金融資産が1,000万円を超えると、管理と活用方法を考えるべきです。単に銀行に預けておくだけでは、低金利やインフレの影響による実質的な資産の目減りに対応できません。
そこで本記事では、1,000万円を超える資産を効果的に活用するための基本的な考え方と、貯めるための手法を紹介します。
もくじ
1,000万円を超えたら資産の内訳を考える
金融資産が1,000万円を超えた場合に検討すべきことは、資産の配分方法です。1,000万円を現金で保有するのではなく、運用効率とリスクを考えて資産を配分します。
また、景気動向によっては、現金は実質的に目減りするおそれもある点に注意が必要です。1,000万円を超えた場合の資産の配分について、特徴やリスクも含めて詳しくみていきましょう。
銀行に預けて置くだけでは目減りするおそれがある
銀行預金は、安全性が高い資産管理方法の一つです。しかし、銀行預金を保有していても、わずかな金利のみで資産はほとんど増えません。しかも、銀行が破綻した場合の元本保証は1,000万円までのため、1つの銀行口座に預けておくと一部を失ってしまうリスクもあります。
計算をわかりやすくするために、物価が2倍になった場合で考えてみましょう。物価が2倍になるということは、100円で買えていたものが200円になるということです。200円をもっていれば2個買えたところが、1個しか買えません。つまり、実質的に200円の価値が半減してしまうのです。
しかも、物価の上昇による現金価値の減少は、例に出したほどわかりやすくはありません。徐々に進行するため、実質的な目減りに気がついたときには手遅れです。経済は基本的には成長方向に動くため、現金資産だけで長期間保有するのは避けることをおすすめします。
中長期的な資産形成方法を計画する
金融資産が1,000万円を超えると、中長期的な資産形成方法を考えることが重要です。目先の貯金をいくらにするといった視点ではなく、老後まで含めてどれくらいの資産規模にしておきたいのかを検討しましょう。
資産運用の方法としては投資が挙げられますが、投資先はさまざまです。目指す資産規模から逆算して、どこにいくら投資するのかを検討します。投資信託といった金融商品や、不動産投資のような有形資産の保有など、自分の目的に合う投資方法を選定します。
貯蓄と投資の配分を明確にする
資産が1,000万円を超えたら、貯蓄と投資のバランスを明確にしておきましょう。現金で保有していても資産は増えないため、リスクを考えながら基本的には投資をします。一方で、生活防衛資金を確保しておくことも、投資を成功させるためには重要です。
長期的な投資では、一時的に資産がマイナスとなる局面もあります。しかし、マイナス局面で現金が不足すると、投資先の資産の売却や解約をせざるを得ません。結果的に資産を減らすことになってしまうため、生活に必要な資金は現金で確保しておくことが大切です。
一方で、元本の金額が大きいほど、投資のリターンも大きくなります。1,000万円のほんの一部を投資に回しても、効率的に資産を増やせません。生活資金として必要な貯蓄額を明確にして、効率良く資金配分をしましょう。
負債があれば返済する
金額と金利にもよりますが、負債がある場合は返済を優先することも大切です。現在は低金利時代のため、投資利回りのほうが高いケースもあります。しかし、負債があると万が一返済できなくなった場合に、資産を失ってしまいかねません。返済不能になるリスクも踏まえて、負債の返済を検討しましょう。
ただし、確実性のある返済を選ぶか、リスクを取って運用を優先するかは、個人のライフプランやリスク許容度にもよります。例えば、投資利回り5%で運用できる場合は、金利1%の負債の返済をするよりも資産が増えるのは事実です。投資のリスク、返済金額、収入の安定性などから、総合的に返済の判断をしましょう。
貯蓄額の平均と1,000万円貯めている人の割合
1,000万円を目標に貯蓄をしているものの、なかなか達成できない人は多いでしょう。実際にどれくらいの人が1,000万円を貯めているのか、世の中の人はどの程度貯蓄しているのか気になるところです。
そこで、貯蓄の中央値や1,000万円貯めている人の割合について、実際の統計データを参考に詳しく紹介します。
貯蓄の中央値は450万円
金融広報中央委員会が発表した令和3年の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」によると、貯蓄額の中央値は約450万円です。貯蓄の平均額は1,563万円にのぼる一方で、金融資産を保有していない世帯も20%を超えています。
平均額と比較すると、中央値がはるかに低いことがわかります。一部の高所得者層によって平均値は引き上げられているものの、多くの人は中央値付近の貯蓄額です。年齢や世帯収入によっても異なるため一概にはいえませんが、1,000万円の半分ほどの貯蓄額というのが現実といえます。
1,000万円貯めている人の割合は3割弱
金融広報中央委員会が発表した令和2年の総世帯調査によると、1,000万円以上の金融資産を保有している世帯は全体の約28%です。また、年代別にみると、年齢が高くなるほど貯蓄額が増加する傾向にあります。
一般的な生活をするなかで、1,000万円をいきなり貯めることは不可能です。収入や支出に応じて長期的な計画を立て、具体的な目標をもって資産を増やしていきましょう。
1,000万円を貯めるためのコツ
計画的に貯蓄をしないと、1,000万円という大台は達成できません。また、単に現金を貯めるだけではなく、効果的な資産運用を組み合わせることも大台達成への近道です。
1,000万円を貯めるためのコツを詳しくみていきましょう。
貯蓄に回すお金を先取りする
計画的な貯蓄の第一歩は、収入のなかから貯蓄に回すお金を先取りすることです。日常生活で余ったお金を貯めるだけでは、なかなか目標の1,000万円には到達しません。明確にいくら貯蓄に回すのかを決めて、確実に貯めていくことで目標達成が近づきます。
例えば、収入が入ったタイミングで、貯蓄分を別口座に移すのも一つの手段です。また、給与振込口座から積立預金や投資信託の資金を自動引き落としにすると、意識をせずに貯蓄額を増やせます。
目標金額と時期を明確に定める
貯蓄を成功させるには、目標金額と達成時期を具体的に決めて逆算で計画を立てることが重要です。明確な目標を立てずになんとなくお金を貯めていても、1,000万円への到達は期待できません。
例えば、5年で1,000万円を貯める場合には、年間で200万円、1ヶ月で約16.7万円の貯蓄が必要です。計画はできるだけ細かく立てて、着実に実行していきましょう。
一方で、生活に無理のある計画では、継続できません。貯金をすると意気込んでいると無理な計画を立てがちですが、長く続けることも1,000万円を貯めるコツです。
資産運用をしながら貯める
1,000万円を効率良く貯めるには、貯蓄だけではなく資産運用も取り入れることが効果的です。投資信託や株式などを活用すれば、銀行預金よりも大きなリターンが期待できます。例えば、年間5%の運用利回りを目指して100万円を投資した場合、1年後の資産額は105万円です。さらに複利で運用すると5年後には約128万円となり、元本に対して28万円も資産が増加します。
ただし、運用に伴うリスクを理解し、リスク許容度に合った商品を選ぶことが重要です。収入の一部を運用に回しつつ、堅実な貯蓄も続けるバランスを意識すると、1,000万円の達成が近づきます。
【まとめ】金融資産1,000万円を目安にしつつ長期的な視点で計画を立てる
金融資産1,000万円は、資産形成をする際の一つの目安です。しかし、ただ漠然と1,000万円を貯めようと思っていても、なかなか達成できません。資産の少ないうちから、長期的な視点で計画を立てることが重要です。
ただし、金融資産の多くを現金で保有していると、将来的に目減りするおそれもあります。必要な生活資金と運用する資金を明確に分けて、将来を考えた運用を目指しましょう。また、無理をしないことも、資産形成における重要なポイントです。望んだ生活をしつつ長期的な資産形成を目指すことで、目標達成に近づきます。