資産運用とは、手持ち資産を増やしていく方法です。資産運用にはさまざまな種類があり、特徴はそれぞれ異なります。
この記事では、代表的な資産運用の特徴や、リスクとリターンの考え方などを詳しく解説します。ミドルリスク・ミドルリターンの資産運用手法として注目されている不動産投資についても紹介しているので、これから資産形成を考えている方はぜひ参考にしてくださいね。
もくじ
代表的な資産運用10種類の特徴を紹介
資産運用は、細かく分類すると数えきれないほどの種類があります。どの運用方法が適切なのかは、個人の資産状況や運用目的によって異なるため一概にはいえません。
まずは、資産運用の方法と特徴を知ることが重要です。ここでは、代表的な10種類の資産運用方法をご紹介します。
預貯金
資産運用のなかでももっとも身近な方法が預貯金です。銀行にお金を預けておくだけですが、利息によって資産が増えるため資産運用の一種といえます。
預貯金にはいくつかの種類があり、多くの方が利用しているのが普通預金です。ほかにも、預金引き出しに期間の制限がある定期預金や、定期預金を毎月積み立てる積立式定期預金などがあります。
預貯金の最大のメリットは、リスクが低いことです。預け入れている限り資産が減ることはありません。また、万が一銀行が破綻した際にも預金保険制度により、預金者1人当たり元本1,000万円とその利息までは保護される仕組みとなっています。
しかし、預貯金は超低金利なため、「資産を増やす」という視点で見るとベストな方法とはいえません。普通預金よりも利回りのよい定期預金でも、ほとんど利息がつかないのが現状です。また、ほかの資産運用と違って、インフレ局面では実質的に資産が目減りしてしまいます。
預貯金を資産運用と考える場合は、蓄えるためのお金なのか、増やすためのお金なのかをよく考えて利用することが重要です。
外貨預金
預金の一種ですが、円預金に比べて外貨預金は積極的な資産運用方法です。円建てではなく、ドルやユーロなどの外貨建てで預金をします。一般的に外貨のほうが円預金よりも金利が高めに設定されているため、長期にわたる資産形成が可能です。
また、円安方向に相場が動いた際はキャピタルゲイン(為替差益)も期待できます。ただし、逆に円高方向に動いた際は短期的に元本割れのリスクもあるため、長期的な視点での資産運用をしましょう。外貨預金は、預け入れ時と払い戻し時にその都度手数料がかかるため、短期的な取引はおすすめできません。
長期的なスパンで安定的に資産を増やしたい方におすすめの資産運用です。
債券投資
債券とは、国や地方公共団体、企業などが投資家から資金を借り入れる際に発行する有価証券です。一般的に債券投資は、株式や投資信託などと比べて安全性が高く、収益性も安定しています。
債券投資はあらかじめ支払われる利息が決められているため、償還日まで運用した際の収益額が明確になっています。また、債券の発行元が債務不履行にならない限りは、利息と償還金が約束通り支払われるため安全性が高い点も特徴です。
ただし、債券投資は償還日を迎える前に売却すると、損失がでるリスクが高まるデメリットがあります。債券の価格変動によって元本割れすることがあるほか、手数料が必要なケースも多いため注意が必要です。
また、国や地方公共団体の債券であればほとんどリスクはありませんが、万が一発行元が倒産や財政難に陥ると、利息や償還金を受け取ることができなくなってしまいます。とくに企業が発行する社債を購入する場合は、信用リスクについてしっかりと調査しておかなければなりません。
債券投資は、低リスクで少額から資産運用をはじめたい方におすすめです。
株式投資
株式投資とは、投資先となる会社の株式を購入する資産運用です。株式を購入すると、会社が利益をだした際に一定の配当金や株主優待を受け取れるほか、出資株主総会などで会社の経営に意見を伝えることもできます。
しかし、一般的な株式投資の目的は配当金ではなく、購入した株式のキャピタルゲインです。購入時よりも株価が上昇したタイミングで株式を売却することで、大きな利益を狙えます。
また、株式投資には、手持ちの株式を売却する「現場取引」だけではなく、株式を保有していなくても取引を始められる「空売り」という信用取引の方法もあります。保有していない株式でも証券会社から一旦借りる形で売却し、株価が下がったタイミングで買い戻して証券会社に返却することで差益を得る仕組みです。
ただし、株価は値動きが大きいため、予想とは逆方向に価格が動くと大きな損失をだすおそれもあります。株式投資をする際は十分な情報収集が欠かせません。
株式投資は、リスクを理解したうえで資産を大きく増やしたい方におすすめです。
投資信託
投資信託とは、投資家から集めたお金をまとめて大きな資金として、運用の専門家が株式や債券などで運用する資産運用です。投資の成果は、投資額に応じて分配されます。
投資信託は、少額の積み立てからはじめられるのが特徴です。投資信託を毎月定額で購入するだけで、リスクを分散させつつ資産を増やせます。
ただし、投資信託にも債券や株式と同様に、価格変動や為替変動といったリスクはつきものです。とくに短期的にみた場合、元本割れをすることもあるため、余裕資金で資産運用をしましょう。
情報収集をおこなって個別に株式投資や債券投資をするのは難しい方、できるだけリスクを分散させたい方におすすめの資産運用方法です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、20歳以上60歳未満の全ての方が加入できる運用型の年金です。毎月掛金を積み立てることで、受け取り可能年齢になった際に、運用益とともに年金として受け取れます。
ほかの資産運用と異なるiDeCo最大のメリットは、月々の掛金が全額所得控除となる点です。これにより、所得税や住民税の負担を軽減できます。また、運用益に対しても課税されません。さらに、受け取り時も優遇税制の恩恵を受けられます。
ただし、iDeCoは一度加入すると、原則60歳までお金を引きだすことができません。掛金の減額や支払いの一時停止は可能ですが、途中解約も基本的には認められていません。iDeCoをはじめる際は、60歳まで運用していけるかどうかを、事前にしっかりと検討してください。税制のメリットを活用しつつ、老後の資金を準備したいという方にはおすすめの資産運用です。
貯蓄型保険
保険のなかでも、資産運用としての機能を持っている商品が貯蓄型保険です。万が一の場面に備える保険に加入しつつ、資産を増やすことができます。
終身保険や養老保険、学資保険などが代表的な貯蓄型保険です。また、毎月一定額を貯蓄のように積み立てていく個人年金保険というものもあります。
安定志向の資産運用のため、大きなキャピタルゲインは見込めません。しかし、いざというときには保険機能が役立つとともに、一定額まで所得控除が可能なため節税効果も期待できます。
貯蓄型保険は、保障と資産形成にくわえて節税もしたい方におすすめの資産運用方法です。
FX(外国為替証拠金取引)
FXは外貨の売買をおこなって収益を得る資産運用方法です。外貨預金に似た資産運用方法ですが、預け入れた証拠金の数倍の取引ができる点、外貨の購入だけではなく売却方向の取引も可能な点が大きく異なります。
FXによる収益は、「為替差益」と「スワップポイント」の大きく2つです。スワップポイントは、保有している通貨に応じて外貨預金同様の金利差益を得られます。
ただし、為替相場は変動しやすく、さらに証拠金の数倍の取引ができるためリスクが大きい点には注意が必要です。資産運用としてはかなりハイリスク・ハイリターンの部類となるため、余裕資金が潤沢かつ短期間で大きく資産を増やしたい方のみにおすすめします。
金投資
金投資は、金を購入して蓄える資産運用です。金の購入方法は、コインや延べ棒といった金の現物や純金積立、投資信託などがあります。インフレに強く、経済危機が起こっても値崩れしにくい点がメリットです。株式や債券のように、企業の倒産によって価値がなくなることもありません。
デメリットとしては、価格変動や為替変動による元本割れリスクがある点が挙げられます。長期的にみると金は値上がりする傾向にあるため、目先の相場に一喜一憂しない方におすすめの資産運用です。
不動産投資
不動産投資とは、不動産物件を取得して家賃収入や売却益を得る資産運用です。とくに賃貸物件への投資であれば、毎月安定した家賃収入が見込めます。不動産投資にはさまざまな種類があり、マンションやアパート、土地などを直接購入して所有する方法や、REIT(リート)と呼ばれる投資信託方式、クラウドファンディングなどが一般的な投資方法です。
地価が高騰すれば売却益も期待できますが、不動産投資のおもな目的は賃料による安定的な収入です。自己資金が少ない場合でも、物件を担保にローンを組むことで無理なく投資できます。また、複数の投資家で1つの物件に投資する投資信託方式やクラウドファンディングであれば、少額からでもはじめられます。
一方で、空室リスクや災害などによる一時的な損失リスクがあることがデメリットです。ローンでの借入金も含めて、余裕のある資金計画を立てましょう。
また、不動産投資は老後の資産形成にくわえて、相続税などの節税効果も期待できます。資産運用と資産形成を同時に目指したい方におすすめの方法です。
資産運用のリスクとリターン
資産運用にはさまざまな手法がありますが、一般的には大きな利益が期待できるものほどリスクも高くなります。資産運用をする際は、リスクとリターンのバランスやリスク回避の方法を検討することが重要です。
リスクとリターンのレベル別に、それぞれの特徴と注意点を紹介します。資産運用手法を選ぶ際の参考にしてください。
ローリスク・ローリターン
リスクが低く安定的な資産運用方法としては、預貯金や債券投資、iDeCo、貯蓄型保険などが挙げられます。ただし、リスクが低い分、あまり大きなリターンは期待できないのが特徴です。
大きな原資を着実に運用する場合はおすすめできますが、効率よく資産を増やしたい方には不向きといえるでしょう。また、インフレ方向に市場が動いた場合は、物価上昇を上回る成果が得られないと実質的には価値が目減りしてしまいます。
ミドルリスク・ミドルリターン
外貨預金や投資信託、株式投資、不動産投資などはミドルリスク・ミドルリターンの資産運用です。リターンがやや大きい分、損失を生む確率も高まりますが、きちんと情報収集をおこなって投資をすることでリスクは軽減できます。
ある程度の安定感を求めながら、積極的に資産形成をしたい方におすすめの資産運用方法です。ミドルリスク・ミドルリターンの資産運用をする際は、市場動向や投資先の業界トレンドなどをしっかりとチェックすることが重要です。収集した情報をもとに相場の変動に備えることで、リスクを予測できるようになります。
ハイリスク・ハイリターン
FXや先物取引、仮想通貨取引などはハイリスク・ハイリターンの資産運用です。短期的な値上がりで大きく資産形成をできる可能性がある分、一気に資産を失ってしまうリスクも伴います。リスクの高い資産運用をする場合は、必ず余剰資金の範囲内で無理のない取引をおこないましょう。
不動産投資にはさまざまな種類がある
ミドルリスク・ミドルリターンを期待できるバランスのよい投資手法として、不動産投資が注目されています。不動産投資にはさまざまな手法があり、資金や目標にあわせて投資方法を選べるのも特徴です。
おもな不動産投資手法について詳しくご紹介します。これから不動産投資を検討している方は、ぜひ参考にしてくださいね。
ミニマムではじめられる区分投資
区分投資とは、建物を1棟まとめてではなく、1部屋単位で購入する不動産投資です。ワンルーム投資と呼ばれることもあります。1棟単位で購入する方法に比べて、区分投資は比較的少額からはじめられるのが特徴です。
ただし、投資対象が1部屋のみのため、大きな家賃収入は見込めません。また、万が一空室になると収入がゼロになってしまいます。
区分投資は、手元資金が少ない方におすすめの不動産投資手法です。
マンションやアパート1棟購入してまとまったインカムゲインを得る
不動産投資の王道といえるのが、賃貸用のアパートやマンションを1棟丸ごと購入する方法です。部屋数分の賃料が家賃収入となるため、まとまったインカムゲインを得られます。
1棟購入する際の必要資金は、立地や建物の状態によって大きく異なります。立地や建物は購入後の入居率や収益性にも大きくかかわってくるため、事前の情報収集と計画立案が欠かせません。また、ローンを組む場合は資金計画も十分に検討する必要があります。
木造や軽量鉄骨を利用したアパートであれば、初期投資費用を比較的おさえられます。しかし、法定耐用年数が短いため、定期的なメンテナンスや修繕が欠かせません。
一方マンションであれば、鉄筋コンクリートなど丈夫な工法で建てられているため建物の耐用年数が長く、場合によっては売却によるキャピタルゲインにも期待できます。ただし、初期投資費用は高額になりやすいです。
また、マンションやアパートへの不動産投資には、物件購入費用のほかにも、日常的な管理費用や災害などで破損した際の修繕費用が必要になります。手元資金とローンの割合、空室率や返済計画などを考慮しながら、無理のない資金計画を立てることが重要です。
不動産投資信託(REIT)で堅実な資産運用
不動産投資信託(REIT)とは、投資信託の枠組みで運用をする不動産投資方法です。物件を直接所有するのではなく、運用会社を通じて間接的に不動産投資をします。ワンルーム投資よりも少額からはじめることができ、リスクも比較的少ない点が大きなメリットです。
ただし、1つの物件に対して複数の投資家が投資をするため、直接物件を所有する不動産投資に比べると収益性は低くなります。不動産投資信託は、不動産運用の知識や経験が浅い方や、建物の管理や入居者募集など経営的なことに抵抗がある方におすすめです。
クラウドファンディングで手軽にはじめる
近年ではクラウドファンディング型の不動産投資にも注目が集まっています。不動産クラウドファンディングは、インターネットを通じて投資家から資金を募り、集めた資金で事業者が不動産を購入する投資方法です。運用期間中の賃料収入や売却益などは、分配金として投資家に還元されます。
不動産投資信託との大きな違いは、物件所在地も公開されている点です。築年数や管理状態などの不動産に関する情報を事前に調べてから投資できます。さらに、修繕や入居者管理といった面倒な手続きを事業者に任せられ、コストもかからないため、不動産投資のなかでも気軽にはじめられる手法です。
不動産投資信託の場合、投資した信託商品の投資割合はプロが自動的に分散運用するため、投資者自身で物件の選定ができません。能動的にやりくりしながら大きな利益をうむ投資がしたい方には、不動産投資型のクラウドファンディングが向いています。
【まとめ】どの種類の資産運用もメリットデメリットをしっかり検討
資産運用にはさまざまな種類があり、特徴やメリット・デメリットが異なります。資産運用をはじめる前に、まずはそれぞれの資産運用手法についてしっかりと知識をつけることが重要です。メリットやデメリット、特徴をしっかりと理解していないと、適切な資産運用方法をみつけられません。
また、資金状況や許容できるリスク、目標とする金額などもあらかじめ明確にしておきましょう。
これから資産形成をしたい場合は、不動産投資などに代表されるミドルリスク・ミドルリターンの運用方法がおすすめです。手元資金をしっかりと増やして着実な資産形成を実現します。また、ミドルリスク・ミドルリターンの投資方法であれば、知識をつけて情報収集をすることでリスクの軽減も可能です。
老後の資産形成のためにも、ぜひ積極的な資産運用を検討してみてくださいね。