比較的低価格で取得できることから、築古物件への投資が注目されています。一方で、築古物件を運用する際は、コスト面や収益性といった課題も少なくありません。
そこで本記事では、投資対象としての築古物件の魅力を、メリット・デメリットも含めて詳しく解説します。
もくじ
新築ではなくあえて築古物件を選ぶ理由
築古物件には、投資家にとって多くの魅力があります。特に、取得価格が低額で資産価値も安定している点は、新築物件にはない魅力です。
投資対象としてあえて築古物件が選ばれる理由を、まずは具体的にご紹介します。
築古物件とは一般的に築30年前後
築古物件とは、建築されてからある程度の年月が経過した不動産物件のことです。法律などによる明確な定義はありませんが、一般的には築30年前後の物件を指します。
新築や築浅物件に比べて、全体的に老朽化している点は否めません。一般的に築年数が進むほど、価格も下がります。しかし、投資先としての価値は、必ずしも価格と一致しません。築古物件の魅力は、価格が下落しているからこそ高まっているといえます。
資産価値が下がりにくい
築古物件の魅力は、取得時点ですでに価値が下落しており、今後の下げ幅がそれほど大きくない点です。建物の価値は築年数とともに下落しますが、建築物としての機能が保たれていれば一定以下にはなりません。
新築物件の場合、一度誰かに使用された時点で翌年には中古物件扱いとなり、新築時よりは当然価格が下がります。不動産相場次第でもありますが、築5年、10年と進むほど新築時の価格からは大きく下がるでしょう。
一方で、築古物件であれば、今年1,000万円だった物件が来年500万円になるといった極端な価格変動はほとんどありません。将来的な資産価値の変動を見込まず投資計画を立てられる点は、安定した資産運用を目指す投資家にとって大きなメリットです。
地域での需要が読みやすく安定している
地域の需要の増減や相場のデータが十分に集まっている点も、投資物件としての築古物件のメリットです。過去の動向を参考にできるため、退去者が出やすい時期や、入居率が低下するといったリスク要因を具体的に分析できます。
また、そもそも長年運用されている実績があるということは、地域で一定の需要があるということです。新築や築浅で運用実績が少ない物件よりも、将来的な利回りを確実に予想できます。
意外な好立地物件が見つかるケースがある
築古物件は一般的に価格が安いため、新築では手が出ないエリアでも予算内の物件が見つかる可能性があります。また、築古物件が建設された当時はそれほど人気がなかったエリアでも、都市開発によって結果的に好立地になった物件も少なくありません。
将来的な都市開発計画を調査して、今後人気の高まりそうなエリアの物件を探すこともおすすめです。極端に需要が高まっていない地域の築古物件であれば、思わぬバーゲン価格で購入できるかもしれません。
取得価格を抑えられる
築古物件への投資は、取得価格を抑えられる点が大きな魅力です。耐用年数をオーバーしている物件であれば、ほとんど土地だけの価格となっているケースもあります。
不動産投資の成功確率を考える際、初期費用を抑えることは重要なポイントです。取得価格が低ければ、それだけ投資金額の回収期間も短くなります。また、ローン金額を抑えられるため、キャッシュフローの安定性が高まる点も大きなメリットです。想定外の修繕に対する出費が発生した場合や、空室率が上昇した場合でも、手元資金でカバーできる可能性が高まります。
利回りが良い
築古物件への投資は、一般的に利回りが良いとされています。利回りとは、投資した金額に対して見込まれる利益です。簡単に計算できる表面利回りは、以下の計算式で求められます。
利回り=(年間家賃収入÷取得価格)×100
築古物件は取得価格を抑えられる一方で、家賃は相場に依存するため一定の水準が維持されます。新築で10万円の家賃設定の物件と同じ地域・間取りの場合、築古物件では家賃が2万円になるといった極端なことにはなりません。たとえば、新築の半額以下で物件を取得して家賃5万円以上で貸し出せば、新築の利回りを上回ります。
複数物件を所有できる
築古物件は取得価格を抑えられるため、新築1物件分の費用で複数の物件を所有できます。不動産投資を成功させるには、リスク分散が大切です。複数の地域に物件を所有していれば、地震や風水害といった災害や、地域の不動産相場の下落に備えられます。
どれだけ詳細な計画を立てても、投資である以上リスクは避けられません。投資信託で複数銘柄を購入するように、不動産もできるだけ地域やターゲットの違う物件に分散して投資をしたほうが成功確率は上昇します。
築古物件で気をつけたいデメリット
築古物件には多くのメリットがある一方で、投資に際しては注意すべき点も存在します。そして、デメリットの多くは、物件が古いという根本的な部分に起因するものです。
築古物件投資に失敗しないためにも、デメリットについて理解しておきましょう。
修繕費用がかかる
築古物件のデメリットの一つは、老朽化による修繕費用の負担です。築30年前後の物件では、経年劣化による外壁や屋根、配管の大規模修繕が必要となるリスクがあります。また、新築や築浅物件に比べて耐震性・耐火性が劣るため、災害発生時には損傷しやすい点も大きなデメリットです。
さらに、住宅設備や内装の修繕も、入居者を維持し続けるためには欠かせません。築古物件に投資する際は、取得費用以外に修繕費用も見積もっておくことが大切です。物件の修繕履歴をもとに、購入後に修繕が必要となる箇所を、事前に確認しておきましょう。
家賃が安いため収益性は低い
築古物件は新築物件に比べて、ほとんどの場合で家賃を安く設定せざるを得ません。単純に得られる家賃収入額が下がるため、短期間で大きな収益を望めない点がデメリットです。
同じ地域と間取りであれば、新築や築浅物件にどうしても人気が集まってしまいます。少しでも収益性を確保するためには、リフォームやリノベーションによって物件価値を高めることも重要です。
新しい入居者を探しにくい
退去者が出た際に、新たな入居者を探しにくいことも築古物件のデメリットです。内装は退去後のリフォームである程度回復できるものの、外観や住宅設備の古さから魅力を感じてもらえないケースもあります。
築古物件に投資をする際には、既存の入居者の居住年数や退去数についても確認しておくことが大切です。また、購入後には定期的な清掃や設備のメンテナンスといった管理をしっかりと行い、入居者の満足度を下げないようにしましょう。場合によっては、最新の住宅設備を導入するなど、思い切った投資も必要です。
売却しにくい
築古物件はすでに建物としての価値が低下しているため、売却時に買い手がつかないおそれがあります。また、買い手にとっては将来的な修繕費が重荷となるため、取得時より売却額が低くなるケースも少なくありません。
さらに、築年数が進むにつれて金融機関の融資条件が厳しくなり、買い手の資金調達手段が限られてしまうこともありえます。築古物件の出口戦略として売却を考える場合は、地域性や利回りといった物件の価値を慎重に見極めて購入することが重要です。
築古物件の投資で成功するためのポイント
取得価格が低くリスクの少ない築古物件ですが、投資を確実に成功させるためには購入前の準備が大切です。リスクとなりうる部分や周辺エリアの将来性を十分に確認することで、成功確率が向上します。
築古物件への投資で事前に確認すべき、3つのポイントを見ていきましょう。
購入前に建物の状態をチェックする
築古物件を購入する前には、建物の状態を念入りにチェックすることが重要です。築年数が経過しているため、外見だけではわからない部分に問題が潜んでいる可能性もあります。基礎工事部分や配管、電気設備といった内部構造の状態は、専門家に依頼して確認することが必要です。
投資前の段階で状態を把握できていれば、思いがけない修繕費用の発生や安全面のリスクを回避できます。また、建物の修繕履歴や過去の管理状況をチェックしておくことで、購入後のメンテナンス計画も立てやすくなるでしょう。
将来性も含めた周辺エリアの情報を集めておく
築古物件への投資では、周辺エリアの将来性を見極めることが成功のポイントです。物件としての魅力は新築物件にはかなわないため、周辺エリアの人気が下がると投資計画に影響しかねません。
一方で、将来的な都市開発によって地域の人気がさらに高まれば、想定以上の利回りが期待できます。自治体の都市開発計画や交通インフラの整備、学校や病院、商業施設といった建設計画を可能な限り調べておきましょう。
修繕にかかる費用を確保しておく
築古物件を購入すると、少なからず修繕費用が必要です。購入時には問題なくても、運用しているうちに破損や故障が発生するケースもあります。投資計画のなかに修繕費用も見込んでおくことで、無理のない運用が可能です。
また、災害が発生した際には、新築物件以上に被害を受けるリスクがあります。そのため、想定外の損害に対する資金確保や保険への加入といったリスク対策が欠かせません。初期投資が少ない分、できるだけ余裕を持った資金計画を立てましょう。
【まとめ】魅力的な投資対象も多い築古物件
築古物件は初期投資を抑えられることから利回りが良く、資産価値も安定している魅力的な投資対象です。一方で、修繕費の負担や収益性の低さ、入居者の確保が難しいといったデメリットも投資前に十分検討しておく必要があります。
購入前に物件や周辺地域を入念に調査し、納得のいく物件を見つけることが重要です。地域によっては、思わぬ掘り出し物件がある点も築古物件の魅力です。しっかりと情報収集をして、理想的な築古物件を探してみてください。