不動産投資を始めるに当たっては、収益用不動産を購入するために金融機関で借入をすることがあると思います。しかし、高額な借入に抵抗があり、不動産投資ローンの借入をすべきか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
他のローンと比べた不動産投資ローンの特徴を知ることで、不動産投資を賢くスタートできる方法が理解できるでしょう。そこでこの記事では、不動産投資ローンの借入をするメリット・デメリットや流れ、金利を抑えるポイントについてご紹介します。
もくじ
不動産投資ローンで借入をする4つのメリット
不動産投資を行う投資家の多くは、金融機関で「不動産投資ローン」を組み、収益用不動産を購入します。自己資金で一括払いするのではなく、金融機関から借入をするメリットは何なのか気になっている方もいるでしょう。不動産投資ローンを利用する4つのメリットについて解説します。
少額の自己資金で始められる
収益用不動産の価格は、安くても数百万円、高ければ2,000万円を超えます。自己資金だけで購入しようとするとハードルが高くなりますが、不動産投資ローンを利用すれば少額の自己資金で始められるのがメリットです。
貯蓄を大きく切り崩すことなく始められるので、突発的な支出にも落ち着いて対応できます。
高いレバレッジ効果を得られる
不動産投資における「レバレッジ効果」とは、ローンを組んで少ない自己資金で高額な収益用不動産を購入することです。
投入する自己資金が同じでも、一括払いをするのか不動産投資ローンの頭金に充てるのかでは、購入できる物件の価格や家賃収入は大きく異なります。投資対象に対して融資が受けられる、不動産投資ならではのメリットです。
収益性が高まる
レバレッジ効果によって、投入する自己資金に対する収益性を高めやすいこともメリットです。
例として、自己資金だけで1,000万円の物件を購入する場合と、3,000万円借入して4,000万円の物件を購入する場合を比較します。
利回りがどちらも7%なら、年間家賃収入は前者が70万円、後者は280万円です。ローンの返済額が年間100万円だとしても、収益には110万円の差が生まれます。
団体信用生命保険に入れるから安心
「団体信用生命保険(団信)」は、債務者が重い障害になったり亡くなったりした場合に、不動産投資ローンの残債を一括で弁済してもらえる保険です。
一般的に、不動産投資ローンを組む際は団体信用生命保険に加入します。団体信用生命保険に加入することで、ローンの返済中に万一のことがあっても、残債がない物件を家族に残せるため安心です。
不動産投資ローンで借入をする3つのデメリット
不動産投資ローンを利用すると、レバレッジ効果や団体信用生命保険への加入といったメリットがあり、自己資金のみで不動産投資を始めるよりおすすめです。
ただし、不動産投資ローンを利用して物件を購入すると、自己資金のみで購入するよりも諸費用がかかることに注意しましょう。不動産投資で借入をする3つのデメリットを解説します。
賃借契約には利息がかかる
不動産投資ローンの最も大きなデメリットは、完済までに利息がかかることです。基本的には10年や20年以上の長期ローンを組みます。借入額・借入期間・金利によって総額は異なりますが、利息だけで数百万円かかるケースも少なくありません。
金利の低い金融機関を選んだり、借入期間を短くしたりすれば、利息総額を抑えられます。さらに、毎月の返済額を家賃収入でカバーしつつ、突発的な支出にも耐えられる返済計画を立てることが大切です。
購入物件によっては時間や手間がかかる
不動産投資ローンを利用するには、融資を受けられる金融機関との契約が必要です。購入するのが新築マンションなら不動産会社と提携する金融機関の紹介も受けられますが、中古マンションなら自身で金融機関を探すケースもあります。
自身で探す場合は、金融機関との交渉に時間や手間がかかるのはデメリットといえるでしょう。
支払いを自己負担しなければならない場合がある
不動産投資ローンの返済原資は、賃貸経営によって得られる家賃収入です。家賃収入がローンの返済額を上回っていれば、問題なく返済を続けられます。
しかし、空室の発生によりローンの返済額が家賃収入を上回れば、自己資金の投入が必要です。ワンルームマンションを1室のみ運用するなら、空室リスクは特に注意したい点といえるでしょう。
不動産投資ローンと住宅ローンを比較
不動産投資に利用できるのは不動産投資ローンで、住宅ローンは利用できません。不動産投資ローンと住宅ローンの主な違いは以下の4点です。
- 利用用途
- 融資可能額
- 金利
- 審査項目
これらの大まかな比較を以下の表にまとめました。融資可能額や金利は諸条件によって異なるため、記載する数値はあくまで目安です。
住宅ローン | 不動産投資ローン | |
---|---|---|
利用用途 | 自宅の購入 | 収益用不動産の購入 |
融資可能額 | 年収の5倍〜8倍程度 | 年収の10倍以上というケースもある |
金利 | 1%以下もあり得る | 基本的に2%~4%程度 |
審査項目 | 申込人の年齢・年収・勤務先・雇用形態・信用情報や、物件の担保価値 | 住宅ローンの審査項目に加え、物件の収益性を重視する |
住宅ローンと不動産投資ローンの大きな違いは、自宅か収益用不動産かという利用用途です。この違いにより、住宅ローンは申込人の給与収入を返済原資とし、不動産投資ローンは賃貸経営による家賃収入を返済原資とします。
不動産投資ローンは、物件の収益性が高いほど融資可能額も大きくなることが特徴です。ただし、家賃収入は給与収入よりも不安定なので、金利は住宅ローンより高く設定される傾向があります。
金融機関は審査において返済リスクを検討するため、物件の収益性は重要な観点です。給与収入が比較的多い人でも、物件の収益性が低ければ審査に通りにくいでしょう。
不動産投資ローンで借入をする6つの流れ
不動産投資ローンの借入をする流れは、金融機関によって若干異なります。基本的には、購入する物件を選んでローンの事前審査を受け、売買契約を結んでから本審査を受ける流れです。物件の売主とのやり取りも必要なので、流れをしっかりと把握しておきましょう。
1.購入する物件を選ぶ
不動産投資を始めるに当たっては、まず購入する物件を選ぶことが必要です。不動産投資ローンの審査では物件の収益性を重視しますが、物件が決まっていなければ審査はできません。物件の収益性は融資可能額にも影響するため、なるべく条件の良い物件を選択しましょう。
2.ローンの事前審査を受ける
購入する物件を選んだら、金融機関に書類を提出し、不動産投資ローンの事前審査を受けます。一般的に、物件の売買契約を結ぶにはローンの事前審査に通っていることが前提です。
金融機関には、事前審査申込書や物件の概要書・事業計画書の他、源泉徴収票・確定申告書・本人確認書類といった書類を提出します。
3.物件の売買契約をする
事前審査で承認を得られれば本審査に進みますが、本審査を受けるには物件の売買契約書が必要です。事前審査に通ったことを物件の売主に伝え、売買契約を結びます。ただし、この段階ではまだ融資は実行されていないため、物件の引き渡しは行いません。
4.金融機関と面談をする
売買契約書を金融機関に提出して面談をします。これが本審査です。基本的に、事前審査は支店で承認し、本審査は本店で承認します。
事前審査に通っていれば本審査にも通る可能性は高いと考えられますが、事前審査の承認から本審査を受けるまでの信用情報に注意しましょう。この期間内に他のローンの返済滞納などがあると、否決と判断されるケースもあります。
5.金融機関とローンの契約をする
本審査に通り、不動産投資ローンの正式な承認を得られれば、金融機関とローンの契約をします。ここで結ばれる契約は「金銭消費貸借契約」です。金銭消費貸借契約はローンの本契約で、ローン契約とも呼ばれます。ローンを契約すれば、不動産投資の開始まであと一歩です。
6.融資の実行と物件の引き渡しがある
最後のステップは融資の実行と物件の引き渡しです。金融機関は物件の引き渡し日に融資を実行します。物件の売主は融資の実行を確認し、契約者に物件を引き渡す流れです。これで晴れて物件のオーナーとなり、ローンを返済しながら賃貸経営をしていきます。
不動産投資ローンの借入ができる金融機関
不動産投資ローンの借入ができる主な金融機関は、以下の5種類です。各金融機関の比較表もご覧ください。
- 政府系の金融機関:日本政策金融公庫
- 都市銀行:三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行・りそな銀行
- 地方銀行:各都道府県に本店がある、地域経済の活性化を目的とした金融機関
- 信用金庫や信用組合:地域の利用者との相互扶助を目的とした金融機関
- ノンバンク:預金を受け付けず、融資に特化した金融機関
対応する居住地・物件所在地 | 審査基準 | 金利 | |
---|---|---|---|
日本政策金融公庫 | 日本全国 | 厳しい | 低い |
都市銀行 | 日本全国 | 厳しい | 低い |
地方銀行 | 原則として支店のあるエリア内 | 都市銀行より緩い | 都市銀行より高い |
信用金庫や信用組合 | 原則として支店のあるエリア内 | 地方銀行より緩い | 地方銀行より高い |
ノンバンク | 日本全国 | 通りやすい | 普通 |
日本政策金融公庫と都市銀行は、日本全国で利用できることや金利の低さが特徴です。日本政策金融公庫は借入期間が短く、融資可能額が低めである点で、都市銀行と大きく異なります。どちらも検討したい金融機関ですが、審査が厳しいことはネックです。
地方銀行や信用金庫・信用組合で融資を受けるには、借入者の居住地や物件の所在地が支店エリア内にある必要があります。日本政策金融公庫や都市銀行の審査に通らない場合、検討したい金融機関といえるでしょう。
ノンバンクの融資姿勢はさまざまですが、物件の審査基準は比較的通りやすいことが特徴です。
不動産投資ローンの金利を抑える4つのポイント
不動産投資ローンは金融機関によって金利の基準が異なります。金利を抑えるなら、不動産投資会社から紹介を受けることや、固定金利ではなく変動金利を選ぶことがポイントです。
また、ローン審査前に属性を高めておくことや、アパートよりマンションを選ぶことも効果を発揮します。
1.融資実績が多い不動産投資会社を選ぶ
多くの不動産投資会社は金融機関と提携しており、不動産投資ローンを組む際に金融機関の紹介が受けられます。
ここで、提携金融機関が多く、融資実績も多い不動産投資会社を選ぶのがポイントです。培った経験と信用度を生かし、金利が低く、好条件な金融機関を紹介してもらえることが期待できます。
2.固定金利よりも変動金利を選ぶ
不動産投資ローンの金利には、金利が変動しない「固定金利」と、定期的に金利を見直す「変動金利」があります。変動金利は固定金利より金利が低いため、まずは変動金利を選ぶことがポイントです。
金利が上昇するとしても段階的で、事前通知もあります。返済計画に支障が生じるなら、ローンの借り換えも可能です。
3.ローン審査前に属性を高めておく
不動産投資ローンの審査においては、申込人の返済能力や信用情報を精査します。上場企業の社員や公務員で勤務年数も長ければ、返済能力は高いと判断されるでしょう。滞納リスクを下げるために、資産状況や相続の予定も確認されます。
また、他社ローンの借入残高や、返済実績・滞納履歴も重要なチェックポイントです。これらを総合的に判断して、滞納リスクの高さが金利に反映されます。ローン審査前に資産状況を改善したり、他社ローンの借入を全額返済したりして、審査対象となる属性を高めることも有効です。
4.アパートよりもマンションを選ぶ
不動産投資ローンの審査においては、申込人の属性だけでなく、物件の収益性も重要です。購入するのがアパートかマンションかで比較すれば、マンションのほうが金利は低い傾向にあります。主な理由は以下の通りです。
- マンションは好立地な物件が多く、資産価値が高い
- マンションのほうが入居者にとって魅力的で、空室リスクが低い
- RC造やSRC造のマンションは、木造のアパートより法定耐用年数が長い
- マンションはアパートより家賃が下落しにくい
- マンションは中古市場で売買しやすく、換金性や流動性が高い
アパートは物件価格が安く、利回りは高く見えますが、マンションより金利が高くなりやすい点に注意を要します。マンションは金利が低くなりやすく、空室リスクや家賃下落リスクも抑えやすいため、マンション経営のほうがおすすめです。
まとめ
不動産投資を始めるに当たって重要なのは、物件探しだけではありません。どの金融機関で融資を受けるかによって、資産形成の安定性やスピードは大きく変わります。
不動産投資ローンを利用することで、自己資金の投入を抑えて不動産投資を開始できます。自己資金のみで購入するよりスピーディーに、レバレッジを効かせて大きな資産形成が可能です。
ただし、金融機関選びに失敗すると、資産形成のスピードは停滞するかもしれません。物件選びとともに、金融機関選びも重視しましょう。