住宅ローンを組む際、金利は重要な検討項目の一つです。住宅ローンの金利は変動金利と固定金利の2種類から選べますが、実は変動金利を選ぶ人が半数以上を占めています。
しかし、変動金利の仕組みについて、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、住宅ローンの変動金利の基本的な特徴やメリット・デメリットなどを解説していきます。
もくじ
住宅ローンの基本
銀行や信用金庫など多くの金融機関で、さまざまなプランが用意されている住宅ローン。細かい条件はローン商品によって異なりますが、もっとも理解しておきたいのが金利です。
住宅ローンは金額が大きいため、ほんのわずかな違いが返済総額に大きく影響します。無理のない借入をするためにも、住宅ローンの基本である「金利」について詳しくみていきましょう。
住宅ローンの金利は2種類
住宅ローンの金利には、大きく分けて変動金利と固定金利の2種類があります。どちらにも一長一短あり、どちらの金利タイプが良いか一概にはいえません。固定金利と変動金利の違いは、名称からもわかるように金利の見直しが発生するかどうかです。金利自体は一般的に固定金利のほうが高く、変動金利のほうが低く設定されています。
金利の安い変動金利のほうが有利に思えますが、将来金利が上昇した場合は返済額が膨らむおそれもある点に注意が必要です。また、固定金利であれば、返済計画を立てた時点で総額が決定するため、将来設計をしやすい面もあります。
変動金利の特徴
変動金利は、名称通り借入期間中に金利が変動する住宅ローンです。住宅ローンの変動金利は、一般的に固定金利よりも安く設定されています。安く設定されている理由は、将来の金利上昇を金融機関があらかじめ盛り込んでおく必要がないためです。
変動金利は「短期プライムレート」と呼ばれる、1年以内の融資に適用される最優遇(プラム)金利を基準に変動します。短期プライムレートは日銀の定める政策金利に連動するため、住宅ローンの変動金利は、事実上政策金利に左右されるといえるでしょう。
短期融資の金利が反映されているため、借入時にはもっとも優遇されている一方、金利が上昇すると固定金利よりも金利の総額が多くなる場合もあります。
固定金利との違い
固定金利は、借入時の金利が完済まで原則変動しません。経済情勢の変化に関係なく金利が変わらない点が大きなメリットです。毎月の返済額が完済まで変わらないため、安定した返済計画を見通せます。
ただし、「期間選択型」という金利が固定される期間が限定されたタイプもあるので注意しましょう。期間選択型は、金融機関にもよりますが、金利の固定期間が1〜30年程度の幅で選べるようになっています。固定期間が短いほど金利は安くなる傾向があるため、繰り上げ返済の可能性などを加味して選択しましょう。
いずれにせよ、変動金利と固定金利の主な違いは、変動金利のほうが借入時の金利が低い点と将来の金利上昇リスクの有無です。
変動金利の5年ルールと125%ルール
変動金利の住宅ローンを利用した場合、金利上昇による毎月の返済額の変動は気になるポイントです。金利の上昇幅によっては、支払えなくなってしまうことを心配する方も少なくありません。
しかし、住宅ローンには債務者保護の観点で2つの特殊なルールが設けられています。住宅ローンの金利見直しタイミングも含めて、どのように債務者が守られるのかをみていきましょう。
注意すべき5年ルール
変動金利が見直されるタイミングは意外に短く、基本的に半年ごとです。しかし、実は金利が変動しても、すぐに毎月の返済額は変わりません。万が一、大幅に金利が上昇しても家計に大きな影響を与えないように、5年間は返済額を変更しないというルールが定められているためです。
この「5年ルール」によって、返済額の変更までに収支を見直すといった対策を立てる時間がとれます。ただし、5年ルールが適用されていても、実際の金利は上昇している点に注意が必要です。金利が上昇した場合、毎月の返済額のうち元本割合が少なくなってしまいます。
たとえば、毎月6万円の返済のうち5万円が元金だった場合、5年間で返済する元金は300万円(5万円×12ヶ月×5年)です。しかし、金利の上昇で元金割合が4万円に減ってしまうと、わずか240万円(4万円×12ヶ月×5年)しか元金は減りません。
債務者を守る125%ルール
変動金利の基準となっている短期プライムレートは、日銀の金融政策によっては大幅に変動するおそれがあります。そこで、債務者を守るために「125%ルール」が設けられています。基準レートがどれだけ変動しても、返済額が前の期間の125%以内になるよう適用金利が調整される制度です。
金利の上昇は変動金利の住宅ローンを利用する際の大きなリスクですが、125%ルールによって影響が限定されます。一方で、金利が下落した場合には適用されないため、債務者はこのルールで損をしません。
ただし、あくまでも前の期間の125%までであり、借入時の金利に対してではない点に注意しましょう。金利が上昇トレンドになった場合は、125%の範囲内ではあるものの支払うべき金利は上昇し続けます。
変動金利のメリットとデメリット
変動金利のメリットとデメリットについて、詳しくみていきましょう。とくにデメリットについては、事前にしっかりと理解しておくことが重要です。また、自己資金や収支といった家計や将来設計も含めて慎重に検討しましょう。
変動金利のメリット
変動金利の最大のメリットは、ほかの金利タイプと比較して借入時の金利が低いことです。住宅ローンは借入金額が大きいため、わずかな金利差が最終的な支払い金額に大きく影響します。金利のトレンドが長く続く見込みであれば、固定金利よりも圧倒的に有利な金利方式です。
また、5年ルールや125%ルールといった、債務者を保護する制度が設けられている点も変動金利を選ぶメリットの一つです。急な金利上昇があっても家計への影響が限定されるため、金利変動のリスクがすべて反映されるわけではありません。
変動金利をおすすめするのは、貯蓄など家計に比較的余裕があり、金利上昇に対応できる方です。また、自己資金が多く、借入金額を抑えて返済期間を短く設定できる方も金利変動のリスクを最小限にできます。
変動金利のデメリット
変動金利のデメリットは、金利が上昇した場合に、固定金利よりも金利が高くなるおそれがあることです。毎月の返済額が家計を圧迫していると、金利上昇によって支払えなくなる事態にも陥りかねません。
すぐに支払えなくなるほどの急激な金利の変動がなくても、一度金利が上昇トレンドになると、しばらくは継続して上昇する可能性があります。借入残高や期間が多く残っている場合は、当初の計画よりも返済額が大幅に増加してしまうかもしれません。また、5年ルールと125%ルールによって毎月の返済額への影響が限定的でも、利息と元本の未払い分が残り続けるため、どこかで精算する必要があります。
【まとめ】住宅ローンに変動金利を選ぶ場合は仕組みを理解することが大切
住宅ローンを利用する人の半数以上が利用する変動金利。固定金利に比べて金利が低いので、毎月の返済額や借入時のシミュレーション上の返済総額を抑えられる点が大きな魅力です。しかし、万が一金利が上昇した場合は、毎月の返済額が家計を圧迫してしまうおそれもあるので注意しましょう。
急激な金利上昇から債務者を保護する5年ルールや125%ルールもありますが、リスクがゼロになるわけではありません。変動金利の仕組み、固定金利との違いを十分に理解して、自分の将来設計にあったローンを選びましょう。