不動産売却時はふるさと納税で節税できる? 基本的な仕組みや上限金額の計算方法も詳しく解説

不動産売却時はふるさと納税で節税できる? 基本的な仕組みや上限金額の計算方法も詳しく解説|株式会社イー・トラスト

ふるさと納税は、税額控除を受けながら、さまざまな返礼品を受け取れる制度です。しかし、税額控除には所得に応じた上限額があるため、希望どおりに制度を利用できないケースもあります。

不動産売却時には所得上限の拡大に期待して、積極的なふるさと納税の活用を検討する方も少なくありません。一方で、節税対策としてふるさと納税を考えている場合は、制度の基本的な仕組みを理解することが重要です。

そこで今回は、不動産を売却した際のふるさと納税の利用について、上限金額の計算方法も含めて詳しく解説します。

実は節税にはならないふるさと納税

実は節税にはならないふるさと納税

ふるさと納税を、節税対策の一つと捉えている方もいます。しかし、ふるさと納税をしても、納めるべき税金の総額は変わりません。直接的な節税にはならない点は、不動産を売却した際も同様です。

まずは、ふるさと納税の基本的な仕組みと、お得といわれるポイントをみていきましょう。

ふるさと納税は税金の前払い

ふるさと納税で寄付をすると、自己負担額の2,000円を除いた全額が翌年の所得税、住民税から控除されます。全額控除の部分だけをみると節税になりますが、同額を前年に支払っているため、納付する税金の総額は変わりません。つまり、ふるさと納税は、翌年に支払うはずの税金を前払いする仕組みです。

また、税金を前払いするため、家計全体でみると一時的にマイナスとなります。例えば、10万円を、ふるさと納税として1月に寄付した場合で考えてみましょう。

本来は、1年間の所得に対して、所得税と住民税を翌年に支払います。しかし、ふるさと納税を利用すると、1年分の収入を得る前に10万円(98,000円分の税金)を支払うことになるのです。

納税額は同じでも返礼品を受け取れる分お得

支払う税額は同じなのにふるさと納税が「お得」といわれる理由は、寄付先の自治体によっては返礼品を受け取れるためです。また、返礼品がない場合でも、税金(正確には寄付)を納める先の自治体や利用目的を自分で選べる点が、通常の納税とは異なります。

所得税や住民税を、納税通知書に基づいて納付しても、ただお金が減るだけです。ふるさと納税であれば、同額を納付して得られる返礼品の分がプラスとなります。

例えば、10万円のふるさと納税に対する返礼品として、2万円分の牛肉を受け取れる自治体のケースで考えてみましょう。通常どおり納税通知書で所得税と住民税を支払った場合は、単純に10万円のマイナスです。しかし、ふるさと納税であれば10万円の納付後に2万円分の牛肉を受け取れるため、実質的な支払額は8万円に抑えられます。

ふるさと納税には控除に上限額がある

ふるさと納税には控除に上限額がある

返礼品を受け取れるふるさと納税のほうが普通に税金を支払うよりもお得なため、納税予定の金額をすべて寄付金に回したいところです。しかし、ふるさと納税には税額控除に上限額があり、上限を超えた部分の控除は受けられません。

そこで、控除上限額の基本的な計算方法と、不動産売却時にどう変化するのかを詳しく解説します。

控除上限額の基本的な計算方法

ふるさと納税で受けられる税額控除の上限額は、以下の数式で計算できます。また、ふるさと納税をする際は、2,000円の自己負担が生じる点に注意が必要です。

税額控除上限額= 住民税所得割額合計× 20% ÷ (90% - 所得税の税率× 1.021) + 2,000円

計算式自体は単純ですが、住民税の所得割額や所得税の税率は翌年に確定するため、ふるさと納税をするタイミングで正確な上限金額を算出することは不可能です。上限金額を超えた部分の寄付金は単純な支出となるため、控除目的で利用する方は金額にゆとりをもっておくことをおすすめします。

不動産売却時の上乗せ金額の計算方法

不動産を売却して所得が増えると、ふるさと納税の税額控除上限金額も増加します。ただし、不動産売却時にかかる住民税の所得割は分離課税のため、給与所得とは別に計算する必要があります。また、上乗せされる所得は課税対象の譲渡所得のみで、売却金額そのものではありません。

まず、不動産売却時に得られる譲渡所得は、以下の計算式で算出します。

譲渡所得= 売却価格- 取得費- 譲渡費用

次に、分離課税される、譲渡所得に対する住民税の所得割額を計算します。

分離課税分の住民税所得割額= 譲渡所得(課税対象分) × 税率

この際、適用される税率は、売却した不動産の所有年数によって異なる点に注意が必要です。

所有期間5年以下(短期譲渡所得):9%
所有期間5年超(長期譲渡所得):5%

なお、所得税に関しては、分離課税と総合課税がどちらもある場合には総合課税の税率が適用されます。譲渡所得がある場合の、税額控除上限額の計算式は以下のとおりです。

税額控除上限額= (給与所得分住民税所得割+ 譲渡所得分住民税所得割) × 20% ÷ (90% - 所得税の税率 × 1.021) + 2,000円

譲渡所得が2,000万円ある場合の上限金額の違い

不動産売却で譲渡所得を得た場合、ふるさと納税で受けられる税額控除の金額計算は複雑になります。そこで、給与所得者が不動産を売却し、譲渡所得を2,000万円得た場合の具体的な計算例をみていきましょう。

通常のケースと不動産売却時のケースを比較してみます。

前提条件

  • 給与所得:400万円
  • 所得税率:20%
  • 不動産の譲渡所得:2,000万円
  • 売却物件の所有期間:7年
  • 総合課税分の住民税所得割額:400万円 × 10%= 40万円
  • 分離課税分の住民税所得割額:2,000万円 × 5%=100万円

譲渡所得がない場合:上限金額114,976円

  • 40万円× 20% ÷ (90% - 20% × 1.021) + 2,000円 = 114,976円

2,000万円の譲渡所得がある場合:上限金額402,414円

  • (40万円+100万円)× 0.2 ÷(90% -20% × 1.021)+2,000円 = 402,414円

譲渡所得があるケースでは、控除上限額が約29万円引き上がっていることがわかります。

不動産を売却した際にふるさと納税を利用する際の注意点

不動産を売却した際にふるさと納税を利用する際の注意点

不動産を売却して収入を得た際は、お得なふるさと納税を積極的に活用したいところです。しかし、控除の上限金額が引き上がる条件やふるさと納税の利用タイミングなど、注意すべき点もあります。

ふるさと納税を利用する際に損をしないよう、注意点を詳しくみていきましょう。

売却益がなければ上限金額は引き上がらない

不動産売却時のふるさと納税で受けられる税額控除の上限金額が引き上がるのは、売却益が生じた場合のみです。売却益とは譲渡所得のことで、売却時の費用も含めて、利益が出ていない場合は所得になりません。

また、マイホームの売却時などで特別控除を受けて、譲渡所得がゼロ以下になった場合も同様です。ふるさと納税の上限金額は、税法上の所得に基づいて計算される点に注意しましょう。

売却をした年にふるさと納税をする

譲渡所得による上限金額の引き上げに期待してふるさと納税を利用する際は、不動産を売却した年に寄付をする必要があります。譲渡所得は売却した年の所得にしかならないため、翌年以降だと上限金額の引き上げが適用されません。

譲渡所得に対する住民税は、売却した翌年に確定します。しかし、ふるさと納税は翌年支払い予定の税金で控除を受ける仕組みのため、売却した年の年末までに利用しないと、譲渡所得分の控除は受けられません。

ワンストップ特例制度は利用できない

ワンストップ特例制度とは、給与所得者がふるさと納税をした際に、確定申告を行わなくても税額控除を受けられる仕組みです。しかし、不動産売却を行った年にふるさと納税をする場合、ワンストップ特例制度は利用できません。不動産売却で譲渡所得が発生した場合には、確定申告が必要となるためです。

ただし、不動産を売却した際に特例の適用も譲渡所得もなく、確定申告が不要な場合はワンストップ特例を利用できます。

【まとめ】ふるさと納税の制度を理解して不動産売却益を上手に活用する

【まとめ】ふるさと納税の制度を理解して不動産売却益を上手に活用する

不動産を売却して譲渡所得を得た場合、税額控除の上限金額が引き上がるため、ふるさと納税をよりお得に利用できます。ただし、金額の計算が複雑なことと、売却益が出ない場合には上限が引き上がらない点には注意が必要です。

また、ふるさと納税は支払うべき税金を前払いする仕組みのため、不動産売却時でも直接的な節税にはつながりません。一方で、2,000円の自己負担だけで返礼品を受け取れる、お得な制度でもあります。制度の詳細をしっかりと理解して、ふるさと納税をぜひ有効に活用してください。
 
 

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