つみたてNISAは、年間40万円までの投資枠を、20年間にわたって非課税で運用できる積立投資です。お小遣いをためていくように、長期間コツコツと積み立てて資産形成をめざします。
つみたてNISAと同じく節税できる積立投資として、iDeCo(イデコ)もよく話題になります。どちらも節税効果はありますが、目的や条件が異なるため、利用前に仕組みを確認しておくことが必要です。
今回の記事では、節税対策という観点でつみたてNISAについて詳しく解説します。また、iDeCoとの違いや、2024年から始まる新NISAについてもご紹介しますので、つみたてNISAを検討中の方はぜひ参考にしてくださいね。
つみたてNISAとは
「つみたてNISA」は、2018年1月に金融庁が開始した少額投資非課税制度です。「NISA」には、つみたてNISA以外にも種類があり、それぞれ条件が異なります。
節税対策として利用したい「つみたてNISA」には、どのような特徴やメリットがあるのか、2024年から施行される新しいNISA制度と併せてご紹介します。
つみたてNISAは少額投資非課税制度
つみたてNISAとは、現在3種類設定されている少額投資非課税制度の一つです。ほかには「一般NISA」「ジュニアNISA」があります。預貯金が半数以上を占める日本の金融資産構成を投資へ向かわせ、経済の活性化を促進するために制定されました。
すべてのNISAに共通するのは、株や債権などを一口100円から購入できる点です。また、運用中に発生する収益や配当金には税金がかかりません。
NISAの種類による違いは、投資期間と上限額です。つみたてNISAは1月から12月までの年間投資上限額が40万円と、もっとも低く設定されています。一方で投資期間は最長の20年です。
なお、2024年から投資枠が拡充された「新NISA」が始まります。新NISAの開始にともない、2024年以降つみたてNISAの新規買付はできなくなりますが、つみたてNISAの口座をそのまま新NISAへ引き継ぐことができます。
※「一般NISA」「ジュニアNISA」は2023年で終了。ただし、一般NISAはロールオーバーによる5年延長が可能。
つみたてNISAのメリット
つみたてNISAでは、優良投資信託のみ購入できるようになっています。投資リスクが少ないため、投資初心者でも始めやすい点がメリットです。実績のある商品に絞ることで、投資の基本である「長期・積立・分散」に準じた内容となり、投資リスクを最小限に抑えられます。
また、金融商品を売買する際にかかる手数料も無料か、有料でも低く抑えられていることも、投資初心者に向いているポイントです。
さらに、初心者にとっては売買タイミングが難しい点も不安材料となりますが、つみたてNISAの場合は、一度設定すれば自動的に購入できます。確定申告の必要もないため、運用に手間がかからない点も魅力の一つです。
2024年に施行される「新NISA」
非課税制度の拡充と恒久化を目的として、2024年から「新NISA」が始まります。新NISAの開始によって、現在3種類設定されているNISAは廃止や統合されるため注意が必要です。「ジュニアNISA」が2023年で終了し、「つみたてNISA」と「一般NISA」が組み合わさった、新NISAに生まれ変わります。
新NISAの特徴は、2階建て構造となった点です。1階部分は現行のつみたてNISAにあたる「つみたて投資枠」となり、年間投資上限額は120万円まで上がります。国が認定した優良投資信託のみ購入が可能で、積立・分散に準じた投資手法です。
「成長投資枠」となっている2階部分は現行の一般NISAにあたり、原則的に1階部分の「つみたて投資枠」を利用する方のみ利用できます。年間の投資額は240万円まで広がり、上場株式や投資信託の取り扱いも可能です。また、積み立てだけではなく単発での投資もできます。
「つみたてNISA」と「新NISA」で最大1,840万円の非課税投資枠
新NISAへの以降前につみたてNISAを始めると、非課税投資枠を最大限利用できます。つみたてNISAの新規買付は2023年末で終了しますが、非課税枠の40万円を引き続き利用できるためです。新NISAの生涯投資枠は1,800万円のため、つみたてNISAと合わせると1,840万円を非課税で運用できます。
NISAの開始を検討している場合は、新NISA移行前につみたてNISAを始めることをおすすめします。
つみたてNISAとiDeCoの節税比較
つみたてNISAで投資すると、どれくらいの節税効果を得られるのか、iDeCoとの比較も含めて具体的にシミュレーションしていきます。
節税効果やそれぞれの特徴を把握して、最適な投資プランを選択しましょう。
つみたてNISAとiDeCoの特徴
つみたてNISAとiDeCoでは、年間の投資上限額や期間、気になる節税効果などにさまざまな違いがあります。つみたてNISAは運用益や配当金に対してのみ非課税ですが、iDeCoは掛金そのものが所得控除の対象です。なお、つみたてNISAとiDeCoは併用できます。
つみたてNISA | iDeCo | |
---|---|---|
加入可能年齢 | 18歳以上 | 基本的に20歳以上65歳未満 |
最低投資金額 | 1口 100円 | 1口 5,00円 |
投資上限額 | 年間40万円 | 職業や所得によって異なる (年間144,000円〜276,000円) |
投資可能期間 | 20年 (〜2042年末。新規買付は2023年まで) |
65歳まで (60歳以降受け取り可能) |
投資対象商品 | 国が認定した優良投資信託のみ | ・投資信託 ・定期預金 ・保険商品 |
途中解約 | 可 | 不可 |
節税効果 | 運用益全額が非課税 | ・運用益全額が非課税 ・投資額が所得控除の対象。 住民税と所得税が軽減 |
つみたてNISAは運用益全額が非課税
つみたてNISAは、運用益に対して税金がかかりません。一般的な投資と比較して、つみたてNISAの節税金額を見てみましょう。
たとえば、年利3%の金融商品につみたてNISAの上限と同額の年間40万円を投資して、20年間運用した場合の税額は約588,600円です。しかし、つみたてNISAを利用すれば税金がかからないため、60万円弱の節税効果を得られます。
<計算式>
・元金
400,000円×20年=8,000,000円
・運用益
(8,000,000円×年利3%)− 8,000,000円=約2,943,000円
・税額
2,943,000円×20%(税率)=588,600円
節税の比較対象となりやすいiDeCo
iDeCoとは、現在加入している公的年金(厚生年金、国民年金)に上乗せする形で利用する個人型確定拠出年金です。公的年金のみでは不足するといわれている、老後資産を補てんするために制定されました。
ただし、iDeCoは60歳になるまで、原則途中解約ができません。
所得控除の対象にもなるiDeCo
iDeCo最大のメリットは、大きな節税効果です。つみたてNISAと同様に運用益が非課税となることに加え、投資した金額がすべて所得控除の対象となります。
たとえば、企業年金のない年収500万円の会社員が、年間24万円をiDecoに投資した場合、年利3%の金融商品を20年間運用すると、運用益に対する節税効果は353,200円です。さらに、掛金の所得控除によって20年間で96万円も所得税、住民税を節税できます。
<計算式>
・元金
240,000円×20年=4,800,000円
・運用益
(4,800,000円×年利3%)− 4,800,000円=約1,766,000円
・税額
1,766,000円×20%(税率)=353,200円
つみたてNISAの注意点
つみたてNISAは、誰にでも向いている投資方法というわけではありません。また、すでに証券会社に通常の取引口座を開設している人も、そのまま取り引きをできるわけではないので注意が必要です。
つみたてNISAに向いている人、専用口座について紹介します。
つみたてNISAに向いている人
つみたてNISAは、コンパクトな投資枠を長期間保有して資産形成をしていく点が特徴です。10年以上の長期間、安定して投資できる人に向いています。
途中解約も可能ですが、もともと投資できる枠が限られているため短期間ではあまり高い収益は見込めず、投資メリットがほとんどありません。また、途中で解約しても40万円の年間投資枠が回復するわけではなく、再度始める際に投資可能枠が少なくなってしまいます。
専用口座を開設する必要がある
つみたてNISAを始める際は、非課税枠として専用口座を開設する必要があります。NISAに対応している証券会社などで、インターネットでの申し込みが可能です。
つみたてNISAの専用口座は一人一口のみで、一般NISAと併用はできません。
【まとめ】自分のライフプランに合わせた資産運用を
つみたてNISAは、一口100円から投資できる少額投資非課税制度です。運用益に課税されないため、節税対策にもなります。
ただし、投資枠の上限は年間40万円と限られており、短期間では大きな利益や節税効果は見込めません。より多くの資金を投資したい場合は、つみたてNISAと同様に運用益が非課税のiDeCoと併用しましょう。iDeCoには、掛金の所得控除を受けられるメリットもあります。
2024年から新NISAが始まります。投資の上限額が拡大され、さらに大きな節税効果が期待できます。また、2023年中につみたてNISAを始めれば、現在の投資枠も維持することが可能です。制度の特徴をしっかりと理解して、最適な資産形成プランを立ててくださいね。
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