不動産投資を始める場合、シミュレーションをして見通しを立てたいと考える方もいるのではないでしょうか。不動産投資をする上で、シミュレーションでリターンやリスクを知ることは重要です。
そこでこの記事では不動産投資のシミュレーション方法や、役立つツールやサイト、成功するためのポイントなどを紹介します。運用のしやすさが分かれば、物件やエリアの取捨選択が可能です。不動産投資を始めたいと考えているのであれば、シミュレーションの方法を押さえましょう。
もくじ
不動産投資のシミュレーションに欠かせない基礎知識
不動産投資では、基礎知識を習得した上でシミュレーションをする必要があります。実際に不動産投資をする場合、新築・中古など数ある種類のなかから物件を選択します。
物件ごとに特長があり、シミュレーションのやり方や結果が変わってくるものです。物件をまだ選んでいない方は、特長を知って取り組みやすそうなものを決めてみましょう。
不動産投資物件の種類と特性
不動産投資で扱う物件には、「新築・中古」「区分・一棟」があります。新築と中古を比べた場合、新築のほうが入居者を集めやすいため安定した収入につながるものです。中古は価格が安いため、ローンの返済負担を軽くでき利回りも高くなるメリットがあります。ただし維持管理に時間がかかってしまうため、注意しなければなりません。
区分と一棟を比べると、区分のほうが価格は安く維持管理が簡単です。一方で一棟は全室が空室になるとは考えにくいため利回りは高く出ます。他方で大規模工事を想定した運用が必要です。
シミュレーションで使う専門用語
専門用語も覚えることで、より詳しいシミュレーションが可能です。表面利回りは「満室時の年間家賃収入÷不動産価格×100」で算出します。一方で実質利回りは、表面利回りに空室リスクや諸経費を考慮するものです。
キャッシュフローは現金の流れのことを指し、不動産投資においては1か月・1年あたりの運用の指標となります。キャッシュフローを把握する上では、想定平均月額家賃(空室リスクを加味した家賃)や諸経費率(家賃収入に対する各種保険料、税金、管理費などの割合)も考慮しましょう。実際の稼働を想定したシミュレーションができます。
頭金はローンを組む際の自己資金額のことです。頭金が多ければ多いほど、毎月のローン返済負担は減ります。
不動産投資のシミュレーションをするメリット
不動産投資を始める前にシミュレーションをすることで、次の3点が分かります。
- どれだけ利益を期待できるのか
- どれだけの期間収益を得られるのか
- どれだけのリスクがあるのか
リターンとリスクの両面から見通しを立てることは、物件選びや地域探しに大いに役立つことです。あらかじめリスクが分かれば、具体的な予防策も考えられます。
物件にどれだけの利益が期待できるのかがわかる
シミュレーションをすることで、物件の収益性が明確になります。例えば一棟マンションを検討している場合には、部屋数に焦点を当ててみましょう。
部屋数が10室であれば、「10室・9室・8室」とひとつひとつ実質利回りを計算することで、どの程度の収益性を確保できるのか確認できます。大きくキャッシュフローに影響すると分かれば、「ほかの物件を検討する」「節約できる部分を探す」などの予防が可能です。利益の大きさにも着目しましょう。
どれだけの期間にわたって収益を得られるのかがわかる
さらに収益を得られる期間も分かります。購入時の年齢からあと何年持ち続ける可能性があるのかを計算してみましょう。あと20年、30年と所有となれば、大規模工事の間隔や人口推移のデータと照らし合わせて収益を見込める期間を把握できます。
人口減少のデータが出ていれば、資産価値も下落し入居者もすぐに集まらなくなる可能性が見えてくるものです。そこで「別のエリアで探す」「適切な時期に売却する」との予防策を講じられます。
どれだけのリスクがあるのかを把握できる
シミュレーションでは、不動産投資に必要なコストやリスクも把握できます。シミュレーションを進めていくには、火災保険料や固定資産税、管理費などを調べることが不可欠です。
例えば初期費用が多いと分かれば、「物件価格の安いものを選ぶ」「維持管理に手間がかからない中古物件を探す」といった予防策を考えられます。管理費だけがネックであれば、「家賃で調整する」なども可能です。シミュレーションで情報を洗い出すからこそ、さまざまなことが見えてきます。
不動産投資のシミュレーションを行うのに必要な項目
シミュレーションでは、物件の購入金額や広さ、利回り、購入時の諸経費・税金、周辺エリアの情報を収集しましょう。正確な利益やリスクを把握するのに一役買います。
多くの情報はネットで探したり不動産会社の担当者に聞いたりすることで、入手が可能です。気になる物件を見つけたら、すぐに情報を集める癖をつけましょう。
物件の情報
まずは物件の情報を集めます。具体的には以下のものが必要です。
- 物件の購入金額
- 建物の広さ
- 利回り
- 修繕歴 など
物件の購入金額や建物の広さ、利回りはネット上でも閲覧できます。利回りについては多くのケースで表面利回りを公開しているため、諸経費・税金なども含めた実質利回りで計算しましょう。
一方で修繕歴は、ネットでは公開されていません。不動産会社を通して、直した箇所や次の大規模工事の時期などを確認しましょう。
物件購入の諸費用や税金
物件を購入するときの仲介手数料や不動産取得税、固定資産税なども計算します。仲介手数料は簡易計算式の「消費税抜き売買代金×3%+6万円+消費税」を用いましょう。
不動産取得税は「固定資産税評価額×3%(2024年3月31日までの取得分)」、固定資産税は「固定資産税評価額×1.4%」で算出できます。ベースとなる固定資産税評価額は、他人が確認できるものではありません。不動産会社に問い合わせて、目安の金額を算出してもらいましょう。
周辺エリアの物件情報
さらに周辺エリアの物件情報も収集します。具体的には、同じ条件の物件の家賃相場や人気のある間取りなどを調べてみましょう。同じような間取りで価格が安い物件がある場合には、「将来リノベーションの必要がある」などの見通しを立てられます。
相場からそのエリアでの物件の立ち位置も分かり、シミュレーションに反映できるものです。今後家賃を下げざるを得ないと判断し、シミュレーションで5年目から家賃収入を少なく見積もる方法もあります。
ケース別!不動産投資のシミュレーション例
次にケース別に不動産投資のシミュレーションを行います。条件は以下のとおりです。
- 年間家賃収入 120万円
- 15年後の売却額 物件価格から500万円のマイナス
- 頭金 物件価格の3分の1
- 借入額 金利3.5%の固定金利、15年にわたって元利均等で返済
- 初期費用 物件価格の10%
- 15年間の諸経費 家賃の15%
新築・中古それぞれの区分所有で検討してみます。
新築の区分マンションを購入する場合
はじめに3,000万円の新築区分マンションを1戸購入し、平均利回り4%で15年間運用したケースの支出と最終的な手取りをシミュレーションします。
項目 | 金額 | 合計 | |
収入 | 15年間の家賃収入 | 1,800万円 | 4,300万円 |
15年後の売却額 | 2,500万円 | ||
支出 | 頭金 | 1,000万円 | 4,100万円 |
借入額(金利含む) | 2,500万円 | ||
初期費用 | 300万円 | ||
15年間の諸経費 | 300万円 | ||
最終的な手取り | 200万円 |
収入が4,300万円に対して支出は4,100万円となり、最終的な手取りは200万円です。手取りを増やすために頭金を多くしたり、需要と供給のバランスをみて売却時期を検討したりすることをおすすめします。新築のため価格が下がりやすいことも考慮すると良いでしょう。
中古の区分マンションを購入する場合
次に1,500万円の中古区分マンションを1戸購入し、平均利回り8%で15年間運用したケースの支出と最終的な手取りをシミュレーションします。
項目 | 金額 | 合計 | |
収入 | 15年間の家賃収入 | 1,800万円 | 2,800万円 |
15年後の売却額 | 1,000万円 | ||
支出 | 頭金 | 500万円 | 2,250万円 |
借入額(金利含む) | 1,300万円 | ||
初期費用 | 150万円 | ||
15年間の諸経費 | 300万円 | ||
最終的な手取り | 550万円 |
収入が2,800万円に対して支出は2,250万円となり、最終的な手取りは550万円です。中古物件では維持管理がネックになります。この例だと諸経費を家賃の20%にして360万円と試算することも効果的です。多方面から計算することで、さまざまな想定ができます。
不動産投資のシミュレーションに役立つツールやサイト
不動産投資のシミュレーションでは、ツールやサイトが役立ちます。
- アパート一棟買いLite
- 検証効率UP!不動産収支計算機
- keisan
- 全国地価マップ
ツールやサイトを駆使することで、スムーズなシミュレーションができます。また本格的なシミュレーションの前段階として、これらのツールでベースを作ることも効果的です。ぜひ取り入れてみましょう。
アパート一棟買いLite
「アパート一棟買いLite」は不動産投資での収支分析ができる無料のアプリです。
・融資情報(融資額・期間・利率・返済額)
・自己資金 など
上記の項目を入力するだけで、1年単位でのキャッシュフローが分かります。稼働率90%と70%の場合と比較できるため、おおよその見通しを立てるのに便利です。収支やローンの推移も分かりやすくグラフでも確認できます。
検証効率UP!不動産収支計算機
このアプリは不動産投資の運用状況をおおまかに把握できる優れものです。
・想定年収
・自己資金
・借入期間
・諸経費率
・空室率
・金利
上記の項目を入れることで、月・年間の返済額や家賃収入、表面利回り、実質利回り、返済後利回り、投資利回りなどが分かります。空室率を入力する項目があるため、空室率を細切れにした試算が可能です。1年ごとのシミュレーションはできませんが、大体の目安を知りたい方は取り入れてみましょう。
keisan
ローン返済を細かく計算したい方には、「keisan」がおすすめです。借入金額や返済方式(元利均等・元金均等)、金利、返済期間などを入力することで、毎月の返済額(元金分・利息分)借入残高を把握できます。グラフの作成も可能です。
ローン返済シミュレーションのサイトはほかにもありますが、返済頻度を毎月・半年ごと・毎年から選択できたり、借入期間を月単位で設定できたりするのがkeisanの魅力です。不動産投資ではローンの返済が負担となってくるため、keisanを使って入念にシミュレーションしましょう。
全国地価マップ
「全国地価マップ」は固定資産税路線価や地価公示価格など、評価センターが独自に収集したデータを公開しているサイトです。郵便番号や住所などを入力することで、エリアにアクセスできます。過去数年のデータや用途地区(住宅地や繫華街など)も確認が可能です。
さらに二画面で地価を比較できたり地形や駐車場の位置なども把握できたりするため、シミュレーションに重宝します。知らない土地の不動産を検討している方はぜひ使ってみましょう。
成功するために! 不動産投資のシミュレーションのポイント
不動産投資で成功するためには、以下の点を押さえましょう。
・複数のパターンを想定する
・不測の事態を想定する
・出口戦略を確認する
シミュレーションでは多角的にみることが必要です。ご自身だけではアイディアが思い浮かばない場合には、ご家族の視点からのシミュレーションをおすすめします。
正確性の高いシミュレーションをする
まずは不確実な情報をなくし、正確性の高いシミュレーションができているかを確認しましょう。家賃やローンの返済額などが曖昧なままだと、のちのちの運用が難しくなるものです。適切な出口戦略も立てられず、最初から最後まで計画性のない不動産投資に終わってしまいます。
例えば借入額について正確な数値が出せない場合には、「1,000万円・1,050万円・1,100万円」と細切れにしてシミュレーションをしてみましょう。
複数のパターンを想定する
さらにひとつのパターンだけではなく、条件を変えて複数のパターンでのシミュレーションも欠かせません。比較対象ができ、よりご自身に合ったものを選択できます。
例えば一棟物件においては、大規模修繕費がキャッシュフローを決める大きな要因です。過去のデータから持ってきた修繕費に100万円、200万円とプラスして想定してみましょう。多くの選択肢を持つことで改善点を洗い出し、より現実的な不動産投資ができるようになります。
不測の事態が起こっても問題ないかを確認する
不動産投資を10年、20年と行っていると災害や急な人口減少などにも対応しなければなりません。不測の事態が起これば出費が重なり、早めの売却も必要です。
さらにすぐに買い主が現れないことも考えられます。売却が延びたときに災害が発生すれば、オーナーがリスクを背負うものです。気になる物件があったら、災害への備えをどうすべきか、入居者が入りづらくなったら何をすべきかを考えましょう。「不測の事態は起こるもの」と思って行動するのが無難です。
出口戦略を立てられるかを確認する
シミュレーションでは、「出口戦略を立てられるか」も合わせて確認しましょう。物件を売却するタイミングを適切に予測し実行できれば、最終的な手取りも増えます。手元にすぐ入る家賃収入を見るだけでは、全体としての運用がうまくいきません。
不動産投資の出口戦略には、リノベーションや更地にして売却したり売らずに相続したりする方法などがあります。周辺情報などを考慮して、具体的な出口戦略を立てられる物件を選びましょう。
利益を安定して獲得するための不動産投資のポイント
利益を安定して出せる不動産投資にするためには、以下の2点を押さえましょう。
・リスクが低い物件を選ぶ
利益を10年・20年にわたって生み出すことは、不動産投資に必要不可欠です。大規模工事などが発生しても、のちにキャッシュフローをプラスにできるだけの安定さを探っていきましょう。
利回りだけで物件を選ばない
利回りの高さだけで物件を選ばないようにしましょう。利回りは高くても入居者が入らずうまく運用できない可能性があります。「利回り」は投資額に対してのリターンを表す指標のひとつです。指標にはなりますが、空室・災害・家賃下落などのリスクを想定しなければなりません。
不動産会社の担当者から利回りの高さをアピールされても慎重な判断が必要です。話をいったん持ち帰り、リスクを見つけ問題点を洗い出すことをおすすめします。
リスクが低い物件を選ぶ
不動産投資では家賃収入が鍵になります。空室リスクが低い物件を選ぶことで、家賃収入が安定して入り長期間の運用が可能です。入居者が埋まるかどうかは「駅から徒歩圏内か」や「商業施設が近くにある」など、多くの要因があります。
例えば自治体の予測で30年後には人口が10%減っているとすると、駅前にある商業施設もなくなる可能性も考えなければなりません。
価格の値上がりに期待できる物件であれば売却益が上がるため、売却時のことも考えつつリスクの低い物件を選びましょう。
不動産投資の不安はプロに相談して解消しよう!
不動産投資が成功するかどうか不安がある方は、不動産投資会社のプロに相談しアドバイスを受けましょう。不動産投資に精通している会社であれば、シミュレーションにおけるさまざまな可能性やリスクを教えてくれます。オーナーによって良い情報も不都合な情報も丁寧に教えてくれるものです。
不動産投資の実績が多くオーナーから信頼されている会社は多くのデータを持っており、豊富なデータから相談者に合ったものをピックアップし提供してくれます。何か質問をした際にも事細かく答えてくれるため、オーナー側も安心した運用が可能です。
シミュレーションで情報を収集したい場合や周辺物件の情報などを聞いて、不安を解消した上で不動産投資を始めましょう。
まとめ
安定した不動産投資にはシミュレーションが欠かせません。リスクやリターンを把握できるため、見通しを立てられます。空室率が高くなると予想できれば、あらかじめ対策を講じられるものです。
シミュレーションには役立つツールやサイトがあります。適宜利用して、できるだけ多くの改善点を洗い出しましょう。
成功には利回りだけで物件を選ばないこと、リスクの低い物件を選ぶことが重要です。不明点は信頼できる不動産投資会社に相談しましょう。