土地や建物の不動産はローンで購入できますが、「不動産投資ローン」と「住宅ローン」では根本的な目的が異なります。投資とマイホームの購入が重なる場合、「どちらを先に契約すればよいのか分からない」という方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、不動産投資ローンと住宅ローンの相違点を詳しく解説します。正しい利用方法を知ると、投資の効果を発揮するためにも役立つでしょう。タイミングによって異なるメリット・デメリットも併せてご紹介します。
もくじ
不動産投資ローンと住宅ローンの6つの違い
不動産関連のローンを組む前に、まずは基本的な仕組みへの理解が必要です。「投資用として契約するか」によって、借入の目的だけでなく利回りや制限も異なります。
返済原資にも明確な相違点があるため、どのような違いあるのか具体的にチェックしましょう。特に重要なポイントを6つピックアップし、表も交えながら詳しく解説します。
借入の目的が異なる
ローンの種類によって大きく異なるのは、「何を目的に借り入れるか」です。具体的には以下のような違いがあります。
不動産投資ローン | 住宅ローン | |
---|---|---|
借入の目的 | 投資用不動産(収益化) | ・マイホームの購入 ・修繕費やリフォーム代 |
収益化の有無で大きな違いがあり、例えば「住宅ローンで投資用不動産を買う」といった手段は選べません。購入者の希望ではなく、規定として決められている点を理解しておきましょう。
融資を受けられる金額が異なる
金融会社が融資する金額は、契約者の年収によって変動します。不動産のローンを想定すると、住宅ローンのほうが少ないケースが一般的です。
不動産投資ローン | 住宅ローン | |
---|---|---|
対象 | 投資家 | 個人 |
上限の目安 | 年収の8倍〜10倍 | 年収の5倍〜6倍(高年収であれば8倍程度) |
住宅ローンの一般的な基準が6倍程度であるのに対し、不動産投資ローンでは20倍の融資が受けられる場合もあります。上限に差が出るのは、投資によってリターンが期待できるためです。
金利が異なる
融資額の面ではメリットに感じられる不動産投資ローンですが、金利も住宅ローンに比べて高い傾向にあります。以下の表を参考に、2種類の差を把握しましょう。
不動産投資ローン | 住宅ローン | |
---|---|---|
金利 | 1%~4.5% | 0.5%~2% |
住宅ローンでは、退職など大きな生活の変化がなければ返済できなくなるリスクも軽減できます。一方不動産投資の場合、空室の増加や家賃滞納などで損失を生むかもしれません。契約者が返済できなくなるリスクが高いため、不動産投資のほうが高金利に設定されているといえるでしょう。
融資審査の内容が異なる
金融機関は、契約者の年収以外に「過去の借入履歴」「返済途中で無職になる可能性」といった返済能力を重視します。不動産投資ローンの場合、以下のように物件情報もチェックされる点が特徴です。
不動産投資ローン | 住宅ローン | |
---|---|---|
審査の基準 | ・年収 ・勤続年数 ・他ローンの借入金額 ・金融事故の有無 ・物件の築年数 ・物件売買の履歴 ・物件の収益性 |
・年収 ・勤続年数 ・他ローンの借入金額 ・金融事故の有無 |
全体的に見ると、不動産投資ローンのほうが多くの要素から融資を判断すると考えてよいでしょう。年収が高い方でも、勤続年数が短い投資家や収益性の低い物件では融資が通らないケースもあります。
ローンの制限が異なる
個人が居住する不動産を購入する場合、法人名義ではローンを契約できません。あくまでも自宅用の不動産であり、個人を対象としているためです。一方、不動産投資ローンでは法人名義でも契約できます。ただし、経営者が住宅ローンを申し込む際は、会社の決算書が求められます。
不動産投資ローン | 住宅ローン | |
---|---|---|
ローンの定義 | 賃貸経営(不動産収入を得るためのローン) | 契約者が居住する(自宅用のローン) |
制限 | 個人名義または法人名義で契約可能 | 個人名義のみ契約可能 |
年齢の上限 | 70歳以上も可能なことが多い | 70歳未満が一般的 |
定年後の収入源が異なるため、年齢の上限に違いがある点も把握しておきましょう。多くの場合、不動産投資が目的であれば70歳以上も対象に含まれます。
返済原資が異なる
返済原資は、「どこから得たお金を返済に充てるか」を意味する言葉です。不動産に関するローンの場合、以下のパターンがあります。
不動産投資ローン | 住宅ローン | |
---|---|---|
返済原資 | 給与収入と家賃収入 | 契約者の給与収入 |
住宅ローンは、他の一般的なローンと同様に個人の給与収入が返済原資です。投資用に物件を購入する場合、賃貸契約を交わした入居者から家賃を得られます。家賃収入も返済額に充てられるため、不足分を給与収入から支払う仕組みです。
マイホームと投資は順番を間違わないこと!
「自宅の購入と不動産投資を同時期に進めたい」と考えている方は、ローンを契約する順番に注意が必要です。融資額や購入金額のみで決断すると、金融機関の方針によってはローンの契約を断られるかもしれません。
適切な順番が決まっているわけではないため、不動産投資会社などにも相談しながら進めることが大切です。例えば高額の家賃収入を得ている状態であれば、個人の収入が増えることで住宅ローンが通る可能性も期待できます。
不動産投資ローンを先に組むメリットとデメリット
住宅ローンと不動産投資ローンの順番に悩んでいる方は、それぞれのメリットとデメリットを比較しながら決めるのがおすすめです。不動産投資ローンを先に組むと、収入を増やしやすいメリットがあります。
投資成果の面ではリスクもあるため、悪い要素も理解した上で状況に適した手段を見極めましょう。
収入が増える
不動産投資でリターンを得る方法のひとつが、入居者からの家賃収入です。需要の高い物件でうまく運用できれば、安定した家賃収入を得られるでしょう。
ローンの返済が早く済めば家賃収入が100%収益となります。資産が増えただけでなく、安定した収入も得られることから住宅ローンの申請も通りやすくなります。
不動産投資を先に始めると、自己資金を貯めたり住宅ローンの返済に充てたり、金銭的な負担を軽減する結果にもつながります。長期的に考えると、投資用に購入した物件が売却できる点も魅力的です。
投資成果が認められない可能性がある
先にスタートした不動産投資の収益が不安定な場合、不動産投資ローンの分の返済も怪しいため更に住宅ローンを申請するのは難しいでしょう。例えローンが組めたとしても、借入金が増えることで、希望金額を融資してもらえない可能性があります。購入する家の選択肢も狭くなってしまうので、安定収益を確保してから次のローンを申請しましょう。
住宅ローンを先に組むメリットとデメリット
住宅ローンを先に契約すると、希望の家に住める可能性も高まります。ただし、負債が増える点には注意が必要です。投資用物件のように新しい収入源にならないため、購入後の返済計画も重要な判断基準になります。
マイホームを購入してから不動産投資を始める場合のメリットとデメリットを解説しましょう。
希望通りの融資を受けやすい
「子供が生まれる前に賃貸から引っ越したい」「両親の体が不自由になる前にリフォームしたい」など時間的に急ぐような方は、住宅ローンを優先するのがおすすめです。
他にローンを組んでいなければ、属性に合わせて最大限の希望額を融資してもらえます。購入できる家の選択肢が増えるため、満足できる理想のマイホームが手に入るでしょう。
負債として返済が必要
住宅ローンで借り入れた金額は「負債」です。そのため、個人の給与所得から返済しなければなりません。収入が不安定な方や、転職・退職の予定がある方は慎重に決める必要があるでしょう。
住宅ローンの残債が原因で、不動産投資ローンを組めない可能性もあります。例え両方のローン申請が通ったとしても、返済額が増えるので注意が必要です。
不動産投資ローンを利用する3つのメリット
家賃収入が得られる不動産投資では、ローンを組むことで複数のメリットにつなげられます。資金が少なくてもスタートできるため、投資初心者にとって魅力的な要素ともいえるでしょう。
投資した不動産そのものが資産となり、生命保険として活用できる点も魅力的です。ここからは、不動産投資ローンのメリットを3つの観点からご紹介します。
貯金を残せる
不動産投資を考えるとき、「貯金がなくなるから始められない」という方もいるかもしれません。土地や建物は高額ですが、ローンを利用することで毎月少額の支出で済みます。
また、不動産投資ならローンの返済金を家賃収入で補うことがでるのも特徴です。返済額と同額もしくは上の金額を家賃として設定すれば、貯金に影響することはありません。
少額資金でも収益になる
「レバレッジ効果」で収益を上げられる点も、不動産投資ローンのメリットです。全額自己資金で不動産を購入するには規模が限定されてしまいますが、ローンを利用すれば少額の頭金だけで大きな資産を購入できます。
例えば、500万円の貯金で500万円の物件を購入するのと1,000万円借り入れて1,500万円の物件を購入したとすると、物件自体にすでに資産価値の差があるでしょう。同じ利回りだとして家賃収入による年間収益にも差が生まれます。
しかし実際は、ローンで購入した物件の元手は500万円なので全額自己資金の収益よりも何倍もの利回りの収益です。
団体信用生命保険がある
投資用不動産をローンで購入した場合、「団体信用生命保険(団信)」に加入するケースがほとんどです。契約者がなんらかの理由で返済できない状況になったとき、支払っていない残債分が保証されます。契約者の家族にも支払い義務は発生しないため、万が一でも生活を守れる仕組みです。生命保険として活用すると良いでしょう。
まとめ
不動産投資と住宅ローンの契約を同時期に進行したい場合は、「何を優先するか」を明確にすることが大切です。根本的な仕組みが異なるため、生活状況や融資の内容に適した選択肢を見極めましょう。