少子高齢化社会や働き手不足などにより、今後の日本は年金財政の悪化が見込まれています。そのため、人々の将来に対する不安が膨らみ続けているのが現状です。
将来に備えた資産保全のためにも「長期投資」に関心を寄せる方も多くなっています。しかし、長期投資のメリットやデメリットが分からず、最初の一歩が踏み出せない方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、長期投資の種類とメリットやデメリットについて解説をしていきます。比較的リスクの少ない投資も解説しますので、長期投資が初めての方も安心して始められます。ぜひチェックしてみましょう
もくじ
長期投資の種類と特徴
一口に「投資」といっても、大きく分けて「短期投資」と「長期投資」の2種類があります。今回解説する長期投資は、運用する商品を3年以上にわたって保有する投資を指します。自分が投資した商品の成長を長期的に予測し、値上がりが発生することで利益を得る方法です。では、長期投資の具体的な種類と、それぞれの特徴を解説していきます。
株式投資
メジャーな投資ともいえるのが「株式投資」です。株式に投資することで、2つの利益が得られます。株を保有することで得られる配当金と、株価が上がることによって得られる利益です。投資先は日本企業の株だけでなく、中国やアメリカなどの外国株もあります。
株式投資は、株価が下がって利益が出ないこともあるので、リスクの低減が重要です。ひとつの銘柄ばかりを長期保有していると「株価変動リスク」が高まります。異なる銘柄を所有してリスクを減らす「分散投資」でリスク回避するようにしましょう。
また、投資する企業の財務状況や業績を見極め、今後の成長が見込めるかを分析する「ファンダメンタル分析」スキルも必要となります。景気の流れと投資先企業の理解が重要です。景気の流れや企業の理解に不安がある方は、次で解説する「投資信託」を検討するのもおすすめです。
投資信託
投資信託とは「投資家から集めたお金を資金として」投資の専門家によって金融商品の運用をするものです。そのため、投資によって得た利益をそれぞれの投資家に分配する必要があります。
「ファンドマネージャー」と呼ばれる投資の専門家が運用をするため、投資について詳しい知識を持っている必要はありません。
「REIT」と呼ばれる不動産投資信託もあります。投資家から集めたお金を基に、投資の専門家がマンションやビルなどの不動産を複数購入します。その購入した不動産で発生する賃貸収入や、売却による収益を投資家に配分する方法です。投資家から集めた資金で不動産を購入するため、自分一人で多額の支払いやローンを組む必要がありません。
国債
正式な名称は「国庫債券」です。国が行う公共事業に必要な資金を国民から借り入れ、その際に発行する証明書のことを指します。投資をすることで、国が設定した期間ごとに利息が受け取れ、満期になることで投資した元本が戻ってくる仕組みです。投資先は国なので、国が破綻しない限りは元本割れとなるリスクは少ないといえます。
リスクが少なくよい面もありますが、購入できる期間が限られています。「投資を始めたい」と思っても、すぐに投資ができるわけではないので注意しましょう。
不動産投資
不動産投資は、アパートやマンションなどの不動産を使って利益を得る投資方法です。利益を得る方法は「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があります。前者は、不動産を保有することで得られる「家賃収入」のことです。後者は、不動産の価格が購入時よりも上がった際に「売却して得る収益」を指します。
不動産投資は、長期投資に向いています。理由は、ほかの長期投資方法とは異なり「現物」があるからです。定年退職後、第二の人生をスタートする際の資金として残せることから、長期投資におすすめする投資家も多いのが特徴です。
株式投資・投資信託・国債で長期投資を行うメリット・デメリット
「長期投資」といえば、株式投資、投資信託、国債の3種類が代表として挙げられます。投資である以上、どんな方法にもデメリットやメリットがあるため、始める前にはしっかり知識を身につけておく必要があります。では、メリットやデメリットを詳しく見ていきましょう。
【メリット1】長期運用による複利運用が可能
長期運用による大きなメリットに「複利運用」があります。複利運用とは、投資で得た利息や配当金を、そのまま投資資金に回して運用する方法のことです。投資資金が増えていくことで利息も多くなるため「雪だるま式に資産が増加」していきます。
反対に「単利運用」は、投資で得た利息や配当金をそのまま受け取り、投資資金に回さない方法です。常に投資資金は一定の額であるため、毎年の配当金や利息も常に一定です。雪だるま式に利益が積み重なっていかないので、複利運用よりも資産形成のスピードは遅いことになります。
長期投資においては、資産形成のスピードが早い複利運用を選ぶほうが、よりメリットが高くなるといえます。
【メリット2】リスクの低さと精神的な安心感
長期で資産運用を続けていると、1年あたりのリターンが安定しくることもメリットのひとつです。資産をうまく分散させることで、短期投資よりもリスクコントロールがしやすくなります。
短期投資の場合、毎分、毎時間と短いスパンで値動きを気にする必要があります。長期投資であれば、一時的に大きな値動きがあったとしても、長期的に見て値上がりしていれば構いません。短期投資よりも精神的な負担が軽く、無理せず続けられるのもポイントです。
【メリット3】短期投資よりも手数料や税金が安くつく傾向にある
投資をするのであれば、避けられないのが「手数料」や「税金」の支払いです。長期投資であれば、これらの支払いが安く済む傾向にあり、コストを抑えられるのがメリットです。
商品の購入時には「購入手数料」、売却の際には「売却手数料」が発生します。分配金を受け取った際には「配当所得」、売却時の利益には「譲渡所得」が課税される仕組みです。一度に支払う額は少なくても、「塵も積もれば山となる」で何度も支払うとコストが高くなります。
長期投資であれば購入時と売却時の1回ずつの課税、売買時に発生する手数料も1回でよいので、結果的にコストが少なく済みます。
【デメリット1】将来予測の難しさ
長期投資であると、5年後や10年後の動向を見通すことは難しく「失敗した」と思ったときには取り返すのが難しいこともあります。
投資期間が長いほどに未来予測は難しくなり、最悪の場合は企業が倒産していたり、業界が小規模になったりしているかもしれません。長期投資において、一番のデメリットといえます。
先が見通しにくいからこそ、長期投資においては資産を分散して投資する「分散投資」が推奨されています。なるべくリスクを下げて投資をすることが重要です。
【デメリット2】長期保有による運用管理費の増加
投資信託で投資をする場合、商品を保有することによって「運用管理費」が発生します。投資信託で長期投資をすると利益の上下に関わらず、商品を保有しているだけで長期的にコストが発生することになります。
運用管理費は投資信託会社によって異なり、0.05パーセント~3パーセントです。「日経平均株価」や「NYダウ」などの株価指数と連動する「インデックスファンド」は運用管理費が比較的低くなっています。利益追求型の「アクティブファンド」は、運用管理費が高い傾向にあります。
【デメリット3】すぐにお金にならない
長期投資は、企業の動向や経済、株価などを長期的に見て投資する方法です。そのため、利益が手元に入ってくるのは数年後となります。短期投資のように、1週間後、1カ月後とすぐに利益が得られるわけではありません。
特に、国債はこの傾向が顕著な投資方法です。国債は「固定金利型3年満期」「固定金利型5年満期」「変動金利型10年満期」のような商品であり、すぐに利益は受け取れません。自分からアクションできることはなく、動向を見守ることしかできない投資といえます。
長期投資を始める前に決めておくべきこと
短期投資よりも、堅実でリスクが低くて始めやすいように思えますが、始める前にはしっかりと決めておくべきことがあります。リスクが低いとはいえ、長期投資も短期投資と同じ「投資」であることに変わりはありません。
決めておくべきことを決めておかないと、最悪の結果を招くことにもつながります。長期投資を始める前に決めておく事柄を解説しますので、把握しておきましょう。
損切をするタイミング
損切をするタイミングをあらかじめ決めておき、最悪の結果となることを避けましょう。長期投資の場合、株価が下がっても長期的に見れば回復する可能性があるため、損切は必要ないと思いがちです。しかし、下記2点のような状況となったときは損切をすることも必要となります。
- 投資当初と社会や経済情勢が大きく変化し、投資先企業のビジネスモデルが通用しなくなった
- 投資当初よりも、投資先企業の価値が下がった
これらの変化が起こった場合、そのまま保有していると極端に株価が下がり、最悪の結果になる恐れがあります。長期投資においても損切が必要であると自覚し、適切なタイミングで損切をしましょう。
投資計画を明確にする
長期投資をするのであれば、事前の投資計画作りが重要です。短期投資の場合であれば、短いスパンでの投資なので、その時々の状況によって柔軟に対応ができます。長期投資は長期的な運用であるため、シミュレーションをして未来予測を計画書として落とすことが必要です。
「いつまで投資を続けるのか」も決めておきましょう。現役世代の場合、収入を投資に回すことができます。しかし、リタイア後になると収入が減ることから、投資にお金を回すことが難しくなります。人生設計と同時に、投資についてもしっかりと計画を立てましょう。
長期投資家と短期投資家に求められるスキルは異なる
長期投資も短期投資も同じ投資ですが、必要なスキルは異なります。長期短資に必要なスキルは「先見の力」です。反対に、短期投資に必要なスキルは「判断力とスピード感」となります。そのため、それぞれの投資に合ったスキルを身につけなければいけません。ここでは、それぞれの投資に必要なスキルについて詳しく解説をしていきます。
短期投資に必要なのは判断力とスピード感
短期投資で最も重要なのは、即座に対応できる「判断力」と「スピード感」です。これらがないと、よい局面を逃してしまい、結果的に利益を得られない恐れがあります。
短期投資は、1時間や1分単位で投資をすることもあり、瞬時な判断が求められるのが特徴です。売買のタイミングをすぐに判断し、スピード感を持って取引をします。そのスピードについて行けず、売買のタイミングを誤ると損をすることがあるため、失敗する方も多いことも特徴のひとつです。
長期投資に必要なのは先見の力
短期投資とは打って変わって、長期投資に必要なのは「先見の力」です。長期投資は、何年間にも渡って投資商品を保有します。その間、社会情勢や経済情勢の変化、企業規模の変化などが起こることも考えられます。
社会や経済の情勢の変化が起こると、企業によっては今までのビジネスモデルが通用しなくなり、一気に利益が下がる恐れがあります。企業によっては、投資当初は小さな会社であっても、将来的に大企業となっているかもしれません。将来的にどうなっているのか、しっかりと企業、情報分析ができれば失敗のリスクを少なくできます。
長期投資を勉強したい人向けの書籍
長期投資は、知識がない状態で始めてすぐに利益が出るものではありません。実際に投資を始める前に勉強をして、知識をつけてから始めるのが成功のカギです。
勉強のために投資向けセミナーに参加するのもよいですが、時間が指定されるため自分のペースで勉強がしにくいでしょう。自分のタイミングやペースで勉強をしたい方は、書籍を購入するのもおすすめです。
長期投資はじめの一歩 -明日につながるプラスサムの資産形成をしよう
「長期投資はじめの一歩」は、約3000億円のファンド資金を運用する日本の第一人者が自らの理論と実績を解説しています。「とりわけ投資が初めての人に、本物の投資のよさと素晴らしさを味わってもらうこと」を目的として作られた書籍です。
低金利の預貯金を利用して我慢したり、債券を信望したりする方たちが多いなか、これからは資産運用で利益を生む時代が来ることを説いています。「長期投資の基本的な知識や考え方を学ぶにはよい書籍である」との口コミもあり、まさに長期投資初心者の方向けといえます。
外国株式に興味がある人向け「アメリカ株 長期投資入門―2022年にNYダウは4万ドルへ上昇する」
「アメリカ株 長期投資入門」は、日本国内ではなくアメリカ株に焦点を当てた書籍です。アメリカ株は、世界の株式市場のおおよそ4割を占めています。世界でもトップクラスの企業が存在するアメリカ市場は、リスクヘッジとして分散投資をするには優れた市場です。
中長期的に見れば、アメリカ株は他国の株と比較してリスクが低く、継続的な成長を見込めるアメリカ株への投資をすすめている内容となります。
「アメリカ株の基礎的内容がいろいろと書かれているため、初心者には価値がある本」という口コミや、「米国株の理論的見方、実戦的な考え方が網羅されている」との口コミもあり、アメリカ株初心者の入門用としておすすめの書籍です。
投資×ミライ 長期投資をはじめよう 人生100年時代の資産運用必勝法
「老後難民」か「おくりびと『億り人』」になるかは、「いつから長期投資をするかによって決まる」ことを説いています。今のままの預貯金による資産運用では、80歳を超えると「老後難民」になる恐れがあり、少しでも早くに長期投資をするべきというスタンスの書籍です。
長期投資をするための知識や実践方法、さらには投資信託、海外株、優遇税制の活用方法なども解説されており、幅広い知識が得られます。
「投資の基本的な手法が丁寧に書かれている」「幅広い知識を得られる」という口コミもあり、長期投資を成功させたいと強い意志がある方に適した書籍です。
株式において長期投資こそハイリスクでハイリターンという人もいる
長期投資はリスクが低いことがメリットと解説しましたが、長期投資こそハイリスクハイリターンだという投資家もいます。
長期的に見て、投資した会社が確実に成長しているかは誰も分かりません。株式での長期投資は、気が付いたときには大損失となっているケースもあり得ます。さらに、手数料も否応なくかかるので、ハイリスクともいわれているのが現状です。
また、途中で株価が下がったとしても、最終的にはV字回復で大きく株価が上がっている可能性もあります。その間に配当金や株主優待ももらえるので、ハイリターンともいえます。
ミドルリスク、ミドルリターンで低リスクを求める方は「不動産投資」がおすすめの投資方法です。
ミドルリスクでミドルリターン 不動産投資を行うメリット・デメリット
不動産投資は、ミドルリスク、ミドルリターンでバランスの優れた投資方法といえます。初心者の方がいきなりハイリスク、ハイリターンの投資を始めた場合、気が付いたときにはすでに大損をしている恐れがあります。もちろん、大きなリターンを得られる可能性もありますが、安心感も得たいのであれば不動産投資がおすすめです。
【メリット1】価格変動が少なく、リスクも低い
不動産投資の大きなメリットとして、価格変動が少ないためにリスクも低いことが挙げられます。株の場合、1分、1時間単位で株価が大きく変動することもあります。その場合、気が付いたときには大きな損失を計上しているかもしれません。
不動産投資の場合「不動産」という現物があることから、資産価値がゼロになるリスクは株式投資よりも低いのが魅力です。長期に渡って家賃収入も得られるので、急激な価格変動の発生リスクは少ないといえます。
【メリット2】家賃収入の使い道が比較的自由
不動産投資の場合、家賃収入の使い方が比較的自由な点もメリットのひとつです。家賃収入は月々「現金」で入るので、リタイア後の年金代わりにしたり次の投資の足掛かりにしたりできます。
株式や国債のなどの長期投資であると、投資が終了するまで自分の手元にお金が入ってくることはほぼありません。不動産投資は一定の期間でお金が入ってくるので、不労所得になるともいえます。定期的にお金が必要になる方にもおすすめの投資方法です。
【メリット3】すべての作業を外注して「不労所得」を目指すこともできる
不動産投資の場合、不動産経営に関わるすべての作業を外注できるので、完全な不労所得を目指せます。一方、株式の場合は自分で株価をチェックし、アクションを起こす必要があります。不動産投資は、建物の管理や運用を「不動産管理会社」に任せれば、自分でアクションを起こす必要がありません。
管理や運用作業を委託すると費用はかかりますが、不労所得を目指す方に適している投資方法です。老後の年金だけでは不安な方、現在の所得にプラスして余裕を持たせたい方などにおすすめです。
【デメリット1】売上にはさまざまな税金がかかってくる
デメリットのひとつとして、不動産投資での家賃収入に税金がかかることが挙げられます。家賃収入がある場合に課せられる税金は、以下のとおりです。
【確実に発生する税金】
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所得税
家賃収入から必要経費を差し引いた税金です。必要経費は、不動産管理会社に支払う「管理手数料」や「修繕費」などがあります。 -
住民税
課税所得の額に応じて変動する税金です。住民登録している自治体に支払う必要があります。
【発生する場合もある税金】
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個人事業税
家賃収入から必要経費を差し引いた額が290万円を超えた場合に「事業的規模」と判断されると課される税金です。家賃収入がマイナスとなった場合、サラリーマンの方であると節税効果が生まれる可能性があります。会社からの給与と賃貸経営の収入が「損益通算」となり、利益と損失を相殺できるようになっています。
家賃収入が赤字であれば、会社からの給与と相殺することで、帳簿上は給与分の利益が減ることになります。その結果、利益が減った分課税所得も減るので、所得税と住民税の節税効果につながるのが特徴です。
【デメリット2】流動性の低さと初期費用
次にデメリットとして「初期費用がかかる」ことと「流動性の低さ」が挙げられます。株式や国債の場合、ある程度の資金があれば気軽に投資が可能です。しかし、不動産は価格が高価であり、大きな買い物です。
不動産投資を始める場合、高額なことがネックとなって気軽に始めることは難しいといえます。まず投資資金を用意するのが難しく、よい物件はほかの投資家に先に購入されてしまう恐れもあります。
不動産を売却するキャピタルゲインで利益を得ようと思っても、高価なことからすぐに買い手が見つかるとは限りません。売却するのにリスクがあることも把握しておきましょう。
不動産投資ではプロの力で成功を引き寄せる
不動産投資はミドルリスク、ミドルリターンで投資が可能であり、家賃収入をさまざまな用途に使えるのが魅力です。将来の不安に備えて年金代わりとしたり、給料の足しとしたりもできます。
しかし、不動産投資をするには税金や流動性のことなどを頭に入れる必要があり、自分ひとりだと視野が狭くなりがちです。さらに「投資」である以上、リスクもあります。自分ひとりで悩まず、プロの力を借りて成功へと進めましょう。
まとめ
株式や投資信託での「長期投資」は常に市場を気にする必要がなく、精神的な安心感や複利運用などが魅力です。しかし将来を予測することは難しく、最終的には取り返しのつかない事態になる恐れもあります。不動産投資はミドルリスク、ミドルリターンであり、価格変動やリスクが少ないことがメリットになるためおすすめです。