節税対策や個人年金、さらには保険の代わりとして不動産投資が注目を集めています。不動産投資を行う際は高額な資金が必要です。そのため、金融機関で融資を受けて始めるのが一般的です。
しかし、特に不動産融資が初めての方だと、融資を受けるためにはどうすれば良いのか分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、不動産投資で融資を受ける流れについて解説していきます。必要な知識も徹底的に解説しますので、ぜひチェックしてみましょう。
もくじ
不動産投資の融資を受ける条件とは
余程の資金をお持ちでない限り、不動産投資を行う際には金融機関からの融資を受けることが一般的です。しかし、融資は誰もが受けられるわけではありません。融資を受けるための条件があり、その条件をクリアしている方のみ融資を受けることが可能です。あらかじめ融資を受ける条件や仕組みを理解して、スムーズに計画を進めましょう。
不動産投資で融資を受ける条件
不動産投資の融資を受ける場合、さまざまな条件をクリアする必要があります。もちろん、融資を受けるための条件は各金融機関によっても異なります。以下に、一般的な例を挙げてご紹介します。
年収400万円以上
金融機関でも異なりますが、年収はおよそ400万円が最低基準とされています。個人事業の場合、総売り上げから経費を差し引いた所得が審査対象です。
安定した雇用形態
正社員であることが条件です。また公務員、医師、士業の方は安定していると見られます。
勤務年数2年以上
勤務年数が多いほど信頼度が高くなります。転職を繰り返しているようだと、債務の支払いが不可能となってしまう恐れがあるため、信頼度が下がります。
健康である
健康状態に問題があると働けず、債務の返済ができなくなってしまうためです。 団体信用生命保険の加入も難しくなります。
投資先が収益性の高い物件である
収益性が高い方が、債務の返済能力が高いと判断するためです。
担保力の高い物件である
返済不可能となった場合、より担保力の高い物件である方が、金融機関側としては安心であるという理由です。
融資を受けられる画一的な基準が明確に決まっているわけではありません。「返済能力が高い人」ほど融資を受けられる条件をクリアしていることになります。
不動産投資の融資の仕組み
不動産投資の融資は、「事業」への融資となります。よって、一般の方が行う「住宅ローン」とは異なる融資です。
住宅ローンの場合であると、その名の通り自分の住む家やマンションの購入資金を得るための融資となります。そのため、融資を受ける本人の返済能力が一番に審査されることとなります。
不動産投資の場合、「不動産投資」という事業に融資を行うので、本人の年収や雇用形態などの返済能力はもちろんのこと、事業内容も審査の対象となります。事業が継続的できるのか、採算が取れるかなどを審査されます。
住宅ローンと混同して軽い気持ちで融資の申請をした場合、事業計画によっては融資が受けられないことも考えられます。不動産投資における融資はビジネスと考えましょう。
不動産投資で融資を受けるまでのステップ
実際に融資を受けるまでには何段階ものステップを踏む必要があります。どのステップも非常に重要であり、確実に行うことが求められます。また、全くのゼロから不動産投資を行う場合は、不動産会社と提携しているローンを利用するのが一般的です。
不動産会社が間に入ることで、手続きや書類のガイダンスや処理を代行してくれるので非常に心強いと言えます。
金融機関の決定
最初に行うべきは融資を依頼する金融機関を決めることです。決める際は、いきなり金融機関に依頼を行うのではなく、名前を伏せて「事前打診」を行います。この事前打診をいくつかの金融機関に行うことで、融資を依頼する本人の条件で融資可能な金融機関を探します。
また、この事前打診によって、いくらまで融資可能かを把握することができます。どこの金融機関でいくらまで融資可能かが分かるので、今後の計画を立てられるようになります。
ローン申請の下準備
依頼する金融機関が決まったら、申請を行う前の下準備を行います。申請を行う際には、金融機関への申込書以外にもさまざまな書類が必要となるので、全てを用意しましょう。
ローンを申請する際に必要となる書類の例は以下の通りです。
物件資料
- 投資物件の概要表
- 家賃表
- 建物図面
- 公図
- 売買契約書
- 建築確認済証
- 購入物件の契約書
融資を受ける本人にかかわる書類
- 身分証明書
- 印鑑登録証明書
- 住民票
- 前年度源泉徴収票
- 3年分の確定申告書
- 職歴書
- 勤務先の会社が分かる書類
- 賃貸借契約書
- 自己資金が分かる書類
以上のような書類が必要となります。「物件資料」に関しては、不動産会社で用意してくれます。必要となる書類は各金融機関で異なりますので、窓口となる不動産会社に確認を取りましょう。
審査申し込み
申請書類が全て整ったら、次はいよいよ審査の本申し込みです。提出する書類全てに不備のないことが確認されたら、融資の審査が行われます。
融資は「信用照会」という方法で行われます。信用照会は、審査を行う金融機関が信用情報機関へ申請者の信用情報の問い合わせを行うことです。申請者が提出した申込書の記載内容と、実際の信用情報に異なる点がないかを確認するために実施されます。
審査期間は書類の提出を行ってから数週間から1ヵ月ほどはかかります。時間がかかりますので焦らずにゆっくりと待ちましょう。
審査結果(融資決定)の通知
審査に通過したら、融資決定の通知が送付されます。しかし、融資決定の通知が届いたとしても注意しなければいけない点があります。
「融資決定=全ての条件が希望通り」とは限りません。審査によっては、金利や借入期間などが希望通りの内容にならない可能性があります。そのため、予定していた計画通りに事が進まないこともあり得ます。
審査が完了する前に今後の計画を立てることはとても重要ですが、必ずしもその計画通りにいく保証はないと頭の中に入れておきましょう。
融資の手続き
晴れて審査に合格したら、実際に融資の手続きを行いましょう。実際に金融機関と融資の契約を結ぶ際は、「金銭消費貸借契約書」を取り交わすことになります。この書類に記入を行うことで、融資の契約が公式に結ばれたことになるのです。
また、融資の対象となる不動産を担保とする「抵当権設定契約」も行われます。申込者が病気や死亡など、万が一のことがあった際に残債を完済するための「団体信用生命保険」の契約も同時に行います。
融資の実行・物件の購入
契約書類を全て取り交わしたところで、晴れて融資が実行されます。融資が実行されれば、物件を購入することができるでしょう。
住宅ローンと異なり、不動産投資は個人と投資先物件の両方が審査対象です。金融機関で審査の基準や見方などは異なります。しかし、健全な財務状況や事業計画などはどこの金融機関でも審査の対象です。
個人が健全な状態であっても、投資対象の物件で審査に引っかかることも考えられます。どんなところが審査対象で見られているのか、確実に把握しておくようにしましょう。
不動産投資の融資でチェックされるポイント
先にも解説したように、不動産投資の融資でチェックされるポイントは、申請者本人と投資対象の物件です。申請者の信用度が高かったとしても、投資対象物件が健全でないと判断されれば融資は下りない可能性がありますし、逆もまた然りです。チェックされるポイントを把握し、できれば少しでも信用度を上げるようにしましょう。
属性
個人の属性は厳しく審査が行われます。ローンの支払いが続行不可能となってしまうことを避けるため、申請者の「信用度」をチェックしているのです。ポイントとしては、先にも解説したような年収や雇用形態、勤務年数などです。
そのほかに、勤務先の属性も関係します。勤務先が上場企業であると信用度は非常に高まります。上場していなくても、それに準ずる規模であれば信用度は高い傾向です。
中小企業や自営業である場合、信用度は低い傾向にあります。個人で金融資産を持っていたとしても、審査は厳しい可能性があるので注意しましょう。
自己資金
自己資金の額もチェック対象となります。自己資金とは、ローンの頭金のことを指します。申請者の頭金が多いほどローンの借入額は少なく済みます。融資を行う金融機関側としては頭金が多いほど安心です。
各金融機関で異なりますが、融資を行う条件として、1割か2割の頭金を用意することが融資の条件であると定めていることがあります。
自己資金は頭金以外でも必要です。不動産を購入すると、不動産価格の5%から10%ほどの登記移転費用や仲介手数料がかかります。全く自己資金がない状態での不動産投資は避けましょう。
物件の情報
投資先の物件情報は重要な審査対象です。「投資先の物件の収益性が高い」ことと「投資先の物件の担保力の高い」ことをチェックされます。
物件の収益性が高いということは、「ローンの返済能力が高い」と評価されます。収益性の評価は表面利回りではなく、維持費を差し引いた「実質利回り」です。物件の選択をする際は実質利回りに注目しましょう。
収益性が高い物件は「担保」としての評価も高くなります。ローンが返済不能となった場合、金融機関側からすれば、より担保力のある物件の方が安心です。物件選びの際は融資の審査のことを考えて選ぶ必要もあります。
不動産投資の融資で有利な条件を引き出すポイント
融資を受ける際、自分の求める有利な条件で審査に合格すれば、思い描いた計画通りにスタートできます。融資の審査を受ける前に、できることは全て行っておくことが重要です。審査を有利にするには手間がかかります。しかし、苦労してでも手間をかけることで、今後長期的に続いていく計画を、より良い条件にすることが可能です。
属性を高める
融資の審査前に、できるだけ属性を高めるようにしましょう。属性は、勤務先や勤続年数、年収などが挙げられます。
急に属性を高くするというと難しいかもしれません。しかし、前々から不動産投資を行うことを計画していた場合は、徐々にでも属性を高くすることが可能です。
勤続年数がちょうど3年くらいであったら、不動産投資を計画しながら勤続年数を増やしていくのもありです。貯金がもっと貯まるまで時間をかけるのも一つの手です。少しでも金融機関側に「この人ならしっかりと返済してくれる」と思ってもらえるように行動しましょう。
購入物件をマンションにする
アパートよりも、マンションを購入対象とした方が有利になる傾向にあります。特に、1%前後の低い金利や頭金なしのフルローンはマンションの方が有利です。
マンションが有利になる理由は以下の通りです。
- 駅から近いなど、アパートよりも立地条件が良く、入居者が入りやすい
- 賃料の下落スピードがアパートよりも緩やかである
- 中古市場での売買が行いやすい
- 換金性や流動性が高い
- RC造により耐用年数が47年と長期である(アパートに多い木造は最大22年)
アパートは利回りの高さが長所ではありますが、融資の金利が高くなる傾向にあります。表面利回りのみではなく、融資金利も考慮してから計画を立てましょう。
融資に強い不動産投資会社を選ぶ
融資に強い不動産投資会社を選ぶことで、より一層自分の融資を有利な条件にすることが可能です。融資を申請する場合は、一般的に不動産投資会社を介して金融機関に申請します。融資に強い不動産投資会社の特徴は、金融機関との提携数が多いことです。
融資を申請する際に重要なのが、自分を最も高く評価してくれる金融機関を選ぶことです。提携数が多ければ、より自分のことを高く評価してくれる金融機関で融資の申請を行うことが可能になります。
不動産投資で法人化する
不動産投資を個人事業主として行うのではなく、法人化することで融資を有利にすることができます。法人の場合、決算書を作成するため数値の管理がしっかりとしていることから信用度が高くなります。決算書を見れば、申請者の事業が軌道に乗って順調なのか、経営状況が思わしくないのかが分かりやすく、信用性の基準とすることが可能です。
個人事業主の場合、青色申告で複式簿記を行っていたとしても、法人の事業や業績管理の責任の高さには敵いません。そのため金融機関側は、事業や業績の中身が見えて信頼度の高い法人の方が、より信用性が高いと判断する傾向にあります。
不動産投資ローンの返済実績を作る
不動産投資ローンの返済実績があれば、有利な条件を作るための交渉を行えます。既に不動産投資でローンを組んでおり、何年間もの返済を行っている場合は、金利を下げられる可能性があります。
今組んでいるローンを、より条件が良くなるほかの金融機関に乗り換えたい旨を伝えてみましょう。そうすると、ほかの金融機関に乗り換えをしてほしくないために、今よりも金利を下げてくれる可能性があります。言ってみるのはタダなので、試してみる価値はあります。
不動産投資の融資で重要なローン金利
不動産投資の融資においては、ローンの金利がとても重要です。金利の種類をどうするかで、将来的に支払うトータルのローン返済額が変わります。金利の種類としては、「固定金利」と「変動金利」があります。それぞれに特徴があり、どちらを選ぶかは個人の自由です。将来を見据えて、どちらが良いのかをしっかりと考えることが大事です。
固定金利と変動金利の違い
「変動金利」は金利が半年ごとに見直される方式です。しかし、金利が一気に上がった場合、返済額も一気に増大して生活に影響します。そのため、緩和措置を設定しているローンも多くあります。金利上昇が発生した場合、5年間はそのままの金利であったり、今までの返済額の1.25倍を上限とする措置があったりします。
メリットは、金利が下がった場合ローン返済額も下がるので、余裕が出た分を貯蓄やその他の用途に使えることです。
「固定金利」は、返済完了まで同一の金利を支払っていく方式です。よって、変動金利に設定される金利よりも高く設定される傾向にあります。ローンによっては、当初3年固定で、その後は変動というようなローンもあります。
メリットは、金利が変わらずローンの返済額が一定なので、計画が立てやすく管理もしやすいことです。また、金利が上がらないという安心感を持つこともできます。
現在は変動金利がお得
現在では、固定、変動の両方の金利が低い水準にありますが、変動金利を選んだ方がよりお得です。変動金利は、通常固定金利よりも安く設定されています。金利が上昇したとしても、実際にローンの金利が上がるのは半年に1回でタイムラグがあります。
また、金利が一気に急上昇するということは、あまり考えられません。金利が一気に上がると国民の生活や経済が混乱してしまうので、実際は様子を見ながら徐々に引き上げを行う傾向にあります。よって、変動金利は急激に金利が上がるものではありません。現時点では、より金利の安い変動金利の方がお得と言えるでしょう。
不動産投資の融資を取り巻く状況
不動産投資の融資を取り巻く状況は厳しくなっています。金利的には、マイナス金利政策の影響で低水準であるため良い条件と言えます。しかし、融資を受けるまでが厳しくなっており、不動産投資自体を行えない可能性もあります。金利が低くても融資を受けらえなければ元も子もありません。ここでは、現在の状況を解説していきます。
低金利のローンが多い
現在は、マイナス金利政策の影響で、超低水準な金利であると言えます。金利はそれぞれの金融機関で設定が異なります。「短期プライムレート連動」や「長期プライムレート連動」などの種類がありますが、1%後半から2%ほどの設定とする金融機関が多くなっています。
後述しますが、低金利であっても、融資が厳しくなっているというのが現状です。しかし、中には融資の審査が緩い代わりに、金利を高くするといった金融機関もあります。
個人投資家への融資は厳しい情勢
金利は低くても、融資の審査は厳しくなっています。昨今、金融機関は個人の不動産投資の融資を縮小する傾向にあります。そのため、これから不動産投資を行おうとしている方にとっては、融資を受けるのがより厳しいものになると予想されます。
某シェアハウス運営会社が倒産したことにより多くの不動産投資家が被害を被った事件を受け、金融機関は不動産投資の融資の引き締めを行い、融資の審査をより厳しくする傾向にあります。
今まで通っていた属性であっても、今後は審査が厳しくなって通らない可能性もあります。今後の不動産投資においては、多くの金融機関と提携して信頼性の高い不動産投資会社を選ぶことで、金融機関の信頼を得ることが重要となります。
各金融機関の融資条件
金融機関によって融資条件に特徴があります。メガバンクと一部のノンバンクは、申請者の居住地や投資対象物件の所在地は審査に含まれません。条件がある程度決まっており、その条件をクリアしていれば融資を行う傾向にあります。
地方銀行や信用金庫などは、支店から近距離に申請者の居住地か勤務地、そして投資対象物件もないと、基本的には融資を行いません。
しかし、それぞれの金融機関によって詳細は異なるため、一概に全てが同じ傾向にあるとは限りませんので注意しましょう。
まとめ
不動産投資で融資を受ける際には、なるべく有利な条件を引き出すようにポイントを押さえる必要があります。しかし、不動産投資家を取り巻く状況は厳しくなっており、融資が簡単に下りない傾向にあるため、信頼性の高い不動産投資会社を選ぶ必要があります。