不動産の購入は人生における重要なイベントの一つであり、十分な準備と慎重な検討が必要です。一方で、日常的に購入するものではないため、取引の流れが不明確で注意すべきポイントがわからない場合もあるでしょう。
そこで本記事では、不動産を初めて購入する方に向けて、資金計画の立て方や契約内容の確認方法、購入物件を決める際の注意点を詳しく解説します。
もくじ
不動産購入時のおもな注意点は3点
不動産購入時に注意すべきポイントは「資金計画」「契約内容」そして「物件の妥当性」の3つです。それぞれをしっかりと理解、検討しておけば、不動産購入で失敗するリスクを減らせます。
3つの注意点を、具体的な検討ポイントとともに詳しくみていきましょう。
資金計画
不動産購入でもっとも注意すべき点が、ローンも含めた資金計画です。不動産を購入する多くの方が、金融機関のローンを利用します。ローンの返済は数十年単位の長期に及ぶため、具体的な資金計画を立てておくことが重要です。資金計画を立てる際は、以下のポイントを確認してください。
- 頭金の確保
- ローンの期間と毎月返済額
- 初期費用
- 維持費(固定資産税や火災保険料など)
- リフォーム費用
また、マンションを購入する際には、管理費と修繕積立金も維持費として必要です。
契約内容
契約内容の確認も、不動産購入時には欠かせません。不利な条件での契約にならないよう、契約書は隅々までしっかりと確認してください。また、不明な点は放置せず、納得のいくまで説明してもらうことも大切です。
契約内容を確認する際には、以下のポイントに注意してください。
- 売買価格と支払い条件
- 売買契約の解除条件や違約金に関する条項
- 引渡し日程や引渡し時の状態に関する規定
- 瑕疵担保責任に関する規定
- 重要事項説明書の理解
また、マンションを購入する際には、管理規約も事前に確認しておきましょう。
物件の妥当性や相場
購入する物件の妥当性や相場の評価も重要です。人生で不動産物件を購入する回数は、一般的にはそれほど多くありません。慣れていないことで、妥当性を欠いた相場よりも高すぎる物件を購入しないように注意しましょう。
購入する物件を決める際には、以下のポイントで評価することが大切です。
- 必要とする物件の要件(子どもの有無、日常生活、通勤など)
- 物件の詳細(立地・状態・広さ・間取りなど)
- 都市計画による将来の発展性
- ハザードマップによる災害の危険性
- 周辺物件の相場
資金計画に無理や穴がないか注意する
資金計画を立てる際は、無理や抜け漏れがないかを確認することが大切です。収入の増減や支出の増加など、状況が将来的に変化する可能性もあります。また、不動産の購入には、物件の購入費用以外にもさまざまな費用が必要です。
資金計画を立てる際の注意点を3つご紹介します。
頭金やローンの支払計画を立てる
資金計画でもっとも重要なのは、頭金の金額も含めたローンの支払計画です。とくに、頭金としていくら用意するのかは慎重に検討しましょう。頭金は多いほどローン金額を減らせますが、預貯金が少なくなると想定外の出費が生じた際に家計が苦しくなってしまいます。結果的にローンの支払が難しくなるケースもあるため、無理のない計画を立てることが大切です。
また、収入や支出の状況は、将来変わる可能性があります。子どもが増えたり、転職したりするかもしれません。すべてを予測することは不可能ですが、できるだけライフイベントを盛り込んで返済計画を立てるようにしましょう。
各種税金や仲介手数料などをもれなく初期費用に盛り込む
不動産購入にかかる費用は、物件本体の分だけではありません。各種税金や仲介手数料といった費用も、初期費用に盛り込んで計算しておきましょう。また、費用によっては、組み込めないものがあるため注意が必要です。
購入する物件以外にかかる費用は5%前後が目安ですが、物件によっては10%近くにのぼることもあります。たとえば、3,000万円の物件であれば、費用分だけで300万円近くになるおそれがあるということです。細かな費用をもれなく積み上げて、正しく初期費用を見積もっておきましょう。
中古物件ではリフォーム費用も想定する
とくに中古物件を購入する際には、リフォーム費用を想定しておくことも必要です。引渡時には問題がなくても、中古物件では想定外の傷みや不具合が発生する可能性もあります。また、他人が使っていた物件のため、自分たちのライフスタイルに合わない部分が出てくるかもしれません。
新築物件であっても、長期間住むのであればいずれリフォームが必要となります。資金計画のなかに、リフォーム費用についても盛り込んでおきましょう。
契約内容は締結後に変更できないことに注意
不動産取引において、契約書はすべての基本となる重要な書類です。契約を締結してしまうと、内容は原則変更できません。売買契約の締結前に内容を理解し、不明な点を明らかにしておくことが大切です。
不動産契約を結ぶにあたって注意すべきポイントをみていきましょう。
重要事項説明書を読み込む
不動産の契約を結ぶ際には、宅地建物取引士による重要事項説明書の交付と説明が法律で義務付けられています。重要事項説明書とは、取引の条件や物件に関して確認すべき大切なことがすべて記載されている文書です。
解除条件や違約金といった契約に関することから、水や電気、ガスといったライフライン設備についてまで細かく書き込まれています。クレジットカードやケーブルテレビなどの契約書を読み込む習慣のない方でも、不動産取引の重要事項説明書は細部までしっかりと確認しましょう。
瑕疵担保責任の範囲を把握しておく
不動産売買における瑕疵(かし)担保責任とは、物件に隠れた欠陥や不具合があった場合に、売主がその修復や補償の責任を負うものです。買主の権利を保護する重要な法的規定で、物件の購入後に予期せぬ問題が発生した際には売主に賠償責任を求められます。
不動産物件は確認範囲が広いため、売主がすべての不具合を把握できていないケースもあります。実際に住み始めてから不具合を発見した場合に備えて、瑕疵担保責任の適用範囲を契約前に確認しておきましょう。
なお、瑕疵担保責任は、2020年4月1日の民法改正によって契約不適合責任に変更されました。
不明な点は不動産会社に確認
契約内容で不明な部分があれば、些細なことでも不動産会社に確認しましょう。不動産の契約関係の書類には専門用語が多く、初めて不動産売買する方には理解しづらい内容も含まれています。一方で、理解をしないまま締結した契約でも、初心者だからといって変更はできません。
不動産会社や売主は、できるだけ早く契約をまとめたいという意識が働きがちです。理解があいまいなまま契約を進められてしまわないよう、不明な点や納得のいかない内容は発生の都度確認するようにしてください。
購入物件の妥当性を注意深く検討
物件を正しく評価することは、不動産購入で重要な注意点です。とくに、夢のマイホームを購入するケースでは、細かい点の評価がついゆるくなってしまうかもしれません。せっかくの不動産購入で失敗しないためにも、冷静な判断をすることが大切です。
物件の妥当性を評価するうえで注意すべき、3つのポイントを詳しくみていきましょう。
ライフプランに沿っているかを検討
物件選びをする際は、現在の状況だけではなく、将来のライフプランも含めて検討することが大切です。一般的に不動産は、すぐに買い替えるものではありません。家族が増える可能性もありますし、購入者本人の年齢が上がれば生活スタイルも変化します。
立地条件や間取り、設備がライフプランに対して過不足ないかを検討しましょう。たとえば、若い共働きの夫婦で買い物の中心がコンビニエンスストアだったとしても、将来子どもが生まれたらスーパーが近いほうが便利になるかもしれません。さまざまなパターンを想定して、納得のいく物件を選んでください。
購入価格を周辺相場と比較
提示されている購入価格を、周辺の物件と比較して妥当性を判断することも重要です。不動産の価格は高額なため、数十万円や数百万円に対する感覚がにぶってしまいます。しかし、数十万円あれば、実際にはさまざまなものを購入できます。正しい相場感をもって、購入物件の価格を評価することが大切です。
また、将来的に、購入した不動産を売却する可能性もあります。相場よりも高い金額で購入すると、得られるはずの売却益が少なくなるばかりか、損失が生じるおそれもあるでしょうか。
都市計画やハザードマップを確認
快適な住環境と物件の資産価値を維持するには、都市計画やハザードマップの確認が必要です。都市計画を確認すれば今後の開発予定がわかるため、購入物件の周辺環境がどのように変化するかをある程度予測できます。
また、洪水・土砂災害・高潮・津波といったリスクを把握できるハザードマップの確認により、物件だけではなく家族の安全を守ることにつながります。日本国内でまったく災害のリスクがない場所はありませんが、リスクをどの程度許容するかを家族で話し合っておきましょう。
【まとめ】不動産購入で失敗を防ぐためには注意点をもれなく確認することが大切
不動産購入をする際には、さまざまな角度から注意深く検討する必要があります。とくに初めて不動産を購入する際には、全体の流れの把握とともに注意点をもれなく押さえておくことが大切です。資金計画、契約内容、物件の妥当性について、しっかりと検討しましょう。
また、不明な部分は不動産会社に問い合わせることも、不動産購入で失敗しないためのポイントです。「大したことではない」と自己判断するのではなく、納得のいくまで確認するようにしてください。