不動産投資について調べているときに、難しい言葉に出くわした経験のある方もいるのではないでしょうか。不動産投資には多くの専門用語があり、これらを理解することで知識を習得しやすくなり、安定した運用が期待できます。資産性の高い物件の維持にもつながるものです。
そこでこの記事では、不動産投資の専門用語について紹介します。初級・中級・上級別、場面別に具体例や数値を用いて分かりやすく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
初心者が覚えておくべき不動産投資の専門用語
不動産投資を始めるにあたり初心者が覚えておくべき専門用語はたくさんあります。
- 表面利回り
- 実質利回り
- 団体信用生命保険
- キャッシュフロー
- 節税
特に表面利回りと実質利回りは、安定した運用のために欠かせません。ネットやパンフレットなどでも頻繁に見かける「不動産投資の基礎」ばかりです。ぜひマスターしましょう。
表面利回り
表面利回りは、投資額(物件価格)に対してリターン(年間の満室時の家賃収入)はどのくらいかを表すものです。値が高ければ高いほど、収益性があることを指します。
例えば年間の満室時の家賃収入が100万円で、物件価格が1,000万円と仮定しましょう。「100万円÷1,000万円×100=10%」となり、表面利回りは10%と算出できます。
一般的に広告に出ている値は表面利回りです。実務では税金や保険料などの諸経費がかかるため、あくまでもひとつの目安として覚えておきましょう。
実質利回り
一方で実質利回りは、管理費や保険料、税金などの諸経費を考慮した上で算出する利回りです。表面利回りよりも現実的で、状況に応じた数値を求められます。
例えば年間の家賃収入が100万円で諸経費が40万円、物件は1,000万円、購入時にかかった諸経費は200万円としましょう。「(100万円-40万円)÷(1,000万円+200万円)×100=5%」となり、実質利回りは5%と算出できます。
実務により近いものになるため、物件を選ぶ際には表面利回りだけではなく実質利回りも参考にしましょう。
団体信用生命保険
団体信用生命保険とは契約者が死亡・高度障害になった場合に、ローンの支払いを免除できる保険です。別名「団信」といいます。
ローン残債が500万円のときに契約者が死亡したとしましょう。残された家族は500万円を返済する必要がないため、家賃収入を丸々手にできます。
死亡・高度障害以外にも、がんや三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)などにも対応している保険もあるため、対象範囲を広げたい方は契約中の保険と重複していないか確認しましょう。
キャッシュフロー
キャッシュフローとは不動産投資によるお金の流れを指します。不動産投資では家賃収入や支出(管理費・税金・保険料などの諸経費)がどのくらいあるのかが重要です。
キャッシュフローがプラスであれば、運用はうまくいっていることを表します。毎月・毎月のキャッシュフローをプラスにすることは、長期間の安定した運用につながるものです。
一方でマイナスの状態が続くと、貯金を切り崩して管理費や税金を支払わなければなりません。常に収入と支出の流れを把握しましょう。
節税
節税とは不動産所得にかかる税金を削減することです。不動産所得から経費を差し引いた課税所得に課し、課税所得が多くなればなるほど税率は高くなり納税額も多くなります。
不動産投資の節税では「減価償却費」がポイントになることを覚えておきましょう。建物が鉄骨鉄筋コンクリートであれば47年、木造であれば22年にわたって物件価格の一定割合を経費にできます。節税がおろそかだとキャッシュフローに影響するため、節税の意識を高く持ちましょう。
中級者が覚えておくべき不動産投資の専門用語
以下の4つの専門用語は、不動産投資にどのように活用できるのかを確認しましょう。
- インカムゲイン・キャピタルゲイン
- リノベーション・リフォーム
- コンバージョン
- 収益還元法
リノベーション・リフォーム・コンバージョンは意味が似ています。不動産投資の知識をさらに深めるために、中級者の方は覚えておきましょう。
インカムゲイン・キャピタルゲイン
インカムゲインは運用益のことです。不動産投資でいう家賃収入となり、インカムゲインを増やすためにさまざまな工夫をすることで安定した運用につながります。
一方でキャピタルゲインは売却益のことです。将来の売却時の価格のことで、売却時期によって大きく変わります。
不動産投資では、インカムゲインとキャピタルゲインの両方で利益を上げるのが理想です。家賃収入がどの程度入るのか見通しを立てつつ、値上がりのタイミングを見計らって売りに出すことをおすすめします。
リノベーション・リフォーム
リノベーションとは物件の性能を高めることです。断熱や耐震仕様にすることで、物件の価値を高めます。
一方でリフォームは新築の状態に戻すことです。古くなったキッチンや壁紙などを新しくして、マイナスからゼロに戻すイメージとなります。
入居者によっては、リノベーションやリフォームに対してマイナスのイメージを持つ方が多いのも現状です。空室が続いたり高値で売却できなかったりするため、リノベーションやリフォーム物件は慎重に選びましょう。
コンバージョン
コンバージョンとは、物件の用途を変更して価値を高めることです。具体的にはオフィス部分を居住用マンションに変える例があります。
コンバージョンのメリットは、より収益性の高い建物に変更できることです。そのエリアでマンションの需要があれば、用途変更により空室を防ぎつつ家賃収入を得られます。
一方でエリアによっては、用途変更に制限があることも覚えておきましょう。他の条件も考慮した上でコンバージョンを行えば、資産価値のある物件を所有できます。
収益還元法
収益還元法は、家賃収入をもとに不動産価格を算出する方法のひとつです。収益還元法が分かることで、気になる物件の価格が適切かどうかを判断できます。
計算方法は直接還元法とDCF法の2つです。直接還元法は「家賃収入から経費を差し引いた金額÷還元利回り(不動産の所有により生まれる収益)」で求めます。例えば1年間の家賃収入が100万で年間の経費が30万円、還元利回りが5%だとしましょう。「(100万円-30万円)÷5%=1,400万円」となり、適切な価格は1,400万円となります。
一方でDCF法は空室リスクなども考慮するため複雑な計算となりますが、より正確な値の算出が可能です。
上級者が覚えておくべき不動産投資の専門用語
不動産投資上級者になったら次の3つの用語を覚えておきましょう。
- NOI、ROI
- アセットアロケーション
- プライムレート
収益性や効率性を表すのに便利な用語です。手元に残る収入を大まかに計算しているままでは、収入や支出を正確に把握できません。ある程度知識を得た方は、数十年と運用できるように覚えておきましょう。
NOI・ROI
NOI(Net Operating Income)は、「満室時の家賃収入-空室による収入減や管理費・税金など」で求める純営業利益のことです。収益をはかる材料としてNOIを使います。
例えば満室時の家賃収入が100万円で、収入減や管理費・税金が30万円であれば、NOIは70万円です。
一方でROI(Return on Investment)は投資利益率のことです。値が高ければ効率的に投資ができているといえます。
プライムレート
プライムレートとは、銀行が優良企業にお金を貸し出す際に適用する「最優遇金利」のことです。
金利の種類のひとつである変動金利は、プライムレートの金利が上昇することで上がります。要するにプライムレートの動きを把握することで、ある程度の金利が予想できるということです。金利が上がれば返済額も増えて収支にも影響します。
今後の運用のしやすさに関わってくる部分であるため、ローンを組んで不動産投資を始める方は注視しておきましょう。
アセットアロケーション
アセットアロケーションとは投資戦略の考え方のひとつです。どの割合で資金を分配すべきかを決めることや、リターンを維持しつつリスクを低減することをいいます。不動産投資においてアセットアロケーションを考えることは、空室・災害などのリスクを防ぎ安定した家賃収入を得るのに有効です。
例えば不動産投資では、地方物件と都心物件、区分所有と一棟所有のように分散投資できます。資金をバランスよく分配することを考えて、リスクを最小限にすることに努めましょう。
不動産投資物件の種類に関する専門用語
不動産投資であつかう物件はおもに4種類あります。
- 一棟物件
- 区分物件
- 居抜き物件
- 競売物件
不動産投資を検討している方であれば、一棟か区分かで悩んでいる方も多いことでしょう。どの物件で投資をするかで、必要な初期費用や運用方法、出口戦略が異なってきます。ご自身の目標や経済状況を考慮した上で、メリットの大きい物件を選びましょう。
一棟・区分
一棟とは、マンションやアパートの全室と共有部分全てを指します。一棟所有のメリットは、空室リスクを防げることです。一室空いても他の部屋からの家賃収入で補えます。一方で部屋数も多くなり専有部分も所有するため、管理に時間とお金がかかるのが問題です。
区分とはマンションやアパートのひと部屋を指します。価格が安いためローンの返済額が少なく、買い主が見つかりやすいのが魅力です。ただし退去者が出ると長期間家賃収入が入らなくなるリスクもあります。
居抜き物件
居抜き物件とは、前のテナントが機材や設備を残したままにしている物件です。飲食店だった物件で調理場やトイレをそのままにして売りに出し、次の入居者を募集します。
居抜き物件を貸し出すメリットは、次の入居者が機材や設備を使えるため費用を削減できることや長期間の家賃収入が見込めることです。
ただし残された機材や設備が洋食店のものであれば、次の入居者も洋食店に限定されてしまいます。なかなか借主が見つからないこともあるため、注意しましょう。
競売物件
自己破産などになってしまうと、債権者の申し立てにより裁判所が債務者の住宅を差し押さえ競売にかけることがあり、その物件を競売物件といいます。
競売物件のメリットは、市場価格よりも安く手に入れられることです。一方で競売物件は事前に内覧できません。契約後に実際の物件を見て、すぐに修理が必要だと分かることもあります。競売物件を考えている方は安さだけに注目せず、全体としてのメリット・デメリットも考えましょう。
不動産投資の契約に関わる専門用語
不動産投資を契約する上で、次の3つの用語は頻繁に出てきます。
- 頭金
- 登記
- 瑕疵担保責任
不動産投資では、契約を結ぶにあたりさまざまな書類に目を通すことになります。これらの言葉の意味を理解しておくことで、書類の内容はもちろん不動産会社の担当者や司法書士などが話す内容も把握できるため、覚えておきましょう。
頭金
頭金とは、物件を購入する際にローンを組まずに先払いするお金のことです。頭金を多く支払うことで、ローン返済額が減り毎月の負担が軽くなります。キャッシュフローの改善にもつながるものです。
例えば1,000万円の物件を購入するのに頭金200万円を支払うとしましょう。残り800万円に対してローンを組むため、返済額は800万円と利息分となります。
頭金の額はご自身のローンの返済能力やご家族の状況などに合わせて、周りの人と話し合った上で決めましょう。
登記
登記とは所有権などの権利関係を登記簿に記すことです。登記簿を見ると、物件の所有者や土地建物の概要、いくら借り入れしたかなどが分かります。
登記は不動産を購入するときや売却するときに必要です。不動産が新築の場合には「所有権保存登記」、中古の場合には「所有権移転登記」をしましょう。登記をすることで、第三者からのトラブル防止にもつながります。
さらに気になる物件があったら登記簿を確認しましょう。万が一、抵当権が設定されている場合には、ローン返済が未完であることを表します。ローン返済ができなくなると金融機関が物件を差し押さえるため、外れているか確認しましょう。
瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは物件に隠れた瑕疵があった場合に、売主が責任を負うことです。例えば木材が腐食しており入居者が住めない状況であれば、原則として損害賠償を請求できます。契約の目的を達成できないときには、契約の解除が可能です。
なお瑕疵担保責任は2020年4月の民法改正により、「契約不適合責任」に置き換わりました。「隠れた瑕疵」という要件はなくなり売主の責任範囲が広がり、買い主は履行の追完請求権や代金減額請求権などができます。
不動産投資の運用に関わる専門用語
さらにスムーズな運用のために、次の3つの用語も覚えておきましょう。
- 修繕積立金
- 管理費・共益費
- 原状回復
日頃の維持管理に関わる専門用語です。特に原状回復は意味をしっかり理解していないと、入居者とトラブルになる可能性があります。お金が絡む問題であるため、どこからがオーナーの責任になるのかを確認しましょう。
修繕積立金
住民がマンションやアパートの将来の修繕のために先払いするお金を、修繕積立金といいます。外壁の工事や塗り直し、屋上の改修など、物件の資産価値を下げないために欠かせないものです。修繕積立金の金額は「長期修繕計画」に基づいて決定します。
長期間不動産を経営していくと、おのずと外壁が痛んだり見た目が悪くなったりするものです。そのような場合に備えて、住民が修繕費用を積み立ててくれればオーナー自身の安心感につながります。
管理費・共益費
管理費は、物件の共有部分の維持・管理のための費用です。共益費ともいいます。具体的にはエントランスや廊下の清掃、駐車場の管理、共有部分の火災保険の支払いなどのために使うものです。
入居者は毎月決まった額の管理費・共益費を支払うことになります。管理費・共益費があることで、入居者が入りやすくなり空室リスクを回避できる物件になるものです。物件を選ぶ際には、管理費・共益費がいくらなのかにも注目してみましょう。
原状回復
原状回復とは借りた物件を元の状態に戻すことで、原則入居者に義務があります。部屋は年数が経過するにつれてフローリングが色あせたり水回りが黄ばんだりするものです。原状回復をする場合には、入居者がどこの状態まで戻すのかが問題となります。
原状回復についてはオーナーと入居者のトラブルの原因となっていたため、国土交通省がガイドラインを作成しました。ガイドラインによると入居者が故意・過失で壊したものなどは、原状回復の対象です。原状回復については、契約書の記載事項も合わせて確認しましょう。
不動産投資の税金に関わる専門用語
最後に税金に関する重要な専門用語です。
- 青色申告
- 減価償却費
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 固定資産税・都市計画税
- 印紙税
不動産所得では多方面で税金がかかるため、徹底した管理が求められます。さらに経費計上できる項目は、確定申告時の書類に記入しなければなりません。直前になって慌てるのではなく、日頃から収支の流れを理解しておきましょう。
青色申告
給与所得以外に20万円を超える不動産所得がある場合には、青色申告か白色申告をしなければなりません。最大65万円の控除を受けられたり、不動産所得で発生した赤字を3年間繰り越しできたりします。
青色申告を利用するには、事前に税務署に「開業届」と「青色申告承認申請書」の提出が必要です。10万円の控除を受けるには簡易簿記で、65万円の控除を受けるには複式簿記で帳簿しなければなりません。確定申告期間は毎年2月16日~3月15日です。
減価償却費
減価償却とは建物の構造別の年数にわたって、物件価格の数%を費用として配分することです。そこでの算出金額を減価償却費といい、確定申告の際に経費計上することでさまざまなメリットを得られます。
具体的には給与所得と相殺することで、所得の圧縮が可能です。課税所得金額が少なくなれば、節税効果が期待できます。「不動産投資には節税効果がある」とうたっているほとんどが、減価償却費によるものであるため、覚えておきましょう。
不動産取得税
不動産取得税とは物件を取得した際に課す税金のことです。「課税標準額×3%」で算出します。3%部分は2024年3月31日までに取得した場合のものであり、標準税率は4%となります。なお課税標準額は固定資産評価額のことを指し、購入価格とは異なるため注意しましょう。
不動産を取得した場合、取得日から30日以内に申告しなければなりません。取得後6か月~1年以内に納税通知書が届くため、納期までに納税しましょう。
登録免許税
登録免許税は不動産を登記したときに納める税金のことです。不動産投資では、所有権保存登記や所有権移転登記などを行います。
税率は、建物の新築にかかる所有権保存登記では「不動産価額×0.4%」、中古物件を購入し登記を移転する所有権移転登記では「不動産価額×2.0%」、一棟を購入し土地の所有者にもなった場合には「不動産価額×1.5%」です。1.5%は、2023年3月31日までに登記をした場合に適用します。
固定資産税・都市計画税
固定資産税は1月1日時点でお住まいの自治体から、土地・建物の所有者に課せられる税金のことで、「課税標準額×1.4%」で算出します。一方で都市計画税は、1月1日時点で固定資産課税台帳への登録がある方に課せられ、「課税標準額×最高0.3%」で計算する税金です。
固定資産税と都市計画税ともに、毎年納税義務が発生します。キャッシュフローにもこれらの納税額は入れることになるため、納税後の収支管理に気をつけましょう。
印紙税
不動産投資の手続きでは、不動産売買契約書やローン借り入れの際に結ぶ金銭消費貸借契約書、領収書など多くの書類が必要です。これらの書類に貼るのが収入印紙で消印することで納付となり、書類の記載金額によって印紙税額は異なります。
例えば不動産売買契約書の場合、記載金額が2,000万円であれば印紙税は2万円です。金銭消費貸借契約書も同様の文書の種類となり、記載金額が5,000万円の場合には印紙税が2万円となります。
専門用語に不安があるなら…信頼できるプロに相談しよう!
不動産投資を始めたいと思っているものの、専門用語や専門知識に不安があるのであれば、信頼できるプロの不動産投資会社に相談しましょう。
実績のある不動産投資会社であれば、数多くのオーナーと交流しており、運用中に起こる疑問を一緒に解決しているものです。不動産投資の専門用語が難しいと感じている初心者に対しても、丁寧に説明してくれます。
信頼できる会社かどうかは、口コミや幅広くデータを公開しているかなどで判断が可能です。気になる不動産投資会社が見つかったら資料請求をして、できるだけ多くの会社を比較してみましょう。実際に店舗を訪れる際には質問をしてみて、ご自身が分かるまでとことん付き合ってくれるかも確認すれば、より安心です。
まとめ
不動産投資には実質利回りやキャッシュフロー、節税、登記、瑕疵担保責任、税金など、覚えておくべき専門用語がたくさんあります。専門用語の意味や使い方を覚えておくことで、契約書を読みやすくなったり手続きがスムーズに進められたりするものです。
専門用語をマスターしたら、実際に使って不動産所得の知識を深めてみましょう。以前よりも理解が深まり、疑問に思わなかった点も出てくるでしょう。その際にはしっかりと調べることで、良い学習になります。
専門用語に不安が残る際には、プロの不動産投資会社へ相談して疑問を解消しましょう。