長を目指すため、短期的には損をする場面もあります。
例えば、環境意識の高まりから環境関連技術の市場が今後成長すると予測し、実際に市場規模が5年後に3倍になったとしましょう。しかし、投資した企業が、5年間右肩上がりで成長し続けるとは限りません。大きな設備投資から投資初年度に赤字決算となり、一時的に株価が下落するおそれもあります。
投資目的で資金を投入する際は、一時的な上下動に左右されることなく、中長期的な成長を目指す視点が大切です。
短期的な相場変動を狙う投機
投機は、短期的な相場の値動きによる差益を狙う資金運用方法です。投資と同様に、市場や銘柄の中長期的な成長も考慮しますが、目先での値動きに注目して資金を投下します。極端な例ですが、成長市場でも短期的な縮小が予測される場合、値下がりした場合に利益を得られる「空売り」という形で資金投下することもある点が投機の特徴です。
投機は短期的な相場変動を狙うため、利益が出た際や、予想と違う方向に動いた際の対応力が求められます。経済動向だけではなく、災害や政治情勢などを見極めて利益と損失をコントロールすることが大切です。
投資や投機とよく比較される言葉
投資と投機について調べると、ギャンブルと貯蓄との比較もよくでてきます。特にギャンブルについては、投機と似ている要素が多くありますが、本質は大きく異なります。
それぞれの特性を理解しておくことで、機会損失を防ぎ、資産形成を効果的に進められるでしょう。
投機と似た側面もあるギャンブル
短期的な利益を目指すという点では、投機とギャンブルには似ているかもしれません。しかし、あらゆる情報から可能な限り根拠をもった予測を立てる投機に対して、ギャンブルは運の要素に結果が左右される点が大きく異なります。
投機とギャンブルの違いがわかりやすいのは、宝くじやカジノでのカードやルーレットです。宝くじの購入時点で、当選番号の予測は立てようがありません。カジノで次に配られるカードやルーレットの出目を、根拠をもって予測することも不可能です。
また、競馬や競輪など、血統や過去の戦績から予測を立てるギャンブルを、投機だと誤解している人もいます。しかし、血統が良くても負ける可能性はあるほか、過去1勝もしていない選手が初勝利をあげるケースもあり、結果に対する必然的な理由はありません。
一方で投機は、戦争や自然災害が突然起こった、予想通りの大統領が当選したなど、結果に対して多くの場合で理由が存在します。
リターンを狙わない貯蓄
資産形成方法の1つとして、貯蓄もよく挙げられます。貯蓄は資金を失うリスクがほとんどない反面、元金以上のリターンはほぼ望めません。資産形成をするうえでは消極的な方法と思われがちですが、安定性を図るために大切な方法です。
投資や投機に全資金を投入していると、急に現金が必要になった際に困ってしまいます。現金化できる投資先だったとしても、タイミングによっては損失がでるかもしれません。現金としてすぐに利用できる貯蓄をしておくことで、投資や投機の安定性も実現できます。
ただし、基本的に経済は成長方向(インフレ)のため、現金資産を保有していると実質的な価値が減少するおそれがある点には注意が必要です。例えば、100円で販売されていたお菓子が200円に値上がりした場合、100円を保有していてもお菓子は買えなくなってしまいます。
投資のメリット・デメリット
中長期視点で資金を投入する投資は、比較的安定している資産形成方法です。一方で、リスクやデメリットもあるため、資金を投入する前にしっかりと理解しておきましょう。
メリットとデメリットという視点で、投資について詳しく解説します。
無理なくコツコツと資産形成ができる
投資手法によって必要な資金が異なりますが、毎月1万円の積立投資信託のような投資であれば、無理のない範囲で資産形成を始められます。投資は長い期間に及ぶため、ライフスタイルの変更にも対応できるよう無理のない計画を立てることが大切です。
また、不動産投資であれば、投資金額が大きくてもローンを利用することで自己資金を抑えられます。現物資産を保有して長期的な家賃収入が見込める、比較的安定した投資方法の1つです。
資産を分散してリスクを低減できる
「卵は1つのかごに盛るな」と表現されるほど、積極的な資産運用ではリスク分散が推奨されています。資産を分散することでリスクを低減できる点が、投資のメリットの1つです。投資にはさまざまな手法と銘柄があるため、資産を無理なく分散できます。
また、資産を分散する際は、リスク具合や相関性を加味することが重要です。例えば、値動きの大きい株式投資をするのであれば、インフレにも不況にも比較的強い不動産投資を同時におこなっておけば、万が一相場が崩れた際も資産を大きく失わずに済みます。
短期的な利益は期待できない
短期間での利益を出しにくい点が、投資のデメリットです。投資は基本的に中長期的な成長を目指して資金を投入するため、短期的な利益はあまり期待できません。また、将来成長すると思っていても、目先では市場が縮小するケースもありえます。
例えば、投資目的で不動産物件を購入しても、短期的に不動産価格が下落することは少なくありません。長期間安定的に家賃収入を得ることが、一般的な不動産投資の主な目的です。また、投資手法によって妥当な期間は異なるため、目標とする時期が違う投資先を選ぶことでリスクの低減につながります。
短期の損益に一喜一憂するのではなく、目標達成までの期間を意識した投資を心がけましょう。
最終的な予測は難しい
中長期的な投資では、最終的な結果を正確に予測することは困難です。当初の予測と違う結果になるリスクが高い点も、投資の大きなデメリットといえるでしょう。
ただし、ほとんどの経済市場は、全体としてみると基本的に成長していきます。さまざまな投資方法に資金を分散しておくことで、予想が外れた際のリスクをある程度抑えることが可能です。また、不動産投資のように、経済動向の影響を受けにくい現物資産を保有しておくこともリスクヘッジとしておすすめします。
投機のメリット・デメリット
短期間で取引を完了する投機では、時間をかけることなく大きな利益を得られる可能性があります。しかし、期待されるリターンと同様に、リスクも大きくなりがちです。
投機のメリットとデメリットを詳しくみていきましょう。
短期間で利益を得られる
投機の最大のメリットは、短期間で利益を得られる点です。目標額まで短期間で到達したい場合など、明確な目的意識をもっていれば投機を有効に活用できます。
ただし、常に予想通りの値動きになるとは限りません。予測が外れた場合の対応方法を考えておくことも、投機をするうえでは重要です。許容できる損金や追加の資金投入など、予測と反対方向に相場が動いた際の対応方法を意識しておきましょう。
資金をすぐに自由に使える
投機のもう1つのメリットは、取引の完了が比較的早く資金の自由度が高い点です。投資と比較して資金の流動性が高いため、相場や自身の状況に合わせた資産運用をおこなえます。
利益をもとに再度の投機、中長期的な投資資金、現金出費への利用など、効率的な資金利用が可能です。投機をする際には、目標と次の資金利用計画を明確にしておきましょう。
価格変動の確認や取引回数が多い
短期的な値動きでの売買によって利益を得る投機は、何度も取引を重ねることで資産を増やします。価格の確認や取引といった手間がかかる点が、投機の大きなデメリットです。
また、正確に相場を予想するには、情報収集や市場分析が欠かせません。取引回数の多い投機では、分析にかかる時間も手間も大きくなります。失敗しないためにも、投機をする際には対応する時間を十分確保しておきましょう。
変動幅が広いため損失が大きくなる可能性がある
投機の魅力は、価格の大きな上昇によって高い利益を得られる点です。しかし、予測に反した値動きになった場合は、当然損失も大きくなってしまいます。資産形成目的で投機をしたのに、資金の多くを失ってしまっては意味がありません。
どれだけ正確な予測を心がけても、自然災害や戦争など、想定外の出来事は起こり得ます。そのため投機をする際は、厳密な資金管理が重要です。万が一損失を出しても、不動産投資などほかの資産運用でカバーできるよう全体のバランスを意識しましょう。
【まとめ】投資も投機も元本割れリスクはある
手元にある資金を投入して資産を増やすという意味では、投資も投機も同様です。しかし、利益を得るまでの期間が大きく異なるため、資産形成をする際には配分を慎重に検討する必要があります。特に、投機はリターンと同様にリスクも大きいため、投資や貯蓄などと組み合わせて万が一の損失に備えておくことも大切です。
投資と投機の違いをしっかりと理解し、資産形成の目標に対してどの方法が適しているのかを常に意識して資金を投入してくださいね。