「老後資金2,000万円問題」が取りざたされるなか、将来に備えて本業とは別に副収入を得たいと考えている方が増えています。副収入があれば、会社を退職したあとも継続的かつ安定的な収入を得られるためでしょう。なかでも、最近人気が高まっている、不動産投資やアパート経営に興味がある方は多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、アパート経営の大きなポイントである「利回り」に関する知識をご紹介します。この記事を読めば、アパート経営を始めるための第一歩を踏み出せるでしょう。
もくじ
アパート経営には必須の「表面利回り」と「実質利回り」
利回りはアパート経営に欠かせない指標ですが、いくつかの種類があります。表面利回りとは、投資効率を示した指標のことです。 一般的にいわれる「利回り」の多くが表面利回りを意味します。 「表面利回り20%」と表現されている物件は、1年間で投資金額の20%を回収できるという意味です。
一方、実質利回りとは、表面利回りからランニングコストなどの諸経費を差し引いた「実質的な」投資効率を指します。アパート経営をするには、2つの利回りを徹底的に理解し、使いこなせるようになる必要があるでしょう。
アパート経営に重要な「表面利回り」
「表面利回り」は、アパート経営に関わる重要な要素のひとつです。適正な表面利回りの物件を選び、適切に運用していくことで利益を着実に積み上げられます。しかし、計算が複雑で、とっつきにくいと考えている方もいるかもしれません。
ここでは、表面利回りの適正な数値や、高すぎる場合と低すぎる場合に生じるリスク、具体的な計算方法についてご紹介します。
アパート経営における表面利回りの重要性
表面利回りは不動産経営に欠かせない指標のひとつです。不動産ポータルサイトなどで調べると、表面利回り10%の物件もあれば、30%、40%という物件もあります。表面利回りの数値は、物件の立地やスペックなどによって変わるものです。都心部であれば、築20年までは5.5%程度、それ以上であれば7%~8%程度が適正といわれています。
表面利回りが通常のケースに比べて高すぎる物件は、修繕費が膨大にかかるなど、利回り以上のリスクがある可能性が考えられるでしょう。反対に、表面利回りが低すぎる物件は、流動性が高く、常に入居者を探さないとキャッシュフローがマイナスになる、といった恐れもあります。
表面利回りの計算方法
表面利回りの計算は自分でも行えます。計算式は以下のとおりです。
表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件購入価格×100
年間の家賃収入は、不動産会社の広告などに掲載されている家賃をもとに算出します。投資額は、物件の購入価格をそのまま当てはめましょう。
表面利回りは、不動産会社の広告など、さまざまな場面で使用されています。運用コストや税金などを考慮していないため、現実とは異なる数字になることもありますが、ひとつの目安として上手に活用することが大切です。
表面利回りの使い方
表面利回りについて、物件購入価格を1,000万円、1年間の家賃収入が80万円としてシミュレーションしてみましょう。表面利回りは以下のようになります。
表面利回り(%)=80万円÷1,000万円×100=8%
物件同士をおおまかに比較検討するときには、表面利回りが役立ちます。物件情報をリサーチする際、すべての物件について実質利回りを計算するのは現実的ではありません。簡単に算出できる表面利回りを活用することで、物件の選別がしやすくなります。ある程度物件を絞った段階で、実質利回りを計算するのがおすすめです。
アパート経営のシミュレーションでは「実質利回り」を重視
アパート経営には、必ずコストがかかります。そのため、物件の表面利回りのみを鵜呑みにして投資対象を選ぶのは危険です。物件を購入する段階では「実質利回り」を重視しましょう。ここでは、実質利回りの重要性や具体的な使用方法、シミュレーション例をご紹介します。
アパート経営において実質利回りが重要な理由
実質利回りは、アパート経営において重要視するべき指標のひとつです。しかし、表面利回りと比べてやや計算や考え方が複雑になるため、敬遠されがちな指標ともいえるでしょう。表面利回りと同様、物件のスペックなどによっても変化しますが、実質利回りの適正数値は都心部であれば3%~3.5%程度といわれています。
この基準と比べて実質利回りが高すぎる物件は、稼働率が低い、リフォームが必要などのリスクが考えられます。一方、実質利回りが低すぎる物件は、空室リスクが高い、物件の光熱費がオーナー負担などのケースが考えられます。
実質利回りの計算方法
実質利回りは、物件情報に記載されていないことも多く、自分で計算する必要があります。計算式は以下のとおりです。
実質利回り(%)=(年間家賃収入-諸経費)÷(物件購入価格+購入時の経費)×100
家賃収入は、不動産広告などに掲載されている数字をもとに考えましょう。物件購入価格は、該当物件を購入する際に必要な費用です。諸経費には、リフォーム費用や広告費、固定資産税、都市計画税などさまざまなものが含まれます。購入時の経費は登録免許税などです。
実質利回りの使い方
物件購入価格を1,000万円、購入経費が60万円、1年間の家賃収入が80万円で、経費が10万円としてシミュレーションしてみましょう。実質利回りは以下のようになります。
実質利回り(%)=(80万円-10万円)÷(1,000万円+60万円)×100≒6.6%
先ほど算出した表面利回りと比較すると、実質利回りは数値が低くなる傾向にあります。このように、実質利回りはコストを計算したうえで投資効率を計算するため、実際のケースにより近くなるでしょう。物件を絞り込む際は表面利回り、購入物件を決める際には実質利回りを重視すると覚えておきましょう。
満室を想定した「想定利回り」
物件情報や不動産広告に掲載されている利回りのほとんどが「表面利回り」です。しかし、不動産ポータルサイトなどに掲載されている利回りには、「想定利回り」が使用されているケースがある点も理解しておかなければなりません。想定利回りとは、利回りを計算する際に満室を想定して算出されるものです。以下のように計算します。
想定利回り(%)=年間家賃収入÷物件購入価格×100
計算式は表面利回りと同じですが、満室を想定している分、最大化された家賃収入で計算するため、利回りも高くなります。しかし、アパート経営において常に満室を維持するのは簡単なことではありません。空室が出るケースも考えられるため、想定利回りが高いからといって、安易に飛びつかないことが大切です。
新築・中古アパート経営で異なるキャッシュフロー
アパート経営において、キャッシュフローは重要です。キャッシュフローがプラスであれば、生活資金をアパート経営に回す必要がなくなるため、より安定した投資ができるでしょう。また、プラスとなったキャッシュをプールしておけば、空室時のローン返済などに活用できます。キャッシュフローは、以下のように計算しましょう。
1か月のキャッシュフロー=収入(家賃など)-支出(ローンの返済やそのほかの支出)
上記の式に数字を当てはめてみると、新築アパートと比べて中古アパートほうがキャッシュフローをプラスにしやすいことがわかります。新築アパートは物件の価格が高く、ローンの返済額も高くなってしまうためです。
そのため、キャッシュフローをプラスにするという観点から物件を選ぶ場合は、中古アパートがおすすめです。
利回りを見るときの注意点
利回りは、不動産投資の大切な指標ですが、その数値に振り回されないことも重要です。利回りの高さだけで投資対象を選んでいると、大きなリスクを背負ってしまう可能性や、まったく利益を得られない可能性もあります。ここでは、物件情報や不動産ポータルサイトで、アパートの利回りを見るときの注意点をご紹介します。
表面利回りが高すぎる物件は注意
まず、表面利回りが高すぎる物件には注意しましょう。利回りが高いと飛びつきたくなるものですが、危険が潜んでいます。前述のとおり、高すぎる表面利回りは、想定利回りで計算している可能性があります。実際に満室を維持できるかは不透明で、空室が出た場合は利回りが想定を大きく下回ることもあるでしょう。
たまたま長く住んでいる方が多かったり、修繕費がかかる可能性があったりするなど、今後利回りへの影響が予測される要素がないか、購入前にチェックしましょう。
利回りを100%信用しないこと
利回りを100%信用しないことも大切です。大切な指標であることは事実ですが、信用し過ぎると、そのほかのデメリットを見逃してしまうかもしれません。利回りを左右する家賃収入の予測は絶対ではありません。
つまり、空室率が高くなり年間家賃収入が減少すると、想定した利回りを実現するのは難しくなります。利回りはひとつの指標として理解しつつ、経営努力で空室率をなるべく下げ、理想に近い利回りを実現するという意識をもちましょう。
実質利回りは毎年低下していくことに注意
実質利回りは、毎年徐々に低下していくことに注意しなければなりません。アパートは、年数を重ねるごとに老朽化し、その価値が減少していきます。そのため、物件の実質的な投資効率を示す実質利回りは、年を追うごとに低下していきます。
また、老朽化が進むことで必要となる経費も多くなることも、実質利回りが下がる原因のひとつです。物件を購入する際は、実質利回りを計算するのが重要ですが、その数字が年々下がっていくことも念頭に置いておきましょう。
アパート経営を始める前の下準備
アパート経営に限らず、不動産投資を行う際は、下準備を入念に行うことが大切です。事前の準備なしで挑戦しても、結果がともなわないだけでなく、苦労して貯めた資金も底を尽きてしまうかもしれません。利回りに関する知識だけでなく、アパート経営全体に対する理解も深めましょう。ここでは、アパート経営を始める前に行うべき下準備をご紹介します。
アパート経営のキャッシュフローへの理解を深める
まずは、アパート経営のキャッシュフローへの理解を深めることが大切です。お金の流れが理解できれば、「より多くのプラスを生み出せる部分はどこか」、「どのマイナスであれば削減できるか」などが明確になります。無駄を省いて利益を最大化することにつながるでしょう。
具体的な勉強方法としては、本やセミナーの活用がおすすめです。いきなりセミナーに参加するとなると、少し気が引ける方もいるかもしれません。しかし、最近では初心者向けの不動産投資セミナーも多く開かれています。
アパート経営を始める資金を準備する
アパート経営には一定の資金が必要です。ここでは、自己所有の土地にアパートを建てるケース、新たに土地を購入してアパートを建てるケースに分けて、必要な資金の目安をご紹介します。
すでに土地を所有している場合
現在所有している土地にアパートを建てる場合、自己資金はアパートの建築費用に対して最低でも10%、できれば20%程度準備しておきましょう。以前は10%準備しておけば融資を受けられましたが、近年は融資条件が厳しくなりつつあるため、20%準備しておくと安心です。
新たに土地を購入する場合
新たに土地を購入してアパートを建てる場合は、アパートと土地の購入費用に対して30%程度の自己資金を準備しておきましょう。金額が大きくなる分、自己資金も多めに用意しておくことで、融資を受けやすくなります。
物件探しの目を養う
アパート経営において、どの物件を選ぶかはとても重要です。物件選びがアパート経営の成否に直結することも珍しくありません。常に物件探しの目を養い、条件に合致する物件を見つけられるよう努力しましょう。
特に、気に入った物件を見つけた際は、現地へ足を運び、その物件を直接確認することが重要です。インターネットの情報だけではわからない、周辺環境や住みやすさ、立地などを自分の目で確かめましょう。大家仲間を作って情報交換をするのもおすすめです。
信頼できるパートナーを見つける
アパート経営には、利回りや自己資金、物件を養う目など、成功に必要な要素が数多くあります。アパート経営に取り組み始めたあとも、継続的に勉強するのが一般的です。今から始めようと考えている方は、すぐに勉強を開始しましょう。
ただ、会社員の方など勉強する時間がなかなか取れない方もいるかもしれません。その場合は、信頼できるパートナーを見つけ、自分に足りない部分を補ってもらうことも必要です。
物件探しのサポートだけでなく、購入後の維持管理代行、不明点に関する相談など、多くの方が悩むポイントを重点的にサポートしてくれる会社がお勧めです。
アパート経営は複雑な要素が絡み合って成り立っているものです。最初から自分の知識のみで成功できる方は多くありません。信頼できるパートナーを見つけ、より効率的にアパート経営を始めましょう。