副業を始めて一定以上の収入を得ると、所得税と住民税が課税されます。所得税に関しては確定申告時に税額が決まり、すぐに支払うためあまり疑問は生じません。一方で住民税は、税額が自治体によって異なるうえ、支払い方法も複数あり分かりにくい面があります。特に、会社員が会社に内緒で副業をしている場合、住民税をきっかけにバレることもあるため注意が必要です。
副業を始めるときに気になる住民税の支払いや金額について、詳しく紹介します。確定申告でのポイントや、副業が会社にバレない方法も解説するので参考にしてくださいね。
住民税の基本
一定以上の所得があると納付の義務が生じる住民税。毎年何気なく支払っているものの、細かい仕組みをよく理解していない方も少なくありません。
そこで、住民税の基本的な仕組みや支払い時期などを紹介します。
住民税とは?
住民税は、自分が住んでいる自治体に納める地方税です。徴収した住民税は、生活に直結する公共サービスなど、居住する自治体の運営に使われます。
住民税は毎年1月1日から12月31日の所得額によって決定しますが、支払いは翌年度です。また、1月1日時点で居住する市町村で課税されるため、年の途中で引越しても納税先は変わりません。
なお、住民税には企業が支払う「法人住民税」と、個人が支払う「個人住民税」の2種類があります。
住民税の税率と計算方法
住民税の税率は、自治体によって異なります。ただし、ほとんどの自治体では税率が約10%となっており、どの自治体に住んでいても納税する住民税はほとんど変わりません。
住民税は、都道府県に納める「道府県民税」(東京都は都民税)と、市町村に納める「市町村民税」の2種類です。さらに、所得割と均等割の合計額がそれぞれの納税額となります。所得割は、収入から各控除額や必要経費を差し引いた「所得額」に、一定の税率をかけて算出します。一方、均等割は所得額にかかわらず一定額が課税されます。
種別 | 道府県民税 | 市町村民税 | 合計 |
---|---|---|---|
所得税 | 4% | 6% | 10% |
均等割 | 1,000円 | 3,000円 | 4,000円 |
自治体によっては標準課税とは異なる税率を採用しているケースもあるため、自分が居住する自治体の住民税率を事前に確認しておいてください。
住民税の支払い時期と確認方法
住民税の支払時期は、徴収方法によって異なります。徴収方法は「特別徴収」と「普通徴収」の2種類です。一般的に特別徴収は会社員などの給与所得者が対象で、毎月の給料から天引きされ、会社が本人の代わりに納付します。
一方、納税者が自ら納付する方法が普通徴収です。給与所得のない自営業者やフリーランスなどが対象となります。また、会社員の副業にかかる住民税に関しては、確定申告時に普通徴収を選択できます。
普通徴収を選択した場合は、管轄の市町村から送られてくる納付書に従って自分で納付します。納付書の送付時期は毎年5〜6月ごろです。支払いは一括のほか、年4回に分割することもできます。分割払いでの納付時期は以下のとおりです。
- 第1期:6月末
- 第2期:8月末
- 第3期:10月末
- 第4期:翌年1月末
副業と住民税の関係
副業での収入が一定以上の場合は、確定申告の必要があります。一方で、確定申告が不要な場合も、住民税の申告は必要です。また、住民税の支払い方法によっては、会社に副業がバレるおそれもあるため注意しましょう。
副業と住民税の関係性について、確定申告が必要な所得額や、なぜ住民税によって副業が会社にバレるのかを詳しく解説します。
副業で20万円以上の所得がある場合は確定申告が必要
副業での所得が20万円以上ある場合は、確定申告をしましょう。確定申告とは、年間の所得を申告して正しく納税するための制度です。確定申告をすると、税務署から自治体に通知がいくので住民税の申告を別途おこなう必要はありません。
副業による所得が20万円未満の場合、確定申告は不要です。ただし、所得20万円未満というのは、すべての副業を合算した金額のため、複数の副業をしている場合は注意しましょう。また、所得とは収入から経費を差し引いた額です。たとえば、40万円の収入があっても経費が30万円かかっていれば、所得は10万円となり、確定申告は必要ありません。
確定申告をしなくても住民税の申告は必要
住民税は確定申告の有無とは関係なく、申告する必要があります。確定申告をすると税務署から自治体に通知がいくので、本人が申告する必要がないというだけです。
副業収入が20万円未満で確定申告をしない場合でも、給与所得以外の所得のある方は住民税の申告をする必要があります。「20万円未満は申告不要」という情報も多く、見落としがちですが、不安な方は自治体に相談してみましょう。
住民税で副業が会社にバレる
副業が会社にバレる理由は、ほとんどの会社員は住民税が特別徴収となっているためです。会社が本人に代わって住民税を納税する特別徴収では、住民税決定通知書が会社に届きます。
給与に対して住民税額が大きいと、給与とは別で収入を得ていることが会社に知られてしまうでしょう。
副業を会社に知られたくない場合の対処法
「副業禁止だけど会社に知られずに副業したい!」と考えていませんか?
副業をしていると住民税の課税から、会社に副業がバレるおそれもあります。
反対に、住民税の課税が会社に知られないような対策をおこなえば、会社に副業がバレる可能性は低くなるでしょう。
副業を会社に知られたくない場合の対処法をまとめましたので、副業を始める際の参考にしてみてください。
住民税を普通徴収にする
副業所得分の住民税を普通徴収にすれば、副業の所得に課税される住民税決定通知書は本人に送付されるため、会社には知られません。確定申告の書類で「住民税・事業税に関する事項」の「給与、公的年金以外の所得に係る住民税の徴収方法」で、「自分で納付」を選択すれば普通徴収によって納税できます。
ただし、多くの自治体は特別徴収を推進しており、必ず普通徴収になるとは限らない点には注意が必要です。また、アルバイトなどの雇用契約による給与収入の場合は、会社に送られる住民税決定通知書に記載されてしまいます。
副業にならない方法を選ぶ
副業禁止の会社に勤務している場合は、会社にバレない方法を考えるよりも、副業にならない方法を選んだほうが無難です。住民税を普通徴収にする手続きをしていても特別徴収になるケースがあるほか、SNSの投稿など予期せぬところからバレるおそれもあります。万が一副業がバレて、ペナルティを課せられたり、解雇されたりしてしまっては本末転倒です。
副業以外に副収入を得る代表的な方法として投資があります。なかでも不動産投資は、比較的収入が安定しているうえ、将来に向けての資産形成にもなるのでおすすめです。
相続によって不動産オーナーになるケースもあることから、多くの会社では不動産投資を禁止していません。ただし、投資物件の規模が一定以上になると、事業とみなされる場合もあるため注意しましょう。
【まとめ】副業をする際は正しく申告して住民税を納付する
副業で20万円以上の所得を得た際は、正しく確定申告をして住民税を納付しましょう。特別徴収にしていると、住民税が給与所得以上に課税されることで、副業が会社に知られてしまうおそれがあります。会社にバレないようにするためには、副業にかかる住民税の支払い方法を普通徴収にしておきましょう。
ただし、自治体によっては特別徴収を推進していることから、普通徴収を受け付けてもらえない可能性もあります。副業ができるかどうかの判断がつかない場合は、会社に相談してから副業を始めましょう。
また、普通徴収に切り替えた場合、納付忘れにも注意が必要です。会社員は基本的に特別徴収のため、普段自分で納税することはありません。自治体から送付される納付書に従って、遅れずに納税しないと、延滞金がかかることもあります。