2000年代初頭から使われ始めた「フィンテック(Fintech)」。しかし、フィンテックという言葉自体の意味や具体的なサービスについては、理解が曖昧な方も少なくありません。
身近なキャッシュレス決済なども、実はフィンテックの一部です。本記事では、私たちが普段何気なく接しているフィンテックについてわかりやすく解説します。
もくじ
フィンテック(Fintech)は造語
フィンテック(Fintech)とは、2000年代初頭に使われ始めた言葉で、新たな金融サービスを求める動きとともに普及しました。
フィンテックが誕生した背景や今後の展望についてみていきましょう。
フィンテックの意味と生まれた背景
「FinTech(フィンテック)」は、「金融」を意味する「Finance」と「技術」を意味する「Technology」を組み合わせた造語です。テクノロジーを活用して提供される、新たな金融商品やサービスを指します。金融サービスの効率化や顧客体験の最適化を目指すために生まれました。
2000年代初頭には登場していたフィンテックですが、注目が集まったきっかけの一つが2008年のリーマンショックです。より安心できる新たな金融サービスの提供を求めた市場に対して、テクノロジーを取り入れたさまざまなサービスが提供されるようになりました。
また、2000年代後半には、スマートフォンをはじめとする大幅な技術革新も進み、フィンテックによって金融サービスがより身近なものとなりました。
フィンテックの市場規模と今後
フィンテックの市場は、今後さらに拡大する見通しです。たとえば、新型コロナウイルス感染拡大により、衛生面の問題から店頭での現金受け渡しを回避する傾向が強まり、非接触でおこなえるモバイル決済が普及しました。今後も消費者の利便性を高めるために、あらゆる方面においてフィンテックの活用が進むでしょう。
また、これまで金融事業をおこなっていなかった事業者の参入も相次いでおり、今後さらに競争が激化する見込みです。
活用の幅が広がるフィンテックの具体例
フィンテックが活用されるサービスは、キャッシュレス決済などの目に見える部分だけではありません。従来は人が行っていたローン審査や財務会計管理といった、さまざまな分野でフィンテックが用いられています。
活用の幅が広がり続ける、フィンテックの具体例をみていきましょう。
キャッシュレス決済と送金
キャッシュレス決済と送金は、フィンテックを活用したサービスの代表例です。現金をやり取りすることなく、スマホアプリや非接触型カードから簡単に支払いや送金をおこなえます。QRコードやバーコード決済、アプリ利用者同士の無料送金サービスなど、各企業が多くのサービスを提供するようになりました。
融資やローン
銀行員が顧客と対面しておこなっていた融資やローンも、フィンテックの進歩によってAIが代行してくれるようになりました。AIが顧客の情報を分析して、自動的に融資の可否を審査します。
仮想通貨(暗号資産)
暗号通貨とは、ビットコインなどブロックチェーン技術にもとづくデジタル資産の総称です。通貨には信頼を保証する発行元の国(機関)が必要でしたが、ブロックチェーン技術によって信頼性を担保することで、国を介さない新たな通貨として生み出されました。また、暗号通貨を使えば、銀行やカード会社を経由せずに個人間での直接送金が可能です。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネット上で投資を募る手法です。これまで、投資を募るには社債の発行や株式公開などの限られた手法しかありませんでした。インターネット技術と金融サービスを組み合わせたクラウドファンディングによって、誰でも手軽に資金調達ができるようになったことはフィンテックの功績です。
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは、フィンテックによって生まれた新たな資金調達方法です。特定の金融機関から融資を受けるのではなく、インターネットを通じて広く融資してくれる人を募る仕組みです。ユーザーはまとまった資金がなくても資金提供でき、融資を受ける側は1つの金融機関の審査結果に左右されません。
保険
保険分野のフィンテックは、「Insurance」(保険)と「Technology」(技術)を組み合わせて「インシュアテック」と呼ばれることもあります。
たとえば、テレマティクス保険は、インシュアテックを活用したサービスの一つです。自動車に搭載した端末で走行距離や運転速度などを計測し、計測データから運転者の事故リスクを分析して保険料を算定します。
個人財務管理(PFM)
PFM(Personal Financial Management)は、個人の金融機関口座情報を一元管理するサービスです。また、フィンテックが提供するのは、財務管理だけではありません。AI(人工知能)が消費動向を分析して、資産形成の方向性をアドバイスしてくれるサービスもあります。
財務会計
財務会計処理でもフィンテックが活用されています。会計ソフトウェアは高機能化し、専門知識のあまりない人でも手軽に使えるようになりました。また、入出金履歴の名称や金額などから、自動的に仕訳処理をしてくれる便利なソフトウェアもあります。
フィンテックに使われている5つの技術
フィンテック分野では、最新のテクノロジーと融合させたさまざまなサービスが展開されています。そこで、フィンテックの核となる、5つの技術に焦点を当てて解説します。
ブロックチェーン
ブロックチェーンとは、取引の詳細を暗号化して共有することによって、データの不正アクセスを防ぐ分散台帳技術の一つです。暗号資産やNFTの根幹技術としても広く採用されています。
従来の金融取引では、銀行など1つの機関が取引の正当性を集中管理していました。しかし、ブロックチェーンはユーザーが相互に取引の履歴を証明する仕組みのため、管理機関がまったく必要ありません。
また、絵画や写真のような、従来は取引の履歴管理が難しかったものにも活用されるなど、ブロックチェーン技術は新たな価値創出の可能性を秘めています。
AI(人工知能)
AI(人工知能)の機械学習やディープラーニングは、煩雑なデータ解析や作業の自動化を可能としました。ロボアドバイザーによる投資の助言、クラウド会計ソフトの自動仕訳や決算チェックなど、AI技術はさまざまなフィンテック分野に活用されています。
IoT
IoT(Internet of Things)は、さまざまモノをインターネットにつなげる仕組みです。IoTの進化により、インターネットに接続された電化製品や自動車といったあらゆるデバイスからデータをリアルタイムで収集できるようになりました。収集した大量のデータをもとに適切な自動車保険料を算出するなど、IoTのフィンテック分野におけるIoTの活用は今後も拡大する見込みです。
生体認証
生体認証とは、人間の身体的な特徴によって個人を特定する認証方式です。類推されやすいパスワードよりも確実に本人確認ができることから、多くの分野で取り入れられています。
とくに、資産管理に直結するフィンテック分野では、より安全性の高い本人確認が欠かせません。生体認証は、いまやフィンテックを支える重要な技術の一つです。
API
API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)とは、インターネット上の異なるシステム間でデータを連携させる仕組みです。利用する金融機関によってシステムが異なると、サービスの均一化を図れません。そこで、異なるシステム間でも、同一のサービスを提供できるよう緊密に連携させることが重要です。
会計ソフトによる口座の入出金情報の取得など、API連携がされていれば、プラットフォームの違いを意識する必要がありません。APIは、より広くフィンテックを活用するために欠かせない技術です。
【まとめ】フィンテックは身近なところでも活用が進んでいる
諸外国に比べると遅れていた日本のキャッシュレス化ですが、2022年の比率は36.0%(111兆円)と一気に成長しました。また、ローン審査のAI化や会計ソフトのAPI連携など、普段あまり意識しない部分でもフィンテックの活用は進んでいます。
フィンテックは、資産保護も含めて今後さらに私たちの生活に直結する技術です。単に便利なサービスの登場に期待するだけではなく、安全性の向上も含めてフィンテックの活用に注目していきましょう。