不動産投資に興味があり、公務員でも不動産投資ができるのか知りたいという方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと不動産投資は可能ですが、公務員が不動産投資を始めるにはいくつかの条件を満たすことが必要です。公務員ならではの注意点も踏まえて慎重に不動産投資を検討することで、リスクを抑えた賢い物件選びができます。
副業禁止規定に注意しつつ、立地・価格・品質のバランスが良い物件を選びましょう。そこでこの記事では、公務員の不動産投資が副業とみなされないためのポイントや、失敗しない物件選びのコツについてご紹介します。
もくじ
公務員が副業として不動産投資をするための条件
公務員は国家公務員であれば国家公務員法、地方公務員であれば地方公務員法によって副業禁止規定が定められています。公務員の副業は原則として禁止ですが、一定規模に収まるのであれば不動産投資は可能です。公務員が不動産投資をするための条件を3つに分けて見ていきましょう。
不動産投資の規模が5棟10室以下
国家公務員の場合は「人事院規則」によって、事業的規模とみなされる不動産投資の規模が定められています。事業的規模にあたるのは独立家屋であれば5棟以上、区分所有であれば10室以上です。
つまり、戸建て物件なら4棟以内、ワンルームマンションなら9室以内の運用まで法律で認められています。区分所有の物件は2室で1棟と考えるため、戸建てと区分所有が合計して5棟未満なら運用可能と考えましょう。
地方公務員の場合は原則として人事院規則を基準とします。地方自治体によって独自の副業禁止規定を定めている場合があるため、認められる不動産投資の条件は担当部署に確認を取りましょう。
家賃収入が年500万円未満
不動産投資の規模は運用する物件数だけでなく、年間の家賃収入総額でも規定が定められています。国家公務員が不動産投資を行う場合、年間の家賃収入は500万円未満であることが人事院規則に定められた条件です。
たとえば家賃8万円のワンルームマンションを5室運用するのであれば、1年を通して満室であった場合には480万円を得られます。同じ家賃設定で6室運用するなら満室経営で年間576万円の収入となり、人事院規則の定める条件には収まりません。
また、駐車場の賃貸から収入を得ている場合には、これも合算して年間500万円未満であるかどうかを計算します。運用する物件数が少なくても賃貸料収入の年額が多い場合、副業禁止規定に違反するケースがあることに注意しましょう。
なお、地方公務員の場合は物件数と同様に、地方自治体によって独自基準を定めている場合があります。
管理業務を自分で行わない
公務員が不動産投資を行うための3つ目の条件は、物件の管理業務を自分で行わないことです。不動産投資では物件を運用して賃貸経営を行うため、経営のためにはさまざまな管理業務を要します。具体的には、入居者募集や家賃回収などの入居者管理と、建物の修繕や清掃などの建物管理です。
これらの管理業務を自分で行う場合は公務員としての業務に支障をきたすとみなされ、人事院規則が定める条件に違反します。国家公務員の場合、物件の管理業務は管理会社に委託することが必要です。地方公務員の場合にも条件は原則として同様であるため、管理会社への管理業務委託は必須と考えましょう。
規定に該当してしまったら承認申請を出そう
5棟10室未満や年間家賃収入500万円未満という条件は原則ですが、これらの条件を逸脱してしまった場合にも、不動産投資が認められるケースもあります。
たとえば、相続によって規定を超える不動産を取得した場合です。こういったやむを得ない事情があれば例外的に規定を超えた不動産投資が認められ、条件を満たすために相続放棄する必要もありません。
上記のような規定を超えた不動産投資の許可を得るためには、国家公務員の場合は「自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)」などの必要書類をそろえ、所属する省庁などに提出することが必要です。これは人事院規則の定めによる手続きですが、地方公務員の場合も所属する役所などからの許可を要します。
公務員ならでは!不動産投資を行うメリット
公務員ができる副業は限られていますが、不動産投資は公務員にとって非常に有力な選択肢です。副業から収入を得るためには何かしらの実務を要しますが、不動産投資では管理業務を管理会社に委託できるため、実務に割く時間が必要ありません。さらに、会社員や自営業者より融資の面でも有利です。
本業に影響なく運用できる
公務員の不動産投資が認められるためには、物件の管理業務を管理会社に委託することを要します。これは、本業が忙しく副業に時間を割けない公務員にとってはメリットでもあります。
不動産投資では入居者募集やクレーム対応などさまざまな管理業務が発生し、作業する時間を選べないケースもあります。そのため、管理会社に管理業務を委託することで、自衛官・消防士・海上保安官など、人命に関わる職務に携わる公務員でも安心して不動産投資を行えるでしょう。
管理業務のために時間を割くことなく、本業に集中しながら不労所得が得られるのは、不動産投資の大きなメリットです。
与信が高いためローン審査に有利
不動産投資を始めるにあたっては高額な不動産投資物件を購入しますが、基本的に同額の自己資金を投入する必要はありません。多くの投資家は物件そのものを担保とした「不動産投資ローン」を利用し、金融機関から融資を受けることで物件を購入します。
不動産投資ローンの審査では返済能力(Capacity)・返済資質(Character)・返済担保(Capital)という3つの要素から「与信」を評価しますが、倒産や離職などのリスクが低い公務員の与信は、多くの会社員や自営業者よりも高評価です。
金融機関は公務員を信用できる取引相手と判断するため、高額な融資を受けやすくなっています。また、公務員に対する与信は職種に関係しないため、公務員というだけで不動産投資のスタートには非常に有利です。
公務員が不動産投資をする際の注意点
不動産投資の入り口は有利であっても、賃貸経営のノウハウを身につけていなかったり、物件の見極めが甘かったりすれば不利に働きます。不動産投資は公務員の副業として最適な選択肢といえますが、利益の追求を目的としない公務員にとっては注意すべき点もあるので押さえておきましょう。
不動産投資のノウハウをきちんと身につけること
公務員の不動産投資では管理業務を管理会社に委託しますが、投資家はオーナーとして賃貸経営を行うという点には注意が必要です。賃貸経営は一種のビジネスであるため、公務員が従事する公共サービスとは性質が異なります。
公務員と会社員の大きな違いのひとつは、営利を目的とした業務に携わっているかどうかです。会社員であればビジネスの現場で仕事をしているため、賃貸経営の感覚は比較的つかみやすいでしょう。しかし、利益の追求に慣れていない公務員は、不動産投資のノウハウを基礎から勉強することが必要です。
収支の計算やリスクヘッジなど、オーナーとしてのマインドをしっかりと身につけてから不動産投資を行いましょう。
物件を見極める目が必要であること
不動産投資物件を購入しようとすると、高額な新築デザイナーズマンションなどが魅力的に見えるでしょう。物件の価格は数百万円から数億円までさまざまですが、高額であるほど安定経営ができるとは限りません。
公務員は会社員や自営業者より与信の面で有利であるため、高額な融資を得やすくなります。会社員や自営業者では購入できない高額な物件でも、公務員なら購入できるということもあるでしょう。そこにつけこんで、不動産会社によっては融資枠ぎりぎりの物件を勧めてくることも考えられるため、注意が必要です。
不動産会社が紹介する物件は魅力的に見えても、投資の目的に合う物件かどうかをしっかりと見定めましょう。目標によっては、新築マンションより中古マンションのほうが有利なケースもあります。物件の表面的な魅力に惑わされず、安定して利益を生む物件かどうかを見極める目が必要です。
公務員の不動産投資における失敗談と対策
公務員は不動産投資のスタートで有利ですが、見込みの甘さに起因する公務員ならではの失敗談もあります。たとえば高額すぎる物件を購入してしまったり、賃貸経営のリスクに対応できなかったり、副業を隠そうとして処分を受けたりすることです。不動産投資の基本として、先輩投資家の失敗談から対策を学びましょう。
【失敗談1】高額すぎる物件を購入してしまった
公務員にありがちな失敗談は、融資が受けられる限界の物件を購入してしまうことです。不動産会社は物件の契約にかかる仲介手数料で利益を得るため、融資枠の大きい公務員は高額な物件を勧められやすい傾向にあります。
家賃収入が多くても支出が増えれば利益は生まれません。副業禁止規定を逸脱する室数や年間家賃収入の物件を購入してしまい、想定した利益も得られないという事態は避けるべきでしょう。
対策としては、比較的安価なワンルームマンションや戸建て物件から始め、分散投資を心掛けることです。不動産会社の営業担当者は言葉巧みに高額な物件の契約を迫るケースもあるため、投資の目標をしっかりと定め、不安があれば断る姿勢を示しましょう。
【失敗談2】シミュレーションを徹底していなかった
賃貸経営や出口戦略などのシミュレーションが甘く、計画通りの利益が得られないことも、公務員にありがちな失敗談です。不動産投資は資産を増やすことが大きな目的のひとつですが、家賃収入だけを見ていても想定した結果は得られません。
入居者は退去することもあり、将来的には物件の修繕も必要です。不動産投資ローンの返済を続けながら赤字経営にならないためには、あらゆるリスクを踏まえたリスクヘッジが不可欠といえます。
対策としては、不動産投資について十分に勉強しておくことです。先輩投資家の失敗談からはリスクヘッジの重要性も学べます。楽観的に考えてしまうとリスクの評価が甘くなるため、知識に裏付けられた危機意識を持ち、リスクに耐えられるキャッシュフローを想定しましょう。
【失敗談3】申請を出しておらず勤務先にバレた
前述のとおり、公務員が不動産投資を行う場合には副業禁止規定に違反しない形であることが必要です。5棟10室以上や年間家賃収入500万円以上という規模であれば、国家公務員では事前に許可を得る必要があります。地方公務員では基準が異なる場合もあるとはいえ、やはり許可を得ることが必要です。
しかし、中には許可申請の手続きを行わず、結果的に勤務先から何らかの処分を受けるケースもあります。数か月間の減給で済む場合もありますが、停職と降格、場合によっては懲戒免職(解雇)となった前例もあるほどです。
公務員が不祥事により懲戒免職となると大きく報道される場合もあり、社会的な制裁という意味合いも強くなってしまいます。資産管理法人を利用するという方法もありますが、どのような事情があるにせよ許可を得ることは必須です。
失敗しない不動産投資物件を探すためのコツ
不動産投資物件の購入が不動産投資のスタートです。物件選びは不動産投資の成否を大きく左右するため、購入後に変えられない部分は特に重視しましょう。建物はその土地にすでに建っているものであるため、立地は後から変更できません。また、建物の構造を変えるには高額な出費を伴う建て替えが必要です。
需要がある物件かを見定める
不動産投資物件の探索にあたっては、まず需要がある物件かどうかを見定め、空室リスクを抑えることが重要です。不動産投資において継続的な利益を生むのは家賃収入であり、入居者のいない物件からは利益が生まれません。
空室リスクを大きく左右するのは立地です。基本的に地方の郊外では需要が低く、退去者が発生すると入居者を獲得するのは容易ではありません。入居者の入れ替わりはあるにせよ、空室の期間をできる限り短くできるエリアの選定が重要です。
人口が多く利便性も高い都市部、さらに最寄駅や繁華街から距離の近い物件を重点的に探しましょう。立地は購入後に変更できないため、できる限り好条件な立地の物件を選ぶことが重要です。
建物の構造や設備に問題がないかを確認する
不動産投資はローンの完済後に利益が大きくなるため、10年や20年という長期的な運用が基本です。運用期間が長くなるほど経年劣化が進み、台風や地震による被害を受けるリスクも高まっていきます。運用中に発生するこれらのリスクを低減するためには、耐久性や耐火性の高い物件を選ぶことが重要です。
戸建てやアパートでは木造の物件もありますが、木造は天災リスクに弱く、高額な修繕費が発生するリスクもあります。
基本的に鉄骨造・RC造(鉄筋コンクリート造)・SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の順で天災リスクに強くなると考えましょう。これらの構造のマンションは防音性も高く、経年劣化による家賃収入低下リスクを抑えやすいこともメリットです。
まとめ
これまでリスクヘッジまで踏まえて物件探しをしてこなかった方にとっては、本当の優良物件はどのようなものか判断しにくいでしょう。物件探しは実績の豊富な不動産会社の紹介を受けるのがスマートです。
公務員は会社員や自営業者より高額な融資が受けやすく、不動産投資の物件探しで有利です。しかし、5棟10室未満や年間家賃収入500万円未満といった条件もあり、リスクヘッジには注意を要します。
立地の良い物件を少ない自己資金で手に入れることは、これから不動産投資を始める公務員にとって魅力的な選択肢といえるでしょう。不動産投資を成功に導く物件選びをお考えなら、信頼のおける会社選びが重要です。