近年、副業としてもマンション投資に注目する方が多く見受けられます。マンション投資を始めようと考える際、「どのくらいの税金を納めなければならないのか」ということを心配される方も多いのではないでしょうか。
会社員の場合、税金に関しては会社側で処理してくれていることも多く、詳しくは知らないという方もいるでしょう。しかし、マンション投資で得た収入は自身で確定申告をする必要があります。
また、日本は累進課税制度であるため、所得が増えれば増えるほど徴収される税率がアップする仕組みになっています。収入が増えた結果、税金が多くかかってしまわないか心配に思う方もいるかもしれません。
実は、マンション投資を行うことで税金の節約になるというケースもあります。所得税や住民税といった一般的な税金や相続に関する税金は節約可能です。
マンション運営は、マンションの購入から管理まで各場面で支出をともないます。特に投資開始直後は大きな支出が想定されます。支出のうち経費に該当するものとしないものを把握しておくことも、税金の支払いに大きく影響します。
そこでこの記事では、マンション投資で節約ができるとされる税金とその仕組みについてご紹介します。マンション投資に関わる支出の内訳と経費計上の有無についても項目ごとに解説するので参考にしてください。この記事を読むことで、マンション投資で節税する際のポイントが分かるでしょう。
もくじ
マンション投資で節税できる税金
マンション投資を行うと、納める税額を節約できます。大きく影響を受けるものとしてあげられるものが、相続税、所得税、住民税の3つです。
なぜ納める税額が変わってくるのでしょうか。ここでは各税金の解説と、マンション投資により納税額が節約できる理由について解説します。
相続税
相続税とは、一定額以上の遺産を受け取った場合に発生する税金です。税率は相続する遺産の金額によって異なります。
同じ遺産金額を相続する場合、現金で相続するのと不動産として相続するのとでは税額に大きく差が出ます。建物に対する相続税評価額(相続税の対象となる金額)は建物建築費の約50%〜60%となるためです。この建物を賃貸用にする場合は、さらに30%の割引が可能です。
現金での相続の場合は、金額に対して100%課税対象となるのと比べて、節税効果はとても大きいといえるでしょう。
所得税・住民税
所得税とは所得に対し課せられる税金を指します。また、住民税は都道府県民税と市区町村税を合わせたものを指します。
マンション投資で得た収入も税金の対象となりますが、投資初期の段階では経費が多くかかり不動産所得が赤字になるケースは多く見受けられます。その際、給与所得と不動産収入は損益通算することが可能です。確定申告することで、給与所得で天引きされた税金の還付を受けられます。
またマンション投資として法人化することにより、さらなる税金の節約も可能です。累進課税制度のため、個人の所得税は最大55%まで上がります。所得が800万円を超える段階で個人と法人では税率が逆転するので、計画的に法人へと切り替えることを検討しましょう。
マンション投資で経費に計上できるもの
マンション投資をする上でかかる諸経費には、どのようなものが含まれるのでしょうか。税金は家賃収入から諸経費を引いた金額を対象に課税されます。
投資開始当初は支出が特に大きいことが予測されるため、経費に該当するものを把握しておく必要があります。余分な税金を支払わなくてすむように、もれなく計上できるようにしておきましょう。
1. 管理費
管理費とは、投資したマンションが問題なく機能するための管理にかかる費用です。清掃を含む日常メンテナンスなどが該当します。
また、マンションの購入者になると同時に「マンション管理組合」の一員となります。マンション管理組合はマンションの維持・管理業務を円滑に行うために設けられており、法律上必ず加入することになっています。管理組合を運営するための費用も、管理費に該当します。
2. 修繕積立費
修繕積立費とは、定期的な修繕工事のために毎月入居者から徴収し積み立てておくお金を指します。マンションの維持のためには、外観や廊下、エントランス、エレベーター、配管関係など共有スペースの定期的な修繕が必要です。
マンション一棟でも区分でも、実際に修繕が必要となったときはオーナーが支払います。修繕が発生したときに速やかに対応できるよう、積み立てておく必要があるでしょう。
3. 損害保険料
損害保険には各種ありますが、主に火災保険料が該当します。火災保険は実際に火事が起きたとき以外にもカバー範囲が広く、さまざまな事例に対応可能です。
たとえば、入居者が泥棒に入られてしまった場合も火災保険の対象です。入居者の家財などは入居者の火災保険で対応ができますが、壊れた玄関のドアや傷ついた壁などはオーナーの火災保険が適用されます。
4. 管理会社に支払うお金
マンション運営を円滑に進めるためには、細かな管理業務が数多くあります。この業務はオーナー自身が1人で請け負うのではなく、管理会社に代行してもらう「管理委託方式」をとることが一般的です。
管理委託方式をとる場合、管理会社に管理料として手数料を支払います。管理の内容は会社によって異なりますが、入居者の募集、賃貸の集金、共用部の管理、ゴミや騒音に対するクレーム対応などを行ってくれます。管理手数料は、毎月の家賃収入の約5%前後が一般的な金額です。
5. その他
上記記載した項目以外にも、経費計上できる費用は多岐に渡ります。以下に、経費計上が可能な項目について記載します。
- マンション購入時の仲介手数料
- 不動産所得税
- 登録免許税
- マンション投資に関わる人物との交際費
- 固定資産税
- 減価償却資産(建物や建物に付属する設備など長期的に利用するもの)を購入した際の減価償却費
- 入居者が退去した後の破損部分の修繕など、細かなリフォーム費用
- 借入金の利息
- 物件下見、管理会社との打ち合わせ時に発生した交通費
- 管理会社との連絡時の通信費
- マンション投資に関する書籍などを購入する図書費
- 消耗品、など
マンション投資による収入を得るために発生した支出に関しては、基本的にはすべて経費にできます。
マンション投資で経費に計上できないもの
マンション投資に関わる支出のうち、収入を得るために必要な支出に関しては、ほとんどが経費として計上可能です。しかし、一部経費に計上できない項目もあります。
ここからは経費に計上できない項目と、その内容・理由について解説します。誤って計上することがないよう把握しておきましょう。
1. 不動産の売却で生じた譲渡損
所有していたマンションを売却する際に生じた損失のことを譲渡損、利益のことを譲渡益といいます。これらは一見マンション投資に関わる費用なので、経費計上できるように感じるかもしれません。
しかし不動産所得としての扱いではなく、譲渡所得として処理されます。マンション投資の必要経費とは所得区分が異なるため、経費計上はできません。
ただし、売却にともない生じる仲介手数料や建物を売るために要した費用、測量費、立ち退き料などは経費計上することが可能です。
2. ローンの元本
マンション購入時の元金は、まさにマンション投資に必要不可欠な費用です。そのため経費計上できると思われがちですが、経費計上の対象外となります。
マンションを購入した時点で、購入総額を経費として計上しているためです。ローンの返済はあくまでも一度計上した費用内のものとなるので、経費にすると二重計上になってしまいます。なおローン返済にともなう利息に関しては経費計上の対象です。
3. 自宅の修繕費や保険料
投資したマンションのうち1室を自宅として使用しているという場合もあるでしょう。しかしこの場合、自宅で使用している1室に関しては経費計上の対象外です。
経費計上できる対象の支出とは、あくまでも「マンション投資で収入を得るためのもの」とされています。自らが住んでいる場合、「収入を得るためのもの」とは考えにくいと判断されます。私生活にかかる費用なのか、不動産に関わる費用なのか線引きがしづらいという問題点もあります。
マンション投資で節税する際の注意点
マンション投資で節税は可能ですが、長期的な運用を続けていくためには節税ばかりに気を取られているのは危険です。ここでは、マンション投資で節税をする際の注意点についてご紹介します。
節税効果が大きいのはあくまでも申告上の赤字がある場合
マンション投資で節税効果が大きいのは、マンション投資の所得が赤字であるときです。投資初期時は諸経費が大きくかかるため赤字になりやすいですが、減価償却費の減少やローン返済にともなう利息の減少により、年数を経るにつれ経費は減少していきます。
そのため、いずれ時期が来れば黒字へと転換するケースが多いでしょう。黒字になると同時に節税効果のある期間は終了です。計画的に収入を生み出せるように、マンション投資を考える必要があります。
ローン返済の場合は、ローン元本は経費計上ができないため会計上は黒字になっているケースもあるでしょう。しかし、キャッシュフローは赤字となってしまい黒字倒産という事態にもなりかねません。これでは本末転倒です。あくまでも収入を得るためにマンション投資をすることを目的としましょう。
極端に赤字だと銀行から融資を受けづらくなる
あまりにも赤字経営が長期化した場合、銀行の審査が厳しくなり融資を受けにくくなるというデメリットもあります。
購入時だけでなく、マンションを維持管理していく中で定期的な修繕や固定資産税の支払いなど多額の費用が必要になるタイミングがあります。赤字経営が続いていると銀行からの信頼がなくなり、追加融資を断られてしまう可能性が出てきます。
融資を受けられないと、予定していた修繕などができなくなってしまうかもしれません。修繕の施されていない物件には人が集まらず、より赤字が深刻化してしまうというケースも考えられるでしょう。また、ほかの物件を購入したい場合にも同じ理由で融資が受けづらくなってしまいます。
まとめ
マンション投資において、収支が赤字となっているうちは大きく税金がかかることはなく、節税効果も得られます。マンションの収入を得るためにかかった支出に関しては、多くは経費計上が可能です。
しかし、マンション投資の基本的な目的は収入を得ることです。節税は初期にとどめ、計画的に収入を生み出すように意識していきましょう。