不動産投資を行う上で、購入の目安となるのが利回りです。利回りにはいくつかの計算方法があり、考え方や計算方法を理解していないと、あとで自分が想定していたよりも収益が低いといったマイナス要因に繋がることもあります。
それでは、利回りにはどのような種類があり、どのような計算をおこなえばいいのでしょうか。
そこでこの記事では、各種利回りの種類や相場、利回りの算出方法などについて詳しく解説します。
もくじ
不動産投資で知っておくべき利回りの種類と計算方法
利回りの計算方法にはいくつかの種類がありますが、一般的には2つの方法が使われています。単純に計算できるものから、複数の情報が必要な計算方法まであるため、しっかりと理解して使い分けなければなりません。
ここでは4種類の計算方法や使いどころについて詳しく解説していきます。
表面利回り
一番オーソドックスで、利用されている計算方法が表面利回りです。1年間、家賃が満室の収入から購入金額を割り戻して計算します。
例えば、以下のA物件の表面利回りを算出してみましょう。
「年間家賃収入÷購入金額×100%=表面利回り」となるので、100万円÷2,000万円×100%=5%となり、表面利回りは5%となります。
売り物件が出ている場合の利回りは、表面利回りで表示されていることがほとんどです。
年間の満室家賃収入が分かるとすぐに算出できるため、他の物件と比較をするときに利用しやすい計算式となります。
実質利回り
実質利回りは、1年間の家賃収入から年間の支出を差し引いて、売買金額と売却時にかかる諸経費も含めて割り戻して算出します。表面利回りが満室だった場合と違い、実質の家賃収入から算出するので、より現実的な計算方法です。
先ほど、表面利回りを出したA物件で計算してみましょう。
「(年間満室−年間経費)÷(購入金額+諸経費)×100%=実質利回り」となるので、(100万円−20万円)÷(2,000万円+60万円)×100%=3.8%となります。
空室時の家賃や諸経費も計算に入れるため、利回りは表面利回りよりも下がりますが、より具体的な利回りが算出可能です。
不動産投資の利回りを考える上で知っておきたい情報
不動産の利回りを考えるとき、さまざまな物件の利回りを比較して、その利回りが妥当かどうかを判断しなければなりません。
その他にもさまざまな情報を理解すると、適切な利回り物件を売却、購入することができ、さらに黒字経営を行うためのポイントも見えてくるものです。ここからは、利回りを考える際に押さえておきたい情報について解説します。
日本や世界の経済状況
不動産の相場は、日本や世界の経済状況と密接にリンクするものです。経済状況が悪ければ、不動産市況も悪くなる傾向にあります。
1990年に起こったバブル崩壊もその一例です。1980年代、景気は絶好調で、経済の好調にリンクして不動産価格も高騰していました。しかし、1990年に入った途端のバブル崩壊を覚えている方も多いと思います。そのとき不動産の価格は急落することとなり、多くの不動産投資家が損失をかぶりました。
このように、リスクを回避するためにも、経済状況を把握しておくことは非常に大切です。
不動産の相場環境を把握するには、日本や世界の経済状況を常に確認しておく必要があります。
一方で、賃料に関しては、世界の経済状況の影響はさほど受けておりません。バブル期のようにキャピタルゲインを狙うのではなく、地道にインカムゲインを狙ってじっくり腰を据えて運用することを心がけましょう。
日本全国における利回りの相場
不動産投資は地域によって、その利回りは異なります。例えば、東京や大阪といった大都市圏では人口が多いため入居率は高くなりますが、購入金額も高くなるため、利回りは全国平均よりも低めです。
一方で地方の不動産投資物件を見てみると、大都市圏に比べ利回りは高めになっていますが、入居者が安定して入る可能性が大都市に比べて低いため、一概にどちらがお得とは言えません。
不動案投資はどの地域でも物件を購入すればできますが、確実な運用をするためには、目先の利回りで地方都市の物件を狙うよりは、利回りはそこそこでも大都市圏を狙うほうが得策と言えるでしょう。
購入するマンションの詳細
気になる物件が見つかったときには、必ず該当マンションの詳細を確認しておきましょう。利回りだけでは判断できない問題点や改善点が見えてくることがあります。利回りはとても大切な指標ですが、利回りだけに捉われてしまってはリスクを避けられません。
また、問題点を見つけ出して改善することができれば、より高い利回りを期待できるので、購入予定のマンションについては詳細まで確認するようにしましょう。
不動産投資で必要な経費
利回りの計算式でも解説しましたが、必要経費は必ず確認しておきましょう。経費がどの程度かかるのかを把握せずに不動産物件を購入してしまうと、予想外の経費が必要となり期待していた利回りを得られないことも考えられます。
また年間でどの程度の経費が必要になるのかを事前に確認しておくことで、管理上のリスクを避けられるものです。経費の流れを細かく見て、余計な出費を抑えると、利回りをさらに高くできます。
建物の構造による影響
建物の構造の種類は、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の3つです。丈夫な構造であるほど、取得価格が高くなります。
利回り(表面)の計算方法は、「年間家賃収入÷購入金額×100%」です。建設価格や売買価格が高くなれば、利回りも低くなります。
ただし取得価格が高い建物の耐久年数は、長くなるものです。鉄骨造・鉄筋コンクリート造であれば47年ですが、木造は22年となります。
耐久年数が長ければ、その分、減価償却費として経費計上が可能です。「利回りの高さ」だけで判断せず、不動産投資を続ける年数や建物の構造も考えて判断しましょう。
不動産投資における利回りの基準
不動産投資において、利回りはとても大切な指標になると述べてきました。では、利回りの基準はどの程度を考えておけば良いのでしょうか。
相場環境も大きく影響するので一概には言えませんが、一般的には東京都心部においての利回りの基準は新築で3%前後、中古で4%前後と言われております。近畿圏や名古屋、福岡などの主要都市では新築では4%前後、中古で5%前後が相場です。
理想的となる利回りの目安
理想的な利回りの目安は、一般的な利回りよりも1%~2%程度高くなります。公開されている利回りは、満室時のものです。長期的な運用を行う上では、空室リスクや支出増加なども考えなければなりません。
例えば、表面利回りで計算した「年間満室家賃収入 100万円・購入金額 2,000万円」を取り上げてみましょう。満室だと「100万円÷2,000万円×100%=5%」です。しかし半分しか入居者が入らないと、「50万円÷2,000万円×100%=2.5%」となります。利回りを見る際には、収入よりも支出が上回る可能性を考慮して判断しましょう。
不動産投資を成功させるために必要なものとは?
利回りを計算できることは不動産投資の成功に大きくかかわってくるので、自分でいつでも計算できるようになっておくことが重要です。
しかし不動産投資は利回りを算出できれば成功できるわけではありません。その後の経費含め、その他さまざまな計算や手続きを行う必要もあります。
そこで重要になってくるのが「不動産投資に詳しい税理士もしくは公認会計士」です。不動産投資を成功へ導くポイントのひとつにパートナー選びがあり、優秀なパートナーを見つけることで様々な局面で大きな力になってくれます。
特に、不動産関係に詳しい税理士や公認会計士の協力を得ることは大きな助けになるでしょう。税務関係など、一般の人には分かりにくい部分に対するアドバイスや会計部分の説明など、多方面で相談できます。
自身で理解することも大切ですが、知識が足りない部分はパートナーに補ってもらうようにしましょう。
不動産投資の利回りで黒字を出すために必要なこと
不動産投資はいかに黒字を出すのかが大切なポイントです。いくら利回りが高い物件でも、家賃収入が入らず空室が続いてしまうと赤字になります。
空室を減らして収入を上げていくこと、支出を抑えること、予期せぬ修繕に対応できる環境を整えておくことが重要なポイントです。そこでここでは、安定して黒字を出し続けるために必要なことを紹介します。
立地条件をよく確認する
気になる不動産物件を見つけたなら、周りの建物や環境などを確認するようにしましょう。
周辺の利便施設や駅、その駅は何線が使えるのかを把握することは、物件の人気や入居率にも大きく影響します。そのため、物件の周辺環境を確認することは黒字経営を考える上で非常に重要なポイントです。
また周辺環境、立地条件をしっかりと把握しておくことで、気になる物件がいくつかあった場合に、どの物件に投資をするのかの最終的な判断軸の一つにもなります。
空室を考慮して物件を選ぶ
一棟物件を考えていれば、空室を考慮して物件を選びましょう。中古物件の場合、自然災害で破損したり、資産価値が下がったりしやすくなります。空室リスクが高くなるため、慎重に利回りを判断しなければなりません。
「空室になりやすい原因」が分かれば、良い物件を探せます。気になる物件があったら、不動産投資会社に「どの程度空室が続いているのか」や「空室になる具体的な原因」を聞きましょう。空室の実態が分かれば、対策も講じやすくなります。
表面利回りではなく実質利回りで判断する
利回りで黒字を出すためには、「実質利回り」で判断しましょう。表面利回りは、家賃収入のみが反映されているものです。不動産投資を行う上では、支出も多くなります。具体的には、税金や火災・地震保険料、ローン返済額、管理費・修繕積立費などが必要です。
支出には一時的なものもあれば、継続的なものもあります。継続的な支出が多いことも考えれば、実質利回りで判断するほうが賢明です。毎月・毎年いくらの支出になるのかを明確にしておきましょう。
利回りが高い物件は問題がないか確認する
利回りの高い物件は問題がないか、確認しましょう。10%を超える高い利回りの物件では、次のような問題を抱えている可能性もあります。
- 立地条件が悪い
- 耐震性に問題がある
- 築年数が長い
- 事故物件 など
このような物件は売却金額が低くなり、計算上利回りは高くなるものです。収入を増やし支出を減らせば、安定した黒字経営ができます。安心して不動産投資を行うためにも、不動産投資会社や口コミから徹底して情報収集を行いましょう。
不動産投資の利回りで借金返済の目途を立てる
多くの人は不動産投資を借金して行うので、家賃収入を得ることと借金を返済することを同時に行わなければなりません。
そのため、なるべく利回りが高く、安定している物件を選択して、借金返済の目途を立てましょう。利回りが高くても、入居が決まらなければ期待できる収入を得られません。
不動産投資は長期的な資産運用なので、借金返済も長期的になることを頭に入れておく必要があります。そのため、安定した利回りを継続するのかを第一に考えましょう。目先の利益にとらわれず、長期的な視野を持って考えることがポイントです。
日本や海外の景気について情報収集する
不動産相場は日本や海外の経済状態に密接にリンクしているため、しっかりと把握しておきましょう。
景気に関する動向を得るには、新聞やインターネットだけでなく、不動産専門誌の購読などの方法もあります。普段からニュースなどを意識して見ることで、自然と経済の情報を得ようとする姿勢が身につくものです。経済動向を常に把握できるように、景気に関する情報は意識して取り入れていきましょう。
不動産投資の利回りは新築物件と中古物件のどちらを選択するかも重要
不動産投資をする際、新築物件と中古物件のどちらを選ぶのかで迷う人もいるかもしれません。
一般的に新築物件は入居率が高く、修繕費が少ないといったメリットがありますが、購入金額が少し高いこともあり、利回りは中古物件に比べると低い傾向にあります。
一方で中古物件の場合、設備の交換の費用が発生することもありますが、新築物件に比べると、利回りは高く設定されるものです。
これらの点から、どちらを選ぶのかをしっかりと判断しなければいけません。新築、中古ともそれぞれメリットとデメリットがあるため、自身に合った物件を選びましょう。
利回りが高くても避けたほうがよい物件の特徴は?
利回りが高い物件は魅力的に見えます。ただし中には、避けたほうがよい物件もあるものです。
借地権や耐震基準など、簡単に目にできない情報も集めることで、避けるべき物件が分かります。「避けたほうがよい基準」があらかじめ分かれば、長期的な資産運用も可能です。そこで次からは、利回りが高くても避けたほうが良い物件の特徴を解説します。
管理費や修繕積立金が高額な物件
管理費や修繕積立金が高額な物件は避けましょう。これらが相場よりも高くなると、売却価格が下がりやすくなるものです。表面利回りの計算式である「年間家賃収入÷購入金額×100%」の「購入金額」部分が低くなれば、算出される表面利回りも高くなります。
逆に低い場合も要注意です。管理費や修繕積立金は長い目で見たときに、値上がりすることもあります。キャッシュフローが悪化すれば、早い段階で不動産を手放さざるをえません。利回りが高い物件が気になったら、管理費・修繕積立金がいくらかを確認しましょう。
管理が行き届いていない物件
高利回りでも、管理が行き届いていなければ避けたほうが無難です。管理状態が悪く、外観・内観の清掃が行き届いていない物件は、のちのち多額の修繕費がかかる可能性があります。そうなると、オーナーへの負担増も避けられません。
管理状態の悪さは、空室リスクに直結するものです。家賃も低くなれば、数十年と家賃収入を得た不動産投資が行いづらくなります。
管理の実態は、実際に足を運ばないと分かりません。遠い物件でも時間を取って出向くことをおすすめします。
借地権物件
借地権物件も避けましょう。借地権とは、土地の所有者から土地を借りる権利です。借地権物件で不動産投資を行うと、「建物は自分のもの」「土地は他人のもの」となるため、次のようなリスクが生じます。
- 土地所有者に毎月土地代を支払う
- 土地賃貸借契約の更新で更新料がかかる
- 売却に手間がかかる
- ローンを組めないため、低価格での売却となる
借地権の有無は、のちのキャッシュフローに大きく響くものです。不動産投資会社の担当者に確認しましょう。
旧耐震基準の物件
1981年5月31日以前の旧耐震基準の物件も、要注意です。新耐震基準の物件は、震度6~7程度の地震でも倒壊しない構造になっています。ただし旧耐震基準の物件は、震度5程度までであり、安全とは言えません。
旧耐震基準だと、ローンを組みづらかったり空室率が上がったりするおそれがあります。建築年が経過している物件は、販売価格が下がっているため、公開されている利回りも高いものです。建築日を確認して最終的に判断しましょう。
立地条件が悪い物件
立地条件の悪い物件も注意しましょう。駅から遠かったり、住環境が悪かったりする物件だと、入居者が集まりづらくなります。
表面利回りが高くても、空室リスクがあれば、継続的な家賃収入は見込めません。結果として、早い段階での売却もあり得ます。
その土地に精通していて成功できる戦略があれば、不動産投資は可能です。ただし税金や保険料などの支出が多くなる状況も予測して、高利回りであっても立地条件の悪い物件は避けましょう。
不動産投資の利回り周りの知識は業者に頼ろう!
不動産投資についてさまざまな知識やノウハウを持っているのが不動産業者ですので、不動産業者に頼ることで、的確なアドバイスをしてもらえる可能性が高くなります。
また優良な物件情報をいち早くキャッチするのも不動産会社なので、優秀な不動産業者がパートナーになれば不動産投資の成功に大きく近づいたと言っても過言ではありません。
不動産投資は信頼できる業者を見つけられるかが鍵になる!
不動産投資は、長期間にわたる投資となるため様々なことを考えなければなりません。そのため経験が大切になることも多いので、不動産投資を一度でも行ったことがない人とそうでない人には大きな差があります。
そしてその差を埋めるは経験であり、信頼できるパートナーです。小規模でも一歩踏み出して経験することが将来の成功につながるとともに、信頼できるパートナーが最初の一歩を成功に導いてくれます。
まとめ
不動産投資においては利回りが大きな指標となるため、一通りの計算方法を身につけておくことが成功への近道になります。
しかし利回りばかりに捉われて他の要素を軽んじてしまうと、結果的に赤字になり、生活を苦しめかねません。
赤字にならないためには不動産業者や税理士といった優秀なパートナーを味方につけて、不動産投資に取り組むことが重要になってきます。不動産投資は経験が大いに役立つ面もあるため、最初は小さな物件や安定している物件から始めてみてはいかがでしょうか。