税制改正大綱にもとづいて、2024年(令和6年)に定額減税が実施されます。所得税と住民税から減税されるという政策ですが、具体的な金額や対象者などを詳しく理解している人はそれほど多くありません。
そこで本記事では、定額減税について実施方法や時期も含めて解説します。
もくじ
2024年(令和6年)に実施される定額減税
2024年(令和6年)の定額減税は、対象者の幅が広い点が大きな特徴です。低所得者のみを対象とすることが多い経済的な優遇政策ですが、今回の定額減税は高所得者も対象範囲に含まれます。
減税の目的も含めて、定額減税の基本的な内容をみていきましょう。
定額減税の目的
定額減税の目的は、物価高から国民を守ることです。経済政策のひとつとして政府が掲げた「国民への還元」という考え方のもと、一律での減税が実施されることになりました。
さまざまな経済背景によって、日本国内は急激に物価高が進みました。一方で、一部で賃上げの動きはあるものの、所得の上昇が追いついていないのが現状です。そこで、可処分所得を直接的に下支えするための措置として、定額減税の実施が決定されました。
かなり幅広い対象者
定額減税の対象となるのは、所得金額の合計が1,805万円以下の人です。さらに、給与収入のみであれば、年収2,000万円まで条件が緩和されます。いずれの場合も、2024年(令和6年)分の所得税と住民税を納税する日本国内の居住者のみが対象です。国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、年収2,000万円以上の人は全体のわずか0.6%しかいないため、ほとんどの国民が対象といっても差し支えないでしょう。
また、今回の定額減税は、扶養家族も対象となる点が大きな特徴です。具体的には、所得金額が48万円以下の同一生計の配偶者や15歳以下の扶養親族が含まれます。家族構成によって世帯全体の減税額が変わってくるため、事前に確認しておきましょう。
なお、住民税非課税世帯には、定額減税ではなく給付金が支給されます。
対象となる税金は所得税と住民税
定額減税の対象となる税金は、所得税と住民税です。給与所得者の場合は自動的に支給額に反映されるため、あまり意識することはないかもしれませんが、所得税から3万円、住民税から1万円が減税されます。
配偶者や扶養家族がいる場合も、所得税と住民税それぞれで人数分の減税を受けられます。ただし、所得税については「2024年(令和6年)分の所得税額」、住民税は「2024年(令和6年)度分の個人住民税」が減税の上限額です。
減税の実施方法は働き方によって異なる
定額減税の実施方法は、給与所得者であれば給与に減税額が自動的に反映されるため、ほとんど意識することはありません。一方で、個人事業主など事業で所得を得ている場合は減税タイミングがやや複雑なため、事前に確認しておきましょう。
給与所得者、個人事業主それぞれの定額減税の実施方法を詳しく解説します。
給与所得者は給与支給時の納税額から減税
給与所得者の場合は、2024年(令和6年)6月1日以降に支払われる給与から定額減税が反映されます。1か月分の源泉徴収や住民税特別徴収分から控除しきれない分は、7月以降の給与にも減税額に到達するまで反映されます。
ただし、2024年(令和6年)6月2日以降に入社した場合や、2024年(令和6年)5月31日以前に退職した場合は、毎月の給与に定額減税が反映されない点に注意が必要です。転職などで引き続き給与所得者になる場合は年末調整、事業所得者になる場合は確定申告時に減税されます。毎月の給与処理に減税が反映されない人の条件は、以下のとおりです。
- 令和6年6月1日以後支払う給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の乙欄や丙欄が適用される人
- 令和6年6月2日以後に給与の支払者のもとで勤務することになった人
- 令和6年5月31日以前に給与の支払者のもとで退職した人
- 令和6年5月31日以前に出国して非居住者となった人
2024年(令和6年)6月1日を挟んで引き続き同じ会社から給与所得を得ている場合は、特に手続きは必要ありません。一方、6月1日前後で所得を得る状況に変化のある場合は、事前に所属する会社や国税庁に確認しておきましょう。
個人事業主の所得税は確定申告時
個人事業主の所得税については、減税タイミングが給与所得者と異なります。2024年(令和6年)分の確定申告の際に、特別控除という形で減税されます。2024年(令和6年)6月から減税される給与所得者と違って、実際に所得税が減税されるのは令和7年3月です。
ただし、予定納税の対象であれば、第1期分予定納税額から本人分の3万円が控除されます。(控除しきれない場合は第2期分予定納税額からも控除)
また、事前に減額申請をすれば、同一生計配偶者や扶養家族分も予定納税額に反映させることが可能です。予定納税の対象の方は、2024年(令和6年)7月31日までに申請しましょう。
住民税は2024年(令和6年)分の納税通知書に定額減税が反映されるため、給与所得者とタイミングは変わりません。
定額減税の計算方法
所得税と住民税から合計4万円が減額される定額減税ですが、家族構成によって減税金額は異なります。また、給与所得者の減税タイミングは2024年(令和6年)6月1日以降の給与支給時とされているものの、減税額や源泉徴収額によっては一度の給与ですべてを反映できません。
そこで、定額減税の基本的な計算方法と、給与に反映される仕組みを紹介します。
基本的な計算方法
定額減税は所得税から3万円、住民税から1万円が特別控除される仕組みです。また、生計同一配偶者や扶養家族の人数分、減税額が上乗せされます。具体的な計算方法は以下のとおりです。
・モデルケース
給与所得者:1名
配偶者:1名
15歳以下の子ども(扶養家族):2名
・定額減税額の合計:16万円
<内訳>
・所得税の減税額:12万円
給与所得者 3万円+ 配偶者3万円+ (15歳以下の扶養家族:3万円)× 2
・住民税の減税額:4万円
給与所得者 1万円+ 配偶者1万円+ (15歳以下の扶養家族:1万円)× 2
減税金額が月の源泉徴収額を上回る場合
給与から控除される源泉徴収や住民税の金額によっては、一度の給与支給で減税額をすべて反映できないケースもあります。減税しきれなかった分は、翌月以降の給与にも継続して反映されるため安心してください。
また、2023(令和5)年の課税状況(所得税・個人住民税)にもとづいて2024年(令和6年)6月以降に引ききれないと見込まれる場合は、不足する減税額分が夏以降に当初給付として支給されます。さらに不足する場合は2024年(令和6年)の実績が確定した2025年以降に不足額給付として支給されるため、給与や減税額の状況によらず損をすることはありません。ただし、合計の減税額は、2024年(令和6年)の所得税、住民税が上限です。
【まとめ】定額減税の実施は原則6月だが条件によって時期が異なる
多くのメディアで報道されているとおり、定額減税の実施は原則2024年(令和6年)の6月です。しかし、6月1日前後の就労状況に変化がある場合や、給与所得者でない場合などは、減税の実施タイミングが異なります。また、給与所得者であっても、減税額によっては7月以降にまたがったり、一部のみ給付されたりするケースもあるため注意が必要です。
さらに、今回の減税措置は決定から実施までの期間が短い臨時的な措置のため、給与計算をする現場や自治体の事務手続きの混乱も予測されます。事前に計算した減税額と、給与明細や自治体からの案内などをしっかりと確認しましょう。不明な点は放置せず、勤務する会社や所属する自治体、国税庁に問い合わせてください。