退職後の年金の切り替えは、状況によって手続きや支払う保険料が変わってきます。また、3種類ある国民年金のなかで、自分の状況がどの種別に該当するのかを把握しておくことも大切です。
退職後の年金の切り替え手続きについて、具体的な事例を挙げながら詳しく解説します。年金は老後の生活を守る大切な資金です。間違いがないよう、事前にしっかりと確認しておきましょう。
もくじ
退職後の年金の切り替えは状況によって異なる
自営業や会社員など、職業によって国民年金の種類は異なります。また、配偶者のいる方が会社を退職する場合は、配偶者の状況によって対応が異なるため、事前に内容をよく確認しておきましょう。
まずは、国民年金の種類と、配偶者がいる方が退職する場合の切り替え方法について解説します。
国民年金の種類は第1号から第3号まで3種類
国民年金には3種類あり、被保険者の職業によって分けられています。第1号から第3号被保険者までの3種類です。まずは、国民年金がどのように分けられていて、保険料はそれぞれいくらかかるのかをみていきましょう。
第1号被保険者は、農業や漁業などを含む自営業者と学生です。毎月定額の保険料16,520円(2023年7月現在)を各自で納めます。
第2号被保険者は、サラリーマンや公務員といった一般的な給与所得者です。また、ほとんどの給与所得者は、厚生年金や共済組合にも加入しており、国民年金も含めて保険料は給料から天引きされます。厚生年金保険料は給与によって異なりますが、おおむね月給の18.3%です。
第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者が該当します。配偶者が加入している年金と一括支払いになっているため、個人で保険料を支払う必要はありません。ただし、第2号被保険者に扶養されていても、20歳以上の配偶者以外(子どもなど)は別途国民年金に加入する必要があります。
退職後に会社員(第2号)である配偶者の扶養に入る場合
会社を退職後、会社員である配偶者の扶養に入る場合は、第2号から第3号被保険者への切り替えが必要です。第3号被保険者に切り替える際は、「被扶養者(異動)届」を配偶者の事業主から入手して提出しましょう。
なお、第3号被保険者になるためには、年収130万円未満であることが要件です。詳しくは日本年金機構のホームページで確認してください。
退職後に会社員(第2号)である配偶者の扶養に入らない場合
会社を退職後、配偶者の扶養に入らない場合は、第2号から第1号被保険者への切り替えが必要です。本人か世帯主が、退職日の翌日から14日以内に手続きをおこないましょう。年金番号がわかる書類などを持参して、居住する自治体の役場で申請します。
第1号被保険者になると、保険料の納付を自分でおこなう点には注意が必要です。たとえば、3月末で退職してその後も就職しない場合は翌4月1日から第1号被保険者となり、4月分から保険料の支払いが発生します。
また、月の途中で退職した場合は、その月から国民年金保険料の支払い義務が発生します。たとえば4月15日付けで退職した場合、4月16日から第1号被保険者となり、4月分から保険料の支払いが必要です。一方で、第2号被保険者の資格は4月16日から喪失しますが、厚生年金の保険料支払いは3月分までとなります。
転職する際の年金の切り替えはタイミングによって異なる
転職時の年金の切り替えは、退職と入社のタイミングによって異なります。退職後すぐに新しい会社へ入社する場合と、入社日まで日が空く場合では手続きが変わってくるので、事前に確認しておきましょう。
また、タイミングによっては、個人で保険料の支払いが発生することもあります。転職する場合の、年金の切り替え方についてみていきましょう。
退職後すぐに転職する場合
会社を退職した翌日に、厚生年金保険や共済組合などに加入する会社員として転職する場合、年金の切り替え手続きを自分でおこなう必要はありません。切り替えの手続きは、月末時点で所属していた会社がおこないます。
退職日の翌日から入社まで1日以上の期間が空く場合は、国民年金第1号被保険者への切り替え手続きが必要です。ただし、退職と入社が同月の場合は、国民年金保険料の支払いは発生しません。
月の途中で入社する場合
月の途中で入社する場合、前職の退職日によっては国民年金保険料を自分で支払う必要があります。
たとえば、9月15日に退職して10月15日に入社した場合は、9月16日から第2号被保険者の資格を喪失するため、前の会社で保険料を納めてくれません。個人で第1号被保険者の取得手続きをおこない、9月分の国民年金保険料を納める必要があります。
一方、9月末で退職して10月15日に入社した場合は、9月分の保険料は前の会社が、10月分の保険料は新たに入社した会社が納めてくれるので、個人で保険料を支払う必要はありません。
転職後すぐ退職した場合
転職して入社したにもかかわらず、またすぐに退職してしまう場合は、細かい手続きが必要なこともあるので注意しましょう。
たとえば、9月末で退職して10月16日に入社し、その4日後の10月20日に退職する場合、第1号と第2号を行ったり来たりしますが、手続きや保険料の支払いが必要です。10月1日から15日までは第1号被保険者、10月16日から20日までは第2号被保険者、10月21日からはまた第1号被保険者となります。
この場合、10月分の国民年金保険料の支払いが必要となり、さらに10月に加入した厚生年金の保険料も会社から徴収されます。
第1号被保険者へ切り替えた後に確認しておきたいポイント
退職後、すぐに新しい仕事へ就かない場合や自営業などを営む場合は、第1号被保険者へ切り替えることになります。第1号被保険者になると、個人での保険料の支払いが必要です。
第1号被保険者になった際に確認しておくべきことや、保険料をお得に支払う方法をご紹介します。
支払い方法を選べる
国民年金保険料の支払い方法は複数用意されています。金融機関や郵便局からの振り込みやコンビニエンスストア払い、さらにクレジットカードでの支払いも可能です。
クレジットカード払いにすると、カード会社によってはポイントが付与されるのでお得です。ただし、事前の登録が必要なので、年金事務所で確認して手続きをしておきましょう。
また、支払い窓口へ行く時間がない方は、インターネットバンキングを利用した納付(電子納付)も可能です。
前納すると割引がきく
国民年金保険料を前払いすると、支払い金額が割引されます。割引額は前納する期間によって異なり、前納できる最長期間は2年分です。2年分の前納で、最大16,000円もの割引を受けられます。
国民年金保険料の前納割引の金額は、支払い方法によっても異なります。口座振替だともっとも割引額が大きくなってお得です。ただし、現金による振り込みやクレジットカード払いでも一定の割引は受けられるので、自分に合った支払い方法を選びましょう。
ねんきん定期便で加入履歴を確認する
ねんきん定期便とは、年金の加入履歴を確認できる通知書です。年一回加入者の誕生月に、はがきサイズもしくは封書で送付されますが、ねんきんネットに登録してパソコンやスマートフォンからでも確認ができます。
ねんきん定期便では、これまで加入した年金の種類や加入期間、実績に応じた年金額を確認できます。国民年金の切り替えが何度かあった場合など、正しく手続きできているかを知りたいときに便利です。
【まとめ】退職後の年金の切り替えは忘れずおこなおう
日にちをあけずに入社する場合を除いて、退職後はほとんどの場合で年金の手続きが必要です。自分の状況に応じて、必ず期限内に手続きをしましょう。また、転職先の会社に入社するタイミングによっては、国民年金の支払いが発生する点にも注意が必要です。
一方、配偶者が第2号被保険者である場合には、手続きをして第3号被保険者になることもできます。配偶者が加入する保険事業者に「被扶養者(異動)届」を提出しましょう。
退職後に年金の切り替えを正しくしておかないと、将来の年金受給額に影響したり、まとめて支払う必要が出たりするおそれがあります。自分の状況を確認して、年金の切り替えに必要な手続きを事前に調べておきましょう。