豪華な返礼品が用意されているふるさと納税は、多くの人から注目を集めているお得な制度です。自治体に寄付をすることで「税額控除」を受けられます。
しかし、「上限額」が設定されているなど仕組みが少し複雑であるため、いくらまで利用できるのか、どれだけお得になるのかといった点をあいまいに理解している方も少なくありません。
とくに、不動産所得がある場合、そのほかの税制についても理解する必要があるため、ふるさと納税まで考えられない方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、不動産所得がある方に焦点をあてて、ふるさと納税について詳しく解説します。制度を利用する際の注意点も紹介しているので、ふるさと納税を正しく理解して活用してくださいね。
もくじ
ふるさと納税の基本
本来税金として支払うお金で、地方の特産品などが手に入るふるさと納税。「納税」という名称ですが、実は制度の仕組み上は寄付金です。また、ふるさと納税によって減額される税金には上限があります。
「ふるさと納税をしたのに税金が減っていなかった」とならないためにも、制度をよく理解しておくことが大切です。ふるさと納税の基本的な仕組みについてご紹介します。これからふるさと納税をされる方は、ぜひ参考にして有意義に利用してくださいね。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は、本来国や居住地の自治体へ納める税金の一部を、納税前に先行して別の地方への寄付金にする制度です。制度の目的は地域の活性化で、返礼品として寄付をした地域の特産品などを受け取ることができます。
ふるさと納税を始めるには、寄付金とあわせて2,000円の自己負担金が必要です。また税額控除の対象となる寄付金額には上限があり、支援者の所得金額によって異なります。ふるさと納税は、寄付をする側と寄付を受けた自治体双方にメリットのあるシステムです。
ふるさと納税をすると税金の控除を受けられる
ふるさと納税をすると、所得税と住民税の税額控除を受けられます。寄付金であるふるさと納税が「納税」という名称を使っている理由が、この税額控除の仕組みです。ふるさと納税で支払った全額から自己負担額である2,000円を引いた金額が、支払うはずの税金より控除されるため、事実上納税先を選んで支払った形となります。
ただし、ふるさと納税で控除される金額には、所得に応じて上限額が設定されている点に注意しなければなりません。また、ふるさと納税をして税額控除を受けるには、ワンストップ申請または確定申告が必要となります。ふるさと納税の上限額や税額控除の仕組みは以下のとおりです。
・ふるさと納税の控除額
ふるさと納税の控除額= 所得税分の控除額+ 住民税基本分の控除額+ 住民税特例分の控除額
・ふるさと納税控除上限額の計算式
控除限度額= ((個人住民税所得割額×20)/ (100%-住民税基本分10%-(所得税率×復興税率1.021))) +負担金2,000円
細かい説明は省きますが、所得税と住民税(基本分、特例分)からそれぞれ一部ずつ控除され、その合計がふるさと納税の控除額です。所得に応じて課税される個人住民税所得割を限度額の計算に使用するため、所得に応じて限度額が決まります。
受け取れる返礼品は種類が豊富
ふるさと納税で受け取れる返礼品は多種多様です。お米や牛肉といった定番の生鮮品はもちろん、工芸品や日用品といったものまであります。全国の返礼品を紹介しているサイトもあり、インターネットショッピングの感覚で商品を選ぶことが可能です。
また、支援者が返礼品を受け取るのではなく、地域の慈善活動に還元される形でふるさと納税の募集をしている自治体もあります。たとえば、学校や公営塾の設立、動物保護団体への支援などです。寄付金で直接地域の活性化をおこなうため、ふるさと納税本来の使い方ともいえます。
不動産所得がある場合のふるさと納税のやり方
不動産所得があっても、ふるさと納税は利用できます。税額控除を受けられる上限額の計算も特別難しくはありません。不動産所得をそのほかの給与所得などと合算して計算します。
上限額の計算をする場合は、総務省ホームページのふるさと納税ポータルサイトに掲載されている、計算シミュレーションを利用すると便利です。ただし、税額控除を受ける年度の所得額は確定していないため、算出される上限額は概算値であることに注意しましょう。限度額ぎりぎりまで使ってしまうと、自己負担額が2,000円を超えてしまうおそれもあります。
不動産所得がある場合のふるさと納税のやり方
ふるさと納税をした際に受けられる税額控除の上限額は、住民税の所得割に基づいて計算されるため、不動産所得の金額によって変わってきます。
不動産所得が黒字の場合と赤字の場合に分けて説明します。不動産所得は給与所得に比べて上下しやすいため、控除の上限額の変化には注意が必要です。
不動産所得が黒字ならふるさと納税の上限額があがる
不動産売却の利益や安定した家賃収入があるなど、不動産所得が黒字の場合は、年間の所得額に応じてふるさと納税で受けられる税額控除の上限額が変化します。ただし、上限額は所得によって算出されるため、同じ黒字でも収益が減少した場合は上限額が下がることもあります。
せっかくの制度なので、上限額があがった分も有効活用しましょう。寄付金として使用できる金額が増えると、返礼品の選択肢も広がります。インターネットサイトを活用して、素敵な返礼品を見つけてくださいね。
不動産所得が赤字の場合のふるさと納税上限額
不動産所得が赤字の場合は、ふるさと納税で受けられる税額控除の上限額が下がってしまいます。単純に事業として赤字の場合だけではなく、会計上赤字で運用している場合も同様です。
また、不動産経営でふるさと納税をする際には、修繕や設備交換が予定外に発生する可能性がある点にも注意が必要です。例年通りの収支見込みでふるさと納税を利用したあとに、不意な出費で所得が下がると、上限額が下がってしまうこともあります。
ふるさと納税をする際の注意点
ふるさと納税は、単純な「納税」ではなく、「寄付金」という形を取っているため仕組みがやや複雑です。制度をきちんと理解しておかないと、思わぬ出費が発生し、損をしてしまうこともあります。
また、不動産所得がある場合は利用できない制度がある点にも注意が必要です。ふるさと納税に対する誤解をしている方も多いため、細かい部分まで事前によく確認しておきましょう。ふるさと納税を利用する前に確認しておくべき注意点を5つご紹介します。
ふるさと納税は節税対策ではない
ふるさと納税をしても節税にはなりません。ふるさと納税をすると税額控除ができるため、「節税」と勘違いしている方も多くいます。しかし、本来納めるべき税金の一部を、先行してふるさと納税に振り替えているだけなので、納税すべき総額は変わりません。
ふるさと納税が節税対策と勘違いされている理由は、納税期限のズレによるものです。ふるさと納税の税額控除の対象期間は1月1日〜12月31日までですが、控除が反映された住民税の支払いは翌年の5月になります。住民税の納付書に記載されている金額は、控除後の金額であるため「税金が安くなっている」と勘違いしやすいのです。
一時的には大きな出費となる
ふるさと納税を税額控除の上限額まで利用する場合は、一時的に大きな出費となります。ふるさと納税は、本来支払うべき税金を先行して寄付金として使用する制度です。つまり、寄付金支払い時点ではすべて自己負担となってしまいます。
「控除」という言葉の印象から負担がない印象を受けますが、実際には通常の買い物と同様のため、使いすぎには注意が必要です。日々の生活を送るうえで、無理のない範囲で利用しましょう。
不動産所得があるとワンストップ特例制度を使えない
ワンストップ特例制度とは、ふるさと納税の支援者が確定申告の手間を省ける、便利な制度です。しかし、不動産所得がある場合はワンストップ特例制度を利用できません。不動産所得の確定申告によって、ワンストップ特例制度の申請が無効になってしまうためです。
不動産所得のある方がふるさと納税を利用した場合は、必ず確定申告時に申告しておきましょう。申告がもれると税額控除が受けられなくなってしまいます。ワンストップ特例制度は、おもに会社員など給与所得のみで確定申告の必要がない方のための制度だと理解しておきましょう。
返礼品によっては課税対象になってしまう
まれなケースですが、返礼品が高額になると課税対象になる可能性があります。ふるさと納税はあくまでも「寄付」のため、返礼品は厳密には一時所得です。一時所得の非課税枠となる、年間50万円を超える高額商品にふるさと納税を利用した場合には課税されてしまいます。
課税対象となるのは、たとえば170万円の寄付をした場合です。寄付金の返礼品は3割が上限であり、上限額いっぱいの返礼品を受け取ると、51万円相当のため課税対象となってしまいます。
あまり起こりうるケースではありませんが、「50万円を超えると課税対象になる」ということは覚えておきましょう。
返礼品が生鮮品の場合は冷蔵庫や冷凍庫の空き容量に注意
ふるさと納税はお得な制度のため、上限額まで気軽に申し込む人も少なくありません。しかし、返礼品は一度に同時に届くこともあるので注意が必要です。生鮮食品や冷凍食品ばかりを返礼品として選ぶと、一度に届いた場合、冷蔵庫や冷凍庫に保管しきれなくなるおそれがあります。
また、1箇所からの返礼品でも思った以上に大量に届くこともあります。全国のふるさと納税を取り扱っているインターネットサイトをみると、「シャケの切り身3.5kg」という返礼品もありました。
ふるさと納税の返礼品として生鮮品を選ぶ場合は、冷蔵庫の空き容量を確認しながら計画的に申し込みましょう。
【まとめ】不動産所得に余裕があればふるさと納税はおすすめ
ふるさと納税は、本来納める税金の一部を返礼品という商品や地域の活性化に振り替えるお得な制度です。ただし、支払う時点では先行して自己負担をする必要があります。また、あくまでも本来支払う予定の税金をふるさと納税という形で支払うだけなので、節税対策にはなりません。
一方で、不動産所得をはじめとして所得に余裕があれば、ふるさと納税はおすすめの制度です。税金で支払えばただ現金が消えるだけですが、多くのふるさと納税では返礼品を受け取れます。普段は購入しない高級食材を手に入れるなど、ふるさと納税を有効に活用してみてくださいね。