年間20万円以上の不動産所得がある場合、確定申告をする必要があります。そして、確定申告をするときに浮かんでくる疑問の一つが、不動産投資における「経費」の計上方法です。
不動産投資で使ったお金をすべて経費にできるわけではありません。「どこまで認められるのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
今回は、不動産投資の経費について、具体的な例を交えながら詳しく解説します。状況によっては経費にできないものもあるため、しっかりと確認してくださいね。
不動産投資の経費とはなにか
不動産投資で認められる経費は限られており、すべての支出が経費となるわけではありません。しかし、不動産投資をはじめたばかりの人にとっては、経費の判断は難しい部分です。
不動産投資の経費となる項目や範囲をご紹介します。
そもそも経費とは?
そもそも経費とは、事業で収益を上げるために支払ったお金です。不動産投資では、家賃収入を得るために使った費用が経費にあたります。
確定申告をする際に、収入から経費を差し引いた金額が所得となります。そのため、計上できる経費が多いほど、課税される所得を抑えることが可能です。
仮に500万円の家賃収入があった場合、経費がなければ500万円に対して所得税や住民税が課税されます。しかし、経費を250万円使用していれば、課税所得は半分の250万円です。特に所得税は、課税所得が多いほど税率が高くなる累進課税方式を採用しているため、経費によって課税所得を減らすほど節税効果が高まります。
不動産投資における代表的な経費
不動産投資において、経費として計上できるものはある程度決められています。具体的な経費例は以下のとおりです。
- 不動産取得税や固定資産税などの税金
- 建物や部屋の修繕費
- 管理委託料
- 入居者を募集するための広告宣伝費
- 火災、地震保険料
- ローンの利息
また、経費か私的費用かの線引きがあいまいな項目もあります。以下の項目は、使用状況や金額などによって判断が変わってくるため、経費計上する際はしっかりと精査しましょう。判断のポイントは、収益を上げるために使用したお金かどうかです。
- 接待交際費
- 光熱費
- 交通費
- 通信費
どこまでが経費の範囲?
経費にできるかどうかの判断は、使い道によっては悩むところです。基本的には、「不動産投資のために使ったお金」であることが明らかに区分できるものが経費として認められると考えておきましょう。
例えば、家族や友人とのランチ代など、プライベートで使った費用は経費とは認められません。しかし、不動産管理会社の担当者と喫茶店で打ち合わせをしたときの飲食代は、会議費として計上できます。
経費を使いすぎた場合のリスクと対策
経費は適切な範囲で計上することが重要です。経費を使いすぎると、収益があがらなくなってしまうばかりか、税務署から指摘される場合もあるため注意しましょう。
経費の使いすぎによって生じるリスクと対策について詳しくご紹介します。初めての不動産投資で、どれくらい経費を使用できるのか悩んでいる方はぜひ参考にしてくださいね。
経費を使いすぎると税務署から指摘がはいる
収入(所得)に対して経費の割合が多い場合、プライベートの支払いを経費にしているという疑いがかかるおそれがあります。不明瞭な経費があると、税務署からの指摘や税務調査がはいることもあるため注意が必要です。
税務署の調査で経費の不正使用が確認された場合、正しく計算し直したうえで追徴課税が課せられます。「税務調査は法人や大きく稼いでいる人のもとにしか来ない」というイメージがあるかもしれませんが、個人も調査の対象です。
収入以上に経費を使うと赤字になる
使用した経費が収入よりも多ければ、不動産投資は当然赤字となります。節税目的であえて赤字となる投資計画を立てている場合は問題ありませんが、想定外に経費を使ってしまうと、本来の投資計画が崩れてしまうため注意しましょう。
また、経費を使いすぎて赤字収支が続くと、想定外の空室や修繕に対する備えが十分にできません。不動産投資は、長期間安定して物件を保有し続けることが重要です。投資計画を立てる際に、適切な経費額も見込んでおきましょう。
不動産投資における経費の適切な使い方
不動産投資の経費に計上できるのは、家賃収入を得るために必要であると合理的に判断できる支出です。領収書さえあれば、なんでも経費に計上できるわけではありません。
自己判断だけでおこなうと、経費計上を誤ってしまうこともあります。例えば、管理会社との打ち合わせでスーツを着るという理由でも、あくまで日用品であるスーツの購入費用は経費とはみなされません。判断に迷った際は、税理士や税務署などの専門家に相談しましょう。
経費を使いすぎないためのポイント
経費を使いすぎないためには、しっかりと計画を立てておくことが重要です。経費は使用するほど課税所得を圧縮できますが、あくまでも支出のため、使った分だけ所得は減少します。
特に、本業で給与所得を得ている場合、目の前に使える現金があるため、経費にできるからとつい無駄遣いをしてしまいがちです。経費として使えるのは年間や月間でいくらまでなのか、投資計画に盛り込んで試算しておきましょう。
経費を計上する際の注意点
確定申告で経費を計上する際は、気をつけるべきポイントがいくつかあります。私的費用との区別はもちろん、領収書の保管や打ち合わせの記録など、あとからでは準備しにくいものもあるため、事前に確認しておいてください。
経費を計上する際の注意点を詳しくご紹介します。支出が生じた際に経費の判断に迷っても、あとから計上できるように領収書は取得しておきましょう。
経費と私的費用の区別を明確にする
経費を計上する際には、私的費用との線引きを明確にする必要があります。判断に迷ったときは、「このお金は不動産投資事業をしていなかったら支払っていないのか」を軸に考えましょう。
また、経費計上には「家事按分」という方法もあります。スマホ代やガソリン代など、事業とプライベートのどちらでも使用している項目に対する計上方法です。事業で使用している割合を合理的に決めて、事業使用分のみ経費として計上します。
経費の詳細な記録が必要
私的費用を疑われないためにも、経費の詳細な記録は必要不可欠です。例えば、不動産管理会社の担当者と喫茶店で打ち合わせした飲食代を会議費として計上する場合、「だれ」と「どこ」で「なんのため」に飲食したのかを具体的に記録しておきましょう。
第三者が見ても納得のいく記録を残しておけば、万が一税務署の調査がおこなわれたときに、プライベートの支出ではないことを証明できます。
経費の計上には領収書の保管が必要
領収書をもとに経費を計上しますが、確定申告時に領収書の提出は必要ありません。しかし、領収書は7年間の保管が義務付けられています。税務署の調査がおこなわれるときに領収書の提出を求められることがあるため、必ず保管しておきましょう。
なお、領収書がない場合も、商品の代金を支払った日付や購入代金などが記載されたレシートがあれば代用可能です。ただし、いくら支払った記憶があっても、領収書やレシートなどの証明する書類がなければ経費にはできません。領収書の提出が不要だからといって経費に計上してしまうと、税務調査があった際に追徴課税につながるおそれもあります。
【まとめ】不動産投資の経費は正しく使えば節税対策になる
不動産投資において、経費として計上できる項目はある程度決まっています。具体的には、不動産取得税などの税金やローンの利息、管理委託料です。ほかにも、正当な理由があれば経費として計上できるものもあります。
ただし、接待交際費や光熱費、物品の購入費用といった、私的利用も可能な費用は明確な証拠が必要です。領収書や会合の記録などをしっかりと残しておきましょう。確定申告時に領収書の提出は不要ですが、税務調査がおこなわれるとすべて調べられます。万が一不当な経費計上をしていた場合は、追徴課税が課せられるおそれもあるため、経費計上の判断は慎重におこないましょう。
また、経費に計上できるからといって無計画にお金を使うと、不動産投資の収益を圧迫してしまいます。経費を使いすぎたことが原因で収支が赤字になっては本末転倒です。投資計画のなかに、必要経費額も分かる範囲で盛り込んでおきましょう。