相続した土地を売却した際の税金は? 基本的な税制と節税対策を詳しく解説

相続した土地を売却した際の税金は? 基本的な税制と節税対策を詳しく解説|株式会社イー・トラスト

相続した土地を売却する機会は、一生のうちそれほど多くありません。いざ土地を売りたくなったとき、どのくらい税金がかかるのかわからない方も少なくないでしょう。

そこで本記事では、相続した土地を売却する前に知っておきたい、税金の種類や金額について解説します。また、少しでも納税額を抑えるための対策も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

相続した土地を売却した際にかかる税金

相続した土地を売却した際にかかる税金

土地を購入した際と同様、売却時にも税金は発生します。土地を売却する場合は、税金の種類や特徴を事前に理解しておくことが大切です。

売却時の手続きをする際に必要な税金と、差益が出たときのみにかかる税金について詳しくご紹介します。

登録免許税

土地の相続時に必要な登録免許税は、所有権移転登記と抵当権抹消登記時に課税されます。所有権移転登記は、相続した土地の登記内容が相続人の名義や住所ではなく、以前の所有者のままだった場合にも必要です。土地を売却する前には、登記内容を必ず確認しておきましょう。所有権移転登記時の税額の計算式は以下のとおりです。

登録免許税(所有権移転登記)= 固定資産税評価額✕ 0.4%

抵当権抹消登記は、土地をローンで購入して返済が残っていた場合などに必要な手続きです。ローンを完済していても抵当権は自動的に抹消されないため、自身で手続きを依頼する必要があります。

抵当権抹消の登録免許税は、一つの不動産につき1,000円です。手続きは個人でもできますが、一般的には司法書士に依頼します。司法書士に依頼する場合は1〜2万円の手数料がかかるため、登録免許税と併せて準備をしておきましょう。

印紙税

印紙税は、一定額以上の契約書や領収書を発行する際に発生します。印紙税の税額は取引金額によって異なりますが、おおよそ5,000円から3万円の範囲です。

印紙税の証票は「収入印紙」という、切手のような形をしています。買主と売主が受け取る契約書それぞれに必要です。

所得税と住民税

土地を売却した際に取得費よりも売却額が高く、差益が発生すると、所得税や住民税が課せられます。土地の売却時にかかる税金としてはもっとも大きな金額となるため、課税される仕組みや税額を事前に十分確認しておきましょう。

所得税と住民税の税額は、譲渡所得の20〜40%程度です。一方で、相続によって土地を取得した場合には、さまざまな優遇措置を受けられる可能性があります。

所得税と住民税に関係する譲渡所得

所得税と住民税に関係する譲渡所得

相続した土地を売却する際にかかる税金のなかで、特に注意しておきたいのが譲渡所得に関係するものです。譲渡所得額の算出や土地の所有期間などをきちんと把握し、正しい税額を算出することで、最終的に手元に残る金額がわかります。

また、譲渡所得の税額を算出する際は、特別控除を適用できるかどうかも確認しましょう。譲渡所得について、詳しく解説します。

不動産売却によって得られる所得

相続した土地の売却額が購入時の価格を上回ると譲渡所得が発生し、課税対象となります。譲渡所得とは、土地の売却額から土地の取得費と譲渡の際にかかった費用を差し引いて算出する差益です。

譲渡所得= 相続した土地の売却額- (土地の取得費+ 譲渡費用)
※譲渡費用は「仲介手数料」「印紙代」「整地費用」など

たとえば、土地の売却額が3,000万円、取得費が2,500万円、譲渡費用が200万円だった場合、譲渡所得は300万円となります。

取得費が不明な場合の計算方法

取得費が不明な場合は「みなし取得費(概算取得費)」を利用します。相続した土地が古くから引き継がれている場合など、当時の売買契約書が見つからず取得費がわからないケースも少なくありません。土地の売却額に5%をかけた金額を、みなし取得費として利用できます。

たとえば、土地の売却額が3,000万円の場合
3,000万円✕ 5%= 150万円が、みなし取得費(概算取得費)となります。

みなし取得費(概算取得費)は実際の取得費がわかっている場合でも、納税額を抑えるために利用可能です。

譲渡所得にかかる税金は2種類

譲渡所得にかかる税率は、相続した土地の所有期間によって2種類に分かれます。5年以内の短期譲渡所得は39.63%、5年以上の長期譲渡所得は20.315%です。詳しくは以下の表を確認してください。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率 譲渡所得税率
短期譲渡所得 5年以内 30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得 5年以上 15.315% 5% 20.315%

※所得税率は、復興特別所得税2.1%を含む

一定の条件を満たせば3,000万円の特別控除もある

相続した土地に空き家が建てられていた場合、取り壊して更地にしてから売却すると、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。この制度は、老朽化した建物をなくすことを目的に制定されました。

ただし、控除を受けるにはいくつかの要件があるため注意が必要です。たとえば、土地と建物をセットで相続した場合のみ、特例の対象となります。また、引き渡しまでに家屋を取り壊しておかなければいけません。

なお、マンションや区分所有登記している2世帯住宅は対象外です。適用要件は細かく規定されているため、控除を利用したい場合は、国税庁のホームページなどで内容をよく確認しておきましょう。

相続した土地を売却する際の節税対策

相続した土地を売却する際の節税対策

相続した土地を売却して差益が発生すると、少なからず課税されてしまいます。しかし、節税対策をすることで、ケースによっては納税額を抑えられるかもしれません。

節税対策でもっとも大切なのは、譲渡に関連した金額を正確に算出することです。また、条件によっては特別控除が適用されるため、税制をしっかりと確認しておきましょう。

土地を売却する際の節税対策について、詳しくご紹介します。

取得費を明確にしておく

土地の取得費を明確にしておくことは、効果的な節税対策です。取得費が不明な場合、売却額に5%をかけて算出する「みなし取得額」を譲渡所得の算出に利用します。実際の取得費が「みなし取得額」よりも低かった場合、税金を多く納めなければならないため注意しましょう。

土地の取得費を知るには、土地の売買契約書を入手する方法が確実です。入手が難しい場合は、取得時に仲介した不動産会社へ売買契約書の控えや資料が残っていないかを問い合わせてみましょう。

また、売買契約書以外にも取得費を知る方法はあります。たとえば、故人の通帳に記入されている出入金額から推測することが可能です。ローンを組んでいた場合は、金銭消費貸借契約を参考にできます。

土地の購入代金だけではなく、取得時に支払った仲介手数料や各種税金、整地費用も取得費に含まれます。参考にできそうな資料を見つけたら、取得費として認めてもらえるかを税務署に確認しましょう。

譲渡にかかる費用をすべて計上する

譲渡にかかる費用を漏れなく計上することも、重要な節税対策です。譲渡費用は売買差益から差し引かれるため、譲渡所得を圧縮できます。譲渡費用とは、土地を売却する際の仲介手数料や広告料、測量費や空き家の取り壊し費用などです。また、細かい部分だと、買主と打ち合わせをするための交通費や会議費用、通信費も忘れずに控えておきましょう。

ただし、譲渡する土地からの引っ越し代や、移転先の住宅に関する諸費用などは譲渡費用として認められません。どの項目が譲渡費用の対象となるかを判断できない場合は、必ず税務署に確認してください。

特別控除を利用する

土地を売却する際は、特別控除の利用可否を確認しましょう。特別控除は譲渡所得から差し引かれるため、利用できれば税額を大幅に圧縮できます。譲渡所得額によっては所得税や住民税が課税されなくなるケースもあるため、特別控除の確認は重要です。

3,000万円控除以外にも、譲渡所得の特例には「1,000万円の特別控除」や「低未利用土地100万円特別控除額」などがあります。

1,000万円の特別控除は、平成21年〜22年の間に取得した土地を5年以上所有して譲渡した場合に、最大1,000万円の特別控除を受けられる制度です。

譲渡所得= 相続した土地の売却額- (土地の取得費+ 譲渡費用)- 1,000万円

低未利用土地100万円特別控除額は、土地の価格が500万円以下の場合に適用されます。譲渡した土地が都市計画区域内にあり、かつ「低未利用土地等であること」および「譲渡後の土地等の利用」について市区町村長の確認がなされたものであることなどが条件です。低未利用土地の特別控除額は最大100万円ですが、所有期間に制限がないため条件の合う土地であればぜひ活用しましょう。

【まとめ】相続した土地を売却する際は税金の支払いに注意

【まとめ】相続した土地を売却する際は税金の支払いに注意

相続した土地を売却する際は登録免許税や印紙税に加え、「譲渡所得」と呼ばれる差益に対して所得税や住民税がかかります。不動産売買は金額が大きいため、正しく税制を理解しておかないと思わぬ出費に戸惑うかもしれません。

一方で、譲渡費用の計上や特別控除といった、節税につながる方法もあります。土地の売却時にかかる税金を理解し、少しでも減らせるように手続きを進めてください。また、税制は変わることもあるため、土地の売却に慣れていない場合は専門家に相談しましょう。
 
 

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