投資用不動産の購入を検討していて、不動産投資における出口戦略について知りたいという方もいるのではないでしょうか。不動産投資では売却時に利益が確定するため、出口戦略の立案は重要です。入口から出口まで詳細に検討して、不動産投資を成功に導きましょう。
そこでこの記事では、不動産投資には出口戦略が不可欠であること、そして出口戦略とは何かについてご紹介します。不動産投資の種類別による出口戦略のポイントに加え、物件選びや売却価格を高めるポイントも知ることで、利益を最大化する出口戦略が立案できます。
もくじ
不動産投資の出口戦略とは一体?
投資を行う際は、資産の手放し方も加味して、購入する商品や運用方法を検討することが重要です。不動産投資において出口戦略は不可欠であり、出口戦略の成功は不動産投資の成功にもつながります。ここでは、不動産投資における出口戦略の概要や、出口戦略の成功とは何かを見ていきましょう。
出口戦略とは
不動産投資における出口戦略とは、投資した不動産の価値を高めて売却することや、経済的損失を最小限にして不動産経営から撤退するための戦略を指します。
マンション投資を行う場合は、利回りの高さや物件の魅力を検討して、買い手のつきやすさや売却益の高さなどを考えます。家賃収入と売却益の総額は売却のタイミングによって異なるため、いつ売却すべきかを考えておくことも重要です。
戸建ての賃貸物件やワンルームマンションを購入する場合には、売却するのではなく、自宅として利用することも考えられます。不動産投資の早い段階、できれば投資を始める前に、撤退時まで想定して出口戦略を立てておくと安心です。
出口戦略の成功とは
最終的に物件を売却する場合は、家賃総額と売却価格の合計が最大化できるタイミングで売却することが出口戦略の成功といえます。家賃収入の総額は賃貸経営を続けるほど大きくなっていきますが、物件の価値は基本的には下落を続けるため、売却するタイミングが遅くなるほど売却価格は安くなります。
不動産投資による収益は家賃収入と売却益を2本の柱とするため、これらの合計が投資用不動産から得られる収益の総額です。家賃収入の総額は「家賃×戸数×12か月×運用年数×入居率」、「家賃収入の総額+売却価格」でトータルの収益が試算できます。
売却差損を家賃総額で相殺し、物件の購入価格をどれだけ上回っているかが、出口戦略の成否を左右する指標といえるでしょう。
不動産投資の種類別の出口戦略のポイント
不動産投資を成功に導くためには、物件に合った出口戦略の立案が不可欠です。購入する物件の種類によって出口の選択肢は異なるため、物件選びの前にポイントを把握しておきましょう。マンション投資・アパート投資・戸建て投資の3種類に分け、それぞれの出口戦略のポイントを解説します。
マンション投資の場合
ワンルームマンションを購入するマンション投資の場合、物件を将来的に売却するのであれば、買い手がつくかどうかや売却時期・売却価格を考えましょう。また、売却せずに収入源として保有し続けることや、自宅として使うことも可能です。
購入するマンションが5年後や10年後に高額で売却できる見込みであれば、家賃総額と売却価格のバランスを計算し、適切なタイミングでの売却を検討しましょう。年金対策や生命保険の代わりとして所有し続ける予定であっても、将来的な売却価格の向上が見込める場合は、売却も視野に入れて出口戦略を立てておくことがおすすめです。
将来的に自宅として使用することを考えている場合は、間取りやエリアの利便性などを加味して住みやすい物件かどうかを検討しましょう。
アパート投資の場合
アパート投資の場合も、買い手がつくかどうかや売却時期・売却価格、収入源として保有し続けたり自宅にしたりという出口戦略が考えられます。ただしこれは区分所有の場合で、1棟アパートを購入するのであれば選択肢は多彩です。
1棟アパートを購入するなら、将来的にリノベーションをしてから売却することや、アパートの建て替えなども考えられます。賃貸物件ではなく自宅を建てて住むことも可能です。建物があると売却しにくいなら、更地にして土地のみを売却することや、駐車場として運用することもできるでしょう。
1棟アパートを購入すれば建物と土地にかかるすべての所有権が手に入るため、出口戦略の考え方は多様になります。アパート投資では出口の選択肢が多いため、購入前からしっかりと出口戦略を立てておきましょう。
戸建て投資の場合
戸建て投資の場合は、1棟アパートと同様に出口の選択肢が豊富で、考え方はやや特殊です。戸建て物件はマンションやアパートに比べて物件数が少なく、空室率は低い傾向にあります。マンションやアパートと異なり共用部分が存在しないため、キャッシュフローは良好になりやすいことも利点です。
戸建て投資では建物と土地のすべてを所有しますが、建物が老朽化によって価値を下げても、土地の価値は大きく変動しません。魅力的とはいえないエリアで家賃を低く設定していても、土地にかかる売却価格でトータルの収益を高めやすいと考えられます。
ただし、戸建て物件では空室が発生すると家賃収入を一切得られません。家賃収入が安定して得られるかどうかは出口戦略の成否に大きく影響するため、賃貸経営についてしっかりと検討することが重要です。
不動産投資で押さえておくべきインカムゲインとキャピタルゲイン
不動産投資では、ほかの投資方法と同じようにインカムゲインとキャピタルゲインから収益を計算します。出口戦略を考えるにあたっては、インカムゲインとキャピタルゲインの総額から、売却のタイミングを見極めることが重要です。ここでは、不動産投資における収益の2本の柱について見ていきましょう。
インカムゲインとは
「インカムゲイン」とは資産を所有することで得られる利子や配当金のことで、不動産投資においては家賃収入を指します。物件を売却するまでにインカムゲインの総額がいくらになるかは、出口戦略の成否にとって重要です。
家賃収入の総額は「家賃×戸数×12か月×運用年数×入居率」で試算できます。家賃が高いほど総額は大きくなりますが、物件の魅力がともなっていなければ入居率は下がりやすいことに注意しましょう。
ワンルームマンションを1戸のみ運用する場合には、入居の安定性はインカムゲインに大きく影響します。インカムゲインは物件の魅力や賃貸経営のテクニックに依存するため、まずは信頼できる不動産会社を経由した物件選びが重要です。
キャピタルゲインとは
「キャピタルゲイン」とは、資産を売却した際に資産価値の上昇によって得られる利益で、物件の購入価格よりも売却価格が高いときに生じた差益を指します。ただし、物件価格は基本的には下落を続けるため、運用する物件からキャピタルゲインが得られるとは限りません。
売却価格が購入価格を下回った際に生じた差損を「キャピタルロス」と呼びます。大きなインカムゲインとキャピタルゲインを得られることが理想ですが、実際にはキャピタルロスを生じるケースが多いようです。
キャピタルロスの最小化とインカムゲインの最大化を両立できるタイミングを見極めることが、出口戦略を成功させるポイントといえるでしょう。なお、エリアの魅力が向上した場合やリノベーションの結果、キャピタルゲインを生じるケースもあります。
短期譲渡と長期譲渡の税率の違いは?
建物や土地を売却した際の売却益は「譲渡所得」に区分し、譲渡(売却)までの期間に応じて異なる税率をかけ、所得税額や住民税額を算出します。
譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年以内であれば「短期譲渡」にあたり、税率は所得税分が30%、住民税分が9%の計39%です。2037年までは、所得税額の2.1%にあたる「復興特別所得税」も納税します。
譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年を超えているなら「長期譲渡」にあたり、税率は所得税分が15%、住民税分が5%の計20%です。こちらも2037年までは、復興特別所得税もあわせて納税します。
5年以内に売却してしまうと高額な税金がかかり売却益で損をするため、長期保有してから売却することが一般的です。長期保有を前提とした出口戦略の立案が無難といえるでしょう。
出口戦略を成功させるための物件選びのポイント
購入する物件によって最適な出口戦略は異なります。出口戦略を成功させるためには、入居者にとっても投資家にとっても魅力的な物件を見極めることがポイントです。賃貸経営が容易で、買い手もつきやすい物件を選びましょう。出口戦略を成功させるための物件選びのポイントを3点に分けて解説します。
出口戦略を立てやすい物件にする
出口戦略を成功させるためには、出口戦略を立てやすい物件に投資することがポイントです。安定してインカムゲインを得られることや、キャピタルゲインが得られやすいかどうかを重視しましょう。
利回りが高くインカムゲインを得やすい物件であれば、買い手にとっても魅力的です。将来的に売却する際は買い手も投資家であるケースが多いため、投資家から見た物件の魅力も意識しましょう。物件の利回りや状態が良好であれば買い手がつきやすく、希望する価格やタイミングで売却できる可能性が高まります。
入居者にとって魅力のある物件にする
入居者にとって魅力のある物件は高い入居率を維持しやすいため、インカムゲインの最大化が狙いやすいといえます。入居率の高い物件は将来的に買い手となる投資家にとっても魅力的であるため、売却時の想定も容易です。
入居率には、エリアの利便性や治安、物件自体の快適性などが影響します。最寄り駅や繁華街までの距離、通勤・通学の利便性、周辺環境が良好であるかどうかを重視しましょう。物件のデザイン性やメンテナンスの徹底による清潔さなども検討したいポイントです。
将来的な需要を考えてから物件を選ぶ
不動産投資は長期運用を基本として考えるため、5年以上先の需要や人口動向の変化を予測することも重要です。少子高齢化が進行する日本では、都市部に人口が集まりやすく、地方では過疎化のリスクが高いエリアもあります。
将来的な空室リスクが高い物件を選択してしまうと、賃貸経営だけでなく売却時にも不利になります。不動産投資では賃貸物件に投資するため、賃貸物件を選択する人口が増加する、あるいは減少しないと考えられるエリアの物件を選択しましょう。
不動産投資物件を高く売却するためのポイント
不動産投資における出口戦略では、損益分岐点を基準として売却のタイミングを考えます。物件の管理を徹底して家賃収入の最大化を目指せば、売却益につながることもポイントです。買い手にとって魅力的な状態で売却することも検討しましょう。ここでは、物件を高く売却するためのポイントを4点に分けて解説します。
損益分岐点を考えて売却を検討する
不動産投資では物件の購入に加え、日常的なメンテナンスや大規模修繕にかかる費用が発生します。売却のタイミングを検討する際には、「損益分岐点」を考えることが重要です。損益分岐点とは、収益と総費用が等しくなる点を指します。
家賃総額と売却益の合計が、総費用を上回るタイミングを算出しましょう。損益分岐点を超えた後は利益を生じますが、賃貸経営を続けるほど清掃や修繕などに関する費用もかさんでいきます。総費用とのバランスも考えて、利益を最大化できるタイミングでの売却を検討しましょう。
物件の状態管理を徹底する
エリアや間取りの条件が同じ物件であれば、状態の良い物件のほうが入居率は高い傾向があり、投資家にとっても好印象です。
物件は経年劣化により状態が悪くなっていき、入居者の使用条件によっては劣化が早まります。状態の悪い物件は入居者から敬遠されやすく、入居率の低い物件は投資家にとって魅力的ではありません。
物件を購入した時点から管理を徹底することは、家賃収入にも売却益にも影響します。出口戦略を有利に進めるために、物件の状態管理は徹底して行いましょう。
リフォームしてから売却を検討する
物件の運用年数が長くなるほど、機能やデザインは時代に合わなくなっていきます。特に中古マンションを購入する場合には、売却時点での機能性やデザイン性に注意しましょう。
キッチンやエアコンを新しくしたり、畳からフローリングに切り替えたりなど、リフォームを行うことで売却が有利に運ぶケースもありますが、リフォームには費用が発生します。効果的にリフォームを行って、利益で費用を相殺することもひとつの方法です。
買主が魅力的に感じるようなアピールをする
物件を売却する場合は、買い手を見つけて、価格や状態などの条件に納得してもらうことが必要です。売却価格を設定しても、買い手にとっての価値より高いなら、値下げ交渉が始まるケースもあります。
自分が物件を購入したときと同じように、買い手は投資家として物件の魅力を探っています。買い手が物件を魅力的に感じるようなアピールをしましょう。利回りの高さや状態が良好であることなどのメリットに加え、想定されるリスクについても伝えられる準備を整えておくことも大切です。
まとめ
不動産投資は売却時に利益が確定するため、物件の手放し方まで含めた出口戦略を立てておくことが重要です。物件を売却するタイミングや売却時の状態も、物件購入前から想定しておきましょう。
不動産売却について学べるメディアの「すまいステップ」にて、不動産売却で必ず押さえておきたい基礎知識が紹介されているので参考にするのが良いでしょう。