日本は地震発生頻度が高い国のため、不動産投資において地震のリスクは避けられません。計画外の修繕費用や入居率の低下、キャッシュフローの悪化など地震発生時の影響範囲は多岐にわたります。リスクについて正しく理解して事前に対応策を立てておくことが、不動産投資を成功させるためには重要です。
そこで本記事では、地震が発生した際のリスクや不動産投資への影響、有効な対応策を解説します。
もくじ
地震が発生した際のリスク
地震が発生した際のリスクは、建物の倒壊や損傷だけではありません。直接的な建物への被害がない場合でも、入居率の低下を招くおそれがあります。
まずは地震が発生した際の3つのリスクについて、詳しく見ていきましょう。
建物の倒壊や損傷
地震が発生した際の最大のリスクは、建物自体の倒壊や損傷です。建物が倒壊すると物件自体がなくなり、不動産投資の収益を得られなくなってしまいます。
また、建物の一部が損傷した場合も大きなリスクです。建物の基礎や外壁のひび割れ、屋根の破損など、引き続き入居をしてもらうためには修繕をせざるを得ない損傷を負うことも少なくありません。修繕にはまとまった資金が必要なケースが多く、収益性を大きく圧迫してしまいます。
住宅設備の損傷
建物自体に被害はないものの、住宅設備が損傷する場合もあります。例えば、給湯器やエアコンの故障、窓やドアといった各部の破損です。
住宅設備に何らかの損傷があれば、対応が必要となります。地震保険でカバーできない設備もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
周辺環境の変化
地震による周辺環境の変化も、不動産投資のリスクとして考えておきましょう。具体的には「道路の地割れや液状化」「駅や商業施設への被害」などです。
地震の発生前は利便性が高かった地域でも、幹線道路の破損や商業施設の倒壊などで、立地条件が悪化するおそれがあります。液状化や地割れなどの状態が完全に元通りになるまでには、数年から数十年単位の期間を要することも珍しくありません。物件としての魅力が低下すれば、空室リスクが高まります。
地震による不動産投資への影響
地震が発生すると、不動産投資の収支計画に少なからず影響があります。特に日本国内で不動産投資をする際には、地震による影響を事前に検討しておくことが大切です。
地震発生時の不動産投資への影響を、3つの観点で詳しく紹介します。
計画外の修繕費用がかかる
地震による不動産投資への影響としてもっとも大きいのは、建物の損傷に対する計画外の修繕費用がかかることです。建物の倒壊や一部損傷への修繕はもちろん、給湯器やエアコンの破損、窓やドアのサッシのゆがみなど、住宅設備の損傷にも修繕費用がかかります。
地震による物件の被害は、原則オーナーが修繕費用を負担しなければなりません。地震保険に加入していたとしても、補償限度額は決まっています。想定外の出費が発生すると、収支計画の修正を余儀なくされるケースもあるでしょう。
被害を受けると入居率がさがる
地震によって被害を受けると、物件への入居率がさがるおそれがあります。建物の安全性への不安、周辺環境の変化による利便性の低下などから、別の地域への引っ越しを検討する人は少なくありません。
また、地震によって被害を受けた地域は、新たな入居者が見つかりにくくなります。特に、物件周辺の液状化や地割れなど、土地そのものが被害を受けた場合は、復興までに時間がかかる可能性があります。入居率は、不動産投資の利回りに直結する指標です。地震が発生した際は、入居率を設定し直してシミュレーションをしましょう。
キャッシュフローが悪化する
地震による被害の修繕や入居率の低下が生じると、不動産投資のキャッシュフローが悪化します。長期的には問題がなくても、一時的に支出の増加と収入の低下が発生するためです。
特に、金融機関からの借入で投資物件を取得している場合には、キャッシュフローの悪化が生活に影響することがあります。例えば、投資物件による収益を修繕に費やし、入居率も低下したケースでは、本業の収入をローンの返済に当てざるを得ないかもしれません。
地震のリスクを少しでも減らすための対応策
日本国内の物件である限りは、地震のリスクをゼロにすることは不可能です。しかし、少しでもリスクを軽減する方法をとることで、大きなダメージを負わずに済むでしょう。
不動産投資で、地震のリスクを減らすための対応策を4つ紹介します。
購入前に物件の耐震性を確認しておく
購入前に耐震性を確認しておくことで、地震発生時に被害を受けるリスクを減らせます。物件の耐震性を確認するポイントは、新耐震基準に対応しているかどうかです。建築基準法が改正された1981年6月1日以降に建てられた物件であれば新耐震基準を満たしているため、震度6〜7の地震でも倒壊しないといわれています。
さらに、2000年に改正された基準では新耐震基準に「地盤に応じた基礎設計」などが加えられ、安全性が強化されています。また、耐震性能を表す指標である「耐震等級」も、購入前には必ず確認しておきましょう。
過去の災害発生状況の分析
過去の災害発生状況を分析することも、地震のリスクを減らすために重要です。地震によって津波や崖崩れが発生すると、二次災害につながる危険性もあります。物件の所在地で過去にどのような災害が発生していたのか、自治体のハザードマップなどを参考に分析しておきましょう。
また、ハザードマップの分析は、地震だけではなく水害リスクの低減にも有効です。リスクを完全にゼロにはできませんが、災害による被害ができるだけ少ない立地を選ぶことで、不動産投資の成功確率を高められます。
投資エリアを集中させない
不動産投資物件への地震のリスクを減らすためには、投資エリアを集中させないようにしましょう。日本国内は多くの地域で地震リスクがあり、絶対に発生しない場所は残念ながらありません。
エリアを分散して投資することで、万が一地震が発生した際の収益をカバーできます。同じ地域に投資物件を集中させると、地震が起こった際にすべての物件が被害を受けてしまう危険性があるからです。
また、大きな地震が発生すると被害の範囲も広くなるため、分散して購入する際は近いエリアを避けましょう。関西と関東など、できるだけ離れたエリアに投資物件を分散させることで、地震発生だけではなく、地価の変動によるリスクも低減できます。
地震保険に加入しておく
地震発生時の出費をできるだけ抑えられるよう、地震保険には必ず加入しておきましょう。大きな地震の場合には公的な補償を受けられる可能性もありますが、物件全体の修繕費には遠く及びません。地震保険に加入しておくことで、修繕の計画もスムーズに進められます。
ただし、加入する保険の内容によっては、すべてを保険金で賄えないおそれがある点に注意が必要です。また、地震保険は火災保険とセットになっていることがほとんどのため、火災保険の内容も同時に確認します。収支計画に合わせて、加入すべき保険内容を十分検討しましょう。
【まとめ】不動産投資をする際は地震のリスクに備えておく
地震が発生すると、建物の倒壊や住宅設備の損傷、周辺環境の変化などが起こるリスクがあります。計画外の修繕費用や入居率の低下、キャッシュフロー悪化などの影響があるため、不動産投資をする際は地震のリスクを意識しておくことが大切です。
地震リスクを減らすための有効な対応策には、物件購入前の耐震性の確認、災害発生状況の分析、投資エリアの分散、地震保険への加入などがあります。日本は地震発生頻度が高い国であるため、不動産投資をする際は対策を十分に検討し、地震へのリスクに備えておきましょう。