2024年3月4日の東京市場で、日経平均株価はついに4万円の大台に乗りました。1989年以来、実に34年ぶりとなる史上最高値の更新です。一方で、今後の経済情勢について、ネガティブな声も聞こえてきます。日経平均株価は日本の経済状態を表す重要な指標であるため、今後の動向は気になるところです。
そこで今回は、日経平均株価の上昇要因とともに、リスクについても詳しく解説します。
もくじ
日経平均株価の現状と最高値の記録
日経平均株価が最高値を記録している大きな理由は、海外投資家の資金流入です。
なぜ海外投資家は日本株を買うのか、その背景を詳しく解説します。まずは、日経平均株価の最新の推移をみてみましょう。
日経平均株価の最新の推移と現在の水準
日経平均株価は、2024年の3月4日に初の4万円台となる4万109円23銭を終値でつけたあと、3月22日には4万1,087円75銭もの高値に達しました。年初来の値動きをチャートで確認すると、最安値からは約60%もの上昇です。
なお、2024年5月現在は、3万8,000円台後半の水準で推移しています。
バブル以来の史上最高値更新の背景
日経平均株価がバブル以来の高値を記録している背景には、海外投資家の大規模な資金流入があります。少し前の情報ではありますが、2023年6月15日に発表された東京証券取引所の統計によると、海外投資家による日本株の買い越しは11週連続でした。11週の累計では5.5兆円にものぼり、明らかに海外投資家が日本株上昇をけん引していることがわかります。
また、生成AIへの需要期待から半導体関連株が、アメリカを中心に全世界的にあがっていることも日経平均が上昇した背景の1つです。
日経平均株価の上昇要因
日経平均株価が上昇しているおもな要因は、海外投資家による買い付けです。その背景には「企業収益の拡大」「インフレ下で続く金融緩和」「円安の進行」といった理由があります。
日経平均株価が上昇している要因を、さまざまな角度からみていきましょう。
企業収益の拡大
日経平均株価が上昇した要因の1つは、企業収益が拡大していることです。石油をはじめとする原材料費の価格転嫁が進み、史上最高益を更新する企業も少なくありません。また、全世界的な生成AIへの需要から、半導体、IT関連の企業も業績を堅調に伸ばしています。
一方で、増加した所得が個人の給与に反映されていない面もあるため、今後の動向には注意が必要です。人材不足から賃金が上昇することも見込まれ、企業の収益性が悪化するおそれがあります。
インフレ下で続く金融緩和
日銀による金融緩和政策の継続も、日経平均株価の上昇要因です。2024年3月19日に17年ぶりとなるマイナス金利の解除を発表したものの、ゼロ金利政策自体は継続しています。金利が低いと企業は利益を確保しやすいことから、海外投資家も含めた日本株式への安心感が広がり、日経平均株価を押し上げました。
ただし、現状のインフレが解消する見込みは今のところないため、今後金融政策が大きく転換されるおそれもあります。
円安の進行
円安の進行により海外投資家の資金流入が増加したことも、日経平均株価の上昇を支えました。円安になると、海外からみた場合、日本の物価が低くなります。企業価値に対して割安感が広がったことで、海外投資家の積極的な日本株式への投資が進みました。
また、輸出企業にとって、円安は業績良化につながります。自動車関連などの輸出企業も多いため、業績への期待感から資金が集まりました。
日経平均株価上昇のリスク要因
今後の日経平均株価の先行きには、リスクも潜んでいます。企業業績が堅調な日本株への期待が先行するなかで、海外投資家による投資の勢いがどこまで続くかがポイントです。現在の日経平均株価の上昇が、日本企業の実力を反映したものであるかどうかを注視する必要があります。
金融政策や利上げの影響
仮に日銀がマイナス金利政策を解除し、利上げ(金融引き締め)に転じた場合、市場金利が上昇し、日経平均株価は下降する可能性があります。
一般的に金利と株価はシーソーの関係にたとえられ、金利が上昇すれば株価を押し下げる要因となります。
市場の過熱や投機的動向のリスク
今回のように、株価が急激に上昇して市場が過熱感を帯びてくると「どこまで上昇するのか」「バブルではないか」などの危惧が生まれます。重要なのは、今の日本経済の実力である国内総生産と比べて、現在の株価はどの位置にあるかという点です。
日経平均株価は、外国人による日本株買いにけん引されて上昇しています。日本の上場企業の業績は3期連続で最高益を更新しました。しかし、ひとたび企業の潜在成長率が鈍化し、長期的な成長期待が見込めなくなれば、海外投資家の日本株の売りが加速するかもしれません。
国内外の地政学的リスクと経済変動
ロシアによるウクライナ侵攻は、エネルギー供給をロシアに頼っていたヨーロッパ諸国の経済に大きな影響を与えました。ほかにも、米中対立が深刻化して台湾有事となれば、日本が巻き込まれる可能性があります。
また、アメリカや欧州経済の動向が日本経済に与える影響も少なくありません。好調な現在だからこそ、あらゆる情報を収集して注意深い投資判断をしましょう。
【まとめ】日経平均株価の動向はリスクも含めて注視
史上初の4万円台をつけたあと、やや下降した日経平均株価ですが、依然上昇トレンドであることには変わりません。一方で、株価は、国際情勢や地政学的リスクなど複数の要因が絡み合って変動します。
短絡的な株価の高騰や下落に惑わされず、広い視野をもって投資判断をすることが大切です。日銀政策や為替の状況も含めて、常に市場動向を注視しておきましょう。