円安やインフレといった経済状態は、私たちの生活に大きな影響を与えます。しかし、生活のどの場面に影響があるのか、なぜ起こるのかを正確に把握できていない人も多いのではないでしょうか。
そこで、円安とインフレについて、定義や特徴、密接な関係性などを詳しく解説します。また、円安とインフレへの対策方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。仕組みを正確に把握できれば将来の予測を立てやすくなり、資産形成プランも余裕をもって練り直せますよ。
円安とインフレの基本
円安やインフレという言葉を、ニュースや新聞などでよく耳にするようになりました。インフレによる物価高は、生活のなかでとくに実感しやすい部分です。
円安とインフレの基本的な定義や特徴について解説します。
円安の定義と特徴
円安とは、円の他通貨に対する価値が相対的に低くなっている状態です。たとえば、1アメリカドル100円から200円になった場合を考えてみましょう。100円で1ドルを入手できていたのに、200円支払わないと1ドルを入手できなくなります。つまり、アメリカドルに対して円の価値が半減したことになります。
円安のメリットは、輸出企業が海外で稼いだ外貨を国内に持ち込む際、より多くの円に転換できる点です。また、外国人にとっては自国通貨の価値が増加するため、海外から日本に訪れる際に大きなメリットがあります。
一方、円安のデメリットは、交換できる外貨が少なくなってしまう点です。輸入企業は、円換算での仕入れ価格が上昇してしまいます。日本は資源や食料などを輸入に頼る産業構造となっているため、円安は私たちの生活に直結する問題です。
インフレの定義と特徴
インフレとはインフレーションの略語で、物価が継続的に上昇する経済状態です。物価が高くなると生活にマイナス影響となるため、インフレは悪い状況と考える人も数多くいます。しかし、インフレはあくまでも経済状況を示す言葉であり、経済が悪化しているとは限りません。
たとえば、好景気によって起こるインフレは、一般的に良いインフレだとされています。需要の増加による物価上昇は、企業の利益につながるため、いわゆる良いインフレです。企業は増加した利益を給与に反映するため、好景気であれば物価上昇分以上の給与を受け取れます。
一方で、悪いインフレは原材料価格の高騰など、需要増をともなわない物価の上昇です。需要が増えているわけではないので、価格を引き上げても企業の利益は増加しません。昇給するだけの利益を確保できず、結果的に給与が上がらないまま物価だけが上昇して生活は苦しくなります。こうした給与上昇のないインフレを、スタグフレーションと呼びます。
円安とインフレの密接な関係
円安は外国為替市場の話で、インフレは国内の経済状況なので一見無関係です。しかし実は、円安とインフレには密接な関係があります。
仮に輸入価格が一定でも、円安になると円換算の価格は上昇します。つまり、円安になるだけで国内ではインフレが起こるのです。しかも、影響を受けるのは外国産の「農産物」や「製品」だけではありません。日本はエネルギーのほとんどを輸入に頼っているため、国内生産しているものでも、エネルギー価格分のコストが上昇してしまいます。
また、インフレは円安を進行させる要因にもなりかねません。インフレとは物価が上昇することですが、見方を変えると貨幣価値の下落です。同じものの価格が2倍になった場合、貨幣価値は半分に下落していることになります。貨幣価値が下落すれば、外国為替市場では円の価値が下落し、円安が一層進みやすくなるという悪循環に陥るでしょう。
つまり、インフレと円安は、ともに貨幣価値が下がることを意味します。
円安インフレ時の適切な資産運用方法
円安、インフレともに個人で解決できる問題ではありません。そこで重要なのが、円安やインフレの進行を味方につける資産運用をすることです。
円安とインフレに対応する資産運用戦略について詳しくご紹介します。
円安時の資産運用戦略
円安時の資産運用戦略として大切なことは、国内と海外の運用バランスの見直しです。円安時に海外資産を取得すると、円高時に比べて多額の資金が必要となります。また、円高になった場合は、為替差損以上の運用利益を生む必要がある点にも注意しなければなりません。
一方、円安時に海外資産を売却すると、取得時の為替相場によっては円換算で差益が生まれる可能性もあります。円安が進行した際は、国内投資に回したほうが高い運用益を得られることもあるので、投資プラン全体を見直しましょう。
インフレ時の資産運用戦略
インフレ時は物価が継続的に上昇し、相対的にお金の価値が目減りしてしまいます。とくに預金も含めて現金で資産を保有していると、実質的に価値が減少するので注意しましょう。
インフレ時は、積極的な投資運用がおすすめです。インフレによる物価上昇は、株式や不動産といった投資案件でも例外ではありません。物価上昇に合わせて投資をすることで、現金で保有しているよりも資産を増やせる可能性が高まります。
ただし、すべての投資先で値上がりするとは限りません。とくに株式取引では、インフレによって業績が悪化する企業では値下がりするおそれもあります。
不動産投資であれば、比較的素直にインフレ傾向に従った値動きをします。また、株式や為替のように乱高下するリスクは低いので、インフレに強い投資方法です。もちろん、地方都市などで、インフレによる景気後退の影響を強く受ける地域もあります。インフレ時に不動産投資をする際は、経済的に安定した地域を選ぶようにしましょう。
円安インフレ時のリスク管理と成功のポイント
資産運用でもっとも重要なポイントはリスク管理です。どんな戦略を取ったとしても、まったくリスクのない投資は残念ながらありません。想定外の局面を迎えても、損害を最小限に抑えるリスク“管理”をしておくことが重要です。
資産運用におけるリスク管理について、とくに円安とインフレという観点でご紹介します。
リスク管理の重要性
円安とインフレが進行する経済状況では、海外投資のリスク管理がもっとも重要です。とくに、新規で海外に投資をする際には、円安が進むことによる為替差損も加味して投資先を選定しましょう。
また、円高やデフレに局面が変わった際に、対応できる投資プランにしておくことも大切です。インフレだからといって国内資産に偏った投資をすると、万が一デフレになった際に資産が目減りしてしまいます。円高局面になったら海外への投資割合を増やすなど、柔軟な対応が必要です。
運用目標を立てることが成功のポイント
円安やインフレとは直接的に関係ありませんが、資産運用を成功に導くためには運用目的や目標を事前に立てておくことが重要です。闇雲に「お金を増やしたい」と運用していては、経済状況の変化に右往左往してしまい資産の減少にもつながりかねません。
一方で、目標のないままリスクヘッジばかりしていては、そもそも資産を増やせなくなってしまいます。いつまでにいくらの資産を形成したいのかを明確にしておけば、必要な投資額や許容できるリスクがみえてきます。
【まとめ】円安とインフレの関係を理解してリスク管理をすることが大切
円安とインフレは深い相関関係にあります。将来のために資産運用をしていても、円安インフレ時の対策を何も講じていなければ、資産が減ってしまうかもしれません。大切な資産を守るためにも、仕組みを理解してリスク管理をおこないましょう。
一方で、投資などの積極的な資産運用をインフレ時におこなわなければ、実質的には資産が目減りしてしまいます。円安を始めとした世界経済の動き、インフレなどの国内の景気動向をしっかりと確認しながら、資産形成プランを立てていきましょう。