個人が住宅を購入する際、多くの人がローンの利用を検討します。では、法人名義で住宅を取得する場合にも、住宅ローンの融資を受けられるのでしょうか。
本記事では、法人がローンで住宅を購入する方法や審査のポイント、ローンを利用するメリットや注意点について詳しく解説します。
もくじ
法人名義で住宅ローンは組めない
法人名義では、住宅を購入する際に利用される住宅ローンを組むことができません。住宅ローンは個人を対象とした金融商品であり、法人が契約主体となることは想定されていないためです。
ここでは、住宅ローンが個人を対象とする理由や、法人が住宅を取得する際に検討できる手段を詳しく見ていきましょう。
住宅ローンは居住する人が対象
住宅ローンは、自ら居住するための住宅を取得する個人を対象としています。法人は法律上の人格を持つものの、実際に住宅に居住する「人」ではないため、住宅ローンの審査対象とはなりません。また、法人が住宅を取得する目的は事業用資産の保有や投資であるケースが多く、個人の居住を前提とした住宅ローンの趣旨とも異なります。
法人が福利厚生の一環で従業員用の居住用物件を取得するケースでも、住宅ローンは利用できません。従業員への賃貸用物件の取得として、事業資金での対応となるのが一般的です。
不動産担保ローンなら法人名義でも審査できる
法人名義で住宅を取得する場合は、不動産担保ローンの活用を検討できます。不動産担保ローンは法人が利用できる金融商品で、取得する不動産だけではなく、すでに法人や法人役員が保有している不動産を担保にすることも可能です。
また、居住用の住宅に限らず、事業用や投資用不動産の取得にも対応しています。運転資金や既存融資の借り換え目的で、不動産担保ローンが利用されるケースもあります。
ただし、住宅ローンに比べて金利が高く設定されるため、資金計画や事業計画を慎重に立てたうえで利用することが重要です。
不動産担保ローンの審査ポイント
不動産担保ローンは、担保として差し入れる物件の価値と、申込人である法人の業況が大きな審査ポイントです。不動産の価値は融資の諾否や借入ができる額、そして法人の業況は返済能力の有無を判断するのに大きな影響を及ぼします。
不動産担保ローンの審査ポイントを詳しく見ていきましょう。
購入する不動産の価値を審査される
不動産担保ローンの審査では、購入する不動産の価値が大きな判断基準となります。金融機関は担保としての適格性を評価するために、物件の立地や築年数、構造、周辺の市場価格などを厳しく調査します。とくに流動性の高いエリアにある物件や、将来的な資産価値の上昇が見込める物件は、審査を有利に進めるのに効果的です。
また、取得する物件の用途も、審査に影響を与える要素の一つです。社宅として利用する場合と、投資用不動産として賃貸収益を得る場合では、審査基準が異なります。居住用不動産を賃貸物件として活用する場合は、物件価値に加えて収益性も審査の対象となります。
財務状況で法人の信頼性と返済能力を確認
法人の財務状況も、不動産担保ローンにおける重要な審査対象です。金融機関は、決算書や事業計画書などの財務状況をもとに、毎月の返済能力を審査します。実績と現況、将来性が総合的に判断され、安定して利益をあげている法人ほど有利な条件で融資を受けられる可能性があります。
毎月の返済能力に問題がないことを示すには、利益率の高い企業と判断されなければなりません。購入予定の物件に価値があっても、財務状況が安定していない場合、融資の条件が悪くなるおそれがあるため注意が必要です。
不動産担保ローンを組んで法人名義で住宅を購入するメリット
不動産担保ローンを活用すれば、法人名義で住宅を取得できます。住宅ローンでは難しい高額物件を購入できる点や、税務上の優遇を受けられる点が不動産担保ローンのメリットです。また、法人資金で取得すれば、代表者個人の資産と分けて管理できます。
ここでは、法人名義で住宅を購入するメリットを詳しく見ていきましょう。
住宅ローンでは手の出ない高額物件を購入できる
住宅ローンは、申込者の年収によって借りられる金額が決まります。返済額は、一般的に住宅ローン以外の借入も含めて、年収の30〜35%以内に収めなければなりません。そのため、年収をベースにしたうえで返済が難しいと判断されると、希望する金額を借りられない場合があります。
一方の不動産担保ローンは、法人の業況と担保価値が重視されるため、返済能力が認められれば、個人では手の届かない高額物件も購入可能です。さらに、高額物件は担保価値が高まりやすいため、購入後に余剰担保枠を活用して追加融資を受ける選択肢も広がります。
経費計上ができるため節税効果が見込める
法人名義で住宅を購入すると、物件にかかる費用を法人の経費として計上できるため、法人税の課税所得を抑えられます。
不動産担保ローンの利息や固定資産税、修繕費なども法人の経費として処理が可能です。また、建物部分については法定耐用年数に応じた減価償却費を毎年計上することで、長期的に税負担を軽減できます。
経費の効果的な計上は、節税だけではなく、資金繰りの安定を図るためにも重要です。このような仕組みを活用すれば、法人の財務基盤を安定させつつ、効率的に資産形成を進められます。
個人名義の資金を使わずに住宅が手に入る
法人名義で資金を調達できれば、代表者個人の資産を減らさずに不動産を取得可能です。個人で住宅を購入する場合、多額の自己資金を用意しなければなりません。また、住宅ローンの借入れは、個人の信用情報に影響を与えます。
法人名義で購入すれば、個人資産も信用情報も心配する必要がありません。代表者の個人資産が残ることで、一時的な資金ショートや急ぎの資金が必要な事態が生じても、タイムリーに法人への資金援助ができます。不動産担保ローンのメリットを最大限に享受するには、法人の信用状態や財務状況、そして個人の資産を総合的に勘案することが重要です。
不動産担保ローンを組む際の注意点
不動産担保ローンの審査では、法人の業況だけではなく、代表者個人の信用情報も評価される点に注意が必要です。また、法人の財務状況が良好でも不動産の価値が低い場合は、融資が通らない可能性があります。
ここでは、ローンを組む際の注意点を詳しく見ていきましょう。
代表個人の信用情報も調査される
法人名義で不動産担保ローンを申し込む場合は、代表者個人の信用情報も調査されます。これは、多くの金融機関が、法人の返済能力とあわせて代表者個人の信用度も評価するためです。延滞や債務整理の履歴がある場合、法人名義であっても審査が厳しくなるでしょう。
また、代表者個人が連帯保証人となることを求められるケースがある点にも注意が必要です。法人が返済できなくなると、連帯保証人である代表者の個人資産によって返済しなければなりません。個人の信用情報を良好な状態にしておくことは、ローンの審査を有利に進めるためにも重要です。
不動産としての担保価値が低いと融資額が低くなる
担保となる不動産の価値が低いと、希望する融資額を確保できない場合があります。一般的に、金融機関は不動産の担保価値を市場価格の70〜80%程度に見積もっています。1,000万円で売買できる物件も、700〜800万円でしか評価されません。
法人の信用力や経営状況によっては、担保価値の範囲内でしか融資してもらえない可能性があります。不動産担保ローンを申し込む際には、担保不動産の価値を適切に見積もり、金融機関の審査基準を踏まえて融資希望額を検討することが重要です。
【まとめ】法人名義の場合は住宅ローンではなく不動産担保ローン
住宅ローンは個人しか利用できないため、法人名義で住宅を購入する場合は不動産担保ローンの活用を検討しましょう。審査に通れば、高額な物件の購入や節税効果が期待できます。
不動産担保ローンの主な審査ポイントは、法人の財務状況と不動産の担保価値です。また、代表者の信用度も、審査の諾否や希望額に影響します。事業を安定かつ継続的に運営していくための手段として、ぜひ不動産担保ローンを有効に利用してください。
日商エステムグループでは、事業用地の選定や投資用不動産に関するご相談にもしっかりと応じます。法人名義で住宅ローンを組み、その後の運用部分についても悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。