不動産投資に中古物件を選ぶ際は、減価償却の計算方法が新築物件と異なる点に注意が必要です。節税につながる減価償却を正確に把握しておかないと、投資計画を立てられません。
そこで今回は、中古物件の減価償却について、新築物件との違いや基本的な計算方法などを詳しくご紹介します。
もくじ
中古物件と新築の減価償却の違い
不動産投資の収支計算をする際に、欠かせない勘定科目のひとつが減価償却費です。しかし、減価償却費は、取得価格が同じでも新築物件と中古物件で金額が変わってきます。中古物件に投資する際は、事前にしっかりと確認しておきましょう。
どういった点がなぜ異なるのか、不動産投資をするうえで知っておきたい減価償却の基本的な考え方を詳しく解説します。
不動産投資で重要な減価償却
減価償却とは、年数が経過するごとに価値が下がる資産(減価)を、一定の期間にわたって経費計上する(償却)ことです。
事業をおこなうために購入した消耗品は、1回の支出として会計処理をおこないます。しかし、長期にわたって使用する「固定資産」に関しては、一定の期間内で分割して経費計上する特別な会計処理が必要です。減価償却する期間は、資産に応じて国が定めた「法定耐用年数」で細かく定められています。
中古物件と新築の減価償却の基本的な違い
中古物件と新築物件の減価償却の大きな違いは耐用年数です。減価償却費の計算に使用する耐用年数が異なるため、同じ価格で取得したとしても1年間に計上できる減価償却費の金額が異なります。
新築物件は、長い耐用年数の間に少しずつ減価償却費がかかります。一方で、耐用年数の短い中古物件は、1年間に計上する減価償却費の金額が大きくなる点が特徴です。
中古物件と新築で耐用年数が異なる理由
中古物件の耐用年数が新築と異なる理由は、単純に新築時から経過した年数分の耐用年数が減少するためです。耐用年数から経過年数を除いた残りの期間を「残存年数」と呼び、中古物件の耐用年数を計算する際に使用します。
ただし、中古物件の減価償却費を計算する際は、単純に残存期間を耐用年数とするわけではありません。経過年数によっては耐用年数がゼロになることもあり、現実とそぐわなくなるためです。実際の計算方法については後述します。
中古不動産の減価償却費を正しく計算する
中古不動産の減価償却費は、計算方法さえ理解すればかんたんです。ただし、新築物件と違い、耐用年数の算出方法が少し複雑になる点に注意しましょう。
中古不動産の減価償却費の方法を、具体的な計算方法も交えて詳しく解説します。
中古物件はまず耐用年数を算出する
物件の耐用年数は、国税庁のホームページに掲載されている「主な減価償却資産の耐用年数表」(注)で確認できます。新築物件の場合は、この表をそのまま使用できますが、中古物件の場合は別途計算が必要です。
中古物件の耐用年数を算出する方法は2種類あり、対象の物件が法定耐用年数を超えているかどうかによって決まります。
法定耐用年数を超えている中古物件の耐用年数は「法定耐用年数×20%」です。たとえば、耐用年数22年を超える築23年の木造住宅の場合、「22年×20%=4.4年」となり、小数点以下を切り捨てた「4年」が耐用年数になります。なお、計算して2年以下となった場合の最低耐用年数は2年です。
一方、法定耐用年数内の中古物件の計算式は「法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%」です。たとえば、同じく法定耐用年数22年の築10年が経過した木造住宅の場合、「22年-10年+10年×20%」という計算式で、耐用年数は14年になります。
減価償却の計算方法自体は新築と同様
中古物件の場合、耐用年数の算出がやや複雑ですが、減価償却自体の計算方法は新築の場合と同様です。なお、減価償却費の計算式は定額法と定率法の2種類があり、平成19年4月1日以後に取得した物件は、以下の定額法の計算式を使用します。
減価償却費=取得価額×定額法の償却率
たとえば、築15年の鉄骨鉄筋コンクリート造マンションを1億円で取得したとしましょう。この建物の法定耐用年数は「法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%」の計算式に当てはめると、35年になります。なお、定額法の計算に使用する償却率は、国税庁ホームページの「減価償却資産の償却率等」(注)で確認できます。
10,000万円×0.029=290万円
この中古物件の減価償却費は、年間290万円です。
中古不動産投資を成功させるためのポイント
中古不動産投資を成功させるためには、中古物件の特徴を捉える必要があります。同時に、中古物件がもつデメリットやリスクも理解して、大きな損失を出さないよう備えておきましょう。
中古物件のメリット・デメリット
中古物件には、初期費用を抑えて購入できるメリットがあります。安定した家賃収入を得られれば、高い利回りで物件を運用できるでしょう。また、新築物件と違い、過去の管理状況を確認できるため、将来起こりうるリスクにも備えられます。
一方、中古物件は新築と比べて耐用年数が短いことから、ローンを組む際に不利となる場合があります。とくに、耐用年数に応じて、返済期間が短く設定されることがある点には注意しましょう。
また、築年数の古い物件は、建物や設備の修繕費が新築物件以上にかかるおそれがあります。初期費用は抑えられるものの、ローンの条件が悪くなる、維持費用がかかるといったデメリットもあるため、自己資金の用意も含めて事前にしっかりと計画を立てましょう。
適切な物件を選ぶ
中古物件で不動産投資をする際のポイントは、利回りの高い物件を選ぶことです。立地や周辺の家賃相場、物件自体の耐用年数を加味して、できるだけ短期間に収益をあげられる物件を選びましょう。
新築物件も中古物件も、築年数が経過するほど価値は下がるものです。ただし、耐用年数の短い中古物件のほうが、建物自体の価値の下落は新築よりも早まります。とくに、価格の高い中古物件を取得する場合は、耐用年数と物件の将来性を新築以上に検討しましょう。
減価償却も盛り込んだ投資戦略を立てる
耐用年数が短いことから、中古物件で1年間に計上する減価償却費は新築に比べて高くなります。とくに、副業として不動産経営をする場合は、本業の給与に対して高い節税効果を得られる点が中古物件の魅力です。
物件の購入価格と家賃収入見込みのみで算出する表面利回りだけではなく、節税金額も含めた投資戦略を立てましょう。投資をするうえで、利益を過大に評価することは危険ですが、逆に過小評価をすると投資機会を逃しかねません。減価償却を盛り込み、節税できる金額まで加味して、できるだけ正確な投資計画を立てることが重要です。
【まとめ】中古物件の投資判断をする際には減価償却を確認する
中古不動産投資は、新築と比べて減価償却期間が短くなります。そのため、1年間に計上する減価償却費も大きくなりやすい点が特徴です。減価償却費が大きくなると、年単位の利益を減らせるため、所得税の節税効果が高くなります。法定耐用年数がそのまま適用されない中古物件を購入する際は、事前に必ず減価償却の計算をおこないましょう。
一方で、中古物件は購入時のローン条件が厳しくなったり、取得後の修繕費用がかさんだりとデメリットもあります。信頼のできる不動産業者と相談しながら、適切な投資判断をしてくださいね。