不動産投資を始める際、オーナーは不動産投資ローンを組むことが一般的とされています。不動産投資ローンは数十年もの長い時間をかけて返済するものです。返済中にトラブルが発生するケースや、賃貸ニーズの低下により空室が増えてキャッシュフローが回らなくなるケースも少なくありません。
こうした事態に陥ったとき、解決策として有効なのが不動産投資ローンの借り換えです。しかし、どのように借り換えを行ったらいいのかわからない方も多いでしょう。そこで今回は、不動産投資ローンの借り換え方法とメリット・デメリットをご紹介します。借り換えを適切に行うことで収益を改善し、効率的な不動産投資を目指しましょう。
もくじ
不動産投資でローンを借り換えるには?
不動産投資ローンの借り換えとは、当初融資を受けた金融機関とは異なる機関で、より金利の低いローンに乗り換えることを指します。ローン返済は、長期にわたり不動産オーナーを悩ます問題です。「返済による負担を減らしたい」「コストを抑えて利回りを上げたい」といった際にローンを借り換えることで、キャッシュフローの改善を図ることができます。
ほとんどの金融機関は、他機関へのローン借り換えについて積極的に案内してくれません。しかし、借り換えは不動産オーナーが自由に選択できるものです。注意すべきポイントや仕組みをしっかり理解して、ローンを借り換えるべきか検討しましょう。
不動産投資で借り換えローンを利用できる金融機関
不動産投資ローンの借り換えは、利用する金融機関によって特徴が異なります。「審査が厳しい」「相談しやすい」といった傾向を把握しておくことは、金融機関選びにおいては重要です。単に金利が低いからという理由だけで判断すると、審査に通らない場合や自分の経営・財政状況に合わず、借り換え前よりも負担がかかる恐れもあるため注意しましょう。
都市銀行
三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行をはじめとする大都市に本店をもつ都市銀行でも、借り換えローンを利用することができます。金利が低く、コスト面では有利に働きますが、審査が厳しいため注意が必要です。よほどの優良案件でないかぎり、審査に通るのは難しいでしょう。
また、すべての市区町村に支店があるわけではない点もウィークポイントです。低金利とはいえ、融資が受けられる対象がほかの金融機関に比べて限定されています。
地銀
各地域に必ず支店を構える地方銀行は、都市銀行と比べてより身近な存在です。また、そのほとんどが借り換えローンを提供していることからも、融資を受ける不動産オーナーの数は地方銀行が多いといわれています。
金利は都市銀行よりわずかに高いものの、審査が若干ゆるい傾向にあるのも地方銀行のメリットです。物件や事業の将来性に無理がなく、素行や言動に問題がなければ、融資が受けられる可能性も上がるでしょう。日頃から、担当者と良い関係を築いておくことが重要です。
信用金庫
信用金庫は個人・小規模企業を主な対象としていますが、一部では投資ローンも用意されています。都市銀行や地方銀行と比べて対応エリアが狭いため、必ずしもすべての地域で利用できるわけではありません。しかし、日頃から取引がある場合には親身になって相談に乗ってくれる傾向があります。
ほかの金融機関と比べると金利は高めですが、オーナーそれぞれの経営方針・財政状況に合わせて融資計画を立ててもらえるという点は信用金庫ならではといえるでしょう。
信用組合など
信用組合とは、中小企業・小規模事業者などをはじめとする地域・業域・職域の一人ひとりが預金しあい、目標の実現のため必要に応じて融資を行う金融機関です。中にはローンを扱っている場合もありますが、信用組合によって内容が異なるため、個別にリサーチしなければなりません。
ネット銀行、労働金庫、外資系銀行なども同様に、融資の有無を個別で確認する、金利や条件をほかの金融金庫と比較するといった調査に時間・手間がかかってしまうため注意が必要です。
日本政策金融公庫
一般的に、起業・創業融資を行うことで知られる日本政策金融公庫も、不動産投資ローンを扱っています。というのも、不動産投資は投資によって収益が得られる事業であり、ビジネスの一種です。条件さえ満たしていれば融資の対象と認められるため、選択肢のひとつとして検討しても良いでしょう。
ただし、日本政府が100%出資していることからも、営利を求める一般銀行とは若干性格が異なります。あくまでも弱者救済を存在意義としているため、事業運営において不利な立場に置かれやすい若者・高齢者、女性のほうが融資を受けやすいのが特徴です。
不動産投資におけるローン借り換えのメリット
不動産投資ローンの返済中にトラブルに見舞われたとき、ローン借り換えは収益の改善を図る上で有効な手段でしょう。しかし、キャッシュフロー計画を大きく左右することからも、自分の経営にプラスになるのか不安に感じている不動産オーナーは少なくありません。
具体的にどのようなケースでメリットがあるのかを理解して、ローン借り換えを検討する際の参考にしてください。
利回りの向上
より金利が低い他社のローン借り換えを利用することで利回りが向上し、不動産投資全体の収益が拡大することは大きなメリットです。自分のキャッシュフロー計画に合った金融機関に乗り換えることができれば、最終的に数十万円から数百万円のプラス資産が生まれるケースもあります。
さらに、プラス資金を使って不動産への再投資を行うことで経営規模を拡大することもできるでしょう。新たな投資の可能性を広げるためにも、ローン借り換えによる利回りの改善は有効といえます。
信用力が上がる
どの金融機関と取引をしているかは、不動産オーナーの信用力を判断する上で重要なポイントです。つまり、物件購入の際にローンの借り入れを行なった当初の金融機関よりも、大手の機関に借り換えすることで、自分の信用力を向上させることができます。
投資規模の拡大・新たな投資物件の購入を検討している不動産オーナーにとって、信用力は競合に勝つための武器といっても過言ではありません。また、大手金融機関との取引は、ローン審査にも有利に働きます。
不動産投資におけるローン借り換えのデメリット
ローン借り換えには、経営における収益の改善・信用力の向上といったメリットがある一方で、場合によってはマイナスに働いてしまうこともあるため注意が必要です。ローン返済の負担を軽減させるために行なったにもかかわらず、かえって返済額や経費が増えてしまうケースも少なくありません。
ローン借り換えのデメリットや注意点をきちんと把握して、自分にとって借り換えが必要か慎重に判断してください。
手数料がかかる
不動産投資ローンの借り換えを行うには、当初の金融機関から借り入れたローンを完済する必要があります。借り換え先の金融機関からの融資を用いることもできますが「一括繰り上げ返済手数料」という費用がかかる点に注意が必要です。
一括繰り上げ返済手数料の金額は、金融機関・ローン商品によって異なります。また、元の金融機関との契約内容によっては、ほかにもペナルティや手数料が発生する可能性もゼロではありません。ローンの借り換えを決断する前に、当初のローン内容をきちんと把握しておくことが重要です。
返済額が増える可能性がある
当初の金融機関よりも低金利のローンに乗り換えることで、全体の返済額は減らすことができます。一方で、借り換えローンの最長返済期間が短い場合や、借り換えを行うときの年齢によっては、融資期間が短くなるケースも少なくありません。
不動産投資ローンの最長融資期間は法廷耐用年数に応じて設定されることが多く、築年数が経過している物件の場合、法廷耐用年数が短いことから融資期間も短くなります。結果、毎月の返済金額が増えることにより、かえってキャッシュフロー計画を圧迫しかねません。ローン借り換えのタイミングには十分に注意が必要です。
金利変動の可能性がある
不動産投資ローンの金利は、変動金利・全期間固定金利・選択型固定金利の3つに大別され、ほとんどは変動金利もしくは短期間の固定金利とされています。現時点では低金利の場合も、借り換え先のローン返済中に金利が上昇する可能性はゼロではありません。
ローンは数十年かけて返済していくものですが、金利変動は社会情勢や経済に大きく左右されるため、常にリスクがともなうことを理解しておくことが必要です。
ローン借り換えの前にシミュレーションする
当初に不動産投資ローンを受けた金融機関の金利や返済残額・返済期間によっては、ローン借り換えがプラスに働くケースもあれば、反対に不動産オーナーの負担を増やす恐れもあります。ローン借り換えを検討している場合は、実際に自分にとってプラスになるか、もしくはどのタイミングで乗り換えるべきかを事前にシミュレーションすると良いでしょう。
計算式でチェック
不動産投資ローンの借り換えをしたほうがいいケースとして、「借り換えローンとの金利差が1%以上であること」「ローン残額が500万円以上であること」「返済期間が10年以上であること」の3つの条件に当てはまることが目安とされています。
借り換えによって得られる金額を算出するには「(現ローンの残額×金利差×残りの借入期間)/2」という計算式が一般的です。たとえば、現ローンの残高が1,000万円、残りの借入期間が10年、借り換えローンとの金利差が1%の場合、合計で500万円が得られることになります。
金融機関のシミュレーションサイトを利用する
もう少し詳細にシミュレーションを行いたい方におすすめなのが、一部金融期間のサイトに公開されているシミュレーションサイトを活用する方法です。希望数値を入力するだけでローン借り換え後に生じる返済額の差額を試算することができます。
ただし、シミュレーションで算出される差額はあくまでも試算であり、実際の金額とは異なるため注意が必要です。ローンの借り換えを検討する場合は、候補となる金融機関に直接相談しましょう。
ローンの借り換えをしないほうがいいこともある
前述のとおり、不動産投資ローンの借り換えは「乗り換えローンとの金利差が1%以上」「ローン残額が500万円以上」「返済期間が10年以上」という3つの条件に当てはまる場合に有利とされています。一方で、残債が少なく、残りの融資期間が短い場合にはメリットが出にくいため要注意です。
ほかにも、金融機関によっては各種手数料や保証料などがかかる場合もあり、諸費用を支払うと最終的に借り換え前と変わらないケースも少なくありません。現在のローン契約状況を見直すだけでなく、借り換え先となる金融機関に個別に相談することをおすすめします。
初心者がローン借り換えを成功させるには?
不動産オーナーの中には、初めてローン借り換えを検討している方も多いでしょう。初心者が借り換えを成功させるためのポイントのひとつに「強引に金利の引き下げを要求しないこと」が挙げられます。
不動産投資において、金融機関は効率的に資産運用を行う上で重要な役割を担う存在です。借り換え先と無理のある金利引き下げを進めることは、当初の金融機関の信用を損ねかねません。のちにトラブルを発生させないためにも、金融機関とは丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
まとめ
不動産投資において、ローンの借り換えは毎月のキャッシュフロー計画だけでなく、投資による資産運用全体を大きく左右する重要なポイントです。現在のローン契約内容や財政状況を見直すことはもちろん、ローン借り換えによって得たプラス収益の運用プランまで、総括的な計画が欠かせません。
豊富な知識・経験をもったプロフェッショナルに相談することで、より長期的に資産運用を行うことができます。優良物件探しから賃貸管理・売却まで、総合的にサポートが受けられる不動産会社を選びましょう。