不動産投資を始めると家賃収入が入るようになります。投資を行う前にはなかった収入で、とても嬉しくなる方も多いでしょう。投資を行って一定の家賃収入を得ていく場合は「確定申告」が必要になることがあります。しかし、特に会社勤めである方だと、確定申告の方法が分からない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、不動産投資の確定申告はどのように行えば良いのかを解説していきます。節税の方法や気を付けるポイントもご紹介しますので、ぜひチェックしてみましょう。
もくじ
不動産投資における確定申告のやり方
不動産投資を行うのであれば、確定申告は避けることのできない要素です。特に会社勤めの方は、ほとんどの税金の納付を会社が代行してくれるので、確定申告と言われてもピンと来ないかもしれません。しかし、確定申告を正しく理解して行えば、自分に有利に働かせることも可能になります。まずは、確定申告の大まかな流れを把握しておきましょう。
確定申告に必要な書類
確定申告の際には、さまざまな書類が必要です。確定申告時に慌てないよう、事前に把握をして用意をすることが重要です。
確定申告は、「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。どちらで申告するかによっても必要書類が変わりますので注意しましょう。以下に確定申告の際に必要な書類を挙げますので、確実に用意するようにしてください。
【白色申告の場合】
- 確定申告書B
- 収支内訳表
- 各種控除の証明書類(保険料、医療費など)
収支内訳表と医療費控除明細書などの書類は、国税庁のサイトから簡単にダウンロードできますので、税務署にもらいにいくよりも手軽で便利です。
【青色申告の場合】
- 不動産売買契約書
- 譲渡対価証明書
- 家賃送金明細書
- 賃貸契約書
- 売渡清算書
- 税金の納付書
- 保険料証明書
- ローン支払い明細書
- 修繕積立金・管理費明細書
会社員で給与所得がある方は、源泉徴収票も必要となります。
確定申告を行う時期
確定申告を行う時期は決まっています。基本的には、2月16日から3月15日の1ヵ月間が申告書の提出期間です。申告書は、前年の1月1日から12月31日までに発生した収入や支出をまとめて提出します。税務署は、受理した申告書によって税金額を決定したり、還付の手続きを行ったりします。
3月にもなると、税務署は相談者でいっぱいになります。相談に時間を要することも考えられるので、なるべく2月下旬頃までに申告を済ませてしまうのがおすすめです。また、今では申告書を郵送で送付したり、「e-tax」を利用してネット上で申告ができたりもします。自分の行いやすい方法で申告を行いましょう。
確定申告をしっかりと行わないと、後々ペナルティとして「追加徴税」されてしまう可能性もあります。不動産投資を行う上で、確定申告はなくてならないものと考えておきましょう。
申告書の記入方法
確定申告を行う際は申告書への記入を行う必要があります。申告書は、AとBの2種類がありますが、不動産投資で所得がある場合はBに記入を行います。
Bの書類は、第1表と第2表に分かれています。第1表は、「収入金額」、「所得金額」、「所得から差し引かれる金額(所得控除額)」、「税金の計算(納税額)」を記入していきます。給与所得については会社の源泉徴収票の内容を転記していきましょう。配偶者控除や各種保険の控除なども忘れずに記入するようにします。
次に、Bの第2表への記入を行います。こちらも源泉徴収票の内容を転記していってください。そして、最後に「収支内訳書」に記入をしていきます。「収入金額」の欄には、前年1月1日から12月31までに発生した家賃や礼金などの収入を記入しましょう。ちなみに、敷金は返金するため記入はしません。
「経費」の欄には、地代家賃や原価償却費など、期間中に発生した経費を記入していきましょう。国税庁のインターネットサイトに説明が載っていますので、記入の前に一度確認しておくことをおすすめします。
確定申告の手順
確定申告をする際の手順は、初めての方だと複雑で分かりにくいものと考えてしまうかもしれません。しかし、流れをしっかりと把握することで頭の中を整理することができ、スムーズな確定申告が可能となります。以下に確定申告の手順を記載しますので、事前に確認を行って計画を立てましょう。
①確定申告に必要となる書類の準備
まずは、確定申告を行う際に必要な書類を全て取り揃えます。一つでも欠けてしまうと申告ができないため非常に重要です。先に解説した書類を全て揃えます。普段から、確定申告に必要な書類は分けて保管しておくようにしましょう。
②申告書の準備
申告書を準備する際は、税務署にもらいに行くか国税庁のインターネットサイトよりダウンロードすることで取得できます。
③申告書の作成
先に解説を行ったように、不動産投資の場合は申請書Bに記載を行います。第1表と第2表の両方に記載を行いましょう。
④提出書類の確認作業
一通り申告書作成が完了したら確認作業を行いましょう。不備があった場合、修正申告などを行う必要があり、後々手間となります。
⑤確定申告期間中に申告書の提出
2月16日から3月15日の間に提出を行いましょう。提出が遅れた場合、「期限後申告」とされ、無申告加算税、延滞税などが加算されることもあるので注意が必要です。
不動産投資の確定申告における節税方法
会社員の方が不動産投資を行えば節税効果を得ることが可能です。しかし、ただ単に投資を行えば節税できるわけではなく、しっかりと条件を満たすことが重要です。基本的な条件としては「経費の計上」と「法人化」の2点がポイントとなります。しっかりと要点を把握して確実な節税を行いましょう。
経費を正しく計上する
節税を行うには、経費を正しく、そしてもらさず計上することが重要です。節税は、給与所得と不動産所得を合算する「損益通算」の仕組みを利用して行います。不動産所得が赤字であれば、その分給与所得が減ることになります。給与所得が減った分、所得税や住民税が低くなるという仕組みです。
不動産所得を赤字とするためには、経費を正しく計上し、費用を増やす必要があります。不動産投資においては、さまざまな経費を費用として計上することが可能です。費用として計上できる主な経費は以下の通りです。
- 管理費
- 修繕費
- 租税公課
- 減価償却費
- 借入利子
- 管理代行手数料
- 保険料(火災や地震)
- その他(通信費や交通費など)
費用として計上できる経費をしっかりと把握しておき、もらさず計上することが節税につながります。
不動産投資で法人化を行う
法人化を行うことで、より一層の節税効果を見込めます。法人は、定められている税率や計上できる経費などが個人と異なります。会社員の方も、不動産投資においては法人化を検討するのがおすすめです。
個人の場合、税金は累進課税であるため、所得が増えるのに比例して税額も多くなっていきます。法人の場合、課税所得が増えたとしても税率は基本的に変わりません。ある程度所得が多くなってきた場合、法人化した方が税金をお得にできる可能性があるのです。
さらに家族を役員とし、家賃収入から報酬を支払えば、1人あたりの課税所得が低くなります。その結果、個人の所得税が下がり、トータルでの税金額を抑えることが可能です。
別事業で赤字が出た場合に不動産所得と合算できるので、全体的な課税所得を減らすこともできます。法人化してさまざまな工夫をすることで、個人事業主の場合よりも節税効果を上げられる可能性があるのです。
不動産投資の確定申告で利用したい青色申告
確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。白色申告は、複雑な帳簿付けをしなくても良いので簡単ではありますが、節税メリットとしては青色申告よりも劣ります。青色申告は白色申告よりも節税効果が高くなるのです。不動産投資を行うのであれば、青色申告での確定申告を検討するのがおすすめです。
青色申告のメリット・デメリット
青色申告のメリットは、白色申告よりも高い節税効果が期待できることです。青色申告を行うことで「特別控除」を受けられます。これは、最大で65万円もの控除を受けられるので、非常に節税効果が高いと言えます。
また、従業員に支払った給与を「費用」として計上できるのも大きなポイントです。白色申告の場合よりも多くの費用を計上できることになり、いかに節税効果があるか分かります。
青色申告にするデメリットとしては、白色申告よりも手間がかかってしまうことです。青色申告を行う場合は、「正規の簿記」で帳簿付けを行う必要があります。「企業会計原則」の原則の一つとして、正確な帳簿付けをすることが定められているのです。この原則に基づき、青色申告では「複式簿記」を採用することが一般的となっています。
青色申告を利用するための条件
青色申告を利用するためには定められた条件をクリアする必要があります。まず、「事業所得」、「山林所得」、「不動産所得」のいずれかの所得がないと利用することはできません。
事業所得とは、小売りやサービス、漁業や農業などによる所得を指します。山林所得は、山林を伐採してからの譲渡、立木のままで譲渡して得た所得のことです。
不動産投資に関わるのは不動産所得です。その名の通り、アパートやマンションの家賃収入などを指します。不動産投資により家賃収入などがある方は必然的に青色申告を行える条件を満たしていることとなります。
ただし、あくまでも青色申告ができる条件を満たしている、というだけです。規定に従って正しく帳簿付けを行い、申告書の提出を行わなければ、青色申告での確定申告はできませんので注意しましょう。
青色申告の申請方法
青色申告を行う場合には、所定の手続きを事前に行う必要があります。定められた期日までに「所得税の青色申告承認申請書」を管轄する税務署に届け出なければなりません。期日は基本的に青色申告を行う年の3月15日までとなっていますが、毎年1月16日以降に新規開業する場合は、開業日から2ヵ月以内となるので注意してください。
申請書には、住所や氏名などの個人情報や、青色申告を受ける時期、事業の種類や情報、使用する会計処理(複式簿記や簡易簿記)などの情報を記入する必要があります。
青色申告を受ける時期については、基本的に3月15日までの提出であれば、その年から青色申告で確定申告を行うことが可能です。期日に間に合っているにもかかわらず、「今年は無理だ」と勘違いして翌年からの適用とすると損をしてしまうので注意しましょう。
不動産投資の確定申告を行うときの注意点
不動産投資を行う場合は細心の注意を払って確定申告を行わないと、後々手間がかかったり損をしたりすることがあります。事前にしっかりと注意点を把握しておき、ミスなく正確な確定申告を行いましょう。確定申告は法律で定められている手続きです。些細な誤りによって思わぬ代償を負ってしまう可能性もあるので、気を引き締めて行いましょう。
申告期限を守る
確定申告は申告期限を守って行う必要があります。基本的に、毎年2月16日から3月15日までの1ヵ月間が申告期間です。定められた申告期限内に申告を行わなかった場合、「無申告加算税」というペナルティの税金が課される恐れがあります。
無申告加算税は、申告する必要のある所得がありながら、確定申告の期限を過ぎても申告が行われなかった場合に発生する税金です。本来申告するべき額が50万円までの場合はその額の15%、50万円を超えた分については20%もの税金を支払う必要があります。
正当な理由があって遅れた場合や、期限後の申告が定められた申告期限から1ヵ月以内であれば課されないこともあるので、申告忘れに気づいたら迅速に対処しましょう。
書類の記入ミスを防ぐ
書類の記入ミスはなくしましょう。もしミスがあった場合、余計な税金を支払う可能性があります。
確定申告書を提出したあと、申告期限内に誤りに気が付いた場合は、新しい申告書を作成して再提出できます。しかし、期限内に申告した額が実際よりも少なかった場合には「過少申告加算税」が発生します。
税額は新たに納める必要のある税金の10%ほどです。新たに支払う税金が、最初に申告した税額と50万円とのいずれか多い金額を超えた場合、超えた額の15%という設定になります。
所得隠しはすぐにばれる
所得隠しを行っても、すぐに発見されます。所得隠しはいわゆる「脱税」です。悪質と見なされ、重いペナルティを受けることになります。
所得隠しを行った場合、「重加算税」という追加の税金が課されます。事実を隠して税額を実際よりも少なく申告した場合、過少申告加算税に代えて追加納税額の35%という大きな額が加算されます。
所得隠しの事実があり、申告そのものを行わなかった場合は納税額の40%とさらに大きい額を支払う必要があります。所得隠しをしても良いことはありませんので、行わないようにしましょう。ちなみに期限内に税金を支払わないと「延滞税」が発生するので注意してください。
納税を怠ることで起きるリスク
納税を怠ることで、さまざまなリスクが発生します。プラスになることは1つもありませんので、確実な納税が求められます。納税は国民の義務であり、日本という国で生活をしている以上必須のものです。税金逃れは個人の信用問題にも発展します。
そもそも、意図的に税金を納付しない行為は「犯罪」にあたります。犯罪を犯すと、当然ですが社会的信用はなくなり、不動産投資ができなくなることもあります。
不動産投資を行う場合、多くの方が金融機関で融資を受けます。融資可能かどうかは、借り入れを行う方の社会的信用度が判断基準です。過去に脱税をした事実があると、融資を受けられない恐れがあります。
融資が受けられないと、不動産投資はおろか、今後の生活に制限がかけられた状態になってしまいます。納税を怠ることの代償は計り知れません。確定申告が面倒と感じても、頼れる人に相談を受けるなどして確実に申告を行いましょう。
所有する物件を売却した場合の確定申告
自分が所有する物件を売却した場合は、特殊な申告となります。税金は、給与所得とは区別が行われる「分離課税」となります。
不動産を売却して得られた収入は、「譲渡所得」として計算を行います。譲渡所得は、「譲渡収入額-(取得費用+譲渡費用)」という計算方法です。不動産を所有していた期間によって税率が変わります。
所有した期間が5年以下の場合は39.63%(所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%)、5年超であれば20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)となります。もし譲渡所得が赤字であった場合は、給与所得との損益通算が可能です。
譲渡所得があった際、確定申告で必要な書類は以下の通りです。
- 取得時の書類
- 譲渡時の書類
- 譲渡所得の内訳書
- 売却不動産の証明書
海外に不動産を所有する場合の確定申告
海外の不動産を所有している場合であっても、基本的に確定申告の方法は同じです。しかし、不動産がある現地で納税をしている場合は「外国税額控除」を申告しなくてはいけません。
現地で納税を行って、さらに日本でも納税を行った場合は二重課税となってしまいます。それでは非常に損をしてしまうので、外国税額控除という控除の設定がされています。これは既に現地で納税済みした分を課税額から控除するという仕組みです。
ただし、控除額には限度があります。限度額の計算式は以下の通りです。
(当該年度の国外所得の総額÷当該年度の所得総額)×当該年度の所得税額
ただし、外国税額控除を使えるのは、日本と「租税条約」を結んだ国のみとなっているので注意してください。現在ではほとんどの国と結んでいますが、気になる方は国税庁のホームページでチェックを行いましょう。
不動産投資の確定申告で還付はあるか
不動産投資による所得は会社員の給与所得と合算できる損益通算を適用できるため、還付が発生することがあります。
損益通算は、不動産投資において節税を行うには非常に重要な意味をなしています。給与所得と不動産投資で得た収入を合算できるので、不動産投資を赤字とすれば最終的な課税所得は減ることになります。
損益通算することによって、会社員の給与所得で発生した所得税を普通に納めていても、不動産投資で赤字になれば、納め過ぎた税金が「還付」されることになります。節税目的で不動産投資を行う方が多い理由は、損益通算で還付が受けられるという仕組みにあるのです。
まとめ
不動産投資で確定申告を行う際、ただ普通に確定申告を行うと損をする可能性があります。法人化したり、青色申告を選択したりと、いろいろな方法を行って、よりお得になるようにすることが重要です。しかし、特に不動産投資初心者の方であると、確定申告は複雑でややこしく、悩んでしまうこともあるでしょう。
そういった、アフターサポートも行ってくれるような体制が整っている、不動産業者を選ぶようにしましょう。
よくある質問
不動産投資にかかる税金はどのようなものがありますか?
不動産投資によって得た利益は以下のような計算式で求めることが出来ます。 所得税額=(不動産投資における総収入金額-必要経費)×所得税率-控除額となります。 必要経費が大きければ大きいほど、節税につなげることが出来るといえます。
必要経費の種類はどのようなものがありますか?
必要経費について対象となるものは以下となります。
- 租税公課
- 修繕費
- 減価償却費
- 損害保険料
- 管理費
- 交通費
- 新聞・図書などにかかった費用
確定申告をすることにより受けられる控除はどのようなものがありますか?
控除できる代表的な内容は大きく分けて3つになります。
- 所得控除
- 税額控除
- その他控除(青色申告特別控除、給与所得控除)が対象となります。
確定申告書の提出方法はどのようなものがありますか?
一般的な提出方法として3種類となります。
- 直接税務署に持参
- 税務署へ郵送
- e-Tax(イータックス)を利用の3種類が対象になります。