不動産に課せられる固定資産税ですが、実は土地と建物の税額は同じではありません。特に土地に関しては、建物の有無によっても税額が変わってきます。土地と建物のどちらの税額が高いのか、またどういった条件で変わってくるのかを正確に把握しておくことが大切です。
そこで今回は、土地と建物の固定資産税の違いについて、具体的な計算方法も含めて詳しく解説します。
もくじ
土地と建物の固定資産税の計算方法
不動産を所有していると、毎年固定資産税の納付が必要です。土地と建物それぞれに課税されますが、課税標準額に対して一定の税率をかけるという基本的な算出方法はどちらも変わりません。しかし、条件を満たす土地であれば、減免措置を利用できるケースもあります。
固定資産税の基本的な仕組みと計算方法、減免措置について見ていきましょう。
不動産には固定資産税がかかる
固定資産税とは、土地、家屋、償却資産といった固定資産を所有している人が、その資産価値に応じて市町村(東京23区の場合は都)に納める税金です。
たとえば、東京都内で土地つきの住宅を所有している人は、それぞれの資産価値に基づいて計算された固定資産税を東京都に納めます。固定資産税は、地域の学校や病院の建設、道路の整備、公園の維持管理など、さまざまな公共サービスに役立てられます。
土地と建物の基本的な計算方法
固定資産税は、以下のステップで計算されます。
- 1. 固定資産の評価
- 2. 課税標準額の決定
- 3. 課税標準額 × 1.4%で税額が決定
- 4. 減額措置の適用
固定資産の評価額は、時価に基づいて決定されます。時価を使用する理由は、固定資産が持つ実際の経済的価値を反映するためです。総務大臣が定めた「固定資産評価基準」に従って、市町村長が評価を実施します。
地目別に評価される土地のうち、宅地の評価額は地価公示価格の7割が目安です。家屋の評価は再建築価格を基準にしつつ、築年数の経過による価値の減少を反映するため、経年減点補正率も適用されます。
固定資産の評価額に基づいて、1月1日時点で決定されるのが「課税標準額」です。税額は、課税標準額に標準税率の1.4%をかけて算出します。たとえば、課税標準額が1,000万円であれば、固定資産税額は14万円です。
住宅用地の場合は減免措置がある
住宅用地の場合は、住宅用地特例による減額措置が適用されます。住宅用地特例とは、課税対象の土地の面積に応じて課税標準額を減額する制度です。土地の面積200平方メートルを基準に、減免率が異なります。
特例内容
住宅用地の面積が200平方メートル以下の場合、課税標準額が6分の1になる
住宅用地の面積が200平方メートルを超える部分の場合、課税標準額が3分の1になる
住宅の固定資産税の違いを比較
住宅の固定資産税は、建物の種類によって異なります。大きく差が出るのは、区分所有のマンションと戸建ての場合です。
マンションと戸建ての固定資産税の違いについて、平屋と複数階物件の違いも含めて詳しく紹介します。
マンションのほうが割高になる
マンションの固定資産税は、一戸建てと比べて割高になる傾向があります。減価償却期間の違いと、住宅用地の特例の恩恵を受けにくいためです。
一戸建ての法定耐用年数が22年である一方、マンションは2倍以上の47年とされています。価値も長期間維持されるため、課税標準額が一戸建てに比べてあまり下がりません。結果的に、高止まりした固定資産税を一戸建てよりも長期間支払うことになります。
さらに、固定資産全体に占める土地の割合が低いことも、マンションの固定資産税が割高といわれる理由です。住宅用地であれば特例を受けられますが、もともと土地分の固定資産税の割合が低いため、減額の恩恵をあまり受けられません。
戸建てでは複数階のほうが割安
戸建住宅を床面積で比較すると、平屋建てよりも複数階のほうが固定資産税は割安です。同じ300平方メートルの床面積に住宅に住む場合を考えてみましょう。計算を簡略化するために建ぺい率(土地に対して住宅を立てられる面積の割合)については、一旦考えないことにします。
300平方メートルの床面積を実現するためには、平屋建ての場合は同じく300平方メートルの土地が必要です。100平方メートルあたりの土地の評価額が300万円だった場合に住宅用地の特例を適用すると、土地にかかる固定資産税は以下の計算式となります。
(200平方メートル以下の部分)600万円÷ 6✕ 1.4% = 14,000円
(200平方メートルを超える部分)300万円÷ 3✕ 1.4% = 14,000円
土地の固定資産税額:28,000円
一方で、同じ300平方メートルの床面積を2階建てにした場合に必要な土地面積は、半分の150平方メートルのみです。土地に対する固定資産税の金額は以下のようになります。
土地の固定資産税額:450万円÷6✕ 1.4%= 10,500円
2階建ての場合の固定資産税は、平屋の半分以下です。また、一般的に平屋建てのほうが建物の評価額が高いといわれるため、建物分の固定資産税はさらに差がつきます。
固定資産税を少しでも節税する方法
土地や建物にかかる固定資産税は、所有者にとって少なからず負担となります。しかし、制度をよく理解して適切な対策を取れば、税負担を合法的に抑えることが可能です。
少しでも固定資産税を節税するための方法を、3つ詳しく紹介します。
更地ではなく住宅を建てる
更地の土地を所有している場合、住宅を立てることで固定資産税を抑えられます。住宅が建っている土地には、住宅用地の特例が適用されるためです。200平方メートル以下の部分は、固定資産税が6分の1に軽減されます。
更地のままでは特例を受けられないため、算出された固定資産税の全額が課税されます。
新築や認定長期優良住宅といった特例を利用する
住宅に対する固定資産税の減額は、土地のみが対象ではありません。一定の条件を満たした建物であれば、特例を利用できるケースがあります。具体的には、新築と認定長期優良住宅の場合です。
ただし、対象の床面積は120平方メートルまでとされているうえ、適用期間にも定めがあります。細かい条件は、以下のとおりです。
区分 |
期間 |
減額割合 |
|
一般住宅分 |
一般住宅 |
3年度分 |
2分の1 |
3階建て以上で耐火構造の住宅 |
5年度分 |
||
長期優良住宅 |
一般の長期優良住宅 |
5年度分 |
|
3階建て以上で耐火構造の長期優良住宅 |
7年度分 |
また、一定の条件を満たすとリフォームでも固定資産税を軽減できます。軽減対象となるリフォームの種類は以下のとおりです。
- 耐震リフォーム
- バリアフリーリフォーム
- 省エネリフォーム
- 同居対応リフォーム
- 長期優良住宅かリフォーム
- 子育て対応リフォーム
詳しい適用条件や必要書類については、国土交通省の「住宅リフォームにおける減税制度について」をご覧ください。
分筆をして一部の評価額を下げる
土地を分筆することで、固定資産税を節税できる可能性があります。分筆とは、1つの土地を分割して登記し直すことです。
たとえば、路線価の低い道路に面した側の土地を分筆すると、評価額が下がります。結果的に、土地全体の平均の課税標準額が下がるため、固定資産税を抑えられます。
ただし、分筆には測量費用や登記費用が発生するため、節税効果と比較検討したうえで判断することが重要です。
【まとめ】土地のみだと固定資産税が高くなるおそれがある
不動産を所有している以上、固定資産税がかかること自体は避けられません。しかし、税額の算出方法を知ることで、課税額を抑えられます。特に、土地のみを所有している場合には、住宅を建てることで大きく税額を下げられるでしょう。
また、マンションと戸建て、平屋と複数階といった住宅の種類によっても固定資産税は変わってきます。利用できる特例制度も複数あるため、高い固定資産税を抑えたい場合には専門家に相談することをおすすめします。