近年、新しい投資対象として海外の不動産に注目が集まっています。人口や経済状況が日本と異なる場所での不動産投資は、大きな収益が期待できる反面、商慣習の違いなどからリスクを負うケースも珍しくありません。
そこで今回は、海外での不動産投資に必要な基礎知識やメリット、注意点をわかりやすく解説します。
もくじ
海外不動産投資とは?
海外不動産投資とは、日本以外の国にある不動産を対象とした投資方法です。
海外不動産投資の対象国は、近隣のアジア地域から欧米諸国まで、数多くあります。日本での不動産投資経験があっても、海外の不動産投資となるとイメージできない方も少なくありません。日本と海外では、不動産投資をする際にどのような違いがあるのかを詳しく紹介します。
国内不動産投資と海外不動産投資の違い
国内不動産と海外不動産の大きな違いは、不動産投資を取りまく環境です。たとえば、人口推移や年齢構成、不動産価格のトレンドは国内と海外ではまったく異なります。
日本では高齢化が進み、人口の増加も少子化によって頭打ちです。一方で海外、特に新興国では、人口は増加傾向にあり、平均年齢が日本より若い国や地域もたくさんあります。経済成長を続けている国であれば、不動産価格も上昇傾向です。
不動産収益の違い「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」
不動産投資による収益には「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」の2種類があります。キャピタルゲインとは、購入した不動産を価格が上がったタイミングで売却し、売買差益を得る方法です。
インカムゲインは、物件を賃貸に出して家賃収入を得ることで、長期的な収益を得られます。日本の不動産投資においては、安定したインカムゲインが主流となっています。
一方海外では、建物の売買で収益を得るキャピタルゲインが主流です。経済成長を背景に物件の価格が上昇しているため、短期間で大きな利益を得られるキャピタルゲインを狙いましょう。
所有した物件によってはリフォーム費用がかかりますが、不動産価格の上昇幅が大きい地域であれば、支出をカバーできる利益を得られます。
国別に見る海外不動産投資の特徴
海外不動産投資の特徴は、投資先の国によって大きく異なります。
不動産投資の対象となるエリアを先進国と新興国の2つに分けて、それぞれの特徴や傾向を見ていきましょう。
先進国(アメリカ・イギリスの場合)
外国人に対する不動産規制の少ないアメリカでは、人口増加に伴い住宅需要も伸びているため、今後の活況が期待できます。
アメリカでの不動産投資の特徴は、流通している不動産の70%以上が中古物件である点です。建物の資産価値が落ちにくいため、積極的にキャピタルゲインを狙えるでしょう。
欧州での投資対象国として挙げられるのはイギリスです。イギリスも外国人に対する規制が緩いため、不動産投資に参入しやすくなっています。
イギリスで不動産を購入する際に欠かせない存在が、「ソリシター(Solicitor)」という事務弁護士です。物件の購入に至るまでの本人確認や審査、契約など、不動産投資のすべてにおいてソリシターを通じておこなわれます。買主と売主が対等な立場で取引できる点が、ソリシターを介する大きなメリットです。
新興国(フィリピン、カンボジア、タイの場合)
新興国で注目が集まるエリアの一つが東南アジアです。なかでもフィリピンやカンボジア、タイは、日本や他のアジア地域と比べて利回りが高くなっています。
欧米諸国よりも物件価格が低いため、参入障壁も高くありません。また、今後の経済成長が期待でき、キャピタルゲインとインカムゲインの両方を狙えます。
東南アジアの不動産物件は「プレビルド」が一般的です。プレビルドとは、まだ建築途中の物件で、完成品を見ない状態での購入となります。支払いは一括もしくは分割払いですが、前払いのため交渉次第では値引きも可能です。
海外不動産投資をするメリット
海外不動産投資のメリットは、円安時の収益増加や分散投資となる点です。
為替変動を上手に利用すれば、期待以上の収益を得られる可能性もあります。海外不動産投資のメリットについて、詳しく見ていきましょう。
円安時に資産価値や収益が増加する
海外で不動産投資をする際、円安時に収益増加の恩恵が得られることは大きな魅力です。たとえば、賃料が1,000ドルの物件を運用している場合、1ドル=100円から1ドル=130円へ円安になると、円建て換算では収益が30,000円増加します。
円安のメリットは物件売買においても同様です。購入時より売却時に円安となっていれば、売買益がキャピタルゲイン以上に増加します。
分散投資になる
分散投資とは、大きなリスクを回避するために、特徴や種類の異なる投資対象に資産を分けて運用することです。国内の不動産投資のみを所有している場合、国内の経済状況が悪くなると全体の収益性が悪化してしまいます。
しかし、国内とはトレンドの異なる海外の不動産に投資しておくことで、所有物件の価値が一斉にマイナス方向へ動いてしまうことを防止できます。
海外不動産投資をする際の注意点と対策
海外で不動産投資をすると、日本では当たり前だと思っていたことが通用しないおそれもあります。
海外不動産投資でのトラブルは、手間やストレスがかかるため、できる限り避けたいものです。海外不動産投資をなるべく安全におこなうための注意点をご紹介します。
不動産を所有できる国とできない国がある
海外で不動産投資をおこなう場合、どの国でも不動産を購入できるわけではありません。特に新興国では、外国人に対する不動産規制の厳しい国が多くあります。
たとえば中国では、すべての土地が国または農民の集団によって保有されているため、外国人の所有は認められず「使用権」を得ることになります。使用権を取得するには、個人ではなく現地のビジネスパートナーとの共同名義が必要です。
インドにおいても同様で、外国人が個人で不動産を所有することはできません。法人と共同出資をするなど、合弁会社としての所有となります。
不動産を所有できない国の場合は、投資方法が複雑になるため、事前にしっかりと調査しておきましょう。
異なる言語や文化
海外不動産投資をするうえで、大きなハードルとなるのが言語や文化の違いです。国が変わればモノの考え方や習慣が大きく変わるため、コミュニケーション不足によるトラブルが発生するおそれがあります。
言葉に不安がある場合は、現地に日本人スタッフがいる仲介会社や、海外不動産投資をサポートしている会社を利用しましょう。
政治経済情勢や為替リスク
海外不動産投資をおこなう場合は、経済情勢の変化や為替リスクを計画に盛り込んでおきましょう。特に、政治的に不安定な地域は、政策次第で物件価値が大きく変動するおそれもあります。
また、風水害や地震といった自然災害が起こりやすい地域かどうかも、事前にしっかりと調査しておきましょう。
管理会社の質
海外にある物件を自主管理することは難しいでしょう。そのため、現地の管理会社に委託するのが一般的です。しかし、日本の管理会社のように質の高いサービスを提供してもらえるとは限りません。
物件を運用したくても入居者募集をしてくれなかったり、退去時のデポジットを入居者へ返金しなかったりするケースもあります。
管理会社を選定する際は、細かい点まで契約内容を確認し、疑問があれば契約前にしっかりと確認しておきましょう。
リノベーション物件のリスク
アメリカでの不動産投資の場合、中古物件をリノベーションして短期転売する「Flip投資」が一般的です。しかし、リノベーションの工期が遅れることも少なくありません。工期が遅れると、入居者の募集ができないばかりか、工事費がかさんでしまう場合もあるため注意しましょう。
【まとめ】海外不動産投資はその国の不動産情勢や知識をしっかり学ぶことが大切
為替や物価上昇といったメリットを上手に活用すれば、大きな収益が期待できる海外不動産投資。しかし、国内不動産投資とは勝手が違う点を、事前に理解しておくことが重要です。
また、海外不動産投資は、国内での投資と比べて大きなリスクを伴う場合もあります。社会情勢の悪化や文化の違いによるミスコミュニケーションなど、思わぬことがトラブルや損失に発展するおそれもあるので注意しましょう。
自分ひとりで判断できない場合は、日本の仲介会社などを利用してリスクの少ない取引をしてくださいね。