不動産投資を始めたいとは思うけれど、ワンルームマンションを買えるほどの資金は持っていないし、だからといって多額のローンを組むのも怖いと躊躇している人もいるのではないでしょうか。
不動産投資というと、マンションやアパート一棟の賃貸を考える人が多いかもしれませんが、戸建てという選択肢もあります。戸建て投資は思いのほか、初心者が少額の資金しかし始めやすい投資です。そこで、戸建て投資の詳しい特徴やメリット・デメリットを紹介します。
もくじ
戸建て賃貸の不動産投資とは?
戸建て賃貸の不動産投資とは、所有している一戸建て住宅を賃貸して利益を得る投資です。不動産投資を始めようと不動産業者に相談に行くと、ワンルームマンションを勧められることが多いのですが、戸建て投資にも一定の人気があります。
これまで不動産投資の経験がない人は、戸建て賃貸を難しいと考えるかもしれません。しかし、投資対象が集合住宅か戸建て住宅かの違いはあるものの、所有する物件から家賃収入を得る仕組みは同じですから、特別に難しいことはありません。
戸建ての不動産投資をする6つのメリット
戸建て賃貸の不動産投資を検討するのであれば、まずその特徴を整理し、マンション・アパート投資と比べてどのようなメリット・デメリットがあるのか、知ることから始めましょう。戸建て投資には、不動産投資初心者にあまり知られていないメリットがたくさんあります。ここでは、6つのメリットをご紹介しましょう。
少額資金で投資ができる
戸建て投資には、少額資金で不動産投資ができるというメリットがあります。一戸建て住宅の購入価格は高額だから無理、と思う人も多いでしょう。確かに新築なら数千万円の資金が必要となるかもしれません。しかし、中古住宅であれば数百万円で購入できる物件もあります。
もちろん、安く購入できる住宅となれば、築年数が古くてリフォームしなければ賃貸できない物件も多いでしょう。しかし、新築に見えるほどの大掛かりなリフォームは必要ありません。リフォーム費用を抑えれば、購入資金とリフォーム費用を合わせても数百万円で不動産投資を始めることも可能です。
高利回りの物件を見つけられる
戸建て投資では、物件価格や経費を抑えることできるため、投資初心者しかし10%~20%といった高利回りを目指すことができます。
戸建ての場合は駅から遠くても、クルマを所有するファミリー層にニーズがあるので、購入価格を抑えることが可能です。特に昨今、テレワークが普及して毎日出勤する必要が減る傾向にありますから、むしろ郊外で環境の良い住宅は注目されています。
リフォームはできる範囲でDIYする手もありますし、キッチンや浴室などの設備も壊れていなければ取り換えず、きれいにクリーニングするだけで済ませる手もあります。しかも、マンションと違い、管理費や修繕積立金もないので、経費もあまりかかりません。したがって、戸建ての不動産投資では高利回りを十分目指せます。
入居者が決まりやすい
賃貸物件を探すとき、マンションやアパートの賃貸は数多く存在しますが、戸建ての賃貸は数が少ないため、ライバル物件が少ないというメリットもあります。マンションより戸建てに住みたいという根強いニーズも存在します。
例えば、ペットを飼っている人です。最近ではペット可のマンションもありますが、小型犬なら飼えても、猫や大型犬を飼えるマンションを探すのは大変でしょう。入居できたとしても、ペットが床や壁に傷を付けないよう神経を使わなければなりません。そのため、ペットを遊ばせることができる庭付きの戸建てを探すケースが多くなっています。
ファミリー層の需要があり、入居期間が長い
小さな子どものいるファミリー層にも、マンションでは子どもが大声で走り回ると隣や階下に響くので、のびのび育てられる戸建てに住みたいという需要があります。戸建て住宅の多くは家族で暮らすために建てられているため、そのような需要にぴったり合います。
また、保育園や幼稚園、小学校、中学校に通う子どもがいると、転居すれば転園、転校を伴ってしまうため、単身世帯より頻繁に転居することができません。そのため、一度入居すると入居期間が長くなり、空室リスクの心配が少ないというメリットもあります。
出口戦略を立てやすい
不動産投資では、物件を賃貸して家賃収入(インカムゲイン)を得た後、その物件を売却して売却益(キャピタルゲイン)を得ることができます。「出口」とは、売却のことです。戸建て投資はスタート時点で、マンションやアパートより出口戦略を考えて始めやすいのも、メリットの一つと言えるでしょう。
戸建ては土地に一定の価値があるケースが多いので売却価格が下がりにくく、どのくらいの価格で売れるか想定しやすいのが特徴です。また、入居者がいるままオーナーチェンジで売却する、更地にして売るなど、その物件に合った選択肢を検討することができます。したがって、購入時に出口戦略をある程度決めてから、投資を始めることができます。
節税対策ができる
中古の戸建て投資に限ったことではありませんが、節税対策としてのメリットもあります。確定申告の際、減価償却費を計上できます。木造の法定耐用年数は22年ですから、例えば築15年の中古住宅ならば減価償却期間は7年、また法定耐用年数を過ぎた住宅しかし4年の減価償却期間があります。
例えば、築35年の物件を360万円(土地:240万円、建物:120万円)で購入し、180万円かけてリフォーム、月5万円の家賃で貸しているとします。減価償却の対象となるのは建物とリフォーム費用、減価償却期間は4年ですから、減価償却費は75万円/年となります。家賃収入は60万円/年ですから、減価償却費を引けば15万円の赤字です。減価償却期間は不動産収入に課税されることなく、赤字15万円は確定申告でサラリーマン収入と相殺できます。
戸建ての不動産投資をする3つのデメリット
何かとメリットの多い戸建て賃貸の投資ですが、もちろんデメリットもあります。戸建て賃貸の投資を始めるのであれば、デメリットもしっかり知って対策を立てておくことが重要です。ここでは、3つのデメリットを紹介しましょう。
空室になると収入が入らない
例えば一棟マンションや一棟アパートの経営であれば、空室が一つ出ても、他の部屋に入居者がいることで収入が入ってきます。しかし、戸建て投資で入居希望者が見つからない場合には収入は全く入りません。
戸建て投資は経費が少ないとはいえ、もしローンを組んで購入した場合には、収入がなくても毎月返済を続けなければなりません。空室期間が長くなれば大きな負担となります。そのため、入居者から継続して家賃収入を得られるように、戸建て投資では空室対策をしっかり検討しておくことが重要です。
修繕の手間やコストがかかる
少ない資金で戸建て投資を始めたいと思うと、対象となる物件は中古住宅、しかも築年数がかなり経過した物件となるでしょう。したがって、物件の状態によっては、修繕をしなければ入居希望者が見つからないことも考えられます。
住宅の内部だけではなく、外壁や屋根の修繕もした方が良いとなれば、想定外のコストがかかるかもしれません。また修繕が必要となれば、複数の業者から見積もりを取ったり、修繕工事がしっかり行われたか確認したりと、コストだけでなく手間がかかることもデメリットといえます。
投資規模の拡大スピードは遅い
戸建ての不動産投資は投資規模の拡大に時間がかかります。アパートならば、1棟で10室のアパートを一度買えば、10室分の利益を得ることが可能です。一方、戸建て1軒の購入では1室分の利益しかありません。順調に利益が出るようなら、当然、投資を拡大したいと考えるでしょう。
ところが、1軒ずつ物件を探して購入し、リフォームして貸し出すには時間がかかります。結果、2軒目、3軒目を購入して投資規模を拡大するスピードが遅くなってしまいがちです。
戸建て投資を始める場合の注意点
戸建て投資を始めるにあたって、うっかりしていると見過ごしてしまいやすい4つの注意点を紹介します。あらかじめ注意点を知っておけば、投資物件を決めてから「こんなはずじゃなかった」とがっかりする失敗を避けることができ、投資が成功する確率も高くなるでしょう。
融資審査に通りにくい
金融機関から融資を受けて戸建て投資を始めようと思う場合、中古住宅は不動産としての評価が低いために審査を通らないことがあるので、注意が必要です。特に22年以上経過した木造住宅の場合、耐用年数は22年ですから、建物の価値が低いとみなされ、土地だけの評価額となってしまいます。
できれば自己資金で購入するか、融資を受けたい場合には日本政策金融公庫からの貸付を検討するとよいでしょう。
1軒だけでは収益を得にくい
少額の資金で始めた戸建て投資ならば、高額な家賃設定は難しいでしょう。したがって1軒を所有しているだけでは満足のいく収益は得られないかもしれません。
1軒ずつ投資物件を増やして拡大するには何年もかかりますから、短期的なスパンで大きな収益を得る投資モデルではありません。それよりも、少額の資金を投入しながら、長期的な安定収入を狙う投資モデルと考えた方がよいでしょう。
致命的な欠陥は修復ができない
中古住宅には購入時に分からなかった欠陥があることも考えられます。例えば、シロアリの食害や雨漏りによる腐食など、建物の基本構造に致命的な欠陥がある場合は、必ずしも修復ができるとは限りません。
せっかく立地が良く、高利回りが見込める物件であっても、修復できない欠陥があるのでは賃貸するのは難しいでしょう。ただ、こうした欠陥は経験が浅いとなかなか見つけることができないので注意が必要です。
経年劣化の損害は火災保険の対象外となる
昨今、大きな災害で被害を受けた住宅に関するニュース映像を目にすることがあります。火災はもちろんのこと、できれば災害による被害にも火災保険で備えておきたいものです。ただ気をつけておきたいのは、多くの場合、経年劣化による損害は補償の対象外となり、補修費用が所有者の全額負担となることです。
また、築古物件の場合、保険会社によっては加入できないこともあります。もし、加入できたとしても保険料が割高になることもあるのを承知しておきましょう。
戸建ての不動産投資で失敗するケース
戸建て投資は初心者にもおすすめの不動産投資ですが、残念ながら失敗した人がいるのも事実です。ここでは、初心者に多く見られる失敗例を2つ紹介します。同じようなミスをしないよう、失敗例から学ぶことで成功へ近づくことができるでしょう。
【ケース1】想定していた以上のリフォーム費用がかかった
Aさんが初めての不動産投資として中古住宅を探していたところ、予算内で手ごろな物件を見つけました。築年数が45年と古い戸建てでしたが、周囲の環境も良く、キッチンや浴室の設備は比較的新しいため、リフォーム費用もあまりかからないと思われました。
ところが購入後、リフォーム業者から予想以上に大きな工事が必要と知らされました。床下の給排水設備が劣化して水漏れしているというのです。購入前に気づかなかった雨漏り箇所も複数あり、想定外の高額なリフォーム費用がかかってしまいました。
【ケース2】入居者がなかなか決まらない
Bさんは1軒目の戸建て投資が順調であることから、2軒目を購入することにしました。2回目の物件選びということで、1軒目の経験を活かして物件を選び、ローンを組んで購入しました。リフォーム費用も予算内で収まったため安心していました。
ところが、賃貸に出したものの入居者がなかなか決まりません。そのまま数カ月が過ぎていき、収入はゼロですが、ローンの返済は毎月行わなければなりません。周囲の戸建て需要を改めて調査したところ、空き家となっている物件が周囲に複数あると分かりました。
不動産投資初心者が戸建て投資で成功しやすい理由は?
戸建て投資にはメリットだけでなくデメリットもありますが、両方を理解した上で、初心者でも成功しやすいと言える理由はどこにあるのでしょうか。改めて、戸建て投資が不動産投資初心者でも成功しやすい理由を2つ紹介します。
中古物件なら高い利回りに期待できるため
戸建て投資では、ターゲットを中古の戸建てに絞ることで高い利回りを期待できます。築古の戸建て住宅は交渉によって、かなり低い価格で購入することも可能です。しかも車を所有するファミリー層などに戸建て需要があるので、郊外かつ多少高めの家賃設定でも入居者が見つかる可能性が期待できます。
したがって、ワンルームマンションであれば、期待できる利回りは高くても5%~10%程度ですが、中古の戸建てであれば10%~20%の利回りを狙うことも可能となります。
DIYリフォームでコストを抑えられるため
築年数が経過した中古の戸建て住宅の多くは、賃貸に出すにあたってリフォームを必要とします。ただ、リフォーム費用を節約することは可能です。例えば、リフォームを業者任せにせず、可能な範囲でDIYすればかなりコストを抑えることができます。
もちろん、専門業者でなければできないリフォームも多くあります。例えばトイレのウォシュレットの交換作業、窓の破れた網戸の張り替えなどです。したがって、可能な範囲でDIYに挑戦してはいかがでしょうか。
戸建ての不動産投資で狙い目の物件は?
戸建て投資を成功させるには、中古物件をできるだけ割安に購入することです。ところが、誰もが買いたい物件はなかなか割安には購入できません。一方、皆が避けるけれど、実は買い得な物件も存在します。ここでは、そのような狙い目の物件のヒントを紹介しましょう。
経年劣化が進んでいる物件
経年劣化が進んでいる物件には、安く購入できるチャンスがあります。例えば、雨漏りやシロアリの食害、外壁塗装のチョーキング(外壁にチョークのような白い粉が見られる状態)が見られるような物件は、多額のリフォーム費用が必要となるため買い手がなかなか現れません。
また、老親が長年住んでいた古い家を、遠くに住む子が相続した場合なども「早目に手放したい」という気になっていることがあります。このようなケースも、交渉によって大幅な値引きができる可能性があります。
競売間近の物件
住宅ローンの返済が滞り、差し押さえを受けて競売にかけられそうな任意売却物件も狙い目の物件と言えるでしょう。
一般に、競売による売却価格は市場価格に比べて2~3割ほど低くなります。また、競売費用もかかるため、所有者はできれば任意売却で少しでも高く売りたいと考えるでしょう。そのため、競売が間近に迫っている物件は売主が売り急ぎ、市場価格より安い価格で売買が成立する可能性が高くなります。
瑕疵担保責任がない物件
中古物件には、購入前には分からなかった瑕疵が存在することがあります。そのため、契約前から存在したけれど契約後に明らかになった瑕疵に対し、売主が修繕の責任を負います。これが瑕疵担保責任です。
瑕疵担保責任を免責することを条件に交渉すれば、大幅な値引き交渉が成立する可能性が高くなるでしょう。ただし、免責しても大きな損害を被ることがないか、どのくらいのリフォーム費用がかかりそうか、建物を見極める知識が必要となります。
戸建ての不動産投資で成功するためのポイント
戸建て投資を成功させるには、物件探しをする前に押さえておきたいポイントがいくつかあります。これらのポイントを知らなかったら失敗するというわけではありませんが、心得ておけば成功に近づけるので、ぜひ参考にしてください。
購入前の時点で出口戦略を立てておく
築年数が古い中古物件に投資する場合、購入する前の段階から出口戦略を立てておくのが成功のポイントとなります。もちろん、貸せるだけ貸し続けることも可能ですが、いつかは劣化が進んで、これ以上の修繕は割に合わないという状態になるでしょう。そうなってから出口戦略を考えるのでは、取れる対応が限られてしまいます。
中古の戸建ての出口戦略には、更地にして売却する、または新築して賃貸するなどが考えられます。購入とリフォームにかかった金額を回収できたら、購入時より高い金額で売却するという出口戦略も有効です。物件の立地条件などにより考えられる出口戦略は異なりますので、購入前から最終的にどうするかを考えておきましょう。
不測の事態に備えられる知識を身に付けておく
戸建て投資は物件選びや売買、リフォームなど、さまざまな面での知識が必要になります。例えば、どのくらいのリフォームが必要か、瑕疵担保責任がどうなっているか、再建築不可の土地ではないかなど、知識がなければ購入すべき物件かを判断ができません。
これから不動産投資を始める人には難しく思えるかもしれません。しかし、後になって想定外の事態が起こらないよう、また万一起こっても対応ができるよう、できるだけ必要な情報を把握して判断できる知識を身に付けておくと安心です。
不動産投資家の人脈を活用する
不動産投資に関する知識を得る方法というと、本を読むことを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、不動産投資家の仲間を作って、不動産投資に関するノウハウを教えてもらったり、情報を共有したりすれば生きた知識を得ることができます。
仲間を見つけたいと思ったら、セミナーに参加してみてはいかがでしょうか。セミナーでは不動産投資に役立つ知識を聞けるのはもちろんのこと、何回か参加していると顔見知りもできてきます。そこから人脈を広げていけば、経験者からDIYのコツを聞けたり、良いリフォーム業者を紹介してもらえたりすることもあるかもしれません。
戸建て投資だけじゃない!魅力的な物件への投資を検討しよう!
戸建て不動産投資は、初心者でも始めやすく、メリットの多い投資です。しかし、物件の数がマンションやアパートほど多くはないので、最初から戸建てにターゲットを絞ってしまうと、ときに良い物件に出会えないこともあります。まずは戸建ても視野に入れたうえで、間口を広げて探してみてはいかがでしょうか。
物件選びでは瑕疵やリフォームのことなど、経験が少ないと分からないことも多いでしょう。不動産投資について分からないことは、信頼できるプロの不動産投資会社に相談するのがおすすめです。多くの経験に基づいたアドバイスを得ることで、安心して不動産投資を始めることができるでしょう。
まとめ
戸建てへの投資は少額でも始められ、なおかつ初心者でも成功しやすい不動産投資です。築古の中古物件を狙えば数百万円でも購入できるでしょう。駅から遠い立地でも、戸建てはファミリー層から一定の需要があります。リフォーム費用は工夫次第で抑えられるため、高い利回りを狙うことができるでしょう。
ただし、物件を見極める経験や、リフォームへの知識がないと思わぬ失敗をすることもあります。できるだけ必要な知識を身につけ、それでも不安を感じたら、信頼できるプロに相談するのがおすすめです。