不動産の等価交換は、土地の有効な活用方法の一つとして注目されています。積極的な賃貸経営を望んでいなくても、土地がある場合には有効活用したいものです。
そこで本記事では、等価交換の基本的な仕組みやメリット・デメリットを解説します。土地活用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
もくじ
不動産を等価交換する仕組み
不動産の等価交換とは、所有している土地とその土地にこれから建てる不動産を交換することです。等価交換には、交換内容によって2つの方式があります。
まずは等価交換の基本的な仕組みと2つの方式について詳しく見ていきましょう。
等価交換の基本的な仕組み
等価交換では、オーナーが所有している土地に、デベロッパーや不動産会社がマンションなどを建て、完成後に土地と建物の所有権を交換します。土地の所有者は建築費を支払うことなく、建物の権利を得られる点が特徴です。
賃貸経営で大きなリスクとなるのは多額の購入費用ですが、等価交換であれば自己資金がなくても物件を取得できます。また、賃貸経営をしない場合は、自宅として使用することも可能です。
等価交換の2つの方式
等価交換には、交換内容の違いで2つの方式があります。名義変更のタイミングが異なるため、それぞれの内容を正しく把握しておきましょう。
まず、土地の所有権をすべて引き渡す等価交換が「全部譲渡方式」です。全部譲渡方式では、不動産を建てる前に土地の名義を建物の所有者に変更します。土地の所有者は、建物の完成後に決められた割合分の所有権を得るのが特徴です。
所有権の一部を引き渡す等価交換を「部分譲渡方式」といいます。土地の権利をすべて手放すわけではない点が、部分譲渡方式の特徴です。例えば、土地の価格が高い地域では、建物と価値が見合わないケースもあります。建築後の建物のうち、必要とする割合分のみ土地の権利を譲渡するのです。部分譲渡方式では、建物が完成してから土地と不動産の所有権を交換します。
単純に売却する際との違い
土地の売却と等価交換の大きな違いは、取引後に残る資産の形です。売却すると現金が手に入りますが、再運用をしない限り基本的には増えません。一方、等価交換であれば建物が手に入るため、賃貸経営で収入を得られます。
また、通常の手順で不動産を購入する場合は、所有者や不動産会社の利益が建物そのものの価値に対して加えられるため、割高となる点がデメリットです。しかし、等価交換であれば土地の価値に見合った建物の所有権を得られるため、現金で新たに物件を購入するよりも安価に手に入る可能性があります。
等価交換をする4つのメリット
等価交換には、通常の売却にはないさまざまなメリットがあります。特に、資金調達や専門知識が不要で不動産経営に乗り出せる点は、土地所有者にとって大きな利点です。
等価交換のおもなメリット4点を、それぞれ詳しく紹介します。
資金調達をせずに土地を活用できる
等価交換では、不動産の建築費用は業者側の負担です。オーナーは建築費用を負担しないため、資金調達をすることなく土地活用を実現できます。
借入金がなければ、家賃収入が減少した場合でも返済のリスクがありません。等価交換で取得した物件であれば、比較的安定して運用できます。
税金の優遇が受けられる
等価交換で物件を取得した場合は、税金の優遇を受けられます。土地を売却すると、得た利益に対する譲渡所得税の支払いが必要です。しかし、等価交換では「立体買い換えの特例」を利用して税金の支払いを繰り延べできます。
立体買い換えの特例が適用されると、将来不動産を売却するまで譲渡所得税が課税されません。税金が免除されるわけではありませんが、税負担を先送りして土地活用を実現できます。
相続税対策としても有効
等価交換によって土地活用をすれば、相続税の対策にもなります。更地のままの土地を相続する場合は、土地の評価額でそのまま相続税が計算されます。しかし、土地の全部、もしくは一部を建物に等価交換しておくと、賃貸物件に対する軽減措置が適用されるのです。
新たに資金調達をして賃貸物件を建築するにはリスクが伴いますが、等価交換であれば自己資金不要で相続税対策が可能となります。
知識不要で賃貸経営ができる
等価交換は業者側主導で土地を活用するため、専門的な知識不要で賃貸経営をはじめられます。需要に応じた賃貸物件やオフィスビルなどを建てるには、専門的な知識や経験が必要です。しかし、需要が見込まれるからこそ、等価交換をしてでも業者は物件の建築をおこないます。必ずしも計画どおりにいくとは限りませんが、少なくとも自分で建築するよりもリスクは低減できるはずです。
また、等価交換であれば、基本的に融資も含めて自己資金を投入しません。万が一計画どおりの収益を得られなくても、リスクの少ない不動産経営を実現できます。
等価交換のデメリット
メリットの多い等価交換ですが、実はデメリットもあります。実際に取引をする前には、デメリットについても正しく理解しておくことが大切です。
等価交換のおもなデメリット2点を詳しく見ていきましょう。
不動産の権利が複雑になる
等価交換をすると、不動産の権利関係が複雑になる点がデメリットです。等価交換では、土地と建物の権利をオーナーとデベロッパーで共有します。権利を保有していても、オーナーの意思で自由に売却はできません。
また、将来的に意思の疎通が難しくなるおそれもあります。デベロッパーは会社のため、責任者や担当者が変わることも珍しくありません。書面で交わした契約内容は維持されますが、運営に対する予期せぬ方針転換があると、オーナーの認識とのずれが生じることも考えられます。
交換する建物側の所有範囲を決めるのが難しい
交換する建物側の所有範囲(還元床)を決めることが難しい点も、等価交換のデメリットです。原則としては、受け渡す土地の権利分と同じ価値の還元床を割り当てられますが、不動産の価値は一定ではありません。
まず、土地の鑑定評価額は、依頼する不動産鑑定士によって異なるケースがあります。さらに、建物に関しては完成前に想定価格を設定するため、価値があいまいです。交換する建物側の所有範囲を決める際に、双方の認識の違いからトラブルが起こるおそれもあります。等価交換で土地活用をする際は、デベロッパー側と慎重に話し合うことが大切です。
【まとめ】等価交換なら手間をかけずに土地を活用できる
等価交換とは、オーナーの土地に不動産デベロッパーが建物を建て、土地と建物の所有権を等価になるように交換する仕組みです。オーナーは建築費の調達不要で不動産経営をはじめられるため、最小限のリスクで土地活用ができます。
一方で、権利関係が複雑になるなど、デメリットがある点にも注意が必要です。有効な土地活用方法を検討する際は、デメリットに注意しながら等価交換も検討してみてください。