南海トラフ地震のリスクは、不動産投資においても無視できません。建物の損壊による修繕費用の発生や入居者の減少、さらに不動産価値そのものの変動など、想定される被害は多岐にわたるためです。
今回は、南海トラフ地震をはじめとする巨大地震が不動産投資に与える影響を、備えておくべきことやリスクを軽減するポイントも含めて詳しく紹介します。
もくじ
南海トラフ地震が不動産投資に与える影響
南海トラフ地震は、日本の太平洋沿岸地域に甚大な被害をもたらすと予測されており、不動産投資にも深刻な影響を及ぼすおそれがあります。不動産投資をする際には、地震が与える影響範囲を正しく理解しておくことが大切です。
まずは、地震が不動産投資に与える影響を、3つ具体的に見ていきましょう。
修繕費用が必要になる
巨大地震によって所有する不動産が大きな被害を受けた場合、多額の復旧費用が必要となるおそれがあります。賃貸物件の場合、物件を住める状態に維持する責任はオーナーにあると定められているためです。
南海トラフ地震での全壊住宅は、東日本大震災の約20倍にあたる238.6万棟にのぼると推定されています。近代的なアパートやマンションでも、地震による損壊リスクは少なくありません。
空室リスクが高まる
巨大地震が不動産投資に与える影響として認識しておきたいのが、空室リスクが高まることです。建物の損壊によって入居者が住み続けられなくなるケースはもちろん、直接的な被害を受けなかった場合でも空室リスクは高まります。
経済状況の悪化や地震に対する不安から地域を離れるなど、入居者側の事情に変化が起こるためです。また、道路や病院、商業施設といった生活インフラが被災した場合には、周辺環境の変化も空室リスクを高めます。
不動産の価値そのものが変動する
地震により、不動産の価値そのものが変動するおそれもあります。地域全体が地震リスクの高いエリアと認識されると、不動産需要が低下してしまうためです。
また、空室リスクと同様に、周辺環境の変化によって利便性が低下した場合にも、不動産の価値は低下します。被害規模によっては復興までに時間を要するため、価格の下落が長期化する可能性も低くありません。
南海トラフをはじめとする震災への備え
火山帯に位置する日本で不動産投資をする場合、震災のリスクはどの地域でもつきまといます。南海トラフ地震の影響地域に限らず、震災に対する備えをしておくことが大切です。
万が一の震災への備えについて、詳しく見ていきましょう。
まったく影響のない地域の物件にも分散投資をする
互いに影響がない複数の地域に分散投資をしておけば、万が一どこかの地域が地震で被害を受けても、他物件でカバーできる可能性が高まります。地震がいつどこで発生するかは、現代の科学では予測できません。分散投資をしておくことで、被災した際に収益がゼロになる事態を回避できるでしょう。
また、一定の収益を確保できていれば、修繕費用の捻出もしやすくなります。手元資金が不足している場合でも一定の収益があると、金融機関のローン審査で有利です。
地震保険に加入しておく
震災への備えとして、地震保険に加入しておくことが重要です。収益性を高めるためには少しでもコストを減らす必要がありますが、地震保険に関しては収支計画に盛り込んで予算を確保しておきましょう。
万が一震災に見舞われても、保険金で修繕費用の一部がカバーされれば早期再建が可能です。被害の程度にもよりますが、収益性の高い地域であれば、再建により被害額を取り戻せる可能性も生まれます。ただし、修繕費用の全額を保険金で賄えるわけではないため、加入する保険のプランを事前に確認しておきましょう。
無理のない資金計画を立てておく
地震や災害時に備えて、ローン返済も含めた無理のない資金計画を立てておくことが大切です。大地震が発生すると、建物の修繕や空室増加などにより、収支バランスが崩れるおそれがあります。大規模な災害であれば猶予が設けられるケースもありますが、固定資産税やローンの返済といった固定費用の支払いは発生し続けるためです。
特にローンの返済に関しては、万が一返済ができなくなってしまうと、物件を手放すことになりかねません。家賃収入が減少しても、ある程度自己資金でカバーできるような計画を立てておきましょう。
震災リスクを軽減するマンションの選び方
地震の発生は予測不可能ですが、いくつかのポイントに注意しておくことでリスクを軽減できます。リスクを少しでも減らしておけば、万が一震災が発生しても再建できる可能性が高まります。
震災リスクを軽減するという視点でマンションを選ぶ際のポイントを、3つ詳しく見ていきましょう。
新耐震基準を満たしている物件を選ぶ
不動産投資用のマンションを購入する際は、1981年6月1日以降に建築確認を受けた、新耐震基準に対応した物件を選ぶことをおすすめします。新耐震基準では建物の強度に関する基準が大幅に見直され、地震による損傷を受けにくくなっているためです。
阪神淡路大震災や東日本大震災では、新耐震基準の建物は倒壊や大きな被害が少なかったと報告されています。地震そのものは避けられませんが、新耐震基準を満たした物件を選ぶことで、損害を受けるリスクを軽減可能です。また、2000年の追加改正によって、さらに耐震性が高められています。
津波や水害も含めたエリアの安全性を確認
巨大地震の発生や被害の状況は、過去の発生状況からある程度予測が可能です。地震発生の歴史や自治体の発行するハザードマップを参考に、できるだけ安全な地域の物件を選びましょう。
また、地震の被害は、揺れによる損傷だけではありません。沿岸地域では、遠く離れた場所で発生した地震の津波による被害を受けるおそれもあります。さらに、台風や大雨による風水害もマンション経営では大きなリスクとなるため、地震以外の災害も含めて投資地域の状況を確認しておくことが大切です。
震災後の復興を視野に入れておく
震災発生時の被害予測だけではなく、地域の将来性について検討しておくとリスク軽減につながります。耐震性の高い物件で被害を免れても、地域経済が復興しなければ物件の収益性や価値が失われかねません。
たとえば、神戸は阪神大震災で大きな被害を受けましたが、現在では日本有数の人気都市です。一方で、地震をきっかけに人口が流出してしまう地域だと、賃貸需要が低下するおそれがあります。地域の特徴や人口構成などを参考に、将来性を考えた物件選びをすることが重要です。
【まとめ】不動産投資の地震リスクは南海トラフだけではない
今後30年以内の発生確率が高い地震として、南海トラフ地震が注目されています。しかし、日本国内で不動産投資をする以上、震災リスクは南海トラフ地震に限りません。投資先として地震の少ない地域を選ぶことはもちろん大切ですが、万が一の際に対応できる備えもしておきましょう。
特定地域の地震を過度に警戒するのではなく、適切なリスク軽減策をとっておくことで、不動産投資の成功確率は高まります。地震の発生自体は、誰にも予測できません。発生への備えと将来性の分析をおこない、より安定した収益をあげる積極的な投資判断をすることが重要です。